犬娘「魔王になるっ!」
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268 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/30(土) 21:36:28.39 ID:iTC6cPLAO
ヤマナミ王「故郷はいいもんでしょ、何時でも遊びにおいで」
メイド剣士「有り難う御座います、全部終わったら、是非」
ヤマナミ王「クソ親父は来んな」
旅人「もう二度と来ねえよ! うわああああん!」
旅人は泣きながら転がるように逃げ出した
術師「では、先を急ぎます、細やかな打ち合わせは後程」
メイド長「ああ、キタハマを見たいからこっちから行くよ」
術師「何から何まで有り難う御座います、失礼します」
ヤマナミ王「術師ちゃん、タイガンのお父さん心配してたよ」
術師「今は猛烈に忙しいので帰れませんわ」
ヤマナミ王「だよねー」
メイド長「二人は年が近いのか 昔なんか面白いことあったっけ?」
術師「逃げ回るヤマナミ王様を毛虫を持って追い掛けたり?」
メイド長「ぶはっ、やってたやってた、やんちゃだったよね〜」
ヤマナミ王「ううっ、トラウマが……」
術師「その節はご無礼致しましたわ」
ヤマナミ王「良いんだよ、友達じゃん」
術師「積もる話も有りますが、また後日」
ヤマナミ王「悪かったね、引き留めちゃって」
術師はにっこり笑って手を振った
273 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:03:00.69 ID:VB4pug8AO
犬娘たちは、ヤマナミを去るとそのままコトーに飛んだ
コトーの事情を考えるならば、すぐに協力と言うことは難しいかも知れない
しかし
魔王「すぐに魔物中心に千人、送ろう」
魔王「おい、早急に人材をまとめろ」
軍人「はい!」
魔王「おい、竜女、お前行け」
竜女「はっ!」
術師「あ、あなたはいつぞやの……」
竜女「お久しぶり!」
魔王「ヤマナミが港を作ってくれるなら築城を中心にやろう、後カイオウとチュウザンにはこちらから要請をかけておく」
術師「そ、そこまで手を回していただけるとは……」
魔王「困ったら頼れ、と、言ったはずだぞ」
魔王「側近が研究に手こずってる罪滅ぼし……、ってのは建て前で、二百年前の建国を思い出して燃えてきた」
どうやら魔王本人が乗り気である
旅人「コトーさんはハマミナト切る気かい?」
魔王「お、あんた……」
旅人「旅人です」
術師「そのやりとりはもうやり尽くしました……」
魔王「うちは今や世界中と交易をしてるんだ、一時的にカイオウ島経由に切り替えれば良いだけだし、いつでも切れるぞ」
犬娘「大丈夫なの?」
魔王「正直な、お前らには悪いがハマミナトを早めに押さえて欲しい」
274 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:05:45.81 ID:VB4pug8AO
術師「そ、それは……」
メイド剣士「私たちに戦争をしろ、と?」
魔王「ハマミナトはもう一つ問題を抱えてるはずだ」
旅人「……黒衣の魔女」
術師「……!」
魔王「奴を早めに炙り出さなければ、万が一、破壊神復活などやられては面倒臭い」
魔王「魔人の奴もいるから倒せなくはないかも知れないが、カイオウ島全土に及ぶ破壊は、もっと大きな経済損失が有り得る」
魔王「魔人の奴にも指令を出しておこう、連携して機会を見て攻め込め」
術師「こ、こちらからですか?」
魔王「いや、もちろんあちらから攻めさせるさ」
魔王「その為に築城を進め、戦闘態勢を整える」
魔王「焦って攻めてくればそれで良いし、攻めてこなければそれもいい」
魔王「軍備を整えさせるだけでもこちらから内偵を送り込む口実ができる」
魔王「それでハマミナトの外交官、魔女娘、あいつはお前たちの国でしっかり保護しろ」
