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犬娘「魔王になるっ!」

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Part4
37 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 04:41:14.57 ID:aCpzcjHAO
係員「えー、今後今の魔法は禁止します」
術師「仕方有りませんわね、本来は戦略魔法ですもの」
係員「超級魔法を使える魔導師なんて久しぶりに見ました」
係員「ただ力を奪うのは不本意です、あなたたちは特別にAランクの参戦を認めましょう」
犬娘「ラッキー!」
メイド剣士「ラッキーには思えません……」
術師「確かに、ハンデ有りでドラゴンクラスと戦うのは無理ゲー臭いですわ」
犬娘「もっと頑張るよ!」
術師「私もコントロール可能で小魔力、高威力の魔法を考えないと、神の杖は一日一発が限界だし味方は巻き込むし、デメリットが多すぎますわね……」
メイド剣士「そうだ、魔王様が居なかったら私死んでましたよね!」
術師「ギリギリで助ける算段はありましたわ、ステージ外に飛ばすとか」
メイド剣士「疑わしいです……」
犬娘「私も神の杖に耐えるくらい強くなりたいな!」
メイド剣士「魔王様……ハンパない……ハンパない脳筋……」
メイド剣士も術師も疲れ切ってしまったため、その日は戦いを終え、宿に泊まる事になった
B級の賞金と敵の財産がかなり多く、三人はしっかりリッチに休めた

38 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 04:46:37.50 ID:aCpzcjHAO
次の日、係員に呼ばれた三人は、町外れの大きな屋敷を訪れていた
係員「こちらでお待ちを」
術師「いったいなんのご用でしょうか?」
メイド剣士「もしかして、コトー王様に目を付けられたのでは」
術師「十分有り得ますわね」
犬娘「魔王様に会えるの? どきどき」
術師「落ち着きたいので尻尾をお借りします、もふもふ」
メイド剣士「ずるいです、じゃあ私は耳をなでなで」
犬娘「くすぐったいよぉ〜!」
三人娘がきゃっきゃうふふしていると、係員が現れた
その後ろから少年が現れる
真っ赤な髪と真っ赤な瞳
正しく魔王である
魔王「おっすー!」
犬娘「おっすー、おっすー!」
魔王「おお、元気だな!」
魔王は跳ね回る犬娘をハグして捕まえる
係員「こちらの方が昨日超級魔法を使われた術師様です」
魔王「うむ」
魔王「ほう、若いな?」
術師「初めまして、コトー王様、で宜しいかしら?」
犬娘「ごろごろ」
メイド剣士「はしたないですよ、魔王様」
係員「魔王、と言う呼び方は若干不快ですね、魔王は私達のコトー王様だけなのに」
魔王「いや、別に構わんよ、もはやオレの独裁の時代は終わった」

39 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 04:50:47.82 ID:aCpzcjHAO
魔王「そうかそうか、犬娘よ、お前も魔王か」
犬娘「は、はい、魔王になりたいです!」
魔王「別に構わんよ、だが何故なりたいかは聞かせてもらおうか」
犬娘は魔王に問われるまま、これまでのことを語った
魔王「勇者……それに闇の衣か、何やら懐かしいな」
魔王「更に狼主の使いか、面白い」
係員「勇者の件、側近様にお話を通しておきましょう」
魔王「ああ、また戦争になるかも知れんな」
戦争、と言う言葉に、犬娘はどきん、となる
戦争……あれは戦争だったのではないか
たくさんの人が死んだ……
巨人のお兄さんも竜人のおじさんも獣人のお父さんも、人間のお母さんも
犬娘「戦争しないですむ方法は有りませんか……?」
魔王「もちろん最善を尽くすさ、オレたちがヤマナミと同盟したように、な」
魔王「よし、犬娘よ、お前にはカイオウ島北の開拓を許そう」
魔王「そこに城を建て、お前の故郷の者達を守ってやるがいい」
犬娘「ありがとうございます!」
魔王「ああ、だが支援はしないぞ」
魔王「後は自分たちの知恵と力でなんとかするがいい」
術師「いえ、コトーの、真の魔王様にお墨付きを頂けただけでも十分ですわ」

