魔女「果ても無き世界の果てならば」
Part6
256 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:42:12 ID:NV.TSR/c
少女「なにも君に魔女になれと行ってる訳ではないぞ?」
魔法使い「君の話は要領を得ない事が多すぎる。 結局僕にどうしろって?」
魔力が足りないのに魔法を教えてもらった所で、どうしようもないだろう。
少女「魔力が足りないんじゃなくて、使い方が分からないだけなんだろう?」
魔法使い「!?」
後頭部に手を回され、強引に顔を引き寄せられる。
少女「教えてあげる。 じゃあ、一段上っちゃおうか?」
魔法使い「んぅ!?」
見開いた瞳のすぐ近くには目蓋を閉じた少女の顔があった。
257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:42:39 ID:NV.TSR/c
唇に触れる柔らかい感触。
え? え? もしかしなくてもコレって口づけ? 接吻? キス? チュウ? 口吸い?
パパとママ以外とした事無かったのに?
混乱した頭をどうにか整理しようとした瞬間、唇に鋭い痛みが走る。
視界が歪む。
意識が薄れていく。
ただ、それは少女も同様なのか、力の抜けた身体がのしかかってくる。
少女に押し倒されるような形で倒れ込む。
いまだに離れない唇の感触だけがやけにはっきりと感じたところで、僕は意識を手放した。
258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:43:21 ID:NV.TSR/c
今回の更新は以上になります。
259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:17:05 ID:NoXjX9BA
歓喜
260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:58:09 ID:NV.TSR/c
物語が最後に向かう転換期のきっかけはキス。
話を書く上でのこだわりです。
けして百合が好きな訳ではありません。
ストーリーの進行状、仕方ないのです。
けして百合が好きな訳ではありません。
更新します。
261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:26:59 ID:NV.TSR/c
「ここは?」
目が覚めると、白い靄がどこまでも続く場所にいた。
少女「やぁ、ご機嫌は如何かね?」
「やぁ、痴女。 いきなり同性に唇を奪われて喜んでいるように見えるかい? 見えるならその紫色の瞳の代わりに硝子玉でも填める事をお勧めするよ」
少女「酷い言われようだな。 気取ってるようで案外にうぶだね。 初めてだったのかい?」
馬鹿にされているようで腹が立つ。 けど図星だ。
262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:29 ID:NV.TSR/c
「それは君の下衆な妄想に判断を委ねるよ」
それよりもここはどこなんだろうか?
ミルク色の濃い靄の所為で、全く見当もつかない。
「いったい何のつもりかな? 先程の、その、キ、ス……といい、このよく分からない場所といい」
少女「好みだったから」
「はぁ!?」
263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:43 ID:NV.TSR/c
少女「冗談だ。 君に着いて来るにはあの方法しかないからだよ」
「だから、ここはどこかって聞いてる」
本当にコイツとの会話は要領を得ない。 わざとなんだろうか?
