犬娘「魔王になるっ!」
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164 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/22(金) 23:56:05.70 ID:CEWxAOtAO
次の日、術師は勇者と犬娘、モグラ子分を連れて山に
女拳士たちは木材の伐採、加工、運搬を行うことにした
モグラ親方は井戸に木枠を組む
ーー北浜火山ーー
北浜にある火山は長い間活動していない火山である
記録では千年の間全く活動していないが、温泉や火山生成物が大量に眠っている
チュウザンの山々と比較すると低い山であるが、海底から隆起してきたと思われる
そのため化石や、石灰なども豊富だ
犬娘「綺麗な森があるよ」
術師「色々採取出来そうですわね、近いし便利そうですわ」
犬娘「下の森の方は全部開拓するの?」
術師「まさか、自然は残していきますわ」
モグラ子分「姐さ〜ん、ここいらを適当に掘れば良いんですか?」
術師「はい、土を調べますので少しで良いですよ」
勇者「俺はピンクの石を探せばいいんだな?」
術師「はい、多分山裾の辺りに多いと思われます、我が家の台所を支える貴重品ですので良く探してください」
勇者「分かった」
犬娘「私も行くよ!」
術師「魔王様、無理はいけませんよ?」
犬娘「?」
犬娘「分かった!」
165 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/22(金) 23:58:43.31 ID:CEWxAOtAO
術師はモグラ子分に数十カ所も土を掘らせた
モグラ子分「あ、姐さん、ちょっと休憩を……」
術師「構いませんよ、冷やした水も沢山有りますから」
術師「休憩が終わったらそろそろ二人と合流しましょう、治療が必要かも分かりませんから」
モグラ子分「はいな……?」
…………
勇者「ここらで良いか?」
犬娘「うん、ちょっと私と打ち合って欲しいの」
勇者「お互いの力試しか」
勇者「じゃあ、手抜きは出来ないな」
犬娘「うん」
二人は見通しのいい場所を見つけ、打ち合いを始めた
通常の戦闘と違い、勇者は抜き身でなく、犬娘も魔法を使わない状態ではあるが、全力の戦いだ
勇者「相変わらず速い……、いや、以前より更に、か」
犬娘「はあっ」
犬娘の下段払い蹴り
勇者は軽いステップでかわし、犬娘に打ち込むが、既に対象はそこにいない
勇者「うん、強くなってる」
勇者「だが俺も!」
後ろに回る犬娘の動きを読んで剣を打ち込む
犬娘はギリギリでかわしたが、少しかすった
犬娘「強いね」
犬娘「でも!」
勇者「俺は……、もっと強くなる!」
勇者の剣速が一段階速くなる
メイド剣士にも近付く速さだ
166 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:01:29.31 ID:if/f0pXAO
剣の質量、鞘に納めたままで有ることを考えれば、信じられない筋力
メイド剣士の剣をかわせるのは魔人王か犬娘くらいだ
犬娘「速い速い!」
少し楽しそうな犬娘
勇者と犬魔王は一歩も譲らないまま、時間が過ぎていく
お互いに計り知れない体力、いつ終わるとも分からない
術師たちが二人を見つけても一刻打ち合っていたので、術師は二人を止めることにした
術師「そこまで、時間切れ引き分けですわ」
犬娘「あ、術師ちゃん」
勇者「す、すまない、気づかなかった」
術師「石はありましたの?」
勇者「一応は見つけてからやりあった」
術師「まあ予想できてましたけど」
四人は術師の見立てで魔法原石を数十個採取し、お昼を食べると山を降りることにした
モグラ親方「虎の旦那相変わらずいい仕事するぜ これで井戸も完成だ!」
虎獣人「まあこれだけ手が有ればな、材木は殆ど女拳士さんが運んでくれたし」
気付けば知らない獣人が何人か手伝いに来ていた
