乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
38: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:25:53 ID:spmolqlGjY
恭太「――まいったなぁ」
河川敷に座り、スマホを操作する
恭太「ここ、全然電波とんでねーじゃん。しっかりしろよクソ●トバンク」
千織「私も繋がらないや」
恭太「ていうかさ、何で俺たちこんなとこに来ちゃったんだ?全然覚えてないんだけど」
千織「・・・」
どうやら恭太には、以前の千織と同様、ここに来る直前の記憶がないらしい
千織(今度は、私覚えてる・・・。あの男の子にチョコをあげたら、ここに来てしまった・・・)
恭太「とりあえず、どっかの家に電話借りようか」
と、その時
目の前の河川から、ばしゃんと大きな音がした
39: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:31:03 ID:spmolqlGjY
???「あー、はらへったな・・・・」
何かが、川の中から這い上がってくる
千織「・・・!」
恭太「な、なんだよあれ・・・」
暗がりではっきりとはみえないが、人の形ではないことはわかる
いや、手足のようなシルエットはみえる
???「・・・」
それは、こちらに気づいたのか、じっと見つめてきた
40: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:35:21 ID:spmolqlGjY
千織「お、沖くん、」
そでをつかむ。嫌な予感がする
凝視すると、それの姿が把握できた
全長2mほどの大きな魚に、手足が生えている
恭太「―逃げるぞ!!」 ダッ
千織「きゃっ」
危機を察知し、恭太は千織の手をつかみ逆方向へ走り出した
同時に、魚人も無言でダッシュを切り追いかけはじめる
41: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:40:50 ID:spmolqlGjY
恭太「なっ、なんだよあの化け物っ・・・」
千織「沖くん、列車に戻ろう!」
恭太「もう出発してる!無理だ!」
暗い土手を、無我夢中で走る
あの化け物がどこまで追ってきているのか、確認する余裕もない
魚人「はい、追いついた」
「!?」
突如、背後から肩をつかまれ、千織は地面に尻もちをついた
42: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:46:20 ID:spmolqlGjY
恭太「ちおちゃん!!」
魚人がニタニタと笑い、千織の首ねっこをつかむ
恭太「てっ、てめぇ!ちおちゃんをはなせ!!」
叫ぶが、ガタガタと足が震えている
魚人「まさか人間を見つけるなんてなぁ・・・。幸運だぜ」
千織「沖くん、逃げて!!」
次の瞬間
ドゴッ!!
恭太「う、」
千織「!!」
恭太は腹に拳を入れられ、バタリと地面に崩れおちた
43: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:46:40 ID:ufTVIcJVgc
―――――
千織「――ん・・・」
目を覚ますと、そこは薄暗い部屋の中だった
千織「・・・!?」
身体の自由がきかない
手足が縄で拘束され、口にはテープが貼られている
千織「んっ、んっ」
必死にもがくが、一向に縄がほどける気配はない
千織(沖くんは・・・!?)
44: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:49:32 ID:ufTVIcJVgc
まわりを見回すが、恭太の姿はない
ダンボールがそこら中に積まれている
すると
ギイイイィ・・・
千織「!」
部屋の扉が開いた
45: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:53:08 ID:ufTVIcJVgc
入ってきたのは、魚人と、
千織(車掌さん・・・!?)
あの、車掌だった
魚人「あ、起きてるじゃねーか」
ニタニタと笑いながら近づき、千織の顎をつかむ
魚人「てめぇは女だからなぁ・・・。高値で売ってやるぜ」
千織「・・・!」
46: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:56:33 ID:ufTVIcJVgc
魚人「オレの荷物は、これと、これと、この奴隷だ」
2つのダンボール箱と千織を指さす
魚人「ミヤコ駅まで運んでくれ。くれぐれも人間だからって食ってくれるなよ」 ケラケラ
車掌「かしこまりました」 ペコリ
車掌が会釈すると、魚人は部屋を出て行った
千織「んーっ、んーっ」
車掌もそれに続こうとするのを、必死で止める
47: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 21:03:20 ID:ufTVIcJVgc
千織「んー!んんーっ!」
車掌「・・・」 ハァ
小さくため息をつき、千織の方へ振り返る
車掌「君を助けることはできない。君はこの貨物車両に積まれた『荷物』だ」
千織「んーっ!んーっ!!」
車掌「これからは、魚人の奴隷として生きていくことだ」
バタン
慈悲もなく、車掌は出て行った
48: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 23:53:30 ID:spmolqlGjY
魚人「いやー、にしても、人間なんて珍しいモン見つけるなんて超ついてるわぁ。そう思わねえ?」
列車内をご機嫌で歩く
車掌「そうですね」
魚人「しかも2人だぜ2人!たまに人間が迷い込んでも誰かにとられちまうからなぁ」
車掌「運ぶのは1人だけでよろしいのですか?」
魚人「あぁ、男の方は今晩の夕飯だ。母ちゃんに蒸し餃子にしてもらうんだあ〜楽しみだぜ」
車掌「そうですか」
49: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:00:11 ID:spmolqlGjY
ゴトン、ゴトン・・・
音を立て、列車が走りはじめる
千織が閉じ込められているのは、最も後続の貨物車両だった
千織(どうすれば・・・)
千織(どうすれば、いいんだろう・・・)
どうやら自分は、どこかで奴隷として売られてしまうらしい
千織(沖くんは、無事なのかな・・・)
そのとき
「にゃ〜〜ご」
千織「!」
1匹の黒猫が、部屋の隅から姿を現した
50: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:03:26 ID:spmolqlGjY
千織(ね、ねこ・・・?なんでこんな所に・・・)
黒猫は千織に歩み寄ると、ペロリと千織の頬をなめた
千織(かわいい・・・)
千織「んー、んー」
黒猫「にゃー」
千織「んー」
黒猫「助かる方法、教えてあげようか」
千織「!?」 ビクッ
千織(しゃしゃしゃ喋った・・・!?!?)
