乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
231: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:29:12 ID:UugzyVWfTQ
兎兄貴の家へ向かって、町中を歩く
その途中、ひときわ大きなレンガ造りの建物の前を通った
千織「…ここ、大きな家ですね」
兎男「うん。町で一番お金持ちな、兎女の家だよ」
千織「さっき、お金持ちの人が人間を所有してると言ってましたけど、もしかして…」
兎男「そうだね。ここに人間みたいなのが住んでるって話だよ」
千織「…!」
232: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:30:18 ID:UugzyVWfTQ
兎兄貴「ま、兎女がもともと引きこもりのブスだから、なかなか見かけることがないけどな」
千織「そ、そうなんですね…」
この屋敷のなかに、沖くんがいるかもしれない
窓から何か見えないか、必死に目を凝らすが、真っ暗になっていて何も見えない
兎男「気になるのはわかるけど。どーせ人間なんて俺たち庶民に手に入るものじゃないよ」
千織「そ、そうですけど。チラッと見ることとかできないかなって」
兎男「この町に住めば、そのうち見かける機会があるんじゃないかなあ?俺も見たことあるわけだし」
千織「…」
233: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:31:48 ID:UugzyVWfTQ
足を進めると、兎兄貴の家に到着した
木造の小屋を開けると―――
千織「う」
整理整頓のせの字もない、散らかった部屋の光景が広がった
生ごみもそのままでハエがたかり、洗濯物が無造作に放り出されている
兎男「兄貴ぃ!もうちょっとどうにかなんないの」
兎兄貴「しゃーねえだろ!男の一人暮らしなんてこんなもんだ」
234: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:33:14 ID:UugzyVWfTQ
兎男「こんなの千織ちゃんに嫌がられちゃうよ」
千織「はは…」
千織「わ、私…お掃除しましょうか?」
兎兄貴「まじで!?」
千織「お掃除好きなので…」
千織(なるべく拘束されないようにしなきゃ)
兎男「俺も手伝うよ!一緒にやろう」
兎兄貴「お前ら…いい奴らだなぁ…」
235: ◆e.A1wZTEY.:2018/2/26(月) 12:36:26 ID:UugzyVWfTQ
――ブリアンは窓からこっそりと彼らの様子を見つめた
ブリアン「・・・とりあえず千織がすぐに危害を加えられることはなさそうだ」
ブリアン「匿われてる場所は特定したし、人間がいるとかいう屋敷を調べてみようかな・・・?」
ヒョイッと屋根をつたってレンガ造りの屋敷の上に飛び移る
兎男たちは、ここに人間がいると話していた
ブリアン「・・・えーと、侵入できそうな場所は」
入り込めそうな隙間を探すと、壁と屋根のあいだに小さな隙間を見つけた
ブリアン「ちょっときついかなー。ま、でもいけるっしょ」
強引に体をつっこみ、ねじりながら、屋敷内に侵入した
236: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:21:39 ID:vGGqM0uMLc
ブリアンは屋根裏から中の様子をうかがった
薄暗く、ほこりっぽい
誰かが住んでいる気配はあまり感じない
ブリアン「・・・なんだか不気味で嫌だなあ」
赤い絨毯がひかれた廊下に飛び降り、歩いていく
1つ1つの部屋を軽くのぞいてみるが、どれも使われていない
237: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:23:03 ID:vGGqM0uMLc
ブリアン「・・・」
ブリアン「・・・人間どころか、兎すら住んでなさそうだけど」
ブリアン「こりゃガセネタかな」
『ガセじゃないわ』
ブリアン「!?」 バッ
気配は感じなかった
しかし、振り向くと背後に髪の長い女が立っていた
238: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:24:27 ID:vGGqM0uMLc
ブリアン「だっ・・・誰だ!」
毛を逆立てて威嚇する
少女「・・・」
少女「・・・私を、助けにきてくれたのよね・・・?」
ブリアン「は・・・?」
少女「人間を探しているんでしょう」
ブリアン「・・・あ、あぁ」
ブリアン「でも、あいにく君じゃなかったみたい。男の子なんだ、探してるのは」
239: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:26:13 ID:vGGqM0uMLc
ブリアン「だいたい君、人間じゃないよね?臭いも気配も感じないよ」
少女「・・・ひどいわ」
ブリアン「え」
少女「・・・化け物ばかりのこの世界でずっとここに閉じ込められて・・・必死に生きてきたのに・・・」
少女「私が人間じゃないだなんて・・・ひどい・・・許せない・・・」
ぶるぶると震える女を見て、背筋が寒くなった
240: ◆e.A1wZTEY.:2018/3/1(木) 12:27:40 ID:vGGqM0uMLc
ブリアン「よ、よくわかんないけど、僕は関係ないから。勝手に入って悪かったね、もう帰る、んぐっ!?」
すごい速さで体を捕まえられた
気配を感じないため反応できなかった
少女「ひとりで寂しかったの・・・」
少女「私のお友達になって、ね?猫ちゃん」
241: 名無しさん@読者の声:2018/3/3(土) 11:35:49 ID:JaP15NqWpE
更新きてる(>∀<)/
242: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:38:45 ID:18YnfYyzqU
>>241
お待たせしました!