メイド剣士「では皆さん、今から送りますので集まってください」
獣人大工「はいよ!」
メイド剣士は術師を見つけるとニッコリ親指を立てて見せ、そのまま大工たちを転送して行った
167 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:03:13.32 ID:if/f0pXAO
術師「成功したんですわ……」
犬娘「メイド剣士ちゃん、すごい」
勇者「転送か」
勇者「俺も初めて出来た時は嬉しかったな」
術師「出来るんですか?」
勇者「ああ、一応」
術師「先に言ってくれればもう少し計画が変わったんですが……」
術師「でもまあ良かった、メイドさん嬉しそうだったし」
手で胸元を押さえ、術師もなんだか嬉しそうだ
犬娘「良かったね!」
そこに、旅人らしき風体の男がやってきた
術師「あれ、あなたは!」
旅人「どうも、旅人です」
どうやら術師の顔見知りのようだ
旅人「いやあ、街づくりなんて面白そうだなあって思って、お手伝いに来ました」
術師「え、あの、大丈夫なんですか?」
犬娘「だれ?」
術師「この方は……」
旅人「旅人です」
術師「旅人さん……です」
旅人と名乗る男は身形は確かに旅人風情なのだが、姿勢が何か一般人臭くない
犬娘はすんすんと臭いを嗅いだが、確かに旅人のような臭いだ
術師「でも、とても助かりますわ」
術師「外交を頼まれていただければ私は開発に専念できますわ」
168 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:06:24.35 ID:if/f0pXAO
いったい何者だろう
見た目は無精髭の若い小柄なおじさんで、犬娘の鼻でもそれは変わらない
外交なんて出来るんだろうか?
術師「今までに決まった取引の内容を説明しておきますわ」
そう言うと術師は旅人を遠くに引っ張っていった
術師「道楽でよくここまで来られましたわね」
術師「先代ヤマナミ王様」
旅人「内緒な、内緒」
術師「あなたの顔を知ってる人は大勢いますわよ 隠しきれると思えませんが」
旅人「こんな身形だしばれないんじゃないかな〜?」
術師「退任されたのはいつでしたっけ?」
旅人「二年前」
術師「ギリギリメイドさんも知ってるかも……」
旅人「僕が任命したメイドさんはオリハルコンの剣を持った剣士の子が最期だったかな?」
術師「その子ですわ」
旅人「あちゃー」
術師「勇者さんと顔を合わせたりは……」
旅人「大丈夫、サイセイには嫌われてるから」
術師「あと女拳士さんは狼主様を知ってましたから……」
旅人「女拳士と言えば十七で一人で悪ドラゴン退治して僕が表彰した子がいるね」
術師「そんな化け物一人しか居ませんわね」
169 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:08:14.77 ID:if/f0pXAO
術師「やっぱりバレバレじゃないですか だいたいなんですかその無精髭!」
旅人「ガチで旅してるし、髭が無いと子供と間違えられるんだよ〜」
術師「まあ流石に王様です、とか紹介できませんけど……」
旅人「もう民間人だからそのように扱ってよ」
術師「もちろん、奴隷のように働いてもらいますわ」
旅人「きつい」
術師「タダでご飯は食べられませんわよ」
旅人「いや分かってるよ〜」
ーーヤマナミーー
ヤマナミ王「そう言えばオヤジどうしてるかな〜?」
メイド長「さあ、旅の空で野垂れ死んでるんじゃないかね?」
ヤマナミ王「お姉ちゃん親父には厳しいね」
メイド長「あの怠け者には苦労したからね〜」
ヤマナミ王「どっかで誰かに迷惑かけてなきゃ良いけど」
ーー北浜ーー
女拳士「あんたは確か……」
旅人「旅人です」
メイド剣士「何やってるんですか先代……」
旅人「旅人です」
勇者「俺も記録で見たことあるんだけど……」
旅人「旅人です」
術師「魔王様以外全員にバレバレじゃないですか!」