少女「もう一つの世界。 内なる世界。 魔術の根源たる魂の源泉」
少女「簡単に言えば君の精神世界だ。 よく感じてごらんよ? その証拠に君はもうこの世界に溶けてしまっている」
言われてみて初めて気がついた。
確かに身体の感覚がない。 この場に居るのにこの場に居ないような不思議な感覚だ。
264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:28:24 ID:NV.TSR/c
とりあえずここまでです。
265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/30(火) 21:51:06 ID:AgRTCATw
大事な事だから二回言ったんだよな
291 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/09(水) 00:48:23 ID:Y3goLB3Q
少女に触れようとして手を伸ばす。
しかし、少女に手が触れる事はなかった。 代わりにそよ風が少女の髪を揺らす。
さわった感覚はあるのに実体がない。
少女「君は今この世界そのものだ。 しっかりと自分をイメージしないとこの世界に個として存在することすらできないよ?」
なる程。
魔法使い「こういう事か」
自分自身を想像して創造するのが思ったより難しい。
少女「さすが希代の魔法使い、想像力が違うね。でも」
魔法使い「なに?」
少女「少し胸部に脂肪を付け過ぎているんじゃないかい?」
うん、一度こいつは死ねばいい。
292 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/09(水) 00:48:47 ID:Y3goLB3Q
少女「ここからが本番だ。 自分の中の最深部に向かうよ」
魔法使い「どうやって?」
少女「君の世界だ、君しかわからないよ」
少女の言う事は正しい。
だが、分からないから訪ねたという事を少しは考えて欲しい。
少女「なんだ、不服そうだね」
魔法使い「そりゃあね、こうなれば手当たり次第かい?」
見渡す限りの乳白色の霧の中で、いったい何が見つかるのかは、分からないけど。
304 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:12:11 ID:fQWwhiOE
靄の中をひたすらに歩く。
もう何時間も歩いているような気もするし、まだ30分も歩いていないような気もする。
どこまで行ってもこの乳白色の靄がとぎれない為に辟易した頃。
少女「待ちなよ」
呼び止める声が聞こえた。
振り返ると、少女はまっすぐ僕を見つめている。
何もかも見通すような不愉快な深紫色の瞳だった。
305 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:13:13 ID:fQWwhiOE
少女「君は随分と物事を難しく考える」
少女は言葉を続けた。
まるで幼子をあやすかのような口調は、瞳以上に不愉快だ。
なのにすんなりと入ってくる。
少女「この靄は君の迷いの象徴だよ。 君は自らの心の中で迷子になっている」
魔法使い「そんな事は」
そんな事はない。
そう否定したいのに、出来なかった。
306 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:13:30 ID:fQWwhiOE
少女「自分の心に嘘はつけない、この靄は君の迷いそのものだ」
心当たりが在りすぎて、原因すら分からないや。
魔法使い「ああ、きっとそうなんだろうね」
なぜだか、それをすんなりと認めることができた。
少女「一歩前進だね」
この少女のしたり顔は気にくわないのは相変わらずだけど。
307 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:14:26 ID:fQWwhiOE
できれば明日も更新したいと思います。
308 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:22:11 ID:3vDw6KsU
がんばれ支援
309 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:27:14 ID:t5oV1Rk.
ありがとうございます! 病が楽になりました またよろしくお願いします
310 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/22(火) 23:56:46 ID:rCY1figA
歩いているうちに何となくわかってきた。
僕が向かっている先が正しい方向だと。
理由は無いけど確信できた。
徐々に濃くなっていく霧。
その出所は意外なものだった。
魔法使い「これは、僕の村?」
少女「みたいだね」
なんだか、拍子抜けしてしまう。 片田舎の寂れた村。
僕の心の奥がこうなっているなんて。
311 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/22(火) 23:57:01 ID:rCY1figA
「おい!わたちのむらになんのよう!」
声を聞いて振り返る。
魔法使い「あーそうきたか」
少女「くっくっく、これはまた可愛らしいな」
視線の先には幼女。
肩に届くかどうかの濃い金髪。
生意気そうな瞳。
幼女「なによ!」
これ、僕の小さい頃だよ……。
320 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/03(日) 02:23:19 ID:UBixgMNA
少女「君の迷いはどうやら幼児期の出来事のようだね」
魔法使い「良く覚えてないんだよね小さい頃って」
幼女「むつかしそうなはなし、きらい! あんたたちなんなのよ!」
これはなんていうか、うん
魔法使い「えいっ」
幼女「ふぎゅ!?」
恥をばらまいているみたいですごく恥ずかしい。 デコピンで黙らそう、うん。
幼女「うわぁ~~ん、ぱぱぁっ!!」
行っちゃったよ……。
321 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/03(日) 02:24:51 ID:UBixgMNA
少女「追わないのかい?」
魔法使い「追わなきゃ駄目、かな?」
魔法使い「はぁ」
やっぱり僕の家だよなぁ。
こらえきれずにため息をつく。
少女「なぁ魔法使い。 君の父上と母上はどんな人なんだい?」
家の前で立ち止まる。
魔法使い「ん~実はよく覚えてないんだよね」
少女「ご息災ではない、と?」
遠慮なく聞くね。
322 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/03(日) 02:25:14 ID:UBixgMNA
魔法使い「ママは死んじゃったみたい。 パパは物心ついた頃には居なかったしなぁ」
少女「君も知らない過去か」
魔法使い「そーいうこと」
ほんとはパパの事はぼんやり覚えてるんだ。
眼鏡をかけた優しげな人だった。
330 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:55:24 ID:kzuAr8sI
少女「案外簡素な住まいだな」
魔法使い「豪華絢爛は趣味でもないしね」
手入れもそこそこな小さな一軒家の前で、少しの間それを眺める。
壁や柵に絡んだ蔦は最近まで僕が住んでいた家に比べると幾分か少ない。
よく見ると少し新しい。
覚えていないのにこんなにも鮮明に再現されているのが不思議に思える。
少女「記憶というのは無くならない、思い出し方を忘れるだけだ」
魔法使い「御高説どうも、だけど人の心を見透かすような真似はやめてくれない?」
なんでもお見通しみたいで嫌な奴だ。 魔女って皆こうなんだろうか?