新社会人になったので慌ただしくてorz
243: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:40:51 ID:18YnfYyzqU
――一晩があけた
掃除に疲れた千織は、貸してもらったベッドで眠りに落ちていた
千織「・・・」 スヤスヤ
兎男「ふふふ、可愛いなあ」
寝顔を眺めてにやにやする
兎兄貴「のんきなこと言ってる場合じゃねえぞ。武器の手入れくらいしとけ」
兎男「ぶ、武器?」
兎兄貴「本気でその子守ろうってんなら必要だろう。いつまでも気の優しい男じゃだめだぞ」
兎男「そ、そうだよね。頑張らなきゃ・・・!」
244: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:44:54 ID:18YnfYyzqU
車掌が乗った列車は、昨晩一度終点に到着後、再びこのキサラギ駅に向かって走っていた
車掌「・・・あと2時間で到着といったところか」
到着後は、長時間列車を駅に停めることになる
以前のように列車を線路外へ強引に走らせることは可能だが、さすがに町中へ突入させるのは無理だ
本来許されることではないが、故障などと理由をつけて停めるしかない
列車業務を無駄なく遂行したい車掌にとってはストレスが大きかった
車掌「・・・さっさと取り返して戻らないと」
車掌「ブリアンができる奴なら、千織の居場所を特定して、駅で待っていてくれるはずだが」
245: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:47:15 ID:18YnfYyzqU
ブリアンは、屋敷の薄暗い部屋で、柱にひもで括りつけられていた
意識はあるが、一晩この状態で放置されたため、暴れる元気もなくなっていた
ブリアン「くっそぉ・・・」
ブリアン「何なんだあの女・・・僕が何をしたっていうのさ」
力ない声でつぶやく
ブリアン(・・・そういえば)
ブリアン(この屋敷の主・・・兎女だったか?そいつはどこにいるんだ)
246: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:49:07 ID:18YnfYyzqU
掃除が行き届いていない部屋や廊下の様子をみる限り、生活感は感じられない
ブリアン(仮にあの女が本当に人間だったとして・・・人の臭いはいくらでもカモフラージュできるから、臭わなくても不思議じゃない。でも、気配を感じないのはなぜなんだ・・・?この世界の者でも、気配はあるはず)
ブリアン「あーもう!訳わかんね!あれか!?人間界でいう幽霊!?幽霊なのか!?!?」
少女「私は人間よ」
ブリアン「うわっ!」
いきなり目の前に現れた女にぎょっとする
247: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:52:33 ID:18YnfYyzqU
少女「・・・そろそろおとなしくなった?」
ブリアン「おかげさまで。お腹ペコペコで力が出ないよ」
少女「あら・・・かわいそうに。抵抗しないと約束するなら、ご主人様から何かもらってきてあげる」
ブリアン「ご主人様って・・・兎女のこと?」
少女「ええ」
ブリアン「この屋敷にいるの?あんたはやっぱり買われたの?」
少女「・・・」
248: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:54:17 ID:18YnfYyzqU
少女「・・・それは、」
少女「・・・喋ることを許されていない・・・ようです」
ブリアン「は・・・?」
少女「・・・」
先ほどと少し様子が変わり、うつむいてあまり口が動かなくなった
ブリアン(なんだこいつ・・・)
怪しい雰囲気に、思案する
249: ◆e.A1wZTEY.:2018/4/17(火) 20:56:32 ID:18YnfYyzqU
ブリアン「・・・じゃあさ、あんたにとっても兎女にとってもメリットになりそうなこと教えてあげるって言ったら、この縄ほどいてくれる?」
少女「…それはできないわ」
ブリアン「君たちが好きそうな、人間に関する情報だよ」
少女「・・・昨日、町中で見かけたわ。でも、私、どうしてか、外に出られないの・・・」
少女「いますぐ、会いに行きたいのに…」
ブリアン「・・・それなら」
試しに、言ってみることにした
ブリアン「僕の体を使えばいいんじゃない?」
250: 名無しさん@読者の声:2018/4/18(水) 17:17:50 ID:.9ImDJRFHc
新社会人おめでとうございまする(*´∀`*)
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