旅人「旅人の方がみんなも都合いいでしょ!」
女拳士「そりゃまあ」
メイド剣士「確かに」
勇者「そうだな」
170 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:09:34.99 ID:if/f0pXAO
犬娘「私だけ分からないのか……、う〜ん、ヤマナミの王様に似てるけど」
メイド剣士(親子だしなあ)
術師(隠してもダメでしょ、これ)
旅人(まあ普通の人には分からないはず……はず……)
術師(民間人との週に一度の接見は)
旅人(やってた…… ダメな気がしてきた)
術師(こうなったらシラを切り通して下さい 皆さんも)
女拳士(そうだね、多分無駄だけど)
メイド剣士(奴隷みたいに働かせていればバレないのでは)
旅人(だるい)
勇者(そんなのでよく旅が出来たな)
術師「と、とりあえず今日は旅人さん歓迎会しましょうか」
虎獣人「あれ、あんた」
旅人「旅人です」
術師「隠れ住んでた獣人にまでバレてるじゃないですか!」
虎獣人「隠すんだな、分かった」
虎獣人「昔出稼ぎに行ってた時に土地管理の件で国と問題になってな……」
旅人「あ〜、あの時の」
術師「じゃあ夕ご飯の準備をしましょうか 明日からの予定も有りますし」
術師はグダグダな旅人にため息をついた
しかし、街づくりにはこれ以上無い戦力だろう
働きさえすれば
171 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:12:10.02 ID:if/f0pXAO
次の日、畑作りの件や人口増加の件、鉱石採掘や旅人の顔見せのために術師はチュウザンへと飛んだ
メイド剣士は大工たちを連れてくるためにまた村に飛んだ
犬娘と勇者、女拳士は塩田の管理や森の中の食料探しなどを含めた探索を行う
虎獣人たちはそれぞれ与えられた仕事に着いた
犬娘が変な臭いに気付いて森の奥に入る
勇者「お、これは」
女拳士「温泉だな」
勇者「あっつい!」
女拳士「あ〜、これは埋めないと入れないな」
犬娘「川が近くにあるよ!」
勇者「モグラさんに頼んで女風呂と男風呂を作ってもらおう」
女拳士「これ観光に使えるんじゃない?」
犬娘「小屋を建てて温泉を引いて宿にしよう!」
女拳士「よっしゃ、モグラさん呼んできて」
勇者「よし、えっと、ここの座標を記憶 盆地に転送」
女拳士「勇者さん風呂好きなのかな?」
犬娘「ノリノリだね」
勇者は下水掘りに取り掛かっていたモグラたちをすぐに捕まえて転送してきた
勇者「この所ずっとお風呂に浸かれなくてすごく気持ち悪いんだ、頼むよ」
犬娘「頼むよ〜!」
モグラ親方「ち、仕方ねえ、ちゃっちゃとやるか あ、水と砂、大きめの石、玉砂利を集めてくれ」
172 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:16:43.75 ID:if/f0pXAO
女拳士「了解!」
犬娘「了解!」
勇者「よし、やるぞ!」
勇者は今までに無いくらい楽しそうに仕事に打ち込んだ
仕舞いには大工衆まで引っ張ってきて、1日で温泉を二つ作り上げてしまった
勇者「道標を立てておこう 左が男湯、右が女湯で」
女拳士「凄いな、めちゃアグレッシブだな」
勇者「だって温泉に入れるんだから!」
そう言うと勇者は着替えやタオルを用意して右に走って行った
女拳士「!?」
犬娘「お……、女の子だったの……?」
犬娘と女拳士も勇者についていった
確かに女性だった
女拳士「おお、ちょうど良い湯加減になってるな」
勇者「ん〜!」
犬娘「気持ち良いね〜」
やがて帰ってきた術師やメイド剣士も入ってきた
術師「温泉なんて素晴らしい資源じゃないですか!」
メイド剣士「そんなことより早く入りましょう、最近暑かったから気持ち悪くて」
勇者「だよね!」
術師「ん、そちらの女性はどなたですか?」
女拳士と犬娘は顔を見合わせた
そのあと歯を見せてニヤリと笑う