331 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:56:14 ID:kzuAr8sI
少女「じゃあいこうか、間違いなく目指す先はあの家の奥だよ」
魔法使い「はいはい」
気が乗らないなぁ。
魔法使い「お邪魔します、かな?」
少女「思い出でも君の家だし、ただいま、じゃないかな?」
簡素な扉は案外に簡単にひらいた。
幼女「はいってこないで!」
やっぱり居るよね。
魔法使い「どうしても行かなきゃならないんだ」
幼女「だめ!」
魔法使い「なぜ?」
幼女「きずつくから!」
あたりの様子がおかしい。
今までは簡素ながらも素敵な我が家、の筈だったんだけど。
332 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:56:36 ID:kzuAr8sI
少女「記憶、魂の根元に至らんとする者を試す門」
仰々しい門以外には何もない空間。
幼女「主、貴女の意志で閉ざされた記憶を見るおつもりか」
幼女も雰囲気が変わる。
というか見た目も変わっている。
背格好こそ昔の僕と同じだけど、白銀の甲冑に突撃槍をもった姿は騎士そのものだ。
少女「よっぽど思い出したくない過去みたいだね」
少女が心配そうな顔をした。
珍しいこともあるものだ。
魔法使い「見なきゃならないからね」
幼女が風切り音を鳴らし突撃槍を向ける。
幼女「なれば覚悟をお示し下さい」
魔法使い「上等だよ」
自分に向き合うには良い機会だ。
335 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/09(土) 08:47:14 ID:DLBCYXQ6
ここを乗り越えての魔女だったのか
メンタル強いのね
336 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/09(土) 10:48:37 ID:4iQqRR1g
胸熱!! 頑張ってね!
339 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:08:19 ID:k36p9WS.
幼女が鋭い踏み込みから突撃槍を振るう。
魔法使い「~~」
視界を奪う閃光の魔法。
距離を取り、体勢を立て直す。
肉弾戦はゴメンだ、とりあえずは相手の戦闘能力を奪うことができればそれで――。
幼女「そんな消極的な考えだと」
ゆうに間合いの三倍はあったであろう距離を一瞬で詰められる。
まずいっ!!
幼女「死ぬぞ? 我が主」
340 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:08:59 ID:k36p9WS.
眼前には貫く事に特化した円錐の槍の切っ先。
魔法使い「っ~~!!」
とっさに撃ったのは下位の氷魔法。
起死回生の一手。 とはいかず、僅かにその切っ先をずらす事で精一杯だ。
幼女「小癪!」
魔法使い「あぐぁっ」
弾かれた切っ先の軌道を強引に変え、打ち据えられる。
幼女「立つが良い、主よ。 立ち上がる強さを持たぬ者は何も掴む事などできないぞ」
見た目が幼少期の僕の癖に。
341 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:10:57 ID:k36p9WS.
