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百物語2016

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Part10
222 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:20:12.95 ID:d+jFkzTK0
【第六十話】はちじゅういち ◆HGrtNHC8S6 様
『金縛り』
中学生の頃、しょっちゅう金縛りにあっていました。
その日も金縛りで目覚めたのですが、なにかいつもと違うと感じ、目を閉じたままでした。
すると頭をわしづかみにされたような感覚と共に、グイと引っ張られたのです。
ずりずり…布団から体が出て、畳の上を引きずられていきます。
ちょうど季節は夏。窓が開いていて外の川の流れる音がハッキリと聞こえてきました。
「このままでは連れて行かれる」と思った私は、心の中で「とまれ」と念じました。
すると引きずられていた体が止まり、一瞬で布団の中に戻ったのです。
ホッとした瞬間、それは起こりました。
無数の平手が私の体を打ち始めたのです。痛みがリアルに伝わりました。
この痛さは夢ではない、目を開けるのはやばいと思い、そのまま耐えていました。
おそらく時間にして1分程度だったと思いますが、感覚的にはかなり長く続きました。
途中で強く閉じていたはずの目が薄く開いてしまい、その瞬間
「鬼」と私は認識しています。それがほんの一瞬だけ視界に入りました。
だめだ、これは見てはいけない。再び強く目をつぶりました。
それからの記憶はありません。
今ではほとんどそういった現象は起こらなくなりましたが、
あの平手打ちの痛みを忘れることはできません。
【了】

224 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:23:21.34 ID:d+jFkzTK0
【第六十一話】くらね ◆dKK.cBPcFU 様
『笑う闇』
飲み友達に聞いた話。
詳細は話せないようだが、学生時代に彼はとある施設に数日間泊まり込んで、施設管理のアルバイトをしていたそうだ。
その建物の裏手には、今はもう閉鎖した廃病院が、建物だけ残っていた。元々は精神科の病院だったそうだが、とある不正が明るみに出て閉鎖してしまったらしい。特に人死にが出たわけではないとのことなので、そちらは割愛しておく。
建物裏の廃病院に関連してかは知らないが、彼は奇妙な体験をしたそうだ。
ある日の夜、彼はもう寝ようとシャワーを浴び、電気を消して、布団に横になって目を瞑っていた。寝る前にビールをあおっていたこともあり、すっと眠りについたはいいのだが、夜中にふと目が覚めた。
その時彼の顔の前15cmほどに、黒いもやのようなものが浮かんでいたのが見えた。暗闇の中でもはっきり見えるほど、それは黒く、暗かったという。
寝ぼけているのかなと思い、そのままぼーっとしていると、確かにその影がニヤッ、と笑ったような気がした。
かと思うと、白い細い腕が二本、にゅっと飛び出し、彼の首をぐっと絞め始めたそうだ。
必死で振りほどこうともがいたが、まるでゴムのように腕がしなって振りほどけない。咄嗟に掴んだ枕元の目覚まし時計を掴んで、思いっきり腕に叩きつけると、腕が離れた。
彼はそのまますっと脱力し、眠っていたのか気絶していたのか、気がついたら朝になっていた。
薄れゆく意識の中、まるで錆び付いた車イスを漕ぐような音が、ぎぃーこ、ぎぃーこ、とベッドから遠ざかっていくのが聞こえたという。
あれ以来寝るときは近くに必ず武器になるようなものを置いてるんだ、と、彼はビール片手に笑っていた。
【了】