勇者「え、髪をおろしてるから分からないのか……?」
メイド剣士と術師はかけ湯して体を洗って湯船に浸かるまで首を傾げている
173 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:18:45.44 ID:if/f0pXAO
女拳士「くく…… まあ分からないよな」
犬娘「普通は分からないよね」
勇者「ええ、そうなのかな?」
メイド剣士が湯船に入って近付いてきた
じっと勇者の顔を見て、気付いたのか後ろにザザッとお湯を割って下がった
犬娘と女拳士はニヤニヤが止まらない
術師も同じ動作を繰り返した
術師「勇者さんって男じゃ……、無かったんですね」
メイド剣士「魔王様の話でも性別は出てきてませんよね 術師さんが勝手に勇者という男、って言ったことあるけど」
女拳士「まあこんなバカ強い女いると思わないしな」
勇者「いや、俺は持ってる剣がいい剣だから……」
術師「今まで気付かないとか、不覚ですわ」
メイド剣士「謎が解けた所でゆっくり浸かりましょう」
犬娘「ちょっとのぼせてきた」
女拳士「アタシも」
勇者「じゃあ、お二人はごゆっくり……」
お湯から出ると勇者はサラシを巻いた
術師「せっかく大きいのに勿体ないですわね」
メイド剣士「術師さんは巨乳好きですか」
術師「まず白導師さんみたいな性癖は有りませんわ」
メイド剣士「あったら何回か刺してます」
術師「ですね」
174 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:20:39.65 ID:if/f0pXAO
術師は帰ってくると次の日からの予定を立てていった
まず種を用意したので畑を用意すること、チュウザンからドワーフを連れてきて火山へ案内し、鉱石や石灰の採掘を頼むこと、石灰からセメントを作り、モルタルやコンクリートを作り、下水整備すること、
そしてカイオウ国に人魚の派遣を要請し、漁場開拓に生け簀作り、採取を頼み、術師は石使いや虎少年と錬金術研究に入ることなどを決めた
術師「これからが正念場ですわ 頑張りましょう」
犬娘「おーっ!」
皆「おーっ!」
やがて暑い夏になった
Sランク戦やオリファンの闘技祭りなどの大きなお祭りが有ったが、犬娘たちは開拓にかかりきりで、今回は参加を見送った
その間、犬娘の誕生祝いなど色々な行事を行ったが、ほとんどの日は全員が仕事、仕事で走り回った
やがて小屋も幾つか建ち、下水、上水の整備を終え、本格的に街を大きくする段階に入った
術師「報告を」
メイド剣士「先の大雨で塩田はダメになりました、それと川の氾濫で橋が流され、作業場まで水浸しになったようです」
メイド剣士「塩は雨期を見越し、高地に蓄えておいたのでチュウザン輸出分は問題有りません」
175 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:23:45.16 ID:if/f0pXAO
勇者「ハマミナトから街道整備に伴い、砦建設とそのための石材の輸出を要請されている」
勇者「こちらはドワーフさんたちが当たってくれてる」
女拳士「雨期の間には漁場もあまり良くないから、人魚たちには採取を優先してもらってる」
旅人「チュウザンやカイオウ国への人材派遣への返礼として魚の干物とか貝の干物送っといたよ〜」
石使い「石の輸出は堅調……、開発速度も問題ない、専用の長屋もできたよ……」
術師「だいたいこれくらいでしょうか、魔王様?」
犬娘「うん、じゃあ今日もみんなお仕事頑張ろう!」
皆「おーっ!」
…………
術師「やっぱり魚が穫れない上に輸出してるから、私たちが食べる分のキープが難しいですね」
メイド剣士「とりあえず湖の魚を穫ってみんな補ってるみたいです」
術師「冬から春の間は湖は禁漁期間を設けて、養殖と放流をした方が良いですかね」
術師「それと牧草地開拓に着手しましょう、人口も五十人ほどになってますし、食料の開拓は急がなくては」
