男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
Part15
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:18:12.63 ID:7EE/EuRmo
警察官「それなら、一番最初の事件の時、部屋の中にお前は密室を作ったよな。あれはどうやって作ったんだ?」
警察官「まさか、超能力を使って鍵を内側からかけたとか言い出さないよな?」
男「いえ、そんな事は出来ませんので」
警察官「なら、何かトリックを使ったのか?」
男「それも違います。推理小説とか、俺はほとんど読まないので」
男「密室を作る難しいトリックだとか、そんなの思い付きもしません」
男「あれも、物凄く単純な方法です」
警察官「どんな方法だ?」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:18:53.32 ID:7EE/EuRmo
男「まず、あいつが仕事に行ってる間に、ピッキングでドアを開けて」
男「部屋の物を動かさないよう注意しながら、合鍵を探しました」
警察官「合鍵?」
男「はい。合鍵ぐらい必ずあると思っていたので」
男「だけど、それはいくら家の中を探しても見つかりませんでした」
警察官「まあ、家の中にあったら、合鍵の意味がないからな……」
男「はい。でも、それはある程度、予想がついていたので」
男「今度は、部屋の冷蔵庫を開けました」
警察官「冷蔵庫??」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:20:03.82 ID:7EE/EuRmo
警察官「冷蔵庫が合鍵と、どう関係してくるんだ?」
警察官「その中に隠してあったとか、そんなオチじゃないだろうな」
男「いえ。違います」
男「合鍵がどこにあるかを普通考えたなら」
男「誰かに預けているか、家のすぐ近くに隠してあるか、本鍵とは別にして本人が持っているか、のどれかだろうという事になりますよね」
警察官「ああ、大体はそうなるだろうな」
男「ただ、隠せる様な場所はドア付近になかったですし、郵便受けとかにもなかったので」
男「誰かに預けてるか、本人が持ち歩いているか、のどちらかだろうと考えました」
男「それで、誰かに預けてるならお手上げですけど、本人が持っているなら、それを手に入れる事は出来ると思って」
男「予め持ってきていた盗聴器を仕掛けた後で」
男「冷蔵庫の中を確かめたら、そこに飲みかけの、お茶の二リットルペットボトルがあったので」
男「睡眠薬をその中に入れました」
警察官「睡眠薬!?」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:21:17.94 ID:7EE/EuRmo
男「はい。母が不眠症だったので、家には睡眠薬がありました。それを盗んできてたんです」
警察官「…………」
男「それで、部屋を出た後に、そのお茶と全く同じのをコンビニで買ってきて」
男「その後、すぐ近くの路上に車を停めて、盗聴器を聞きながらあいつが帰ってくるのを待ちました」
警察官「…………」
男「それで、夕方、あいつが家に帰ってきて」
男「家に鍵がかかってなかった事には、あいつはすぐに気付きましたけど」
男「中も荒らされていないし、貴重品とかも一切盗られてないので」
男「鍵をかけ忘れたと思ったのか、特に何も疑問に思わず」
男「冷蔵庫を開けて、思惑通り、睡眠薬入りの、ペットボトルのお茶を飲みました」
男「それで、当然ですが、しばらくした後、あいつは深い眠りにつきました」
警察官「…………」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:22:31.70 ID:7EE/EuRmo
男「その後、人目につかない深夜になってから」
男「もう一度、ピッキングで部屋の鍵を開けて」
男「睡眠薬入りのお茶を放置しておくとまずいので、コンビニで買ってきた同じペットボトルのお茶を、冷蔵庫の中に入っているのと同じ分量にして、すり替えてから」
男「あいつの持ち物を調べてみたら、運良く鞄の隠しポケットみたいなところから、合鍵が見つかったので」
男「それを今度は、俺の部屋の鍵とすり替えて」
男「そして、俺はあいつの部屋の合鍵を持ったまま外に出て、それで鍵を閉めました」
男「その鍵、俺の部屋の鍵とは、デザインとか形状とかまるで違ったんですけど、でも、合鍵なんて、普段、使わないし毎日確かめたりとか普通しませんから」
男「あいつは、その事に全く気付きませんでした」
警察官「…………」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:24:25.35 ID:7EE/EuRmo
男「それで、俺は次の日に車を使って、隣の県まで行って」
男「そこでホームレスを探して、お金を渡して交渉した後で」
男「身なりとかを整えさせてから、鍵屋に行ってもらって、合鍵を作らせました」
警察官「……それでか。道理で合鍵を作ったやつが未だに見つからない訳だ。捜査を混乱させやがって……」
男「その後は、もう鞄の中に合鍵が入っているとわかっていましたし」
男「盗聴器から、あいつの家での行動も丸わかりだったので」
