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男「少し不思議な話をしようか」女「いいよ」
Part13


168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:51:03.38 ID:SBrXlhp6o
解・一話
【謎のタクシー客】

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:51:32.57 ID:SBrXlhp6o
捜査員「どうも。突然、お訪ねして申し訳ありません」
OL「……どちら様ですか?」
捜査員「失礼。私、警察のものです。手帳はここに」
OL「…………」
捜査員「よろしいですか?」
OL「はい……。ですけど、警察の方がどうしてうちに?」
捜査員「ああ、安心して下さい。別にこの近くで事件が起きたとかそういう訳ではないので」
捜査員「ただ、今、とある事件を捜査していまして」
捜査員「それで、話の裏を取る為に、幾つかあなたにお尋ねしたい事があったんですね」
OL「……何をですか?」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:52:47.44 ID:SBrXlhp6o
捜査員「もう三年も前の事なので、覚えておられないかもしれませんが」
OL「…………」
捜査員「タクシーに乗られて、それで手持ちがなかったので、家まで運転手と一緒に取りに行った……みたいな事がありませんでしたか?」
OL「ああ……そういえば、そんな事ありましたね。それは覚えてます」
捜査員「そうですか。ちなみにその運転手の顔とか名前とかは覚えてます?」
OL「いえ、流石に忘れました。三年も前なんですよ。そこまで覚えてません」
捜査員「わかりました。それならその時の事を、詳しく話してもらってもいいですか?」
捜査員「捜査に御協力願えませんかね」
OL「はあ……。それは、別に構いませんけど……」
OL「それ、どこから話せばいいんですか? 初めからですか?」
捜査員「そうですね。一番初めから話してもらえると助かります」
OL「……わかりました」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:54:06.34 ID:SBrXlhp6o
OL「その日は確か……私が好きなバンドのライブの日だったんで」
OL「それで、新幹線と電車使って、友達四人と一緒にライブ観に行ったんですよ」
捜査員「はい」
OL「で、ライブが終わった後に、こっちまで戻ってきて」
OL「それで、駅前で打ち上げって事で飲み会したんですね」
捜査員「ええ」
OL「で、かなりそれが盛り上がって」
OL「ついつい遅い時間になっちゃって」
OL「オマケに、私、ほろ酔いになってたもんですから。顔にはほとんど出ないタイプなんですけどね」
捜査員「はい」
OL「それで、なんかもう、電車とかで帰るの面倒になっちゃって」
OL「テンション上がってたんで、ま、いっかって思ってタクシー使ったんですよ」
捜査員「ええ」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:55:07.85 ID:SBrXlhp6o
OL「でも、酔ってたから、乗った後に、車酔いとかが急に心配になってきて。吐きそうになったら嫌じゃないですか」
捜査員「ええ、わかります」
OL「だから、住所だけ告げて、後は外の景色見てたんですよ」
捜査員「はい」
OL「で、家まで無事についたはいいけど、料金聞いたら手持ちだけじゃ足りなくって」
OL「恥ずかしかったですけど、しょうがないんで、家までお金を取ってきていいですか、って運転手さんに言ったんです、私」
捜査員「ええ」
OL「そしたら、運転手さんはいいですよって言ってくれたんですけど」
OL「乗り逃げ? みたいな事を心配してたのか、家まで一緒についていってもいいですか、って逆に聞かれて」
OL「で、私もお金をまだ払ってない訳だから仕方ないじゃないですか。OKしたんですね」
捜査員「はい」

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:57:23.10 ID:SBrXlhp6o
OL「それで、二人してエレベーターに乗ったはいいんですけど」
捜査員「何か問題でも?」
OL「問題って言うか、私、その時、このマンションに引っ越してきたばかりだったんで」
捜査員「はい」
OL「それで、前住んでたところが、マンションの四階だったんですね」
OL「なんで、酔ってた事もあって、癖で四階のボタンを押してたんですよ」
捜査員「ああ……なるほどね」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:58:29.11 ID:SBrXlhp6o
OL「で、そのまま、気付かずにそこで降りて」
捜査員「ええ」
OL「それで、私の部屋の前まで歩いていったら、途中の景色が何かいつもと違うじゃないですか」
OL「植木鉢とか置いてあったりして、あれ、何か変だなって気が付いて」
OL「それで、部屋の前まで来たら、上に401とか書いてあるもんだから」
OL「あ、エレベーターでボタン押す階を間違えたって、その時になってようやく気付いて」
OL「それで、運転手さんに言ったんですよ」
OL「『すみません、私の家、この真上の階でした』って」
捜査員「……なるほど」