226 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:27:50.97 ID:d+jFkzTK0
【第六十二話】ふらんく ◆WiTrmMMqSY 様
『家鳴り』
子どもの頃からいつも家鳴りがしていた。バキッ ボキッと毎日毎日。
それが普通なんだと思っていた。
祖父がホームに入って亡くなるまで、むやみやたらと家鳴りがしていたが、丁度引っ越したばかりで新しい家だからなのかと思っていた。
祖父が亡くなる前後、柱でも壊れてるのかと思うくらいバキバキすごい音がしていた。
その祖父も亡くなって暫く経ったころ、やたらと静かな事に気がついた。
アレ?家鳴りってしないの?前の家も古い家だったから家が落ち着いたからだとは思えない。
そういえば昔、幽霊が見えるとかちょっと聞いたことがあったけど、病気で死にかけた時からだとも聞いたけど、聞き流してた。
前の家に女の人が居てね、くっついちゃったからいつも灯りをつけて寝るんだって本当に煌々と毎日電気をつけたままで寝ていたっけ。
またまたー冗談をと思ってた。
あれ?じゃあその人が居るから鳴ってたの?祖父と一緒に行っちゃったの?それともどっかに行っちゃったの?
霊感ゼロのお墨付きを霊感持ちの人から保障されている私の周りでずっと起きていたことでした。 ちなみに、周りで霊がどんちゃん騒ぎしてもあなたには何にもわからないと思うよ、との言葉が残念なようなホッとしたような。
でも絶対霊スポットなどには行かない私です。連れてきて誰かにつけても悪いしね。
【了】

228 :50(ななほし) ◆YJf7AjT32aOX :2016/08/27(土) 21:31:32.66 ID:W3Qnqdi40
【第六十三話】『古戦場』
霊感持ちの友人Aと出かけた時の話。
以前、Aと関ヶ原まで出かけたことがあった。
合戦関係のイベント最終日のことだった。
出かけるのが遅くなってしまい、到着したのはイベントが終わる直前の夕方。
とりあえず古戦場を一通り周り、最後に行き着いたのは石田三成の陣跡、笹尾山だった。
ここには、小高い山の上にまで登ると古戦場一体を俯瞰できる展望台がある。
夕暮れでだんだん足元の見えにくくなる中、Aと僕は展望台のある場所まで登りきり、夕闇の中に消えて行こうとする古戦場を見下ろしてしばらく沈黙した。
お互い、かつてそこで繰り広げられたのであろう戦に思いを馳せていたのだが、いつになってもAが話す気配はない。
何気なしに隣のAを見てギョッとした。
Aは泣いていた。
どうしたのかと聞いても、首を振るだけ。
理由はわからず、ただただ悲しいのだという。
僕は泣きじゃくるAを引っ張って山を降り、そのまま帰路についた。
後日、その時のことについて尋ねたが、本当にいきなり何かが襲ってきたように悲しくなり、無性になきたくなったのだという。
Aはその日のそのあとのことをあまり覚えていなかった。
古戦場に残る数多の感情たちが、Aに何かを伝えたかったのかもしれない。
【了】

230 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:34:18.79 ID:d+jFkzTK0
【第六十四話】 ほうらい ◆o37Skt5OUw 様
『沖縄の友人の話1』
サトウキビ畑で普通に耕運機で、骨がでるような沖縄で育った友人の話。
つぶれたけど、U市にあった
夜の船着き場で先輩らとビーチパーティーを7人でやってたそうだが、先輩の2人が海の3?4mあたりで
溺れてる子供がいるって!!って言いだして、飛び込もうとした。
7人のうち先輩2人しか見えないようで、友人含めた他の5人はみえない。
波を跳ねる音とも違う、でも誰かが溺れてる音はきこえる。先輩は助けて?って声も聞こえた。
残り5人のうち1人は近くの民家に110番の電話を借りにいった。
友人含めた4人は、何も見えないんでぼーっとしてた。
その民家のオッサンがきて、「子供が溺れて死にそうなんだ!」って叫んでる先輩らに
「見ろ、あの顔を見てそう言えるのか」って
ライト当てたら子供の助けて、助けてって表情が笑ってる。
そうやって年に何人も、溺れさすのがいるからってオッサンの話を聞いた。
【了】