男「夜、あいつが近くのコンビニまで行った隙に、作った合鍵を使って中に入って」
男「元の合鍵を置いてあった鞄の中に戻して、代わりにすり替えておいた自分の鍵と取り替えた後に」
男「すぐに部屋を出て、作った合鍵で普通に鍵を閉めました」
警察官「…………」
男「これで、鍵は全部元通りになって、更に俺の手元にあいつの家の鍵がもう一本ある状態になったので」
男「あとは、普通に鍵を開けて中に入って、『呪い』とドアの内側にびっしりと書いた後で」
男「盗聴器を取り外して、普通に鍵を閉めて出ていっただけです」
男「別にトリックでも何でもありません」
警察官「つまり、ピッキングの跡は、あの事件の前からつけられてたって事か……」
男「はい。ピッキングの跡が見つかったのは誤算でした」
男「見つからなければ、祟りや幽霊の仕業みたいに出来ると思ったんですが、駄目でしたね」
警察官「…………」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:25:47.45 ID:7EE/EuRmo
警察官「……わかった。部屋のドアの謎はこれでもう解けた」
警察官「あとは、動機だけだが……」
男「…………」
警察官「今日のところは、ここらで終わりにする。また明日だな」
男「そうですか」
警察官「ああ、それとだな」
男「はい」
警察官「捜査とは関係なく、一つ、お前に聞いておきたい事がある」
男「……何ですか?」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:26:24.93 ID:7EE/EuRmo
警察官「正直なところを言えば、俺は弁護士でもなければ検事でもないから」
警察官「実際、お前がどんな返答しようが、直接的な関わりはないんだがな」
男「はい」
警察官「お前……今、反省とか後悔とかしてるか?」
男「…………」
男「反省はしてないですね」
男「あいつらを殺した事を、微塵も悪いとは思ってません」
男「ただ、後悔はしています」
警察官「……そうか」
男「はい。殺さなきゃいけないやつは他にもいたのに、その前に捕まってしまったので」
警察官「…………」
男「あいつを殺す時に、もっと慎重になるべきだったと後悔しています。軽率過ぎたなと」
男「それだけが本当に残念です」
警察官「……そうか」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:27:02.97 ID:7EE/EuRmo
解・三話
【呪われた部屋】
終了
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:27:29.65 ID:7EE/EuRmo
次回、解・最終話……
全ての解が出揃うまで、あと一話……
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:32:39.83 ID:DCkwSacp0
乙
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:33:27.49 ID:WppNcyrDO
乙
男か女友が犯人って思ってたってかその位しか居なかったわけだが、やっぱ男だったか
動機はミキかね?
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:42:53.92 ID:HFCsbPW1o
解・八話
【殺害予告メール】
解・最終話
【パラレルワールド】
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:43:24.27 ID:HFCsbPW1o
医者「……久しぶりというのは変だけど、久しぶり」
男「どうも」
男「まさか、先生が来るとは思いませんでした」
男「もしかして、また、検査とかじゃないですよね?」
医者「いや、今日は何もないよ」
医者「単に面会に来ただけなんだ」
医者「君が控訴を望まなかったって事を、弁護士の先生から聞いたんでね」
医者「死刑が確定してしまうけど、それでいいのかと思って」
男「構いませんよ」
男「弁護士の先生にも言いましたけど」
男「初めから死ぬ気でした。もう、俺は生きていたくないので」
医者「……そうか」
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:43:57.92 ID:HFCsbPW1o
男「それよりも、先生」
医者「……何かな?」
男「一つだけ、どうしても気になる事があるんですけど」
医者「うん」
男「俺は何の為に、あいつら二人を殺したんでしたっけ?」
医者「…………」
男「あいつらが生きてる価値がない人間だってのは、覚えてます。でも、どうして俺はそう思ったんでしょう」
男「それが不思議でたまりません」
医者「……そうですか」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:44:26.26 ID:HFCsbPW1o
医者「まず、訂正しておきたい事があるんですが」
男「?」
医者「あなたが殺したのは、二人ではなく、四人ですよ」
男「……いえ、二人です」
男「俺が殺したのは、カコとオサムだけです」