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 16:59:26.10 ID:SBrXlhp6o
OL「で、ここ一番端っこの部屋なんで、階段がすぐそこにあるじゃないですか」
捜査員「はい。確かにそうですね」
OL「なんで、階段使って運転手さんと一緒に上に行って」
OL「それで、今度こそ私の部屋の前まで来て、しばらく待ってもらったんですね」
捜査員「はい」
OL「で、お金を家に置いてあったもう一つの財布から取り出して」
OL「すぐに支払って」
OL「それで、その日の事は終わりです。その後は、私、シャワーも浴びずに、すぐにそのままベッドに入って寝ちゃったんで」
捜査員「そうですか。なるほど」

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:00:41.86 ID:SBrXlhp6o
捜査員「ちなみに、その後の事は、お話は聞いてますか?」
OL「はい。なんか最悪でした。警察沙汰になったとか、そんな話を後から聞いたんで」
OL「その運転手さん、帰る時にエレベーター使わずに階段から降りていったんで、ちょっと不思議に思ってたんですけど」
OL「でも、無意識の内に来たルートを辿って帰る時ってあるじゃないですか」
OL「あと、ここの部屋、エレベーターが真逆の位置にあるんで、階段から降りた方が早いと思ったのかな、みたいに考えて」
OL「特にそんな気にもしてなかったんですけどね」
OL「まさか、真下の階で料金騒ぎ起こしてるなんて想像もつかないじゃないですか」
捜査員「……まあ、普通はそうですよね。わかります」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:01:40.88 ID:SBrXlhp6o
OL「なんで、そんな事を聞いたもんですから」
OL「そこのタクシー会社にクレームって訳じゃないですけど、一言、文句を言っておこうとは思って」
OL「電話しようとしたんですけどね」
捜査員「けど?」
OL「どこのタクシー会社だったか、私、覚えてなかったんで」
OL「なんかタクシーってどこも似たようなのばかりじゃないですか。電話でタクシー呼び出したんならともかく、道を走ってるところを拾ったもんですから」
OL「会社なんか、いちいち見てないし、覚えてなくって」
捜査員「……なるほどね」
OL「なんで、代わりに一応、警察には電話入れましたけどね」
捜査員「ええ、それはこちらでも記録に残ってました。ですので、こうして今、お訪ねする事が出来てる訳ですが」

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:03:45.25 ID:SBrXlhp6o
OL「そういえば、私、その後の事、何も聞いてないんですけど、結局、あれ、どうなったんです?」
捜査員「警察としては、どうもしていません。既に解決済みでしたし、その運転手が自腹で支払ったので、結局、プラスマイナス0でしたから」
捜査員「横領にも、詐欺にも該当しないので、何もなしです。あえて言うなら強請行為や迷惑行為という事になりますが、逮捕とまではいかないラインでしたし」
捜査員「運転手の勘違いという事で、その話は終わりです」
捜査員「ただ、車内カメラとかそういうの確認した件もあったんで」
捜査員「そこのタクシー会社に連絡はして、事の顛末は話しましたけどね。後は、民事不介入という事でタクシー会社の方に任せました」
OL「ふうん……そうなんですか」

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:05:35.45 ID:SBrXlhp6o
OL「なら、今更、この話を聞きに来たのって、どうしてなんです?」
OL「あと、その人、どうしてそんな子供でもしないような勘違いをしたんですか?」
捜査員「ええ……まあ、聞きに来た理由は捜査の関係上お答え出来ませんが」
捜査員「勘違いについては、話してもいいでしょう。あなたも関係者ですし」
OL「はい。で、どんな理由だったんです?」
捜査員「その運転手は、後で『記憶障害』と診断されています」
OL「記憶障害?」
捜査員「ええ。若年性健忘症に近いものでしょうかね。一部の記憶が不意に消えたりとか、そういった症状が確認されてます」
OL「記憶が……」

