乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
291: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:09:45 ID:.QFQUZNLxc
千織「・・・!」
少女「ずっと怖かった・・・ずっと寂しかった・・・ずっと帰りたかった・・・」
千織「あなたは・・・」
少女「でも、限界がきてしまったの・・・それで、少し、身体を壊してしまったの」
少女「あなたの身体・・・うらやましいな・・・」
そう言って、少女は両手を千織の頬へ伸ばした
292: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:11:03 ID:.QFQUZNLxc
次の瞬間、
「そこまで」
「!」
聞き覚えのある声と同時に、少女の喉元に剣先がつきつけられる
千織「車掌さん・・・!」
車掌が静かに佇み、少女を制止していた
少女「・・・」
少女「・・・誰よ、あんた・・・」
293: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:12:12 ID:.QFQUZNLxc
車掌「この人間の主です。申し訳ありませんが、私の許可なく彼女に手を出すのはやめて頂きたい」
少女「主・・・?あんたが・・・?」
車掌「はい」
少女「証拠は?」
車掌「千織。言いなさい」
千織「は、はいっ」
促され、あわてて口を開く
294: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:13:16 ID:.QFQUZNLxc
千織「わっ、私の主は、車掌さん、です」
車掌「もう少しまともに言えないのか?」
千織「す、すみません・・・!わ、私は車掌さんに買われた身です。ので、列車で働いてます」
車掌が来てくれた驚きと嬉しさでパニックになっているため、うまく言えない
車掌「・・・」 ハァ
車掌「・・・残念な出来ですが、お聞きの通り、彼女の所有権は私にあります」
少女「・・・」
295: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:14:39 ID:.QFQUZNLxc
少女「・・・では・・・」
少女「・・・彼女を買うと、仰って、います・・・」
千織「!?」
車掌「・・・へえ」
車掌「それは誰が言ってるんですか?あなたですか?」
少女「・・・」
様子が変わり、立ったままうつむいて喋らなくなった
296: ◆e.A1wZTEY.:2018/5/30(水) 21:17:50 ID:.QFQUZNLxc
車掌「・・・ちっ」
舌打ちすると、車掌は気絶しているブリアンに歩み寄り、身体をつかんでぶんぶんと振った
千織「わっ、あの、ちょっとっ」
車掌「いつまで寝てる、さっさと起きて状況を説明しろ」 ブンブン
ブリアン「・・・んげ、んげげっげえ」
うめき声とともに、ブリアンが目を覚ました
千織「ブリアンさん!大丈夫ですか!?」
ブリアン「も、もう少し丁重に扱ってよね・・・動物愛護に反するでしょ・・・」
297: 名無しさん@読者の声:2018/6/4(月) 10:45:41 ID:DYNeIVy1cE
楽しく読ませて貰ってます! ありがとう(>∀<)/
298: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:13:43 ID:DapDYfJjKw
>>297
うおおおこちらこそお読みいただきありがとうございます・・・!(^○^)
感謝感激雨あられ;;活力になります
299: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:15:28 ID:DapDYfJjKw
車掌「何のためにお前に千織の後をつかせたと思ってるんだ?お前が情報よこさないから自力でここまで来たんだぞ」
ブリアン「捕まってたんだからしょうがないでしょ・・・でも、何となくこいつの正体がわかったよ」
千織「!」
車掌「ほう」
ブリアン「今目の前にいるこの少女は、他人に乗り移ることができる。つまり、今実体をもっていない」
ブリアン「だがこいつはしつこく自分のことを人間だと主張してる。これらのことを辻褄合わせるためには・・・」
千織「人間だったけど、死んでしまった・・・?」
300: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:16:52 ID:DapDYfJjKw
千織「じゃあ幽霊ってことですか!?」
車掌「違う」
車掌「生きている者がこの世界で死んでも、何も残りはしない。あるのは“無”だけだ」
千織「??」
千織「わ、訳がわかりません・・・」
ブリアン「たぶん、この女はまだ生きてる。けど、魂だけ身体から抜き取られて操られてるんだ」
千織「!」
車掌「・・・なるほど」
301: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:19:16 ID:DapDYfJjKw