男「先生、勘違いしてませんか?」
医者「…………」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:00.37 ID:HFCsbPW1o
医者「あとですね」
医者「あなたはミキさんという女性を覚えていますか?」
男「ミキ……? いえ、知りません」
男「俺の知り合いに、そんな名前のやつはいませんけど……」
医者「そうですか……」
医者「それなら、教えてあげますけど」
医者「あなたは、その子の代わりに復讐をすると考えて」
医者「四人を殺害したんです」
男「……まさか」
男「有り得ませんよ、そんな事」
男「見た事も聞いた事もない人間の為に、どうして俺が復讐をしないといけないんですか」
男「それに、さっきも言いましたけど、俺が殺したのは二人だけです。四人じゃありません」
男「先生、嘘ではなく本当の事を教えてくれませんか」
男「それがどんな理由だろうと、俺はもうどうでもいいので」
医者「…………」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:30.79 ID:HFCsbPW1o
医者「……申し訳ありませんが」
医者「私が言った事は、事実なんです」
医者「全て本当の事です」
医者「あなたはそれを忘れているんですよ……」
男「いえ、それはないです」
男「確かに、どんな理由であいつらを殺したのかは、忘れてしまいましたけど」
男「見ず知らずの人間の為に、殺人をする訳ないってのは確かですよ」
男「先生、俺を騙そうとしないで下さい」
男「本当の理由は何だったんですか?」
医者「…………」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:59.32 ID:HFCsbPW1o
医者「すみませんが……」
医者「今日のところは、これで終わりにしましょうか」
医者「その質問に答えるのは、あなたの調子が良い時の方がいいでしょう」
男「いえ、先生! 逃げないで下さい!」
男「教えて下さい! 本当の事を!」
医者「すみません……。また今度来ますので」
医者「答えについては、その時にして下さい」
医者「あなたがもう少し落ち着いている時に」
男「…………」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:46:55.53 ID:HFCsbPW1o
男「……わかりました」
男「それなら、また今度でいいです」
男「次に、確実に話してくれるというならですけど」
医者「ええ、そうしますよ」
医者「それでは、私はこれで」
男「いえ、あと少しだけ待ってもらえませんか、先生」
医者「?」
男「実は、この前、弁護士の先生から、不思議な話を聞いたので」
男「それを聞いてもらえませんか」
男「そして、伝えて下さい」
男「……誰だか忘れましたけど、不思議な話を聞きたがってるやつが病院にいたはずなので」
男「そいつに。確か、先生の知り合いでしたよね」
医者「……ええ」
医者「わかりました。伝えておきます」
医者「どんな話ですか?」
男「パラレルワールドに迷いこんだっていう話です」
医者「パラレルワールド?」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:47:54.23 ID:HFCsbPW1o
刑事「お疲れ様です、先生」
医者「ああ、刑事さん。どうも」
刑事「先程は大変だったみたいで」
医者「また、聞いていたんですか?」
刑事「ええ、まあね……。私も気になっていたものですから。失礼しました」
医者「……いえ」
刑事「しかし、記憶障害というのは何とも……。辛い病気ですね」
刑事「好きだった女の事まで忘れてしまうなんて……」
医者「……ええ」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:48:35.31 ID:HFCsbPW1o
医者「彼の症状の進行度はかなり早く」
医者「この二年ほどで長期記憶なども忘れていっています」
医者「長期記憶までいくと、家族や身近な人まで忘れるケースも珍しくありませんから……」
医者「以前、アルツハイマーにかかった患者を見た事がありますが」
医者「その人は、病院まで付き添ってきた奥さんに対して『誰だ、お前は! いつからそこにいた!』と叫んでましたよ」
医者「……大事な記憶を無くすというのは、ある意味、死よりも辛い事でしょうね」
刑事「…………」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:49:22.01 ID:HFCsbPW1o
刑事「かもしれませんね……」
医者「はい……」
刑事「……ああ、そういえば、先生」
医者「何ですか?」
刑事「先程、あいつが話していた不思議な話があるじゃないですか」
医者「ああ、パラレルワールドに行ったという話ですね」
刑事「ええ、あまり詳しく聞いていた訳じゃないんですが、要約するとこういう事ですよね?」
刑事「ある日、学校に行こうとしたら、その途中で何故か道が全然別のものに変わってしまっていて」
刑事「それで、迷子になってしまい」
刑事「仕方なく、途中にあったコンビニに入って店員に道を聞いて」