232 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:37:49.97 ID:d+jFkzTK0
【第六十五話】ほうらい ◆o37Skt5OUw 様
『沖縄の友人の話2』
有名な廃病院に、中2の夏休みに行ったそうだ。
昼の2時くらいのときに探索してて、、一時間くらいでラクガキとかゴミがあって、何もないし帰ろうかって、
5階建てのとこで、正面玄関を出て30メートルくらいで、
5人のうちの一人が、「なんかいる」って言いだした。
女の人が30m 20m 5m もう目の前にいるって、「あと50cmって…」まじビビったとか。
4人は何も見えないが、そいつのネックレスが浮いてる。
「お前からかってんだろっ」て言ったら、そいつのネックレスが3秒くらい浮いてた。
浮いててちぎれた。脱兎のごとく逃げたそうだ。
そのあとに、持ち主が「そのネックレスは大事なものだ。探してくれ」って
10分後くらいにソレを拾いにいこうとしたら、どこにもなかった。
一人が樹の上に引っかかってる「…あのネックレスってお前のじゃね?」
そしたら、もう帰ろうって帰ったそうだが、全く違う時期に全く違う肝試しの連中がその場所で白骨死体をみつけた。
死後3年だったらしい。
【了】

234 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:43:48.19 ID:d+jFkzTK0
【第六十六話】 ほうらい ◆o37Skt5OUw 様
『食文化~沖縄の友人の話3~』
(1/2)
友人の弟が動物を飼う喜びを、お爺が食べる喜びを感じていた。
弟が小学4,5年のとき、猫を向かい入れる。 いつも弟が下校するときは300メートル先から待っていて、
寝るときはいつも弟のお腹が好き。とてもいい子だった。
ある日、猫のフズが居なくなって、友人は弟と探したが見つからなかった。
家庭の事情で、お爺の家にやっかいになってた2人はお腹空いたって夕飯を食べてた。
「フズはどこだろっ?探したんだけどお爺みた?」って聞いたら、
お爺は「いまお前が食ってる野菜炒めの肉がフズだぞ」
弟はキッチンで肉だけ泣きながら取って、せめて畑の隅っこに埋めようと裏庭に行ったら真っ黒に焼け焦げたフズの頭部があった。
埋めてお線香立てたけど、弟はショックで一週間くらい学校を休んだ。
ある日、お爺が裏の畑を耕すからってまとめて耕運機で耕したら骨が散らばって、どこにいったのか分からなくなった。
弟は落ち込んで家に居るより、学校がいいって通うようになった。
そのあと弟はウサギを飼いだした。
「アルプスの少女ハイジ」から名付けた「ユキ」ってウサギだった。
ウサギは迎えに来れないし、檻の中だし随分と警戒しながら飼ってた。

235 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 21:46:22.22 ID:d+jFkzTK0
(2/2)
ある日、夕飯のメニューはスープだった。
ユキはスープになっていた。
友人がなにかの用事で裏庭で、真っ黒に焼け焦げたユキらしき頭部があったのを見たから、「もしやこのスープの肉は」って思ってた。
脇にバーナーが置いてあったそうだ。
お爺は「ユキ美味いな。ユキ、美味いだろ?」弟はキッチンで肉だけ泣きながら取ってた。
弟はショックで一週間くらい学校を休んだ。
6年たったころ、お爺が危篤状態になった。3か月入院してて、親戚みんなでお見舞いに行った帰りに、
弟が忘れ物したって姿を消したあと、看護婦さんが慌てて来て、聞けば弟がお爺の人工呼吸機のチューブを抜いていた。
食べ物の恨みがあったとはいえ、医療費の関係もあってそのままでも半年持たなかったから許された。
かつて沖縄では割りとポピュラーに赤犬(茶色い毛の犬)を食べてたらしい。
(一世代前くらいだと戦後の食糧難のだからかな?と思ったが、少なくとも彼の集落ではよく食べてた)
彼曰く、熊を食うのと同じ感覚らしい。でもお爺は何でも食べた。
【了】