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:07:00.38 ID:SBrXlhp6o
OL「じゃあ、その人は、私が階数を間違えていたって事と、支払いをしたって記憶がすっぽり抜け落ちてたって事ですか?」
捜査員「はい。そうなります」
捜査員「なので、あなたが自分の部屋に入ったはいいものの」
捜査員「ドアの前でいつまで待っても出てこない、という風に思ったんじゃないかと」
OL「でも、それ、単に忘れてるだけなんですよね? 普通、思い出しません?」
捜査員「いえ、程度にもよりますが、記憶障害というのは、普通の物忘れとかと違いまして」
捜査員「思い出す事はまずないそうです」
捜査員「そして、これは本人に自覚症状が出ないんですね。『忘れてしまった』とは思わない訳なんです」
捜査員「ですから、本人としてはそれが『正しい記憶』となります。なので、その間違いを指摘されても、まず信じようとはしません」
捜査員「逆に、そういった事が続くと、周りが嘘をついていると思い込む様になるそうです」
OL「…………」
捜査員「短期的な記憶を司るのは、脳の海馬とかいう場所らしいんですがね」
捜査員「そこが正常に機能しなくなっているらしいんです。私は医者じゃないんで、そこまで詳しい事は知りませんが……」
OL「…………」

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:08:17.47 ID:SBrXlhp6o
捜査員「それでは、話も終わりましたので、私はこれで失礼します」
OL「え?」
捜査員「捜査に御協力、感謝します」
OL「あ、ちょっと」
捜査員「?」
OL「その……最後に一つだけ質問してもいいです?」
捜査員「答えられる範囲でなら、構いませんけど……」
OL「なら、聞きますけど。お巡りさんって何課の人ですか?」
捜査員「何課というのは?」
OL「ドラマとかでよく出てくるじゃないですか。捜査何とか課の〇〇です、みたいな。あれです」
捜査員「……私は、捜査一課ですね」
OL「捜査一課……。それって、殺人事件とか捜査するところですよね……?」
捜査員「…………」
捜査員「ええ、まあ……。殺人事件だけではありませんけどね」
OL「さっきの人、もしかして何かの殺人事件に関係してたんですか?」
捜査員「それは先程も言った通り、お話出来ません」
OL「…………」
捜査員「では、今度こそ、これで。御協力に感謝します」
OL「……はい」

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:09:41.25 ID:SBrXlhp6o
解・一話
【謎のタクシー客】
終了

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/12(金) 17:10:07.99 ID:SBrXlhp6o
次回、未定……
全ての解が出揃うまで、あと三話……

231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:17:02.21 ID:2ecqdph+o
解・四話
【消えた友達】

232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:18:11.45 ID:2ecqdph+o
夫「レイカに恨みを持っている人ですか……?」
刑事「ええ。まだ奥さんがお亡くなりになってから間もないので、思い出すのも辛いとは思いますが……」
刑事「誰か、そういう人に心当たりとかないかと思いましてね」
夫「…………」
刑事「どんな小さな事でも結構なので」
刑事「どうでしょうか? 何かありませんかね?」
夫「…………」
夫「いえ……。私の知ってる限りでは、誰も……」
夫「たまに近所の人達と上手くいかず、その事で愚痴を言ったりとかはしてましたけど、でも、恨まれてるとかそんな事は……」
刑事「……そうですか」

233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:19:20.14 ID:2ecqdph+o
刑事「それなら、質問を変えますが」
夫「はい」
刑事「レイカさんの高校時代の時の事とかは、ご存知ですか?」
夫「高校?」
刑事「ええ。というのもですね」
刑事「これは絶対に内密にお願いしたいんですが」
夫「……はい」
刑事「レイカさんの遺体からは、相当量の血液が抜かれてたんですね」
夫「!?」