刑事「それで、教えられた道を帰ろうとして、コンビニの外に出たら」
刑事「また、いつのまにかいつもの道に戻っていた……っていう、そんな話ですよね?」
医者「ええ、それで合っています」
刑事「これも、やっぱり記憶障害とか、そんな理由なんですかね?」
医者「…………」
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:50:18.11 ID:HFCsbPW1o
医者「いえ、恐らくそうではなく」
医者「これは、別の理由だと思います」
刑事「どんな理由です?」
医者「刑事さんは、デジャヴュというのを御存知ですか?」
刑事「ええ、知っています。一度も見た事も聞いた事もないのに、何故かその事を知っているというやつですよね」
刑事「だから、前世の記憶だとか、そんな事を言われていたと思いましたけど」
医者「はい。ですが、デジャヴュも既に科学的に説明がついていまして」
医者「あれは、本人が忘れているけど、脳が覚えているという事から起こります」
医者「脳というのは非常に優秀で、一度見たものは全部記憶として保存しますので」
医者「普段、我々が使う『忘れる』というのは、その記憶を『どこにしまったか』を忘れているという状態ですね」
医者「なので、『どこにしまったか』を完全に忘れているのに、脳の記憶としては残っているものですから」
医者「一度も見た事や聞いた事がないものだと本人はそう思い込むのですが、なのに、それを知っているという事態が出来上がります」
医者「これがデジャヴュの正体ですね。つまりは、勘違いなんです」
刑事「なるほど……」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:51:06.85 ID:HFCsbPW1o
医者「そして、今回のパラレルワールドの話はその逆で」
医者「何度も見た事があるものを、脳が一度も見た事がないと判断してしまうケースでしょう」
医者「ジャメヴュと言うんですがね」
刑事「ジャメヴュ?」
医者「はい。日本語にすると未視感と言います」
医者「見慣れているはずの光景が、一度も見た事がないように本人には映るんです」
刑事「…………」
医者「何かショックな出来事があったりとかすると、こういう事が起こりやすくなります」
医者「つまるところ、デジャヴュにしろジャメヴュにしろ、脳が作り出した錯覚や勘違いなんですよ」
刑事「…………」
警察官「それなら、一番最初の事件の時、部屋の中にお前は密室を作ったよな。あれはどうやって作ったんだ?」
警察官「まさか、超能力を使って鍵を内側からかけたとか言い出さないよな?」
男「いえ、そんな事は出来ませんので」
警察官「なら、何かトリックを使ったのか?」
男「それも違います。推理小説とか、俺はほとんど読まないので」
男「密室を作る難しいトリックだとか、そんなの思い付きもしません」
男「あれも、物凄く単純な方法です」
警察官「どんな方法だ?」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:18:53.32 ID:7EE/EuRmo
男「まず、あいつが仕事に行ってる間に、ピッキングでドアを開けて」
男「部屋の物を動かさないよう注意しながら、合鍵を探しました」
警察官「合鍵?」
男「はい。合鍵ぐらい必ずあると思っていたので」
男「だけど、それはいくら家の中を探しても見つかりませんでした」
警察官「まあ、家の中にあったら、合鍵の意味がないからな……」
男「はい。でも、それはある程度、予想がついていたので」
男「今度は、部屋の冷蔵庫を開けました」
警察官「冷蔵庫??」
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:20:03.82 ID:7EE/EuRmo
警察官「冷蔵庫が合鍵と、どう関係してくるんだ?」
警察官「その中に隠してあったとか、そんなオチじゃないだろうな」
男「いえ。違います」
男「合鍵がどこにあるかを普通考えたなら」
男「誰かに預けているか、家のすぐ近くに隠してあるか、本鍵とは別にして本人が持っているか、のどれかだろうという事になりますよね」
警察官「ああ、大体はそうなるだろうな」
男「ただ、隠せる様な場所はドア付近になかったですし、郵便受けとかにもなかったので」
男「誰かに預けてるか、本人が持ち歩いているか、のどちらかだろうと考えました」
男「それで、誰かに預けてるならお手上げですけど、本人が持っているなら、それを手に入れる事は出来ると思って」
男「予め持ってきていた盗聴器を仕掛けた後で」
男「冷蔵庫の中を確かめたら、そこに飲みかけの、お茶の二リットルペットボトルがあったので」
男「睡眠薬をその中に入れました」
警察官「睡眠薬!?」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:21:17.94 ID:7EE/EuRmo
男「はい。母が不眠症だったので、家には睡眠薬がありました。それを盗んできてたんです」
警察官「…………」
男「それで、部屋を出た後に、そのお茶と全く同じのをコンビニで買ってきて」
男「その後、すぐ近くの路上に車を停めて、盗聴器を聞きながらあいつが帰ってくるのを待ちました」
