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魔女「果ても無き世界の果てならば」

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Part2
38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:07:14 ID:zYSKR4Y6
僧侶「~~~~」
 この乳女、いや、僧侶は純白の法衣が汚れる事になんの躊躇いも示さなかった。
 腐った血と肉片と精液の溜まった部屋に、なんの躊躇もなく駆け込むと、女性達に寄り添い回復の魔法をかけている。
魔法使い「ふーん」
 口だけではない、のか。
僧侶「私たちがもう少し早ければ、すいません……」
 助けた人間にまず謝罪するなんて。
魔法使い「お人好しだね」
 あらかたの人間に回復魔法をかけると、僧侶は一人ずつになにやら励ましとも謝罪ともとれる言葉をかけていた。
魔法使い「それも大事かもしれないけど……」
僧侶「?」
 この部屋は臭すぎるから、水洗いしなきゃ。

39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:08:43 ID:zYSKR4Y6
魔法使い「~~」
僧侶「きゃっ」
 出したのは攻撃にすら使えないような水を生み出すだけの呪文。
魔法使い「どうかな? 少しはましになったんじゃないかい」
 一応、血まみれのままなんて嫌だろうし。
僧侶「魔法使いさ~ん……先に何をするか言って下さい。 ビチョビチョになったんですけど」
魔法使い「あぁ、すまなかった」
 確かにビチョビチョだ。 服が張り付いて更に体のラインが強調されている。
魔法使い「軽い仕返しのつもりが見事なカウンターだよ……」
僧侶「へ?」

40 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:09:09 ID:zYSKR4Y6
魔法使い「なんでもない、それよりあの人たちに毛布なり外套なりを渡してあげなくて良いの?」
僧侶「そうですね!」
 私も外套を脱ぎ、渡したいところだけど……
僧侶「サイズが合いませんね……」
 うるさい、そのうち女性的な身体付きになる予定なんだ。

41 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:09:50 ID:yenU3BYQ
更新wktk
( ・ω・)っ④

42 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:10:20 ID:zYSKR4Y6
 処理を終え、焚き火をして勇者達を待つことにして一刻程経つ。
魔法使い「遅いね」
僧侶「まさか……」
魔法使い「戦士がいる時点でそれはないよ」
 竜種が纏めて三体位いたなら別だけど。
魔法使い「でも、確かに待つだけでは暇な事は確かだ」
僧侶「さらわれた人達は疲労で寝てしまってますから、動くわけにもいきませんし」
 まぁ、その通りなんだけど。
魔法使い「とりあえず、部屋の外に魔物が居ないか警戒するくらいは必要じゃないかな?」
 まず、この空気に耐えられない。


43 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:10:40 ID:4W9byLmM
更新乙
応援してるよー

44 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:11:07 ID:zYSKR4Y6
僧侶「確かにそうですね」
 なのに何でついてくるかなこの乳女は。
魔法使い「いや、二人で部屋をでる必要は無かったんじゃないかな?」
僧侶「いやぁ~魔法使いさん、ひとりじゃ心細いかと思いまして」
 どれだけ臆病なんだろうこの人……。
魔法使い「確かにこんな場所にひとりは心細いかもしれないけ」
僧侶「危ない!」
 僧侶に突き飛ばされる。
魔法使い「!?」
僧侶「きゃあっ」
 僕が居た所には、太い腕に掴まれた僧侶の姿。 それと。
魔法使い「オーガ!?」
 オークとは段違いに強力な魔物が僧侶を捕まえていた。

45 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:12:05 ID:zYSKR4Y6
 くそ、油断した――。
僧侶「ぐぅ……お怪我は、ありませんでしたか?」
 どこまでお人好しなんだこの乳袋は…
魔法使い「~~…駄目だ」
 僧侶を巻き込まずにオーガを止める事の出来る魔法がない。
魔法使い「待て!」
 杖で思い切り叩く。
オーガ「グルルルルッ!!」
 オーガが雄叫びを上げる。 杖が効いたとは思えない。
オーク「ブモモモ」
オーク「ブィイイイ」
魔法使い「オークの群!?」
 仕方なくオークとの交戦になるが、こんな事をしている間にどんどんオーガは遺跡の奥に消えていく。
 何でこんな時には悲鳴をあげないんだよ、あのお人好しめ。

46 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:15:22 ID:zYSKR4Y6
魔法使い「~~~~」
 悪いけど速攻で片付けさせて貰うからね。
 魔力の残量を考えずに高位の呪文を連発する。
 一体一体は大したこと無いくせに数だけは多いからやっかいな奴らだ。
魔法使い「はぁ、はぁ、片付いた」
 まずい、時間がかかりすぎた。
 手には折れた杖、魔力は枯渇寸前だった。

47 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:15:55 ID:zYSKR4Y6
魔法使い「さて、この状態でオーガを単騎撃破するのか……」
 正直な所、分が悪い。
 亜人種の中ではそれなりに強い部類だ。 一発で仕留める事のできる魔法でなければこっちが危ない。
魔法使い「戦士と勇者を待ってから確実性を……いや」
 脳裏に乱暴された僧侶が過ぎり、自分の言葉を否定する。
魔法使い「見たくないしね」
 僕は、山高帽を被り直すと遺跡の奥に走った。