237 :本当にあった怖い名無し:2016/08/27(土) 21:49:51.80 ID:d1a7lOxG0
第六十七話「屋根の上の飛行機」
僕が小学2年生の時。夏休み前の学校で体験した話。
給食を食べ終えた昼休み。
二階の校舎の廊下から何気なく外を眺めていた。すると民家の屋根の20メートルほど上空を、強く輝く飛行物体がゆっくりと旋回しているのが見えた。
ゆ、UFOが、真っ昼間にこんなに堂々と空を飛んでいる?
驚いて見ていると、太陽光線の反射から抜け出した飛行物体が、本当の姿を現した。
それはただの飛行機だった。そう、ただのジャンボ旅客機。
でもオカシイ。そのジャンボ旅客機は、セスナ機ほどの大きさしかない。
小さなジャンボ旅客機が、民家の屋根に着陸するかのように、低くゆっくりと旋回している。
奇妙なことに、エンジン音が全く聞こえない。
セスナ機ほどの大きさで、エンジン音がしないということは、これはハングライダーだ、そうに違いない。
そう思いよく観察して見ることにした。
しかしその飛行機は、どう見てもジャンボ旅客機にしか見えない。
ジャンボ旅客機そっくりのハングライダーが開発されて、それの試験飛行なのか?
それにしても、こんなに低いところを飛んで、法律に違反してないのか?
墜落したらどうするんだろう?
小学2年生ながら、いろいろな不安が頭をよぎり、見ている僕のほうが怖くなってしまった。
僕の心配をよそに、小さなジャンボ旅客機は、あっという間に雲の中へ消え…たりはしなかった。
その小さなジャンボ旅客機は、低い高度を保ったまま、悠然と飛び去っていったのだった。
ーーー「終」ーーー

240 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:00:32.28 ID:d+jFkzTK0
【第六十八話】 もち ◆m2nIThBwKQ 様
『すれ違った』
(1/3)
学生時代の友人のKは早朝のジョギングを日課にしていました。
当時住んでいたアパートから1kmほど離れたところにある公園。
まずは公園までゆるいジョグで向かい、公園内にあるちょっとした池の周りを
周回します。5周ほどすると大体トータルで5kmくらいになるので
そのノルマを終えたらまた自宅まで戻る、というのが彼の定番ジョギングコースでした。
時間は早朝。早ければ5時過ぎには起床して身支度を調えて出ていました。
池の周回コースは路面に100mごとのラインが書かれていて
しっかりアスファルト舗装もしてあるので、早朝の公園には彼と同じように
ジョギングを楽しむ人達がそれなりにいたのですが、さすがに5時台には数は少なく
彼がノルマを終える頃に、ジョギングウエア姿の人が集まってくる
といった感じだったそうです。
その日、Kが目を覚まして時計を見ると時刻は午前4時を過ぎたところでした。
「走るのにはまだ早いよなぁ」と考えたそうですが、結局は支度をして出かけました。
外はまだ薄暗く、街灯も点いているような中を公園に向かってのんびりとジョグ。
公園に入るといつもの池の周回コースを走り出しました。
一周目、さすがにこの時間はまだ誰も走っていません。
二周目、そろそろ明るくなりつつある空を見上げながら、コースを文字通り独走。
そして三周目に差し掛かったところで、彼の先を歩く男性の背中を見つけました。

241 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:02:08.75 ID:d+jFkzTK0
(2/3)
男性はのんびりと歩いているので、軽いジョグのスピードでもすぐに追いつきます。
Kは男性を追い抜き様に、いつもそうしているように「おはようございまーす」と
挨拶をしながら男性を追い抜いて走り続けました。
男性から挨拶は帰ってきませんでしたが、特に気にすることはありませんでした。
三周目を終えて四周目、何事もなく周回を終えます。
汗をタオルでぬぐいつつ五周目に入って直線に入り間もなくすると、
先程挨拶をしたと思しき男性がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。
六十歳過ぎくらいの帽子を被った、Yシャツに灰色のスラックス姿の男性は
Kに気がついたのか、軽く手を挙げて会釈したそうです。
そして距離が近づき、すれ違う手前でKも会釈をしたのですが、すれ違うその瞬間。
「はやくみつけてくださいね」
その男性は穏やかな声でKにそう言ったそうです。
当然Kは「なんのことだ?」と思ったのですが、5周目は少しペースをあげて
走っていたので、そのまま走って行きました。