警察官「…………」
男「それで、夕方、あいつが家に帰ってきて」
男「家に鍵がかかってなかった事には、あいつはすぐに気付きましたけど」
男「中も荒らされていないし、貴重品とかも一切盗られてないので」
男「鍵をかけ忘れたと思ったのか、特に何も疑問に思わず」
男「冷蔵庫を開けて、思惑通り、睡眠薬入りの、ペットボトルのお茶を飲みました」
男「それで、当然ですが、しばらくした後、あいつは深い眠りにつきました」
警察官「…………」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:22:31.70 ID:7EE/EuRmo
男「その後、人目につかない深夜になってから」
男「もう一度、ピッキングで部屋の鍵を開けて」
男「睡眠薬入りのお茶を放置しておくとまずいので、コンビニで買ってきた同じペットボトルのお茶を、冷蔵庫の中に入っているのと同じ分量にして、すり替えてから」
男「あいつの持ち物を調べてみたら、運良く鞄の隠しポケットみたいなところから、合鍵が見つかったので」
男「それを今度は、俺の部屋の鍵とすり替えて」
男「そして、俺はあいつの部屋の合鍵を持ったまま外に出て、それで鍵を閉めました」
男「その鍵、俺の部屋の鍵とは、デザインとか形状とかまるで違ったんですけど、でも、合鍵なんて、普段、使わないし毎日確かめたりとか普通しませんから」
男「あいつは、その事に全く気付きませんでした」
警察官「…………」
男「それで、俺は次の日に車を使って、隣の県まで行って」
男「そこでホームレスを探して、お金を渡して交渉した後で」
男「身なりとかを整えさせてから、鍵屋に行ってもらって、合鍵を作らせました」
警察官「……それでか。道理で合鍵を作ったやつが未だに見つからない訳だ。捜査を混乱させやがって……」
男「その後は、もう鞄の中に合鍵が入っているとわかっていましたし」
男「盗聴器から、あいつの家での行動も丸わかりだったので」
男「夜、あいつが近くのコンビニまで行った隙に、作った合鍵を使って中に入って」
男「元の合鍵を置いてあった鞄の中に戻して、代わりにすり替えておいた自分の鍵と取り替えた後に」
男「すぐに部屋を出て、作った合鍵で普通に鍵を閉めました」
警察官「…………」
男「これで、鍵は全部元通りになって、更に俺の手元にあいつの家の鍵がもう一本ある状態になったので」
男「あとは、普通に鍵を開けて中に入って、『呪い』とドアの内側にびっしりと書いた後で」
男「盗聴器を取り外して、普通に鍵を閉めて出ていっただけです」
男「別にトリックでも何でもありません」
警察官「つまり、ピッキングの跡は、あの事件の前からつけられてたって事か……」
男「はい。ピッキングの跡が見つかったのは誤算でした」
男「見つからなければ、祟りや幽霊の仕業みたいに出来ると思ったんですが、駄目でしたね」
警察官「…………」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:25:47.45 ID:7EE/EuRmo
警察官「……わかった。部屋のドアの謎はこれでもう解けた」
警察官「あとは、動機だけだが……」
男「…………」
警察官「今日のところは、ここらで終わりにする。また明日だな」
男「そうですか」
警察官「ああ、それとだな」
男「はい」
警察官「捜査とは関係なく、一つ、お前に聞いておきたい事がある」
男「……何ですか?」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:26:24.93 ID:7EE/EuRmo
警察官「正直なところを言えば、俺は弁護士でもなければ検事でもないから」
警察官「実際、お前がどんな返答しようが、直接的な関わりはないんだがな」
男「はい」
警察官「お前……今、反省とか後悔とかしてるか?」
男「…………」
男「反省はしてないですね」
男「あいつらを殺した事を、微塵も悪いとは思ってません」
男「ただ、後悔はしています」
警察官「……そうか」
男「はい。殺さなきゃいけないやつは他にもいたのに、その前に捕まってしまったので」
警察官「…………」
男「あいつを殺す時に、もっと慎重になるべきだったと後悔しています。軽率過ぎたなと」
男「それだけが本当に残念です」
警察官「……そうか」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:27:02.97 ID:7EE/EuRmo
解・三話
【呪われた部屋】
終了
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:27:29.65 ID:7EE/EuRmo
次回、解・最終話……
全ての解が出揃うまで、あと一話……
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:32:39.83 ID:DCkwSacp0
乙
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/14(日) 14:33:27.49 ID:WppNcyrDO
乙
男か女友が犯人って思ってたってかその位しか居なかったわけだが、やっぱ男だったか
動機はミキかね?