40 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 04:53:22.57 ID:aCpzcjHAO
術師「我らの魔王様、後は私達が強くなるだけですわよ」
犬娘「うん、強くなる!」
メイド剣士「そう言えば闘技場のあの方も仲間にするんでしたね」
犬娘「うん、楽しみだ〜!」
メイド剣士(可愛い、魔王様)
メイド剣士「私も魔王様を守るために、強くなります!」
術師「少し土地を借りて訓練しましょうか 私も蘇生魔法の勉強をしたいですし」
メイド剣士「私も回復魔法なら使えるんじゃ無いでしょうか?」
術師「そうですね……師匠を探してみては如何でしょう?」
メイド剣士「術師さんは教えて下さらないんですか?」
術師「私は回復は苦手ですから無理ですわ」
術師「でも回復に詳しい方なら私も目的は同じですし、一緒に行きましょうか」
メイド剣士「はい!」
術師「ではこれから当面やるべきことは、人員探索、訓練場の確保、訓練でいいですか?」
犬娘「りょーかい!」ピョンピョン
術師「それにしてもメイドさん、あなたの刀、丈夫ですわね」
メイド剣士「オリハルコン製で鞘には再生能力もあるんです」
術師「あら、神器ですか?」
メイド剣士「家宝なんです」
術師「いつかあなたのお話も聞きたいですわ」
犬娘「私もっ!」

41 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 04:57:33.67 ID:aCpzcjHAO
メイド剣士「そ、そんなに面白くないですよ?」
犬娘「でも聞きたいな、術師さんのお話も!」
術師「藪蛇ですわ」
メイド剣士「私も術師さんのお話は聞きたいです、主に弱点!」
術師「あなたに知られたら永久にからかわれそうですわ!」
三人娘は魔王の館を去るととりあえず情報を集めるために酒場に向かった
…………
酒場に辿り着いた犬娘たちには予め確認しておくことがあった
術師「メイドさんはおいくつ?」
メイド剣士「私は十四才です」
術師「若っ!私は十八ですわ」
犬娘「私は十五」
メイド剣士「としうえ!?」
術師「ヤマナミ法なら飲めるんですがコトー法は違う可能性がありますわね」
通りすがりの竜人「ん、コトーに法律なんかねえぞ?」
術師「はあ?」
通りすがりの竜人「もちろん無闇に争うべからず、盗むべからずって基本法はあるんだが、後は魔王様がOKならOK、それがコトー法」
メイド剣士「不死無敵のコトー王様あってこその法律ですね……」
術師「アグレッシブで燃えまくりですわ!」
メイド剣士「なんでそんなに元気なんですか!」
犬娘「焼き鳥くださ〜い」
メイド剣士「魔王様は買い食いしてるし……」


42 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:01:09.23 ID:aCpzcjHAO
術師「情報を集めますわ」
メイド剣士「魔王様が財布を食いつぶすまでにお願いします」
術師「何を大袈裟な……」
犬娘「ステーキ1キロください!」
術師「おい」
メイド剣士「あの、魔王様食べ方にアクセルかかってませんか」
犬娘「ん、お肉はあんまり食べないよ?」
犬娘「サラダくださ〜い、あ、ガーリックパン美味しそう!」
犬娘「大盛カルボナーラください!」
術師「黙々と情報を集めますわ、メイドさんはあの魔王を止めて下さい」
メイド剣士「無理目なミッションですね」
犬娘「お寿司美味しそう〜、あ、子豚丸焼きだって〜!」
メイド剣士「なぜそんなに食べるのですか?」
犬娘「おなか減ったから?」
メイド剣士「シンプル!」
どうやらコトーの料理は犬娘の胃袋にストライクだったようだ
更に目標への意気込みが食欲にすり替わっているのかも知れない
犬娘「このスープ美味しい、味噌スープ?」
犬娘「とんかつ、じゅーしー!」
犬娘「コトーは海の国だから海鮮も豊富だね!」
犬娘「アワビとお味噌あうね、壺焼きシンプルで美味しい!」
犬娘「えび、車海老、ロブスター!」