242 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:05:13.83 ID:d+jFkzTK0
(3/3)
Kが五周目を終えて深呼吸を繰り返しながら公園出口へと向かう道すがら
公園の風景を眺めているとふと妙な物が視界に入りました。
太い枝ぶりの大きな木がいくつもあるのですが
そのうちの一本の木の下に「人が浮いて」いたのです。
Kは「最初、なにがそこにあるのか理解が追いつかなかった」と私に話しましたが
歩きながら木の方へ近づくと、「それ」に気づいてしまったそうです。
それは「浮いている」のではなく枝に結んだロープに吊られた人間だったのです。
Kは動揺しながらも、携帯電話で119と110に通報したのですが
警察と救急車が到着するまで現場を立ち去るわけにもいかず、
しばらくその場にいたそうです。
「すれ違ったあのおじさんだったよ」
「俺にみつけてくれって頼んだときには、もう亡くなっていたんだろうなぁ」
Kは第一発見者になってしまったので、その後色々面倒もあったそうなのですが
「ひょっとしたら、止めることもできたのかなぁ……」
そう語ったKの、なんともいえない沈痛な表情は今でも忘れることができませんーー。
【了】

244 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:09:39.77 ID:d+jFkzTK0
【第六十九話】 もち ◆m2nIThBwKQ 様
『喫煙所にて』
(1/3)
私自身の体験です。怪談と呼べるかどうかは疑問なのですが……。
まだJRの各在来線のホームに喫煙所があった頃の話です。
一応スタンド灰皿が用意されているとはいえ
それでもスモーカーは文字通り煙たがられていましたので
ホームの両端に白線で囲まれたスタンド灰皿が設置されていて
そこが喫煙所になっていました。
飲み会の帰りだった私は最寄り駅で降車して、すぐに喫煙所に向かいました。
煙草飲みは酒が入ると喫煙量が増えるものでして「早く一服したい」という一心で
冷たい風が吹き込むホームをまだ火をつけていないタバコを咥えたまま
改札へ向かう人の中を逆走しながら早足で歩いたことをよく覚えています。
喫煙所につくと、握りしめていた百円ライターでタバコに火をつけ深呼吸。
「ようやく落ち着いた」などと考えながら、スタンド灰皿に灰を落としました。
喫煙所には他に人はおらず、何の気なしに見上げた電光掲示板には
10分後の快速がこの駅を通過することを報せていました。

245 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:11:04.51 ID:d+jFkzTK0
(2/3)
タバコも短くなり、さて行くかと改札へ向かう階段に足を向けようとしたとき
「すみません、火を貸していただけませんか?」
と声をかけられました。
声の主はスーツ姿の初老の男性。」申し訳なさそうな表情を浮かべて
指に火のついていないタバコを挟んだ右手で、私を拝むような姿勢で立っていました。
私は「あ、どうぞ」と百円ライターを渡したのですがなかなか火がつきません。
ホームに吹き込む風のせいもあるのかと、男性はライターを左手で覆うようにして
何度もドラムを回していましたが、それでも火はつきません。
まだガスは十分に残っていたので、使えないことはないはずです。
男性は諦めたのか「さいごに一服したかったんですが」と苦笑しながら
ライターを差し出して来たのですが、同じスモーカーのよしみとでもいいますか
こちらも申し訳なく思って「差し上げますよ。ガスはまだありますし」と返しました。
男性は「すみません、ありがとうございます。ありがとうございます」と
かえってこちらが恐縮してしまうほど深々と頭を下げてきたのですが
明らかに年上の男性にそこまで頭を下げられては、こちらも複雑な気分になります。
私は「いえいえ、それじゃ」などと言いながら、喫煙所を後にしました。

246 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2016/08/27(土) 22:13:29.18 ID:d+jFkzTK0
(3/3)
改札へ向かう階段をのぼり、自動改札に切符を流し込んだ直後でしょうか。
チャイムの後に「お客様におしらせします」と男性駅員のアナウンスが流れ
私がさっきまでいたホームを通過する予定だった快速が
人身事故により緊急停車したことを告げました。
私は「え……」と足を止めて、繰り返されるアナウンスを確認しました。
そして「『さいご』に一服したかったんですが」と苦笑した男性の顔を思い浮かべ
まさか、とは思いつつも、薄暗い気分になり、逃げるように駅から離れました。
あの男性が快速を止めてしまったのか、『さいご』に一服できたのか。
それらを確認する術はありません。
ただ、その後私はホームの喫煙所に立ち寄ることはなくなり
今ではホームの喫煙所自体が無くなりました。
今から十年ほど前の出来事ですーー。
【了】

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