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:42:53.92 ID:HFCsbPW1o
解・八話
【殺害予告メール】
解・最終話
【パラレルワールド】
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:43:24.27 ID:HFCsbPW1o
医者「……久しぶりというのは変だけど、久しぶり」
男「どうも」
男「まさか、先生が来るとは思いませんでした」
男「もしかして、また、検査とかじゃないですよね?」
医者「いや、今日は何もないよ」
医者「単に面会に来ただけなんだ」
医者「君が控訴を望まなかったって事を、弁護士の先生から聞いたんでね」
医者「死刑が確定してしまうけど、それでいいのかと思って」
男「構いませんよ」
男「弁護士の先生にも言いましたけど」
男「初めから死ぬ気でした。もう、俺は生きていたくないので」
医者「……そうか」
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:43:57.92 ID:HFCsbPW1o
男「それよりも、先生」
医者「……何かな?」
男「一つだけ、どうしても気になる事があるんですけど」
医者「うん」
男「俺は何の為に、あいつら二人を殺したんでしたっけ?」
医者「…………」
男「あいつらが生きてる価値がない人間だってのは、覚えてます。でも、どうして俺はそう思ったんでしょう」
男「それが不思議でたまりません」
医者「……そうですか」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:44:26.26 ID:HFCsbPW1o
医者「まず、訂正しておきたい事があるんですが」
男「?」
医者「あなたが殺したのは、二人ではなく、四人ですよ」
男「……いえ、二人です」
男「俺が殺したのは、カコとオサムだけです」
男「先生、勘違いしてませんか?」
医者「…………」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:00.37 ID:HFCsbPW1o
医者「あとですね」
医者「あなたはミキさんという女性を覚えていますか?」
男「ミキ……? いえ、知りません」
男「俺の知り合いに、そんな名前のやつはいませんけど……」
医者「そうですか……」
医者「それなら、教えてあげますけど」
医者「あなたは、その子の代わりに復讐をすると考えて」
医者「四人を殺害したんです」
男「……まさか」
男「有り得ませんよ、そんな事」
男「見た事も聞いた事もない人間の為に、どうして俺が復讐をしないといけないんですか」
男「それに、さっきも言いましたけど、俺が殺したのは二人だけです。四人じゃありません」
男「先生、嘘ではなく本当の事を教えてくれませんか」
男「それがどんな理由だろうと、俺はもうどうでもいいので」
医者「…………」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:30.79 ID:HFCsbPW1o
医者「……申し訳ありませんが」
医者「私が言った事は、事実なんです」
医者「全て本当の事です」
医者「あなたはそれを忘れているんですよ……」
男「いえ、それはないです」
男「確かに、どんな理由であいつらを殺したのかは、忘れてしまいましたけど」
男「見ず知らずの人間の為に、殺人をする訳ないってのは確かですよ」
男「先生、俺を騙そうとしないで下さい」
男「本当の理由は何だったんですか?」
医者「…………」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:45:59.32 ID:HFCsbPW1o
医者「すみませんが……」
医者「今日のところは、これで終わりにしましょうか」
医者「その質問に答えるのは、あなたの調子が良い時の方がいいでしょう」
男「いえ、先生! 逃げないで下さい!」
男「教えて下さい! 本当の事を!」
医者「すみません……。また今度来ますので」
医者「答えについては、その時にして下さい」
医者「あなたがもう少し落ち着いている時に」
男「…………」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:46:55.53 ID:HFCsbPW1o
男「……わかりました」
男「それなら、また今度でいいです」
男「次に、確実に話してくれるというならですけど」
医者「ええ、そうしますよ」
医者「それでは、私はこれで」
男「いえ、あと少しだけ待ってもらえませんか、先生」
医者「?」
男「実は、この前、弁護士の先生から、不思議な話を聞いたので」
男「それを聞いてもらえませんか」
