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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



149: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:46:07 ID:spmolqlGjY
>>148
支援ありがとうございます〜〜!
嬉しさのあまり深夜の追加更新します(*- -)(*_ _)ペコリ
150: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:47:42 ID:spmolqlGjY


―――目が覚めると、白い天井が見えた

「――恭太!」

恭太「…」

恭太母「あぁ良かった目が覚めて…!お父さん、お医者さん呼んできて!」

バタバタと騒がしい音がする

恭太(…ここ、どこだ…?)

まわりを見渡すと、どうやら病院のようだった

恭太(なんで、病院に…)

151: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:50:39 ID:spmolqlGjY

医者「――うん。特に異常はないですよ。念のため今日明日くらいは安静にね」

恭太母「本当ですか…!ありがとうございます」

医者「その点滴が終わったら、帰っていいですよ」

恭太母「はい」

母と一緒に頭を下げる

正直まったく状況把握ができていないのだが、どうやら俺は、まる1日行方不明+1日意識不明というトンデモ状況に陥っていたらしい

152: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:53:03 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた全然帰ってこないと思ってたら、家の前でパンツ1枚で倒れてるのよ。お母さんびっくりしちゃったわ」

恭太母「それで全然目を覚まさないでしょ。死んじゃったのかと思って、もう…」 シクシク

恭太「そうだったの…」

恭太母「あんた、全然覚えてないわけ?」

恭太「う、うん…」

思い出せない

ここ数日何があったのか、まったく


153: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:56:29 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた半裸だったけど、財布とかは無事だったしねえ」

恭太母「誰かに誘拐されたとか、集団暴行にあったとか、そんなことはないのね?」

恭太「うん、たぶん…」

身体に小さな外傷はあるものの、骨折などはしていない

恭太母「それならいいけど…気をつけてよね」

恭太「うん、ごめん心配かけて」

恭太母「千織ちゃんのことは?何か知らない?」

恭太「ちおちゃん?なんで?」

154: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:00:49 ID:spmolqlGjY

恭太母「千織ちゃんも、あんたと同じ日に行方不明になって…しかもまだ、帰ってきてないのよ」

恭太「…え…?」

恭太「ちょっと待って、それ、どういう、」

恭太母「警察も捜索しているけど、見つからないの…無事だといいんだけど」

恭太「っ、なんだよそれ!ちおちゃんに何があったんだよ!」

恭太母「そんなこと、母さんに言われても」

恭太母「多分、これから警察の人があんたに事情聴取にくるよ。同じ日から行方不明だったから」

155: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:03:27 ID:spmolqlGjY

恭太「…! そんな…」

恭太「俺、何も覚えてないし知らない」

恭太「どうしよう母さん、俺、何か悪いことしちゃったのかな、」

恭太「ちおちゃんに何かあったら俺…!」

恭太母「恭太、落ち着いて。大丈夫、大丈夫よ」

息子を抱きしめ、頭をなでる

恭太母「お母さんはあんたが無事で本当にうれしいのよ。今は自分のことだけ考えていなさい」

156: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:27:55 ID:xo/qm8TjTw

―――――――――


千織「い…」

千織「いなかった…?」

車掌「あぁ」

ブリアン「え。それってやばくない?」

千織とブリアンが目を丸くする

ブリアン「魚人に食べられちゃったってこと?」

車掌「いや。魚人は何者かに殺されていた。誰かが連れ去ったのだろう」

157: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:32:02 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そんな…!」

千織「そんな、じゃあどうすればいいんですか!? 沖くんは…!!」

ブリアン「落ち着いて。車掌のことだから、ちゃんと調べてきたんでしょ?」

車掌「…」

車掌「…魚人は銃で殺されていた。だが、この世界で銃を使える者がいるとは聞いたことがない」

車掌「連れ去ったのは魚人ではないと思う。だが、それが具体的に誰なのか私にはわからない」

千織「…!」

158: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:36:53 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そうだ臭いは!?人間の臭いがわかるんですよね!?」