魔法使い「偉そうに! 僕の幼い頃なら大人しく花の冠でも作って遊んでろ!」
したたかに打ち据えられた後頭部の痛みを堪えつつ、杖の先に魔力を込める。
魔法使い「~~~~!!」
放つのは今の自分が使える最大級の氷の呪文。 周囲を氷棺で覆い尽くす不可避の一撃。
魔法使い「どうだ。 効いただろう?」
幼女「そうでもないな」
魔法使い「なっ!?」
氷の欠片が舞う。
その欠片を纏いながら突撃槍が迫る。
まずい、かわせないっ。
魔法使い「あ……あぁ」
悪い冗談だ。
僕の腹部に――。
少女「魔法使いっ!?」
突撃槍が突き刺さっているなんて。
347 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:23:09 ID:cL90GAto
痛い――。
明らかに致命傷だ。 臓腑は確実にグチャグチャになっているだろうし、こう冷静に思考できるのも後数秒だろう。
僕は、何をしているんだ?
孤独に村で過ごしていればこんな最後は遂げなかった?
僅かに残る思い出に縋りながら、ただただ時に身を任せていれば。
違う。
違うっ!!
魔法使い「まだ、彼らに何一つ返してない」
348 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:31 ID:cL90GAto
暖かな気持ちも、孤独ではない夜も、僕に居場所をくれたみんなに僕は何も返せてはいない。
自分に負けてなんか居られない。 僧侶が悲しむ、戦士が責任を感じる。 それに。
勇者の笑顔が曇っちゃう。
魔法使い「ここは僕の世界なんだろう? 詰まるところ、すべては心一つだ」
幼女「ほう、上出来だ主」
魔法使い「~~~~~~~~~っ」
幼女「ふむ」
少女の説明の内で説明された禁忌の魔法、原初の三つ。
その内の一つ。
馬鹿げた量の魔力と、それを針の穴を通す程の精密な魔力操作によって発現する魔法。
世界創造の名を冠した極大爆発魔法。
魔法使い「~~~~~僕は」
魔法使い「抗わず、されどけして流されず、総てを受け入れるよ」
349 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:57 ID:cL90GAto
手のひらから魔力が溢れる。
宙に小さな黒点が浮かぶ。
成功だ。
黒点は周囲の魔力を吸収し圧縮し、臨界点を超えて、轟音と共にその魔力を爆発させた。
少女「なにも君に魔女になれと行ってる訳ではないぞ?」
魔法使い「君の話は要領を得ない事が多すぎる。 結局僕にどうしろって?」
魔力が足りないのに魔法を教えてもらった所で、どうしようもないだろう。
少女「魔力が足りないんじゃなくて、使い方が分からないだけなんだろう?」
魔法使い「!?」
後頭部に手を回され、強引に顔を引き寄せられる。
少女「教えてあげる。 じゃあ、一段上っちゃおうか?」
魔法使い「んぅ!?」
見開いた瞳のすぐ近くには目蓋を閉じた少女の顔があった。
257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:42:39 ID:NV.TSR/c
唇に触れる柔らかい感触。
え? え? もしかしなくてもコレって口づけ? 接吻? キス? チュウ? 口吸い?
パパとママ以外とした事無かったのに?
混乱した頭をどうにか整理しようとした瞬間、唇に鋭い痛みが走る。
視界が歪む。
意識が薄れていく。
ただ、それは少女も同様なのか、力の抜けた身体がのしかかってくる。
少女に押し倒されるような形で倒れ込む。
いまだに離れない唇の感触だけがやけにはっきりと感じたところで、僕は意識を手放した。
258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:43:21 ID:NV.TSR/c
今回の更新は以上になります。
259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:17:05 ID:NoXjX9BA
歓喜
260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:58:09 ID:NV.TSR/c
物語が最後に向かう転換期のきっかけはキス。
話を書く上でのこだわりです。
けして百合が好きな訳ではありません。
ストーリーの進行状、仕方ないのです。
けして百合が好きな訳ではありません。
更新します。
「ここは?」
目が覚めると、白い靄がどこまでも続く場所にいた。
少女「やぁ、ご機嫌は如何かね?」
「やぁ、痴女。 いきなり同性に唇を奪われて喜んでいるように見えるかい? 見えるならその紫色の瞳の代わりに硝子玉でも填める事をお勧めするよ」
少女「酷い言われようだな。 気取ってるようで案外にうぶだね。 初めてだったのかい?」
馬鹿にされているようで腹が立つ。 けど図星だ。
262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:29 ID:NV.TSR/c
「それは君の下衆な妄想に判断を委ねるよ」
それよりもここはどこなんだろうか?