思わず身をのけぞり、猫から距離をとる
51: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:08:38 ID:spmolqlGjY
黒猫「なに?知りたくないの?」
千織「・・・!」
ブンブンと首を横に振った
急な出来事に、心臓がバクバクと音を立てている
猫がニヤリと笑った
黒猫「いい?君を助けられるのは、この場においてこの列車の車掌、あいつ一人だけだ」
無意識にうなづく
黒猫「それ以外はどうやったってだめだ。仮にそこの窓から逃げられたとしても、君はまた別の奴に捕まるだろう」
52: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:13:20 ID:spmolqlGjY
黒猫「だから、君はあいつに必死に頼むんだ。『私を買ってください』って」
千織「・・・!?」
黒猫「生きたかったら、覚悟を見せな」
ベリリ、と千織の口のテープを剥がす
黒猫「まずは、大声だして騒げ。騒ぎまくって、あいつを呼べ。そしたら・・・わかってるね」
千織「ま、待って!」
千織「そ、そんなこと言ったって、『お前は客の荷物だからだめだ』って、さっき言われちゃったし・・・!」
黒猫「グズグズしてるとミヤコ駅に着くよ」
そう言うと、暗闇に消えていった
53: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:30:15 ID:spmolqlGjY
――人ならざる者たちが座る車内を、手を後ろに組み、歩く
車掌「―お客さま」
タバコをふかしているカエル男の前で止まる
車掌「この列車は、全席禁煙でございます」
蛙男「あぁ?」
車掌「おタバコはおやめください」
蛙男「いいじゃねえか、タバコくらい。こちとらちゃんと乗車券とって乗ってんだ」
車掌「乗車券を持っているからといって、列車内の決まりを破っていい理由にはなりません」
54: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:33:02 ID:spmolqlGjY
蛙男「てめぇ、車掌の分際で客に文句言うのか」
ギロリと車掌をにらむ
車掌「この列車の規則を守れないのであれば、即刻、降りて頂きます」
蛙男「あんだとぉ!?」
立ち上がり、車掌の胸ぐらをつかんだ
他の乗客たちもざわつき始める
蛙男「俺は今、イライラしてんだ。ストレスたまってんだよ、わかるか?タバコくらい吸わせろや」
55: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:36:14 ID:spmolqlGjY
車掌「そのような個人の理由は配慮致しかねます」
蛙男「あぁそうかい!じゃあ消せばいいんだな、わかったよ」
そういうと、蛙男は床にタバコを落とし、グリグリと足でふみつけた
蛙男「これで満足だろぉ?んん?」 ニヤニヤ
車掌「・・・」
車掌「次、規則を破ったときは容赦致しませんので、ご理解ください」
そう言い、タバコの吸い殻を拾った、そのとき――
「わーーーーっ!!!!!」
「!?」
56: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:40:31 ID:spmolqlGjY
突如、大きな声が列車内に響いた
乗客がみなぎょっとする
「わー!!わーー!!わーーー!!!」
ドタドタ、バタン、ガッシャーン!!!
それと同時に、何か物が倒れたり壊れたりするような音がする
どうやら後続の車両からのようだ
車掌「・・・なんなんだ」
小さく舌打ちをして、歩き出した
57: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 21:47:11 ID:spmolqlGjY
千織「わーわーわー!!わーーっ!!」
必死に大声を出し、騒ぎ立てる
手足は拘束されたままなので、まるでミノムシのようにダンボールに体当たりする
千織「・・・」 ゼェゼェ
千織「わ・・!」
車掌「静かにしろ」
仏頂面をした車掌が部屋に入ってきた
車掌「こんなに散らかして・・・人の仕事を増やさないでもらえるか」
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