43 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:04:45.62 ID:aCpzcjHAO
メイド剣士「底なしか!」
ついにクールなメイド剣士がブチ切れた
犬娘「チーズ……ええ!?」
犬娘「あ、ごめん、メイド剣士さんも食べて良いよ?」
メイド剣士「……頂きますが」
メイド剣士「今までどうやって食料確保してたんですか?」
犬娘「……?」
犬娘「……、食べ過ぎてる?」
メイド剣士「ふとりますよ」
メイド剣士の一撃は、犬魔王の魂をへし折った
犬娘「……ふとる……ふとる……」
メイド剣士「止めた!」
術師(グッジョブですわ、メイドさん!)
犬娘「あと一口」
メイド剣士「負けた……」
術師「とりあえず聞きたいことは聞けましたわ!」
メイド剣士「離脱します!」
…………
酒場から帰るとすぐに三人は宿の自室にこもる
術師「これから美味しそうなものが有る場所は鬼門とします」
メイド剣士「すこし可哀想な気もしますが、私達の稼ぎではこれが限界ですね」
術師「うう、魔王様、稼ぎが悪くて申し訳有りませんわ……」
犬娘「えと……食べ過ぎてすみません」
術師「私としてはふかふかに太った魔王様も素敵ですが」
メイド剣士「私は今くらいが好きだなあ」
犬娘「うう……今度からセーブします……」

44 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:09:45.97 ID:aCpzcjHAO
術師「まあ今日は魔王就任祝いってことで、良いでしょう」
メイド剣士「私ももう少し食べたかったな」
術師「こっそり食べてたんですね……」
犬娘「海鮮美味しかったから海際に住もうね!」
術師「魔王城は海際……」
どこからか出したメモに書き込む
メイド剣士「術師さんって意外と甘やかすタイプですね」
術師「修行は厳しく休暇はゆっくりがモットーですわ」
犬娘「修行も頑張るよ〜!」
術師「では明日は回復魔法の師匠を探しに行きますわ」
犬娘「係員さん教えてくれないかな?」
メイド剣士「あの人くらいの実力者だと凄く多忙だと思いますよ」
犬娘「そっかあ」
術師「コトー王様と縁の深いヒーラーの方がいらっしゃるらしいので、その方にご指導頂きます」
メイド剣士「私も回復が出来れば、魔王様と戦えるのはコトー王様だけってくらいになれるかも……」
術師「夢を見過ぎですわ」
メイド剣士「あう……」
犬娘「私も回復魔法出来るかなあ?」
術師「あっさりやってのけそうで怖いですわ」
メイド剣士「脳の容量と魔法技術は比例しませんからね……」
術師「まあそうなったら私達の魔王様が優秀と言うことで」

45 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:16:11.65 ID:aCpzcjHAO
…………
翌日、係員に紹介状をもらい、術師の案内によりコトーの奥地、ヒーラーの家に向かう
酒場で聞いた話では目的地までは半日程度で着くはずだ
幸いにもその家はすぐに見つかった
ヒーラーの家は真っピンクに塗られていた
術師「ハデですわ……」
メイド剣士「術師さんが好きそうですね」
犬娘「わあっ、お花いっぱい!」
術師「……魔王様が行ってしまわれましたわ」
メイド剣士「少し叱ってきます」
術師「……仕方有りませんわね、私だけでも挨拶を……」
呟くと、術師はピンクの家のドアをノックする……
術師「留守ですわね」
…………
犬娘「お花っお花っ!」
犬娘がチョウチョを追いかける姿は実に様になっている
一枚の絵のようだ
メイド剣士「……まあいっか……魔王様〜!」
花畑は島の半分を覆っているのではないか、と思うほど広大だ
その花畑の真ん中ほどに、ぽつりと人影があるのが見えた
メイド剣士(あ、もしかして……)
犬娘は花を巻き上げ大はしゃぎしている
ヒーラーらしき人物が犬娘に声をかける
ヒーラー「どちらさま?」
その人物は長身の美しいエルフだった