魔王「機会を見てハマミナトに噂を流す」
術師「なんと……?」
魔王「そりゃ、キタハマが外交官を監禁してるらしい、とさ」
術師「〜〜〜!」
275 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:07:20.55 ID:VB4pug8AO
メイド剣士「情報操作……」
魔王「もちろんそれに対する別の噂も用意する」
魔王「銀騎士が破壊神信徒と手を結び、それに反対した魔女娘様は追放されたらしい、と」
メイド剣士「は、腹黒い」
魔王「魔王だしな」
術師「あの、コトー王様、随分ノリノリですわね」
魔王「俺に喧嘩を売る奴なんか年に一回の祭りで出てくるくらいだし」
魔王「国ごと喧嘩売ってくるなんて燃えるじゃないか」
術師「戦争をする方の身にもなって下さい……」
魔王「それはそうなんだが、どっちにしてもハマミナトは押さえねば」
魔王「その為にも万全の準備はしておくべきだろ?」
メイド剣士「その上で、嘘で戦意を燃え上がらせる……」
術師「そして、黒衣の魔女を炙り出す……」
魔王「もちろん実際に戦うのはお前たちだ」
魔王「無理だと言うなら他の策を考えるが……」
術師は犬娘に向き直った
術師「どうしますか?」
犬娘「う〜ん……」
犬娘「よく分からなかった」
術師「そ、そうですね、難しい話です」
犬娘「でも黒衣の魔女は放って置けないよ」
犬娘「あいつを見つけるためにそうしなきゃいけないなら、やる!」
術師「魔王様……」
276 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:09:01.13 ID:VB4pug8AO
メイド剣士は初めて出会った時の、犬娘が過去の話をしていた時の顔を思い出していた
メイド剣士「魔王様……、辛いですよね……」
しかし、犬娘の覚悟は決まっている
犬娘「やるしかないよ」
犬娘「出来るだけ早く、黒衣の魔女を見つけて、やっつける」
犬娘「絶対に、止めるんだ!」
魔王「はははっ」
魔王「お前はもう立派な魔王だな」
犬娘「まだまだ、真の魔王様を倒さないと?」
魔王「はっはっは、こりゃ恐ろしい敵が育ってるな!」
術師「そうですね、コトー王様をぶっ倒しますわ!」
メイド剣士「久しぶりに脳筋ですね!」
旅人「細かい事はコトーさんに任せよう、僕らは彼らを迎え入れる準備だ」
犬娘「帰ろう!」
術師「おーっ!」
メイド剣士「おーっ!」
旅人「ふふ、頼もしいな」
魔王「全くだ、遊び歩いてるどこかの王とは大違いだな」
旅人「あいたたた……」
…………
キタハマに帰った犬娘たちは緊急会議を立ち上げる
虎獣人や虎娘、狐娘や猫娘など、主要人物たちが集まってくる
城壁の中にテーブルが運び込まれ、会議が始まる
277 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:11:35.38 ID:VB4pug8AO
術師「では、魔王様」
犬娘「今からキタハマ開発会議を始める!」
犬娘の開会宣言、参加者全員が拍手をする
犬娘「状況説明を!」
メイド剣士「はい、現在キタハマにコトー、ヤマナミから合計二千の援軍が向かってきています」
メイド剣士「目的は東港開港、街道整備、護岸工事、築城など我々の国が現在抱えている開発事業に協力する為です」
メイド剣士「急に人口が増えることになるため、緊急事態に備え食糧備蓄を行うこと」
メイド剣士「また、混乱を招かないよう住民に注意喚起する必要があります」
メイド剣士「現在も移民は増えていますが、その中にスパイなどもいる可能性が出てきます」
メイド剣士「開拓初期から住む住民たちには不審人物の報告をお願いします」
メイド剣士「緊急事態に備え連絡体制を緊密にして下さい」
メイド剣士「魔王様の直接の配下である皆さんは緊急時には早急に集合して下さい」
メイド剣士「また、城の業務が更に増えると思われますので、追加で公務に当たる人を募ります」