メイド剣士「でも、下の畑は雨期以降全滅ですが、盆地の畑は無事ですし、雨期の前にスイカやトマトが収穫出来ましたよ!」
術師「野菜は助かりますね」
次の日、術師は勇者と犬娘、モグラ子分を連れて山に
女拳士たちは木材の伐採、加工、運搬を行うことにした
モグラ親方は井戸に木枠を組む
ーー北浜火山ーー
北浜にある火山は長い間活動していない火山である
記録では千年の間全く活動していないが、温泉や火山生成物が大量に眠っている
チュウザンの山々と比較すると低い山であるが、海底から隆起してきたと思われる
そのため化石や、石灰なども豊富だ
犬娘「綺麗な森があるよ」
術師「色々採取出来そうですわね、近いし便利そうですわ」
犬娘「下の森の方は全部開拓するの?」
術師「まさか、自然は残していきますわ」
モグラ子分「姐さ〜ん、ここいらを適当に掘れば良いんですか?」
術師「はい、土を調べますので少しで良いですよ」
勇者「俺はピンクの石を探せばいいんだな?」
術師「はい、多分山裾の辺りに多いと思われます、我が家の台所を支える貴重品ですので良く探してください」
勇者「分かった」
犬娘「私も行くよ!」
術師「魔王様、無理はいけませんよ?」
犬娘「?」
犬娘「分かった!」
165 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/22(金) 23:58:43.31 ID:CEWxAOtAO
術師はモグラ子分に数十カ所も土を掘らせた
モグラ子分「あ、姐さん、ちょっと休憩を……」
術師「構いませんよ、冷やした水も沢山有りますから」
術師「休憩が終わったらそろそろ二人と合流しましょう、治療が必要かも分かりませんから」
モグラ子分「はいな……?」
…………
勇者「ここらで良いか?」
犬娘「うん、ちょっと私と打ち合って欲しいの」
勇者「お互いの力試しか」
勇者「じゃあ、手抜きは出来ないな」
犬娘「うん」
二人は見通しのいい場所を見つけ、打ち合いを始めた
通常の戦闘と違い、勇者は抜き身でなく、犬娘も魔法を使わない状態ではあるが、全力の戦いだ
勇者「相変わらず速い……、いや、以前より更に、か」
犬娘「はあっ」
犬娘の下段払い蹴り
勇者は軽いステップでかわし、犬娘に打ち込むが、既に対象はそこにいない
勇者「うん、強くなってる」
勇者「だが俺も!」
後ろに回る犬娘の動きを読んで剣を打ち込む
犬娘はギリギリでかわしたが、少しかすった
犬娘「強いね」
犬娘「でも!」
勇者「俺は……、もっと強くなる!」
勇者の剣速が一段階速くなる
メイド剣士にも近付く速さだ
166 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:01:29.31 ID:if/f0pXAO
剣の質量、鞘に納めたままで有ることを考えれば、信じられない筋力
メイド剣士の剣をかわせるのは魔人王か犬娘くらいだ
犬娘「速い速い!」
少し楽しそうな犬娘
勇者と犬魔王は一歩も譲らないまま、時間が過ぎていく
お互いに計り知れない体力、いつ終わるとも分からない
術師たちが二人を見つけても一刻打ち合っていたので、術師は二人を止めることにした
術師「そこまで、時間切れ引き分けですわ」
犬娘「あ、術師ちゃん」
勇者「す、すまない、気づかなかった」
術師「石はありましたの?」
勇者「一応は見つけてからやりあった」
術師「まあ予想できてましたけど」
四人は術師の見立てで魔法原石を数十個採取し、お昼を食べると山を降りることにした
モグラ親方「虎の旦那相変わらずいい仕事するぜ これで井戸も完成だ!」
虎獣人「まあこれだけ手が有ればな、材木は殆ど女拳士さんが運んでくれたし」
気付けば知らない獣人が何人か手伝いに来ていた
メイド剣士「では皆さん、今から送りますので集まってください」
獣人大工「はいよ!」
メイド剣士は術師を見つけるとニッコリ親指を立てて見せ、そのまま大工たちを転送して行った