48 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:16:45 ID:zYSKR4Y6
 じめじめと湿った遺跡の奥は居心地が悪くて仕方がない。
魔法使い「僧侶ー!」
 返事がない。 既に返事ができないような状態なのかとも思うが、考えたくはなかった。
魔法使い「無駄にでっかいのを二つもつけているから」
 遺跡の再深部、祭壇のようなところに僧侶は居た。
魔法使い「僧侶! 無事!?」
 見たところ外傷はない。
 間に合った、のかな?
僧侶「魔法使いさん!? 駄目、逃げて!!」
魔法使い「え?」
オーガ「グルルルルッ」
オーガ「グアァアアア」
 最悪だ。 オーガが群で居るなんて。

49 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:18:26 ID:zYSKR4Y6
僧侶「私なら大丈夫ですから、早く!」
 僧侶は今まで聞いたことがないくらいに強い口調で叫んだ。
 今僕が逃げたら自分がどんな目に遭うか分からないくらい馬鹿なのだろうか?
 いや、違うだろう。
 きっと僕の心配をしての言葉だ。
 まったく、どれだけ他人に優しいんだか……。
魔法使い「気に入らない!」
僧侶「へ?」
 気に入らない奴だ、私がこんな図体ばかりの魔物にいいようにやられるとでも?
魔法使い「僕がコイツ等をさっさと片づけるから大人しくそこで待ってて!!」

50 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:18:52 ID:zYSKR4Y6
 折れた杖? 問題ない。
 魔力がない? 一発打てればそれで良い。
魔法使い「~~~~!」
 全身の魔力をかき集める。 足りない分は気合いで補う。
魔法使い「~~~~!」
 折れた杖をかざし、放つのは亡者を使役する魔法。
 直接魂を刈り取り死の淵へ誘う忌むべき業。
魔法使い「さぁ、思う存分食い荒らせ」

51 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:19:05 ID:zYSKR4Y6
オーガ「ギァアァアア」
オーガ「グゥエェェ」
 流石に怨みを持った対象に使えば良く効くらしい。
 オーガの群を一層する為には充分な威力だった。
僧侶「……」
 僧侶と、さらわれた人達の元へと向かう。
 僕の勘違いでなければ、空気が重いのは湿度が高いというだけではないだろう。
 一体何を怒っているのか見当もつかない。

52 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:20:23 ID:zYSKR4Y6
今回の更新は以上となります。

53 :塔を探す男:2012/08/12(日) 16:33:09 ID:EFb0TtGs
今までまとめでしかssを見たことなかったけど「あなたが塔の魔女?」を見てから飛んで来たわw       
応援してる!!

54 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/13(月) 00:07:08 ID:sb4ZWUY.
割と初っ端から大盤振る舞いな魔法使い良いな
乙乙ー

60 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:49:33 ID:aD55uUOE
魔法使い「ねぇ、僕の勘違いでなければ君は怒っているよね?」
僧侶「……いえ」
 本当に面倒な奴だ。 
 明らかに怒っているじゃないか。
魔法使い「まぁいいや、怒っていないというならその態度の理由が知りたいんだけど」
 僧侶はちらりと横目でこちらを見た。
 どんなに不機嫌でも、大きくて垂れがちなその目元のせいでいまいち迫力にかけていると思う。

61 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:49:56 ID:aD55uUOE
僧侶「……なぜ、逃げてくれなかったのですか?」
 怒られた幼子のような、それでいて幼子を窘める母のような雰囲気だ。
魔法使い「逃げなかったらどうなってたか分かった上で言ってるの?」
僧侶「……」
 僧侶は答えずに俯いた。 
 しばらくの間、薄暗い遺跡の中を無言で歩く。
  やっぱり人と接するのは苦手だよ。 どうすればよいのかさっぱりわかんないや。

62 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:50:22 ID:aD55uUOE
僧侶「これは、私の我が儘です」
魔法使い「え?」
 僧侶が呟く。
僧侶「私のせいで誰かが傷つくのが、どうしようもなく嫌なのです……」
魔法使い「傷一つ、つけられちゃい無いけど……ん?」
 僧侶は泣いていた。
 僕よりも年上の人がこんな泣き方をするなんて想定外で、どうすればよいかさっぱりだ。
魔法使い「あー、なんて言うかその、ごめん?」
 とりあえず謝ろう、うん。
 何が悪いのかはわかんないけど……。


63 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:50:46 ID:aD55uUOE
僧侶「ん……でもソレだけじゃないんです」
魔法使い「まだあるの?」
僧侶「……死者を冒涜するような魔法を使わないで下さい」
 なんとも神の子羊らしい言い分だことで。
魔法使い「はいはい、善処するよ」
 でも分かってないね。
魔法使い「彼らはオーガに恨みをもって成仏できずにいたんだよ? それを晴らす手伝いをしてあげただけさ」
 優しいだけじゃなんにもならない事なんて、引きこもっていた僕にでも分かることなのにね。