メイド剣士「各位はそれぞれの部下をしっかりと取りまとめられますよう、お願いします」
メイド剣士「私からは以上です」
278 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:13:20.80 ID:VB4pug8AO
術師「今後も雨期などの大規模の危機に見舞われる可能性があります」
術師「住民の皆さんは危機的な事態に置ける避難態勢を作り、訓練をしておいて下さい」
勇者「直接の指揮は俺が取ろう」
女拳士「じゃあアタシは応援の人たちをまとめよう」
虎獣人「じゃあ俺はそれを手伝う」
灰娘「私は魔王様から各拠点への連絡要員をしますのでよろしくお願いします」
白導師「私も連絡に使ってもらう」
術師「私は築城指揮と防壁用鉄石の設置作業等を行います」
石使い「わたしが……どんどん石を作る」
虎娘「前線警護に当たります」
犬戦士「手伝うわ」
熊娘「国内を巡回します」
猫娘「私も」
狐娘「移民の手続きは引き受けます」
旅人「じゃあ僕は魔王様と指揮をやろう」
メイド剣士「私は情報を統括します、皆さん報告をお願いします」
術師「では、忙しくなりますが皆さん」
犬娘「頑張ろう!」
皆「おーっ!」
…………
戦争の可能性などは敢えて伏せ、大規模な開発に乗り出した体での説明を終え、各人が作業を再開する
二日後にはコトー軍が揚陸艦により直接キタハマに乗り込んできた
279 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:15:49.44 ID:VB4pug8AO
メイド剣士「速いですね」
旅人「まあコトーさんノリノリだったからね〜」
犬娘「出迎えよう」
…………
竜女「我々は本日よりキタハマ王様の指揮下に入ります」
竜女「よろしくお願いします!」
犬娘「うん、よろしく!」
竜女「キタハマ王様、ご無礼ではありますが配下たちに魔王様の強さを見せていただけないでしょうか」
犬娘「えー、そんなに強くなかったらごめん」
竜女「緑竜!」
竜女に呼ばれ、竜女の倍も体格がある、傷だらけの竜人が前に出た
緑竜「こんな小さい娘さん、大丈夫なのか?」
竜女「油断はするな、かの魔人を打ち倒した人物だぞ?」
緑竜「どうせ手を抜いていたのだろう……」
緑竜「あの化け物がこんな娘に……」
竜女「それ以上失礼な発言はするな、私が許さんぞ」
犬娘「この人やっつけたらいいの?」
竜女「はい」
竜女が言い終えるや否や、ガツンと言う音と、ぼちゃん、と言う音がした
犬娘「あ、ごめん」
犬娘はいきなり獣王拳で緑竜を海まで殴り飛ばした
竜女は一瞬何が起こったか分からず、犬娘を見ている
犬娘の視線を追って海を見ると、緑竜が溺れていた
竜女「……予想より、強過ぎる……!」
280 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:17:25.99 ID:VB4pug8AO
竜人や魔神中心の屈強な戦士たちは激しく動揺した
小さくも強いキタハマ王を認めるに値すると感じた者も少なくなかっただろう
海竜がくわえて連れて帰った緑竜の胸は焦げてへこんでいた
慌てて竜女が蘇生をかけると、緑竜は犬娘の前で土下座した
緑竜「ご無礼を致しました、我はキタハマ王様に服従を誓います」
犬娘「うん、よろしくね!」
メイド剣士「魔王様、屈強な竜人を一撃……」
旅人「こんな強かったのか……」
メイド剣士「ストレス溜まってたんだろうなあ……」
竜人たちは張り切って築城作業に乗り出した
余程パフォーマンスが効いたようだ
揚陸艦はそのままサイセイに送られ、サイセイ王を怯えさせた後、二日後にはヤマナミ軍を運んできた
女騎士長「初めましてキタハマ王様、私はヤマナミ騎士団第三部隊隊長、女騎士長であります」
犬娘「よろしくね!」
女騎士長「第一兵長、第二兵長、キタハマ王様にご挨拶を」