167 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:03:13.32 ID:if/f0pXAO
術師「成功したんですわ……」
犬娘「メイド剣士ちゃん、すごい」
勇者「転送か」
勇者「俺も初めて出来た時は嬉しかったな」
術師「出来るんですか?」
勇者「ああ、一応」
術師「先に言ってくれればもう少し計画が変わったんですが……」
術師「でもまあ良かった、メイドさん嬉しそうだったし」
手で胸元を押さえ、術師もなんだか嬉しそうだ
犬娘「良かったね!」
そこに、旅人らしき風体の男がやってきた
術師「あれ、あなたは!」
旅人「どうも、旅人です」
どうやら術師の顔見知りのようだ
旅人「いやあ、街づくりなんて面白そうだなあって思って、お手伝いに来ました」
術師「え、あの、大丈夫なんですか?」
犬娘「だれ?」
術師「この方は……」
旅人「旅人です」
術師「旅人さん……です」
旅人と名乗る男は身形は確かに旅人風情なのだが、姿勢が何か一般人臭くない
犬娘はすんすんと臭いを嗅いだが、確かに旅人のような臭いだ
術師「でも、とても助かりますわ」
術師「外交を頼まれていただければ私は開発に専念できますわ」
168 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:06:24.35 ID:if/f0pXAO
いったい何者だろう
見た目は無精髭の若い小柄なおじさんで、犬娘の鼻でもそれは変わらない
外交なんて出来るんだろうか?
術師「今までに決まった取引の内容を説明しておきますわ」
そう言うと術師は旅人を遠くに引っ張っていった
術師「道楽でよくここまで来られましたわね」
術師「先代ヤマナミ王様」
旅人「内緒な、内緒」
術師「あなたの顔を知ってる人は大勢いますわよ 隠しきれると思えませんが」
旅人「こんな身形だしばれないんじゃないかな〜?」
術師「退任されたのはいつでしたっけ?」
旅人「二年前」
術師「ギリギリメイドさんも知ってるかも……」
旅人「僕が任命したメイドさんはオリハルコンの剣を持った剣士の子が最期だったかな?」
術師「その子ですわ」
旅人「あちゃー」
術師「勇者さんと顔を合わせたりは……」
旅人「大丈夫、サイセイには嫌われてるから」
術師「あと女拳士さんは狼主様を知ってましたから……」
旅人「女拳士と言えば十七で一人で悪ドラゴン退治して僕が表彰した子がいるね」
術師「そんな化け物一人しか居ませんわね」
術師「やっぱりバレバレじゃないですか だいたいなんですかその無精髭!」
旅人「ガチで旅してるし、髭が無いと子供と間違えられるんだよ〜」
術師「まあ流石に王様です、とか紹介できませんけど……」
旅人「もう民間人だからそのように扱ってよ」
術師「もちろん、奴隷のように働いてもらいますわ」
旅人「きつい」
術師「タダでご飯は食べられませんわよ」
旅人「いや分かってるよ〜」
ーーヤマナミーー
ヤマナミ王「そう言えばオヤジどうしてるかな〜?」
メイド長「さあ、旅の空で野垂れ死んでるんじゃないかね?」
ヤマナミ王「お姉ちゃん親父には厳しいね」
メイド長「あの怠け者には苦労したからね〜」
ヤマナミ王「どっかで誰かに迷惑かけてなきゃ良いけど」
ーー北浜ーー
女拳士「あんたは確か……」
旅人「旅人です」
メイド剣士「何やってるんですか先代……」
旅人「旅人です」
勇者「俺も記録で見たことあるんだけど……」
旅人「旅人です」
術師「魔王様以外全員にバレバレじゃないですか!」
旅人「旅人の方がみんなも都合いいでしょ!」
女拳士「そりゃまあ」
メイド剣士「確かに」
勇者「そうだな」
170 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:09:34.99 ID:if/f0pXAO
犬娘「私だけ分からないのか……、う〜ん、ヤマナミの王様に似てるけど」