234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:20:41.62 ID:2ecqdph+o
夫「血液って、そんな……。それ、どういう事です?」
刑事「これは、落ち着いて聞いて欲しいんですが……」
刑事「血管に注射針の様なものを入れて、そこから血を抜き取ったんではないかと思います」
刑事「司法解剖の結果、そういう結論に至りました」
夫「…………」
刑事「この事は、捜査の関係上、マスコミとかには伝えてないので、口外しないようお願いします」
刑事「別の殺人との区別もつきますので、公にはしたくないんです」
夫「……ちょっと待って下さい、別のって」
刑事「連続犯なんですよ。レイカさんで、三人目です」
夫「…………」
刑事「犯人は、大体、半年に一回ぐらいのペースで犯行を行っていまして……」
刑事「更に、その血液をとあるアパートの一室に、毎回の様にね」
刑事「血文字として、使用してるんです」
夫「!?」

235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:22:05.73 ID:2ecqdph+o
夫「何でそんな事……」
夫「しかも、どうしてレイカがその被害に遇わないといけなかったんですか……。何で……」
刑事「そのお気持ちはわかります。なので、我々も今、犯人逮捕に全力をあげて取り組んでいます」
刑事「それでですね。これまでのその連続殺人の被害者について、何か関係性がないか、捜査していたんですが」
刑事「一件目のカコさん。二件目のマリコさん、この二人は同じ高校でして」
夫「…………」
刑事「と言っても、この二人は家が比較的近所でしたから、同じ高校でもそこまで妙ではないんです」
刑事「なので、犯人は、近所の若い女性をターゲットにしているのではないかという見方が強かったんですが」
刑事「しかし、今回のレイカさんは、家がかなり離れていて、県外です」
刑事「それも、隣の県とかではなく、三つも県を跨いでいるので」
刑事「この被害に遭った三人が『同じ高校』だというのは、とても偶然とは思えないんですね」
夫「…………」

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:25:36.04 ID:2ecqdph+o
刑事「なので、現在、レイカさんの高校時代の友人とかにも、別の捜査員が話を聞きに行っているんですが」
刑事「あなたは、レイカさんとは高校は違いますよね?」
夫「……はい。レイカとは大学で知り合ったものですから」
刑事「高校の時の交遊関係とかはご存知だったりしますか?」
夫「いえ……。ここからだと距離も相当離れてるので。たまに昔の友達と電話してるのを見たぐらいです」
夫「あいつが高校の時の交遊関係とかは、ほとんど知りませんし……」
夫「高校の時の話も、何回か聞いたぐらいです。アルバムを前に見せてもらった事もありますけど、そこまで詳しくは……」
夫「部活だとか、文化祭だとか、修学旅行での話だとか……」
夫「そんなものを少し聞いたぐらいですね……」
刑事「そうですか」

237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:28:41.43 ID:2ecqdph+o
刑事「ちなみに……」
夫「はい」
刑事「ミキ、という名前の女性について、何か聞いた事はありますか?」
夫「ミキ?」
刑事「ええ。彼女も、高校二年の時にレイカさんと同じクラスだったんですが……」
刑事「その女性について、レイカさんが何か言ってたとか、ありませんか?」
夫「…………」
夫「ミキ……」
夫「あ」
刑事「何か思い出しましたか?」
夫「はい。あります。かなり前の話ですけど」
刑事「それ、詳しく聞かせてもらえませんか。お願いします」
夫「ええ……。わかりました」

238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/13(土) 17:34:22.40 ID:2ecqdph+o
夫「ずっと前に、テレビで心霊番組をやってた事がありまして」
刑事「はい」
夫「それで、レイカに尋ねた事があるんです。何かこういう不思議な体験とかがなかったかを」
刑事「不思議な体験ですか……」
夫「ええ、そしたら、高校の時の話をレイカがしたんです」
夫「その時、ミキって子の名前がでました。確か、カコとマリコって子の名前も」
刑事「他の被害者の名前も出てたんですね」
夫「はい。修学旅行に一緒に行ったグループだとかで」
夫「それで、ミキって子は、霊感がある子だったとか、そんな事を言ってました」
刑事「……なるほど」