第一兵長「は、キタハマ王様、作業指揮に当たります、第一兵長と申します」
第二兵長「わたしはぁ、治安維持に当たるぅ、第二兵長なのぉ」
女騎士長「まともに喋れ腐れ女」
第二兵長「はっ、失礼ぃ、致しましたぁ」
281 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:19:05.49 ID:VB4pug8AO
犬娘「よ、よろしくね!」
こうして二千人の大軍隊を迎え入れたキタハマは、一層賑やかに開発を進めて行くことになった
メイド剣士「元々漁業用に桟橋はあったんですが、それを使って港を作っているようです」
術師「二千人もいるとびっくりするくらい作業が速いですわね」
メイド剣士「今まで五百人にも満たない人口でやってましたからねえ」
勇者「みんなぴしっとしてて、宿営地でも問題を起こすことがない」
術師「うわさのキタハマ王の一撃がヤマナミ軍にまで伝わったようですわ」
犬娘「やりすぎちゃった?」
メイド剣士「グッジョブです」
…………
やがてハマミナト王の国葬の日
ハマミナト兵に案内され、国賓席に座る犬娘たちの所に牧場娘が魔人を連れてやってきた
魔人王「久しぶりだな、話は聞いたぞ」
術師「大変なことになってしまいました」
魔人王「うちも色々な訓練を始めてな、民に少し不安を与えているようだ」
術師「魔人王様が出向かれたら一人で片付きそうですが」
魔人王「王が直接出向くのは好まない者も多いからな」
術師「うちにも十分な人材が有れば良いんですが」
牧場娘「昼寝もできないね」
282 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:21:15.03 ID:VB4pug8AO
術師は小さな声で語りかけた
術師「牧場娘さんのその揺らめく魔法なら黒衣の魔女の黒い閃光をかわせますか?」
牧場娘「かわさない、当たらないから」
術師「どういう仕組みなんです?」
魔人王「さあな」
牧場娘「まあ魔人王が本気を出せばやられるけどね」
術師「なるほど」
牧場娘「あ、またボロ出しちゃったよ」
魔人王「わざとだろう」
牧場娘「まあね、眠い」
メイド剣士「銀鈴ちゃんはお留守番ですか?」
魔人王「あいつは強いからな」
牧場娘「私は嫌いだね、魔法がいやらしい」
牧場娘「相手がイメージできたら呪える奴だからね」
魔人王「全部喋る気か」
牧場娘「おっと、寝ぼけて寝言言ってるだけさ」
犬娘「魔人王さんこんにちは!」
魔人王「元気だな」
術師「なんかストレス解消したみたいですわ」
魔人王はよく分からない、と言った顔をした
メイド剣士「今度お昼食べに来て下さい」
魔人王「時間が出来れば、ご馳走になろう」
メイド剣士「お待ちしています」
犬娘「開拓が終わったらお祭りしよう!」
魔人王「交流祭か、良いだろう」
犬娘たちが騒いでいると銀騎士が訪れる
283 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:24:08.08 ID:VB4pug8AO
銀騎士「この度は我らがハマミナト王の葬儀にご参列いただき……」
銀騎士は一通り形通りの挨拶をすませると、雑談もせずに行ってしまった
術師たちは会場に注意を払っていたが、黒衣の魔女らしき人物は居なかった
国葬は大きな騒ぎもなく終わった
魔人王「またな」
犬娘「また〜!」
術師「お待ちしてますわ」
牧場娘「また昼寝に行くわ」
メイド剣士「良いですね」
犬娘たちは帰還すると作業をひたすら進めていき、やがて秋になった頃、空気が動き始めた
港が完成し、ヤマナミ軍は街道整備を始めていた
旅人「ハマミナトで徴兵と軍事訓練が始まったようだ」
術師「思っていたより大胆に動いてきましたね」
旅人「こちらの動きは向こうに伝わっているだろうしね」
メイド剣士「大軍隊が急に出てきたらびっくりしますよね」
旅人「予定ではコトーさんが探査を入れている頃だね」