男「そして、伝えて下さい」
男「……誰だか忘れましたけど、不思議な話を聞きたがってるやつが病院にいたはずなので」
男「そいつに。確か、先生の知り合いでしたよね」
医者「……ええ」
医者「わかりました。伝えておきます」
医者「どんな話ですか?」
男「パラレルワールドに迷いこんだっていう話です」
医者「パラレルワールド?」
刑事「お疲れ様です、先生」
医者「ああ、刑事さん。どうも」
刑事「先程は大変だったみたいで」
医者「また、聞いていたんですか?」
刑事「ええ、まあね……。私も気になっていたものですから。失礼しました」
医者「……いえ」
刑事「しかし、記憶障害というのは何とも……。辛い病気ですね」
刑事「好きだった女の事まで忘れてしまうなんて……」
医者「……ええ」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:48:35.31 ID:HFCsbPW1o
医者「彼の症状の進行度はかなり早く」
医者「この二年ほどで長期記憶なども忘れていっています」
医者「長期記憶までいくと、家族や身近な人まで忘れるケースも珍しくありませんから……」
医者「以前、アルツハイマーにかかった患者を見た事がありますが」
医者「その人は、病院まで付き添ってきた奥さんに対して『誰だ、お前は! いつからそこにいた!』と叫んでましたよ」
医者「……大事な記憶を無くすというのは、ある意味、死よりも辛い事でしょうね」
刑事「…………」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:49:22.01 ID:HFCsbPW1o
刑事「かもしれませんね……」
医者「はい……」
刑事「……ああ、そういえば、先生」
医者「何ですか?」
刑事「先程、あいつが話していた不思議な話があるじゃないですか」
医者「ああ、パラレルワールドに行ったという話ですね」
刑事「ええ、あまり詳しく聞いていた訳じゃないんですが、要約するとこういう事ですよね?」
刑事「ある日、学校に行こうとしたら、その途中で何故か道が全然別のものに変わってしまっていて」
刑事「それで、迷子になってしまい」
刑事「仕方なく、途中にあったコンビニに入って店員に道を聞いて」
刑事「それで、教えられた道を帰ろうとして、コンビニの外に出たら」
刑事「また、いつのまにかいつもの道に戻っていた……っていう、そんな話ですよね?」
医者「ええ、それで合っています」
刑事「これも、やっぱり記憶障害とか、そんな理由なんですかね?」
医者「…………」
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:50:18.11 ID:HFCsbPW1o
医者「いえ、恐らくそうではなく」
医者「これは、別の理由だと思います」
刑事「どんな理由です?」
医者「刑事さんは、デジャヴュというのを御存知ですか?」
刑事「ええ、知っています。一度も見た事も聞いた事もないのに、何故かその事を知っているというやつですよね」
刑事「だから、前世の記憶だとか、そんな事を言われていたと思いましたけど」
医者「はい。ですが、デジャヴュも既に科学的に説明がついていまして」
医者「あれは、本人が忘れているけど、脳が覚えているという事から起こります」
医者「脳というのは非常に優秀で、一度見たものは全部記憶として保存しますので」
医者「普段、我々が使う『忘れる』というのは、その記憶を『どこにしまったか』を忘れているという状態ですね」
医者「なので、『どこにしまったか』を完全に忘れているのに、脳の記憶としては残っているものですから」
医者「一度も見た事や聞いた事がないものだと本人はそう思い込むのですが、なのに、それを知っているという事態が出来上がります」
医者「これがデジャヴュの正体ですね。つまりは、勘違いなんです」
刑事「なるほど……」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/16(火) 16:51:06.85 ID:HFCsbPW1o
医者「そして、今回のパラレルワールドの話はその逆で」
医者「何度も見た事があるものを、脳が一度も見た事がないと判断してしまうケースでしょう」
医者「ジャメヴュと言うんですがね」
刑事「ジャメヴュ?」
医者「はい。日本語にすると未視感と言います」
医者「見慣れているはずの光景が、一度も見た事がないように本人には映るんです」
刑事「…………」
医者「何かショックな出来事があったりとかすると、こういう事が起こりやすくなります」
医者「つまるところ、デジャヴュにしろジャメヴュにしろ、脳が作り出した錯覚や勘違いなんですよ」
刑事「…………」
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