73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 22:42:31 ID:RtyLVs8A
僧侶「ん……でもソレだけじゃないんです」
魔法使い「まだあるの?」
僧侶「……死者を冒涜するような魔法を使わないで下さい」
 なんとも神の子羊らしい言い分だことで。
魔法使い「はいはい、善処するよ」
 でも分かってないね。
魔法使い「彼らはオーガに恨みをもって成仏できずにいたんだよ? それを晴らす手伝いをしてあげただけさ」
 優しいだけじゃなんにもならない事なんて、引きこもっていた僕にでも分かることなのにね。

74 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 22:43:15 ID:RtyLVs8A
戦士「ふむ、無事なようだな」
勇者「無事、なのか?」
 被害者達の所に戻ってから程なく、二人は戻ってきた。
 無傷な戦士とは対照的に傷だらけな勇者。
魔法使い「割と無事だよ」
僧侶「えぇ、少なくとも傷ついたりはしていません」
 周りの心配をしている勇者が多分一番の重傷だ。
僧侶「~~」
 僧侶が勇者に回復の呪文をかける。
戦士「まさかオークの群にオーガの群まで混じっているなんてな」
魔法使い「あなたにはなんの障害にもならなかったでしょ」
 この男はオーガとは格が違いすぎる。
 例えオーガが束になって彼に襲いかかったとしても、その戦斧の餌食なった数多くの者達の末席に加わるだけだ。

75 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 22:43:39 ID:RtyLVs8A
戦士「今回は勇者の手柄だ」
魔法使い「どういう事?」
僧侶「勇者さんたら、回復を施したらすぐに寝てしまいましたわ。 あれ程憔悴するなんて、いったい何があったのです?」
 戦士と話していると、勇者に回復を施した僧侶が戻ってきた。
戦士「群のボスだったオーガの変異種と一騎打ちをしたくらいだ」
 戦士の話によると、この混成群による一連の騒動は一体の強力なオーガの変異種によって引き起こされた事らしい。

76 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 22:44:24 ID:RtyLVs8A
魔法使い「あなたなら労せず倒せたんじゃ?」
 勇者の実力でオーガの特殊な個体を相手にしたのなら、五体満足のあの状態でも御の字だろう。 よくやったといっても良いくらいだ。
 しかし、目の前にいるこの無骨な戦士なら何の問題もなく倒せる筈である。
 なぜ?
戦士「俺は終わった人間で、アイツはこれからの人間だ」
 戦士がぽつりと呟く。
戦士「それに、あんたが思ってるよりアイツは強い」
僧侶「えぇ、そして彼ならばきっと誰よりも強くなれる筈です」
 わからない……。
魔法使い「僕には君達がよく分かんないよ」
 なんだか居心地が悪いや。
 この人達を見てるとどうにも胸がもやもやとスッキリしないし。
 こんな時どうすればいいんだろう?
 僕には、分からないよ……。

77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:03:01 ID:Tll44e0U
支援!

78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:03:25 ID:RtyLVs8A
―――――――――――――
―――――――
魔女「これが最初かな」
 魔女は苦笑いを浮かべて言いました。
 塔の窓からは夕日が射し込んでいて、安楽椅子に腰掛けた魔女の顔は優しそうに見えます。
少年「話を聞くと、魔女はなんだか子供っぽいね」
 友達を作るのが下手な子供みたい。 と言いそうになりましたが、これは言いませんし、言えません。
 言ったら怒られちゃいますからね。

79 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:03:59 ID:RtyLVs8A
魔女「そりゃあ、その頃の僕は花も恥じらうお年頃の可憐な少女だからね、子供らしさがあって然るべきさ」
 そうです。 今の魔女は見た目こそ僕と同じくらいですが、僕のお爺さんの、そのまたお爺さんと同じくらい昔から生きているんです。 本当ならしわくちゃどころじゃないですもの。
魔女「なんだか失礼な事を考えていないかい?」
少年「ううん、僕はそんな事考えてないよ?」
 えぇ、神様に誓います。
 神様なんて居るか居ないか分からないから誓った所で問題は無いですよね?
 嘘は嫌いなんだけど、しょうがないですよね。

80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:05:37 ID:RtyLVs8A
少年「それより、そんな魔女がどうして仲良くなれたの?」
魔女「そんな、というのも酷い言い方だ」
 魔女が栗鼠みたいに頬を膨らませてます。 最近気づいたのですが、本気で怒ると、頬は膨らまずに眉間に皺が寄ります。
魔女「まぁいいか」
 やっぱりね。
魔女「仲が良かった、と言われると疑問だけど、彼らを認めることができたのはその後の事さ」
少年「?」
魔女「妖精の村にみんなと行った時に、色々とあったんだ」
 魔女はまた、苦笑いを浮かべました。
 すこし、嬉しそうでした。
―――――――
――――――――――――

81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:06:36 ID:RtyLVs8A
今回の更新は以上となります。

82 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/17(金) 23:10:08 ID:Tll44e0U
まさかの少年!
更新乙乙ー!

83 :以下、名無しが深夜にお送りしますよ:2012/08/18(土) 03:19:23 ID:oFlK.ZeU
俺も魔女と暮らしたいなぁ...

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