女拳士「どんな人が探査するんだろう?」
竜女「吸血鬼の旦那かな?」
犬娘「吸血鬼って居るんだ?」
竜女「菜食主義者だけどね」
犬娘「吸菜鬼?」
メイド剣士「あははっ」
ヤマナミ王「故郷はいいもんでしょ、何時でも遊びにおいで」
メイド剣士「有り難う御座います、全部終わったら、是非」
ヤマナミ王「クソ親父は来んな」
旅人「もう二度と来ねえよ! うわああああん!」
旅人は泣きながら転がるように逃げ出した
術師「では、先を急ぎます、細やかな打ち合わせは後程」
メイド長「ああ、キタハマを見たいからこっちから行くよ」
術師「何から何まで有り難う御座います、失礼します」
ヤマナミ王「術師ちゃん、タイガンのお父さん心配してたよ」
術師「今は猛烈に忙しいので帰れませんわ」
ヤマナミ王「だよねー」
メイド長「二人は年が近いのか 昔なんか面白いことあったっけ?」
術師「逃げ回るヤマナミ王様を毛虫を持って追い掛けたり?」
メイド長「ぶはっ、やってたやってた、やんちゃだったよね〜」
ヤマナミ王「ううっ、トラウマが……」
術師「その節はご無礼致しましたわ」
ヤマナミ王「良いんだよ、友達じゃん」
術師「積もる話も有りますが、また後日」
ヤマナミ王「悪かったね、引き留めちゃって」
術師はにっこり笑って手を振った
273 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:03:00.69 ID:VB4pug8AO
犬娘たちは、ヤマナミを去るとそのままコトーに飛んだ
コトーの事情を考えるならば、すぐに協力と言うことは難しいかも知れない
しかし
魔王「すぐに魔物中心に千人、送ろう」
魔王「おい、早急に人材をまとめろ」
軍人「はい!」
魔王「おい、竜女、お前行け」
竜女「はっ!」
術師「あ、あなたはいつぞやの……」
竜女「お久しぶり!」
魔王「ヤマナミが港を作ってくれるなら築城を中心にやろう、後カイオウとチュウザンにはこちらから要請をかけておく」
術師「そ、そこまで手を回していただけるとは……」
魔王「困ったら頼れ、と、言ったはずだぞ」
魔王「側近が研究に手こずってる罪滅ぼし……、ってのは建て前で、二百年前の建国を思い出して燃えてきた」
どうやら魔王本人が乗り気である
旅人「コトーさんはハマミナト切る気かい?」
魔王「お、あんた……」
旅人「旅人です」
術師「そのやりとりはもうやり尽くしました……」
魔王「うちは今や世界中と交易をしてるんだ、一時的にカイオウ島経由に切り替えれば良いだけだし、いつでも切れるぞ」
犬娘「大丈夫なの?」
魔王「正直な、お前らには悪いがハマミナトを早めに押さえて欲しい」
274 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:05:45.81 ID:VB4pug8AO
術師「そ、それは……」
メイド剣士「私たちに戦争をしろ、と?」
魔王「ハマミナトはもう一つ問題を抱えてるはずだ」
旅人「……黒衣の魔女」
術師「……!」
魔王「奴を早めに炙り出さなければ、万が一、破壊神復活などやられては面倒臭い」
魔王「魔人の奴もいるから倒せなくはないかも知れないが、カイオウ島全土に及ぶ破壊は、もっと大きな経済損失が有り得る」
魔王「魔人の奴にも指令を出しておこう、連携して機会を見て攻め込め」
術師「こ、こちらからですか?」
魔王「いや、もちろんあちらから攻めさせるさ」
魔王「その為に築城を進め、戦闘態勢を整える」
魔王「焦って攻めてくればそれで良いし、攻めてこなければそれもいい」
魔王「軍備を整えさせるだけでもこちらから内偵を送り込む口実ができる」
魔王「それでハマミナトの外交官、魔女娘、あいつはお前たちの国でしっかり保護しろ」
魔王「機会を見てハマミナトに噂を流す」
術師「なんと……?」
魔王「そりゃ、キタハマが外交官を監禁してるらしい、とさ」
術師「〜〜〜!」