メイド剣士(親子だしなあ)
術師(隠してもダメでしょ、これ)
旅人(まあ普通の人には分からないはず……はず……)
術師(民間人との週に一度の接見は)
旅人(やってた…… ダメな気がしてきた)
術師(こうなったらシラを切り通して下さい 皆さんも)
女拳士(そうだね、多分無駄だけど)
メイド剣士(奴隷みたいに働かせていればバレないのでは)
旅人(だるい)
勇者(そんなのでよく旅が出来たな)
術師「と、とりあえず今日は旅人さん歓迎会しましょうか」
虎獣人「あれ、あんた」
旅人「旅人です」
術師「隠れ住んでた獣人にまでバレてるじゃないですか!」
虎獣人「隠すんだな、分かった」
虎獣人「昔出稼ぎに行ってた時に土地管理の件で国と問題になってな……」
旅人「あ〜、あの時の」
術師「じゃあ夕ご飯の準備をしましょうか 明日からの予定も有りますし」
術師はグダグダな旅人にため息をついた
しかし、街づくりにはこれ以上無い戦力だろう
働きさえすれば
171 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:12:10.02 ID:if/f0pXAO
次の日、畑作りの件や人口増加の件、鉱石採掘や旅人の顔見せのために術師はチュウザンへと飛んだ
メイド剣士は大工たちを連れてくるためにまた村に飛んだ
犬娘と勇者、女拳士は塩田の管理や森の中の食料探しなどを含めた探索を行う
虎獣人たちはそれぞれ与えられた仕事に着いた
犬娘が変な臭いに気付いて森の奥に入る
勇者「お、これは」
女拳士「温泉だな」
勇者「あっつい!」
女拳士「あ〜、これは埋めないと入れないな」
犬娘「川が近くにあるよ!」
勇者「モグラさんに頼んで女風呂と男風呂を作ってもらおう」
女拳士「これ観光に使えるんじゃない?」
犬娘「小屋を建てて温泉を引いて宿にしよう!」
女拳士「よっしゃ、モグラさん呼んできて」
勇者「よし、えっと、ここの座標を記憶 盆地に転送」
女拳士「勇者さん風呂好きなのかな?」
犬娘「ノリノリだね」
勇者は下水掘りに取り掛かっていたモグラたちをすぐに捕まえて転送してきた
勇者「この所ずっとお風呂に浸かれなくてすごく気持ち悪いんだ、頼むよ」
犬娘「頼むよ〜!」
モグラ親方「ち、仕方ねえ、ちゃっちゃとやるか あ、水と砂、大きめの石、玉砂利を集めてくれ」
172 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:16:43.75 ID:if/f0pXAO
女拳士「了解!」
犬娘「了解!」
勇者「よし、やるぞ!」
勇者は今までに無いくらい楽しそうに仕事に打ち込んだ
仕舞いには大工衆まで引っ張ってきて、1日で温泉を二つ作り上げてしまった
勇者「道標を立てておこう 左が男湯、右が女湯で」
女拳士「凄いな、めちゃアグレッシブだな」
勇者「だって温泉に入れるんだから!」
そう言うと勇者は着替えやタオルを用意して右に走って行った
女拳士「!?」
犬娘「お……、女の子だったの……?」
犬娘と女拳士も勇者についていった
確かに女性だった
女拳士「おお、ちょうど良い湯加減になってるな」
勇者「ん〜!」
犬娘「気持ち良いね〜」
やがて帰ってきた術師やメイド剣士も入ってきた
術師「温泉なんて素晴らしい資源じゃないですか!」
メイド剣士「そんなことより早く入りましょう、最近暑かったから気持ち悪くて」
勇者「だよね!」
術師「ん、そちらの女性はどなたですか?」
女拳士と犬娘は顔を見合わせた
そのあと歯を見せてニヤリと笑う
勇者「え、髪をおろしてるから分からないのか……?」
メイド剣士と術師はかけ湯して体を洗って湯船に浸かるまで首を傾げている
173 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:18:45.44 ID:if/f0pXAO