車掌「この屋敷の主・・・兎女といったか。それが、裏にいるようだな」
少女「ばれちゃった?」
俯いて黙っていた少女が不意に顔を上げ、不気味に笑った
少女「この子、人間界に迷い込んできたのを大金はたいて捕まえたの」
少女「でも、1週間くらいで自分から死のうとしちゃって。ほんと困ったわ」
車掌「・・・喋っているのは兎女か」
少女「ぎりぎり命は助けたけど、身体の方が使えなくなっちゃってねえ。でもだからって捨てるのはもったいないし、生霊化させて使うことにしたの」
302: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:21:25 ID:DapDYfJjKw
千織「い、いきりょう・・・」
少女はゆっくりと千織へ視線を向けた
少女「わかるわよね、人間の生きた魂はこの世界で本当に貴重なの。だからあなたとも会えてとっても嬉しいわ」
少女「あなた、私が買ってあげる。そろそろ生きた人間の肉体がほしいわ」
千織「こっ・・・この女の子の身体はどこにいったんですか!?まだ生きているなら・・・!」
少女「そんなこと言う必要ある?」
303: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/4(月) 19:23:28 ID:DapDYfJjKw
今度は、車掌へと目を向けた
少女「交渉しましょう。あなたの言い値を払うわ。だから、この人間をちょうだい」
車掌「・・・」
少女「本当にいくらでもいいわよ?私、お金には不自由してないの」
車掌「・・・あいにく、私も金には不自由していない」
少女「あら・・・」
少女「それもそうよね、人間を所有しているくらいだものね」
少女「それならあなたは何が欲しいのかしら?」
304: 名無しさん@読者の声:2018/6/7(木) 18:17:03 ID:qglqJZU.8Y
がんばってください C
305: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:39:09 ID:DapDYfJjKw
>>304
支援ありがとうございます!
がんばりますぞい(*^▽^*)
306: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:44:51 ID:DapDYfJjKw
車掌「お前に私が欲しいものは用意できない」
少女「・・・そう。せっかく良い取引をもちかけているのに、酷い態度ね」
車掌「取引はしない。代わりに、私はお前が所有する人間に手を出さない、お前も私が所有する人間に手を出さない。それでいいだろう」
千織「ま・・・待ってください!」
千織「車掌さん、私・・・私、この人間の女の子が生きているなら、助けてあげてほしいです・・・!!」
ブリアン「ぶっ」
車掌「・・・」
307: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:46:30 ID:DapDYfJjKw
大きくため息をつく
車掌「・・・いい加減にしろ。お前のそれは一体何回目だ?」
千織「でも、でも・・・!このまま見過ごすことなんてできません・・・!」
ブリアン「千織、自分の状況忘れてない?君、いま兎女に捕まって檻の中なんだよ?」
千織「そ、それは・・・そうですけど」
少女「・・・あなた、面白いわね。それならこうしない?」
少女「お互いの人間を交換するの。私が今使ってるこの少女をあげる。その代わり、その千織とかいう人間を私にちょうだい」
308: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:48:04 ID:DapDYfJjKw
千織「え・・・」
少女「あなた、助けたいって言ったわよね?もしかして自分は何もしないで済むと思ってた?世の中そんなに甘くないわよ」
車掌「いいだろう」
千織「・・・え?」
ブリアン「は?」
車掌の言葉に、耳を疑う
309: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:50:52 ID:DapDYfJjKw
車掌「交換してやる。こちらの人間を渡すから、その生霊になってる娘を渡せ」
千織「しゃ、車掌さ…」
車掌「人間なんて、どれも同じだ。私にこだわりはない」
ブリアン「車掌!何言ってんの!」
少女「・・・その言葉、偽りないわね」
少女「嘘をつかれたら困るから、契約書を書いてもらうわ」
ふわりと1枚の紙とペンが宙に舞い、車掌の前に落ちる
310: ◆e.A1wZTEY.:2018/6/8(金) 20:53:28 ID:DapDYfJjKw
少女「その紙には呪いがかかっているの。契約を破った者は、この世界での死を迎える」
車掌「なるほどな」
何のためらいもなく、車掌はサインする
車掌「――契約完了だ」
次の瞬間、少女がばたりと倒れた
そして―――
ガタン!!
千織「ひいいぃっ!?」
床に巨大な穴が開き、千織が入った檻が落ちていった
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