ミルク色の濃い靄の所為で、全く見当もつかない。
「いったい何のつもりかな? 先程の、その、キ、ス……といい、このよく分からない場所といい」
少女「好みだったから」
「はぁ!?」
263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:43 ID:NV.TSR/c
少女「冗談だ。 君に着いて来るにはあの方法しかないからだよ」
「だから、ここはどこかって聞いてる」
本当にコイツとの会話は要領を得ない。 わざとなんだろうか?
少女「もう一つの世界。 内なる世界。 魔術の根源たる魂の源泉」
少女「簡単に言えば君の精神世界だ。 よく感じてごらんよ? その証拠に君はもうこの世界に溶けてしまっている」
言われてみて初めて気がついた。
確かに身体の感覚がない。 この場に居るのにこの場に居ないような不思議な感覚だ。
264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:28:24 ID:NV.TSR/c
とりあえずここまでです。
265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/30(火) 21:51:06 ID:AgRTCATw
大事な事だから二回言ったんだよな
291 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/09(水) 00:48:23 ID:Y3goLB3Q
少女に触れようとして手を伸ばす。
しかし、少女に手が触れる事はなかった。 代わりにそよ風が少女の髪を揺らす。
さわった感覚はあるのに実体がない。
少女「君は今この世界そのものだ。 しっかりと自分をイメージしないとこの世界に個として存在することすらできないよ?」
なる程。
魔法使い「こういう事か」
自分自身を想像して創造するのが思ったより難しい。
少女「さすが希代の魔法使い、想像力が違うね。でも」
魔法使い「なに?」
少女「少し胸部に脂肪を付け過ぎているんじゃないかい?」
うん、一度こいつは死ねばいい。
292 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/09(水) 00:48:47 ID:Y3goLB3Q
少女「ここからが本番だ。 自分の中の最深部に向かうよ」
魔法使い「どうやって?」
少女「君の世界だ、君しかわからないよ」
少女の言う事は正しい。
だが、分からないから訪ねたという事を少しは考えて欲しい。
少女「なんだ、不服そうだね」
魔法使い「そりゃあね、こうなれば手当たり次第かい?」
見渡す限りの乳白色の霧の中で、いったい何が見つかるのかは、分からないけど。
304 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:12:11 ID:fQWwhiOE
靄の中をひたすらに歩く。
もう何時間も歩いているような気もするし、まだ30分も歩いていないような気もする。
どこまで行ってもこの乳白色の靄がとぎれない為に辟易した頃。
少女「待ちなよ」
呼び止める声が聞こえた。
振り返ると、少女はまっすぐ僕を見つめている。
何もかも見通すような不愉快な深紫色の瞳だった。
305 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:13:13 ID:fQWwhiOE
少女「君は随分と物事を難しく考える」
少女は言葉を続けた。
まるで幼子をあやすかのような口調は、瞳以上に不愉快だ。
なのにすんなりと入ってくる。
少女「この靄は君の迷いの象徴だよ。 君は自らの心の中で迷子になっている」
魔法使い「そんな事は」
そんな事はない。
そう否定したいのに、出来なかった。
306 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:13:30 ID:fQWwhiOE
少女「自分の心に嘘はつけない、この靄は君の迷いそのものだ」
心当たりが在りすぎて、原因すら分からないや。
魔法使い「ああ、きっとそうなんだろうね」
なぜだか、それをすんなりと認めることができた。
少女「一歩前進だね」
この少女のしたり顔は気にくわないのは相変わらずだけど。
307 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:14:26 ID:fQWwhiOE
できれば明日も更新したいと思います。
308 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:22:11 ID:3vDw6KsU
がんばれ支援
309 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/21(月) 23:27:14 ID:t5oV1Rk.