275 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:07:20.55 ID:VB4pug8AO
メイド剣士「情報操作……」
魔王「もちろんそれに対する別の噂も用意する」
魔王「銀騎士が破壊神信徒と手を結び、それに反対した魔女娘様は追放されたらしい、と」
メイド剣士「は、腹黒い」
魔王「魔王だしな」
術師「あの、コトー王様、随分ノリノリですわね」
魔王「俺に喧嘩を売る奴なんか年に一回の祭りで出てくるくらいだし」
魔王「国ごと喧嘩売ってくるなんて燃えるじゃないか」
術師「戦争をする方の身にもなって下さい……」
魔王「それはそうなんだが、どっちにしてもハマミナトは押さえねば」
魔王「その為にも万全の準備はしておくべきだろ?」
メイド剣士「その上で、嘘で戦意を燃え上がらせる……」
術師「そして、黒衣の魔女を炙り出す……」
魔王「もちろん実際に戦うのはお前たちだ」
魔王「無理だと言うなら他の策を考えるが……」
術師は犬娘に向き直った
術師「どうしますか?」
犬娘「う〜ん……」
犬娘「よく分からなかった」
術師「そ、そうですね、難しい話です」
犬娘「でも黒衣の魔女は放って置けないよ」
犬娘「あいつを見つけるためにそうしなきゃいけないなら、やる!」
術師「魔王様……」
276 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:09:01.13 ID:VB4pug8AO
メイド剣士は初めて出会った時の、犬娘が過去の話をしていた時の顔を思い出していた
メイド剣士「魔王様……、辛いですよね……」
しかし、犬娘の覚悟は決まっている
犬娘「やるしかないよ」
犬娘「出来るだけ早く、黒衣の魔女を見つけて、やっつける」
犬娘「絶対に、止めるんだ!」
魔王「はははっ」
魔王「お前はもう立派な魔王だな」
犬娘「まだまだ、真の魔王様を倒さないと?」
魔王「はっはっは、こりゃ恐ろしい敵が育ってるな!」
術師「そうですね、コトー王様をぶっ倒しますわ!」
メイド剣士「久しぶりに脳筋ですね!」
旅人「細かい事はコトーさんに任せよう、僕らは彼らを迎え入れる準備だ」
犬娘「帰ろう!」
術師「おーっ!」
メイド剣士「おーっ!」
旅人「ふふ、頼もしいな」
魔王「全くだ、遊び歩いてるどこかの王とは大違いだな」
旅人「あいたたた……」
…………
キタハマに帰った犬娘たちは緊急会議を立ち上げる
虎獣人や虎娘、狐娘や猫娘など、主要人物たちが集まってくる
城壁の中にテーブルが運び込まれ、会議が始まる
術師「では、魔王様」
犬娘「今からキタハマ開発会議を始める!」
犬娘の開会宣言、参加者全員が拍手をする
犬娘「状況説明を!」
メイド剣士「はい、現在キタハマにコトー、ヤマナミから合計二千の援軍が向かってきています」
メイド剣士「目的は東港開港、街道整備、護岸工事、築城など我々の国が現在抱えている開発事業に協力する為です」
メイド剣士「急に人口が増えることになるため、緊急事態に備え食糧備蓄を行うこと」
メイド剣士「また、混乱を招かないよう住民に注意喚起する必要があります」
メイド剣士「現在も移民は増えていますが、その中にスパイなどもいる可能性が出てきます」
メイド剣士「開拓初期から住む住民たちには不審人物の報告をお願いします」
メイド剣士「緊急事態に備え連絡体制を緊密にして下さい」
メイド剣士「魔王様の直接の配下である皆さんは緊急時には早急に集合して下さい」
メイド剣士「また、城の業務が更に増えると思われますので、追加で公務に当たる人を募ります」
メイド剣士「各位はそれぞれの部下をしっかりと取りまとめられますよう、お願いします」
メイド剣士「私からは以上です」
278 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:13:20.80 ID:VB4pug8AO