女拳士「くく…… まあ分からないよな」
犬娘「普通は分からないよね」
勇者「ええ、そうなのかな?」
メイド剣士が湯船に入って近付いてきた
じっと勇者の顔を見て、気付いたのか後ろにザザッとお湯を割って下がった
犬娘と女拳士はニヤニヤが止まらない
術師も同じ動作を繰り返した
術師「勇者さんって男じゃ……、無かったんですね」
メイド剣士「魔王様の話でも性別は出てきてませんよね 術師さんが勝手に勇者という男、って言ったことあるけど」
女拳士「まあこんなバカ強い女いると思わないしな」
勇者「いや、俺は持ってる剣がいい剣だから……」
術師「今まで気付かないとか、不覚ですわ」
メイド剣士「謎が解けた所でゆっくり浸かりましょう」
犬娘「ちょっとのぼせてきた」
女拳士「アタシも」
勇者「じゃあ、お二人はごゆっくり……」
お湯から出ると勇者はサラシを巻いた
術師「せっかく大きいのに勿体ないですわね」
メイド剣士「術師さんは巨乳好きですか」
術師「まず白導師さんみたいな性癖は有りませんわ」
メイド剣士「あったら何回か刺してます」
術師「ですね」
174 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:20:39.65 ID:if/f0pXAO
術師は帰ってくると次の日からの予定を立てていった
まず種を用意したので畑を用意すること、チュウザンからドワーフを連れてきて火山へ案内し、鉱石や石灰の採掘を頼むこと、石灰からセメントを作り、モルタルやコンクリートを作り、下水整備すること、
そしてカイオウ国に人魚の派遣を要請し、漁場開拓に生け簀作り、採取を頼み、術師は石使いや虎少年と錬金術研究に入ることなどを決めた
術師「これからが正念場ですわ 頑張りましょう」
犬娘「おーっ!」
皆「おーっ!」
やがて暑い夏になった
Sランク戦やオリファンの闘技祭りなどの大きなお祭りが有ったが、犬娘たちは開拓にかかりきりで、今回は参加を見送った
その間、犬娘の誕生祝いなど色々な行事を行ったが、ほとんどの日は全員が仕事、仕事で走り回った
やがて小屋も幾つか建ち、下水、上水の整備を終え、本格的に街を大きくする段階に入った
術師「報告を」
メイド剣士「先の大雨で塩田はダメになりました、それと川の氾濫で橋が流され、作業場まで水浸しになったようです」
メイド剣士「塩は雨期を見越し、高地に蓄えておいたのでチュウザン輸出分は問題有りません」
175 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:23:45.16 ID:if/f0pXAO
勇者「ハマミナトから街道整備に伴い、砦建設とそのための石材の輸出を要請されている」
勇者「こちらはドワーフさんたちが当たってくれてる」
女拳士「雨期の間には漁場もあまり良くないから、人魚たちには採取を優先してもらってる」
旅人「チュウザンやカイオウ国への人材派遣への返礼として魚の干物とか貝の干物送っといたよ〜」
石使い「石の輸出は堅調……、開発速度も問題ない、専用の長屋もできたよ……」
術師「だいたいこれくらいでしょうか、魔王様?」
犬娘「うん、じゃあ今日もみんなお仕事頑張ろう!」
皆「おーっ!」
…………
術師「やっぱり魚が穫れない上に輸出してるから、私たちが食べる分のキープが難しいですね」
メイド剣士「とりあえず湖の魚を穫ってみんな補ってるみたいです」
術師「冬から春の間は湖は禁漁期間を設けて、養殖と放流をした方が良いですかね」
術師「それと牧草地開拓に着手しましょう、人口も五十人ほどになってますし、食料の開拓は急がなくては」
メイド剣士「でも、下の畑は雨期以降全滅ですが、盆地の畑は無事ですし、雨期の前にスイカやトマトが収穫出来ましたよ!」
術師「野菜は助かりますね」
犬娘「魔王になるっ!」
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