ありがとうございます! 病が楽になりました またよろしくお願いします
310 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/22(火) 23:56:46 ID:rCY1figA
歩いているうちに何となくわかってきた。
僕が向かっている先が正しい方向だと。
理由は無いけど確信できた。
徐々に濃くなっていく霧。
その出所は意外なものだった。
魔法使い「これは、僕の村?」
少女「みたいだね」
なんだか、拍子抜けしてしまう。 片田舎の寂れた村。
僕の心の奥がこうなっているなんて。
311 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/01/22(火) 23:57:01 ID:rCY1figA
「おい!わたちのむらになんのよう!」
声を聞いて振り返る。
魔法使い「あーそうきたか」
少女「くっくっく、これはまた可愛らしいな」
視線の先には幼女。
肩に届くかどうかの濃い金髪。
生意気そうな瞳。
幼女「なによ!」
これ、僕の小さい頃だよ……。
少女「君の迷いはどうやら幼児期の出来事のようだね」
魔法使い「良く覚えてないんだよね小さい頃って」
幼女「むつかしそうなはなし、きらい! あんたたちなんなのよ!」
これはなんていうか、うん
魔法使い「えいっ」
幼女「ふぎゅ!?」
恥をばらまいているみたいですごく恥ずかしい。 デコピンで黙らそう、うん。
幼女「うわぁ~~ん、ぱぱぁっ!!」
行っちゃったよ……。
321 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/03(日) 02:24:51 ID:UBixgMNA
少女「追わないのかい?」
魔法使い「追わなきゃ駄目、かな?」
魔法使い「はぁ」
やっぱり僕の家だよなぁ。
こらえきれずにため息をつく。
少女「なぁ魔法使い。 君の父上と母上はどんな人なんだい?」
家の前で立ち止まる。
魔法使い「ん~実はよく覚えてないんだよね」
少女「ご息災ではない、と?」
遠慮なく聞くね。
322 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/03(日) 02:25:14 ID:UBixgMNA
魔法使い「ママは死んじゃったみたい。 パパは物心ついた頃には居なかったしなぁ」
少女「君も知らない過去か」
魔法使い「そーいうこと」
ほんとはパパの事はぼんやり覚えてるんだ。
眼鏡をかけた優しげな人だった。
330 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:55:24 ID:kzuAr8sI
少女「案外簡素な住まいだな」
魔法使い「豪華絢爛は趣味でもないしね」
手入れもそこそこな小さな一軒家の前で、少しの間それを眺める。
壁や柵に絡んだ蔦は最近まで僕が住んでいた家に比べると幾分か少ない。
よく見ると少し新しい。
覚えていないのにこんなにも鮮明に再現されているのが不思議に思える。
少女「記憶というのは無くならない、思い出し方を忘れるだけだ」
魔法使い「御高説どうも、だけど人の心を見透かすような真似はやめてくれない?」
なんでもお見通しみたいで嫌な奴だ。 魔女って皆こうなんだろうか?
331 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:56:14 ID:kzuAr8sI
少女「じゃあいこうか、間違いなく目指す先はあの家の奥だよ」
魔法使い「はいはい」
気が乗らないなぁ。
魔法使い「お邪魔します、かな?」
少女「思い出でも君の家だし、ただいま、じゃないかな?」
簡素な扉は案外に簡単にひらいた。
幼女「はいってこないで!」
やっぱり居るよね。
魔法使い「どうしても行かなきゃならないんだ」
幼女「だめ!」
魔法使い「なぜ?」
幼女「きずつくから!」
あたりの様子がおかしい。
今までは簡素ながらも素敵な我が家、の筈だったんだけど。
332 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/08(金) 21:56:36 ID:kzuAr8sI
少女「記憶、魂の根元に至らんとする者を試す門」
仰々しい門以外には何もない空間。
幼女「主、貴女の意志で閉ざされた記憶を見るおつもりか」
幼女も雰囲気が変わる。
というか見た目も変わっている。
背格好こそ昔の僕と同じだけど、白銀の甲冑に突撃槍をもった姿は騎士そのものだ。
少女「よっぽど思い出したくない過去みたいだね」
少女が心配そうな顔をした。
珍しいこともあるものだ。
魔法使い「見なきゃならないからね」
幼女が風切り音を鳴らし突撃槍を向ける。
幼女「なれば覚悟をお示し下さい」
魔法使い「上等だよ」
自分に向き合うには良い機会だ。
335 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/09(土) 08:47:14 ID:DLBCYXQ6
ここを乗り越えての魔女だったのか
メンタル強いのね
336 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/09(土) 10:48:37 ID:4iQqRR1g
胸熱!! 頑張ってね!