車掌「広範囲で判別できるわけではない。距離が近いときにわかるというレベルだ」

千織「…」

千織はへなへなと座り込んだ

そのまま、ぼろぼろと涙をこぼしはじめる

車掌「…」

ブリアン「…あーあ」

159: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:39:58 ID:xo/qm8TjTw

ブリアン「ミヤコ駅で一晩停車してる場合じゃなかったね。すぐこっちへ戻ってくるべきだった」

車掌「…列車業務は放棄できない」

ブリアン「そりゃそうだけどさー」

黙ったまま涙をこぼす千織を見る

車掌「…」

ブリアン「…」

ブリアン「…まさか、可哀そうだからすぐに人間界に送り返してやろうだなんて思ってないよね?」

160: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:44:19 ID:xo/qm8TjTw

車掌「別に」

ブリアン「別にってなんだよ」

車掌「女に泣かれるという経験がないから、どうすればいいかわからないだけだ」

車掌は懐に手を入れると、ハンカチを取り出した

車掌「千織」 スッ

千織「…」 グスッ

車掌「…いらないのか」

千織「…鼻水が止まらないので、ティッシュがいいです」

161: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:50:26 ID:xo/qm8TjTw

車掌「そうか」

車掌は右手を上に向け、手のひらに青い光を生じさせた

すると、ボフッと音をたて、光はボックスティッシュに変わった

ブリアン「げ。精力使いやがった!」

車掌「好きなだけ使え」 スッ

千織「…ありがとうございます」

千織はティッシュを受け取ると、ちーん!と鼻をかんだ

車掌「…」

千織「…あの」

千織「しばらく、独りにしてもらっていいですか」

162: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:57:34 ID:xo/qm8TjTw

――列車はササノコ駅へ戻り、そこで一晩過ごすこととなった

ブリアン「――信じられないよ。ためらいもせず精力使ってさぁ」

車掌「しつこいな」

ブリアン「そうやって、僕がいないところでポンポコポンポコ使ってるんだね。はぁ」

車掌「なら、どうすれば良かった?」

ブリアン「女の扱いがわかってないね。抱きしめて、頭ぽんぽんで解決だよ」

車掌「理解ができないな」

ブリアン「そうかい。君には一生無理だろうね」

163: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:39:05 ID:spmolqlGjY


千織「…あの」

独りにしておいた千織が、二人のもとへ戻ってきた

車掌「泣き止んだか」

千織「はい。いろいろすみません」

泣きはらした目とは異なり、表情は落ち着いている

車掌「…?」

千織「…私」

千織「私、この世界で沖くんを探します」

164: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:40:40 ID:spmolqlGjY

車掌「…」

ブリアン「えぇえ?」

千織「誰かに連れ去られただけで、食べられたとは限らないですから。私みたいに、生かされている可能性もありますし」

千織「どこにいるのか私には想像もできないですけど、探していれば、いつか…」

ブリアン「途方もないね」

呆れた顔をしつつも、ブリアンはにやりと笑った

ブリアン「…でも確かに、この列車なら、この世界の至る所を走る。捜索には適していると思うよ」

165: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:42:24 ID:spmolqlGjY

車掌「至る所を走るが、降車するわけではない。探すことは無理だ」

千織「お客さんから情報収集するだけでもいいんです」

車掌「情報収集?乗客に対して、『人間の男を知りませんか』なんて尋ねるのか?笑わせるな」

千織「…」

千織「…やってみないと、わかりません」

千織「とにかく私は、沖くんを巻き込んでしまった責任があるので、できる限りのことをしたいんです」

166: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:47:29 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんからしたら、メリットもなくて、ふざけるなと思われるかもしれないですけど」

車掌「その通りだな」

千織「お仕事の邪魔になるようには決してしませんから… お願いします」 ペコリ

ブリアン「まぁまぁ」

ブリアン「とりあえず、千織がこの世界にいる目的ができて僕は嬉しいよ。どっちにしろ、ここで働いてもらう予定だったわけだし、いいでしょ」

車掌「…はぁ」

大きなため息をつく

車掌「お前らに、振り回されてばっかりの気がする…」

ブリアン「やだーそんなわけないじゃーん??」 ニコニコ

167: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:27:28 ID:spmolqlGjY

異空間の治安・警備にあたる組織がある

選ばれた者のみで構成される、『異界警察』

恭太を歪世界から人間界へ連れ戻したのも、彼らだった


168: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:32:11 ID:spmolqlGjY

――コンコン

隊長「入れ」

部下「はっ、失礼します」 ガチャ

部下「先日、歪世界へ人間が紛れ込んだ案件について、追加報告です」

隊長「なんだ」

部下「隊長が命ぜられた通り、人間が発見された現場に監視昆虫を潜らせておいた結果なのですが」

部下「人間を送り返した翌日、歪世界の者が現場を訪れる様子が撮れました」

隊長「ほう」

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