術師「今後も雨期などの大規模の危機に見舞われる可能性があります」
術師「住民の皆さんは危機的な事態に置ける避難態勢を作り、訓練をしておいて下さい」
勇者「直接の指揮は俺が取ろう」
女拳士「じゃあアタシは応援の人たちをまとめよう」
虎獣人「じゃあ俺はそれを手伝う」
灰娘「私は魔王様から各拠点への連絡要員をしますのでよろしくお願いします」
白導師「私も連絡に使ってもらう」
術師「私は築城指揮と防壁用鉄石の設置作業等を行います」
石使い「わたしが……どんどん石を作る」
虎娘「前線警護に当たります」
犬戦士「手伝うわ」
熊娘「国内を巡回します」
猫娘「私も」
狐娘「移民の手続きは引き受けます」
旅人「じゃあ僕は魔王様と指揮をやろう」
メイド剣士「私は情報を統括します、皆さん報告をお願いします」
術師「では、忙しくなりますが皆さん」
犬娘「頑張ろう!」
皆「おーっ!」
…………
戦争の可能性などは敢えて伏せ、大規模な開発に乗り出した体での説明を終え、各人が作業を再開する
二日後にはコトー軍が揚陸艦により直接キタハマに乗り込んできた
279 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:15:49.44 ID:VB4pug8AO
メイド剣士「速いですね」
旅人「まあコトーさんノリノリだったからね〜」
犬娘「出迎えよう」
…………
竜女「我々は本日よりキタハマ王様の指揮下に入ります」
竜女「よろしくお願いします!」
犬娘「うん、よろしく!」
竜女「キタハマ王様、ご無礼ではありますが配下たちに魔王様の強さを見せていただけないでしょうか」
犬娘「えー、そんなに強くなかったらごめん」
竜女「緑竜!」
竜女に呼ばれ、竜女の倍も体格がある、傷だらけの竜人が前に出た
緑竜「こんな小さい娘さん、大丈夫なのか?」
竜女「油断はするな、かの魔人を打ち倒した人物だぞ?」
緑竜「どうせ手を抜いていたのだろう……」
緑竜「あの化け物がこんな娘に……」
竜女「それ以上失礼な発言はするな、私が許さんぞ」
犬娘「この人やっつけたらいいの?」
竜女「はい」
竜女が言い終えるや否や、ガツンと言う音と、ぼちゃん、と言う音がした
犬娘「あ、ごめん」
犬娘はいきなり獣王拳で緑竜を海まで殴り飛ばした
竜女は一瞬何が起こったか分からず、犬娘を見ている
犬娘の視線を追って海を見ると、緑竜が溺れていた
竜女「……予想より、強過ぎる……!」
280 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:17:25.99 ID:VB4pug8AO
竜人や魔神中心の屈強な戦士たちは激しく動揺した
小さくも強いキタハマ王を認めるに値すると感じた者も少なくなかっただろう
海竜がくわえて連れて帰った緑竜の胸は焦げてへこんでいた
慌てて竜女が蘇生をかけると、緑竜は犬娘の前で土下座した
緑竜「ご無礼を致しました、我はキタハマ王様に服従を誓います」
犬娘「うん、よろしくね!」
メイド剣士「魔王様、屈強な竜人を一撃……」
旅人「こんな強かったのか……」
メイド剣士「ストレス溜まってたんだろうなあ……」
竜人たちは張り切って築城作業に乗り出した
余程パフォーマンスが効いたようだ
揚陸艦はそのままサイセイに送られ、サイセイ王を怯えさせた後、二日後にはヤマナミ軍を運んできた
女騎士長「初めましてキタハマ王様、私はヤマナミ騎士団第三部隊隊長、女騎士長であります」
犬娘「よろしくね!」
女騎士長「第一兵長、第二兵長、キタハマ王様にご挨拶を」
第一兵長「は、キタハマ王様、作業指揮に当たります、第一兵長と申します」
第二兵長「わたしはぁ、治安維持に当たるぅ、第二兵長なのぉ」
女騎士長「まともに喋れ腐れ女」
第二兵長「はっ、失礼ぃ、致しましたぁ」
281 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:19:05.49 ID:VB4pug8AO