339 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:08:19 ID:k36p9WS.
幼女が鋭い踏み込みから突撃槍を振るう。
魔法使い「~~」
視界を奪う閃光の魔法。
距離を取り、体勢を立て直す。
肉弾戦はゴメンだ、とりあえずは相手の戦闘能力を奪うことができればそれで――。
幼女「そんな消極的な考えだと」
ゆうに間合いの三倍はあったであろう距離を一瞬で詰められる。
まずいっ!!
幼女「死ぬぞ? 我が主」
340 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:08:59 ID:k36p9WS.
眼前には貫く事に特化した円錐の槍の切っ先。
魔法使い「っ~~!!」
とっさに撃ったのは下位の氷魔法。
起死回生の一手。 とはいかず、僅かにその切っ先をずらす事で精一杯だ。
幼女「小癪!」
魔法使い「あぐぁっ」
弾かれた切っ先の軌道を強引に変え、打ち据えられる。
幼女「立つが良い、主よ。 立ち上がる強さを持たぬ者は何も掴む事などできないぞ」
見た目が幼少期の僕の癖に。
341 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/12(火) 13:10:57 ID:k36p9WS.
魔法使い「偉そうに! 僕の幼い頃なら大人しく花の冠でも作って遊んでろ!」
したたかに打ち据えられた後頭部の痛みを堪えつつ、杖の先に魔力を込める。
魔法使い「~~~~!!」
放つのは今の自分が使える最大級の氷の呪文。 周囲を氷棺で覆い尽くす不可避の一撃。
魔法使い「どうだ。 効いただろう?」
幼女「そうでもないな」
魔法使い「なっ!?」
氷の欠片が舞う。
その欠片を纏いながら突撃槍が迫る。
まずい、かわせないっ。
魔法使い「あ……あぁ」
悪い冗談だ。
僕の腹部に――。
少女「魔法使いっ!?」
突撃槍が突き刺さっているなんて。
347 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:23:09 ID:cL90GAto
痛い――。
明らかに致命傷だ。 臓腑は確実にグチャグチャになっているだろうし、こう冷静に思考できるのも後数秒だろう。
僕は、何をしているんだ?
孤独に村で過ごしていればこんな最後は遂げなかった?
僅かに残る思い出に縋りながら、ただただ時に身を任せていれば。
違う。
違うっ!!
魔法使い「まだ、彼らに何一つ返してない」
348 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:31 ID:cL90GAto
暖かな気持ちも、孤独ではない夜も、僕に居場所をくれたみんなに僕は何も返せてはいない。
自分に負けてなんか居られない。 僧侶が悲しむ、戦士が責任を感じる。 それに。
勇者の笑顔が曇っちゃう。
魔法使い「ここは僕の世界なんだろう? 詰まるところ、すべては心一つだ」
幼女「ほう、上出来だ主」
魔法使い「~~~~~~~~~っ」
幼女「ふむ」
少女の説明の内で説明された禁忌の魔法、原初の三つ。
その内の一つ。
馬鹿げた量の魔力と、それを針の穴を通す程の精密な魔力操作によって発現する魔法。
世界創造の名を冠した極大爆発魔法。
魔法使い「~~~~~僕は」
魔法使い「抗わず、されどけして流されず、総てを受け入れるよ」
349 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:57 ID:cL90GAto
手のひらから魔力が溢れる。
宙に小さな黒点が浮かぶ。
成功だ。
黒点は周囲の魔力を吸収し圧縮し、臨界点を超えて、轟音と共にその魔力を爆発させた。
魔女「果ても無き世界の果てならば」
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