46 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:21:23.60 ID:aCpzcjHAO
犬娘「魔王見習いの犬娘です!」
元気に返事をする
メイド剣士「警戒心とか無いんですか魔王様!」
ヒーラー「可愛い」
何やら花畑に更に花が舞ったように見えた
メイド剣士「失礼、あなたはあのケバケバしいピンクの家にお住みの趣味の悪いヒーラー様でしょうか?」
ヒーラー「はい、……口悪いですねあなた」
二人が挨拶をかわした所で術師が駆けつけた
術師「こんにちは、ヒーラー様ですわね?」
ヒーラー「はい、留守にしていて申し訳有りません」
あの派手にピンクな家に住んでるとは思えないくらい落ち着いた人物だ
術師「私達、ヒーラー様にその技を教わりたいと思い参った次第です」
ヒーラー「まあ、私のような者で宜しければお力になりますよ」
ヒーラー「ぶっちゃけすげー暇だったんよ」
術師「は?」
ヒーラー「いえ、何でも有りません」
早速ヒーラーの元、三人は回復魔法の修行を行うことになった
ヒーラーの物腰は柔らかいのだが、修行の内容はハードだ
ヒーラー「怪我をしないで治癒魔法の効果は実感できませんので」
と言っては、三人を戦わせる
術師「蘇生魔法は実践無しでお願いしたいですわ……」

47 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:25:19.07 ID:aCpzcjHAO
ヒーラー「致死魔法が」
術師「止めて下さる?!」
ヒーラー「冗談です」
チッと、舌打ち
術師「邪悪なオーラは隠せてませんわよ!」
メイド剣士「うう、魔王様手加減して下さい!」
犬娘「でも怪我しないと回復出来ないよ?」
メイド剣士「純真さが怖い!」
術師「うっかり死んだら実験台にしますわよ?」
術師「これも良い修行ではないですか」
メイド剣士「うう……」
犬娘「いっくよー!」
犬娘「わんわんわんわん!」
犬娘は連続で閃光を放つ
術師「ああ、魔王様容赦ないけど可愛いわ」
ヒーラー「そのあたりで良いでしょう、回復を」
メイド剣士「ひ〜!」
術師「少しはかわすなりしても良いんですわよ?」
メイド剣士「閃光魔法は発動の瞬間にかわさないと光速ですからね……」
術師「結界も学んだ方が良いのかしら?」
ヒーラー「教えますよ?」
術師「薄ら寒い欲望が垣間見える気がしますが、お願い致しますわ」
ヒーラーの暴力的な修行の結果、メイド剣士と犬娘は基本的な回復を、術師は蘇生の基礎を身に着けることが出来た
術師「ありがとうございました」
ヒーラー「また来てね」
メイド剣士「お断りします」

48 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/06(水) 05:28:24.34 ID:aCpzcjHAO
三人は修行を終えると、一度A級にチャレンジすることにした
メイド剣士「すごく不安です……」
術師「まあ攻撃面はそれほどレベルアップしたわけでは有りませんからね」
犬娘「頑張るよ!」
術師「魔王様は気合いで強くなりそうで頼もしいわ」
メイド剣士「底が知れませんよね……食欲も」
ちょっと目を離すと屋台で魚フライを買って食べている
術師「勝って美味しいもの食べましょう」
メイド剣士「はい、賛成です」
…………
係員「皆さん、お待ちしていましたよ」
係員「一週間ぶりでしょうか?」
術師「それくらいになりますわね」
係員「今回は対戦相手を指名されるのですね」
メイド剣士「えっ?」
犬娘「女拳士さんでお願いしますっ」
メイド剣士「ええっ?」
術師「抜かりなく調べておきましたわ、先日のファイターの方」
メイド剣士「なるほど」
係員「いきなり闘技場で初対面となりますが、この闘技場は力がルール」
係員「仲間になれ、なら人道に反することもありません」
術師「つまり……全力でブッ倒しますわよ!」
メイド剣士「!」
犬娘「ブッ倒す〜!」