犬娘「よ、よろしくね!」
こうして二千人の大軍隊を迎え入れたキタハマは、一層賑やかに開発を進めて行くことになった
メイド剣士「元々漁業用に桟橋はあったんですが、それを使って港を作っているようです」
術師「二千人もいるとびっくりするくらい作業が速いですわね」
メイド剣士「今まで五百人にも満たない人口でやってましたからねえ」
勇者「みんなぴしっとしてて、宿営地でも問題を起こすことがない」
術師「うわさのキタハマ王の一撃がヤマナミ軍にまで伝わったようですわ」
犬娘「やりすぎちゃった?」
メイド剣士「グッジョブです」
…………
やがてハマミナト王の国葬の日
ハマミナト兵に案内され、国賓席に座る犬娘たちの所に牧場娘が魔人を連れてやってきた
魔人王「久しぶりだな、話は聞いたぞ」
術師「大変なことになってしまいました」
魔人王「うちも色々な訓練を始めてな、民に少し不安を与えているようだ」
術師「魔人王様が出向かれたら一人で片付きそうですが」
魔人王「王が直接出向くのは好まない者も多いからな」
術師「うちにも十分な人材が有れば良いんですが」
牧場娘「昼寝もできないね」
282 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:21:15.03 ID:VB4pug8AO
術師は小さな声で語りかけた
術師「牧場娘さんのその揺らめく魔法なら黒衣の魔女の黒い閃光をかわせますか?」
牧場娘「かわさない、当たらないから」
術師「どういう仕組みなんです?」
魔人王「さあな」
牧場娘「まあ魔人王が本気を出せばやられるけどね」
術師「なるほど」
牧場娘「あ、またボロ出しちゃったよ」
魔人王「わざとだろう」
牧場娘「まあね、眠い」
メイド剣士「銀鈴ちゃんはお留守番ですか?」
魔人王「あいつは強いからな」
牧場娘「私は嫌いだね、魔法がいやらしい」
牧場娘「相手がイメージできたら呪える奴だからね」
魔人王「全部喋る気か」
牧場娘「おっと、寝ぼけて寝言言ってるだけさ」
犬娘「魔人王さんこんにちは!」
魔人王「元気だな」
術師「なんかストレス解消したみたいですわ」
魔人王はよく分からない、と言った顔をした
メイド剣士「今度お昼食べに来て下さい」
魔人王「時間が出来れば、ご馳走になろう」
メイド剣士「お待ちしています」
犬娘「開拓が終わったらお祭りしよう!」
魔人王「交流祭か、良いだろう」
犬娘たちが騒いでいると銀騎士が訪れる
283 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/11(木) 22:24:08.08 ID:VB4pug8AO
銀騎士「この度は我らがハマミナト王の葬儀にご参列いただき……」
銀騎士は一通り形通りの挨拶をすませると、雑談もせずに行ってしまった
術師たちは会場に注意を払っていたが、黒衣の魔女らしき人物は居なかった
国葬は大きな騒ぎもなく終わった
魔人王「またな」
犬娘「また〜!」
術師「お待ちしてますわ」
牧場娘「また昼寝に行くわ」
メイド剣士「良いですね」
犬娘たちは帰還すると作業をひたすら進めていき、やがて秋になった頃、空気が動き始めた
港が完成し、ヤマナミ軍は街道整備を始めていた
旅人「ハマミナトで徴兵と軍事訓練が始まったようだ」
術師「思っていたより大胆に動いてきましたね」
旅人「こちらの動きは向こうに伝わっているだろうしね」
メイド剣士「大軍隊が急に出てきたらびっくりしますよね」
旅人「予定ではコトーさんが探査を入れている頃だね」
女拳士「どんな人が探査するんだろう?」
竜女「吸血鬼の旦那かな?」
犬娘「吸血鬼って居るんだ?」
竜女「菜食主義者だけどね」
犬娘「吸菜鬼?」
メイド剣士「あははっ」
犬娘「魔王になるっ!」
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