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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



141: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:57:13 ID:spmolqlGjY

ヒョイ、と車掌の頭の上にのって帽子をとろうとする

車掌「ブリアン」

千織「も、もしかして誤解してます!? 私、沖くんとそういう関係じゃないです」

車掌「違うのか」

ブリアン「お互いすごい心配しあってるから、そうだと思ったよねぇ」

千織「た、ただの友達です…」 カアァ

142: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:24:53 ID:spmolqlGjY

――約3時間後

列車は、終点ササノコ駅に到着した

客は皆降り、列車内は車掌とブリアンと千織のみになった

車掌「――さて、行くか」

そう言うと、列車は線路を外れ、ガタゴトと土手を走り始めた

千織「せ、線路がないのにどうやって走ってるんですか」

車掌「線路がないわけではない。一時的に線路を錬成して敷いている」

千織「す、すごいですね…」

143: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:27:00 ID:spmolqlGjY

およそ10分後

列車は数軒の家が立地する場所に着いた

千織「この中にあの魚人の家が…?」

車掌「おそらく一番奥の家だ」

車掌「密集した住宅地じゃなくてよかったな。騒ぎが大きくならなくて済む」

千織「はい」

車掌「私が降りて様子をみてくる」

千織「わ、わかりました」

144: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:29:01 ID:spmolqlGjY

車掌「ブリアン。お前は千織のそばにいろ」

ブリアン「はーい」

千織「…」

千織(沖くん、無事でいてね…)

車掌のオレオレ詐欺電話のおかげで、恭太は食べられるのを阻止されたはずだ

魚人の母親が約束を守っていれば、生きているはず

不安になりながら、手を握り締めた

145: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:32:47 ID:spmolqlGjY

車掌「――…!」

窓から家の中を覗くと、想定外の光景が広がっていた

家の中はテーブルがひっくりかえり、皿が割れ、酷い荒れようだった

車掌「…」 ガチャ

車掌は扉をあけ、家に侵入した

人の気配はない

静まりかえった家のなかをすすむと、

車掌「…!」

魚人母の死体が転がっていた

146: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:36:59 ID:spmolqlGjY

車掌「…ちっ」

車掌は家の中を歩き回り、恭太の姿を探した

しかし、どこにも見当たらない

車掌(…人間の臭いは残っているが、もうここには気配がない)

最悪の事態が頭によぎる

魚人以外の何者かに、連れ去られた可能性が高い

車掌「いったい誰が…」

この地区の一帯に住んでいるのは魚人だ

他の魚人が希少な獲物である人間を横取りした可能性はあるが――



147: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:38:44 ID:spmolqlGjY

車掌「…」

再び、死んでいる魚人母をみやった

車掌「…銃?」

魚人母の胸に撃たれた銃傷に気づく

車掌(…魚人が銃をもっているはずがない)

では、いったい誰が

車掌「…」

しばし考えると、車掌は列車へと足を戻した

148: 名無しさん@読者の声:2017/5/25(木) 22:19:25 ID:gF9oOjiWTU
支援
149: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:46:07 ID:spmolqlGjY
>>148
支援ありがとうございます〜〜!
嬉しさのあまり深夜の追加更新します(*- -)(*_ _)ペコリ
150: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:47:42 ID:spmolqlGjY


―――目が覚めると、白い天井が見えた

「――恭太!」

恭太「…」

恭太母「あぁ良かった目が覚めて…!お父さん、お医者さん呼んできて!」

バタバタと騒がしい音がする

恭太(…ここ、どこだ…?)

まわりを見渡すと、どうやら病院のようだった

恭太(なんで、病院に…)

151: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:50:39 ID:spmolqlGjY

医者「――うん。特に異常はないですよ。念のため今日明日くらいは安静にね」

恭太母「本当ですか…!ありがとうございます」

医者「その点滴が終わったら、帰っていいですよ」

恭太母「はい」

母と一緒に頭を下げる

正直まったく状況把握ができていないのだが、どうやら俺は、まる1日行方不明+1日意識不明というトンデモ状況に陥っていたらしい

152: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:53:03 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた全然帰ってこないと思ってたら、家の前でパンツ1枚で倒れてるのよ。お母さんびっくりしちゃったわ」

恭太母「それで全然目を覚まさないでしょ。死んじゃったのかと思って、もう…」 シクシク

恭太「そうだったの…」

恭太母「あんた、全然覚えてないわけ?」

恭太「う、うん…」

思い出せない

ここ数日何があったのか、まったく


153: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:56:29 ID:spmolqlGjY

恭太母「あんた半裸だったけど、財布とかは無事だったしねえ」

恭太母「誰かに誘拐されたとか、集団暴行にあったとか、そんなことはないのね?」

恭太「うん、たぶん…」

身体に小さな外傷はあるものの、骨折などはしていない

恭太母「それならいいけど…気をつけてよね」

恭太「うん、ごめん心配かけて」

恭太母「千織ちゃんのことは?何か知らない?」

恭太「ちおちゃん?なんで?」

154: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:00:49 ID:spmolqlGjY

恭太母「千織ちゃんも、あんたと同じ日に行方不明になって…しかもまだ、帰ってきてないのよ」

恭太「…え…?」

恭太「ちょっと待って、それ、どういう、」

恭太母「警察も捜索しているけど、見つからないの…無事だといいんだけど」

恭太「っ、なんだよそれ!ちおちゃんに何があったんだよ!」

恭太母「そんなこと、母さんに言われても」

恭太母「多分、これから警察の人があんたに事情聴取にくるよ。同じ日から行方不明だったから」

155: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:03:27 ID:spmolqlGjY

恭太「…! そんな…」

恭太「俺、何も覚えてないし知らない」

恭太「どうしよう母さん、俺、何か悪いことしちゃったのかな、」

恭太「ちおちゃんに何かあったら俺…!」

恭太母「恭太、落ち着いて。大丈夫、大丈夫よ」

息子を抱きしめ、頭をなでる

恭太母「お母さんはあんたが無事で本当にうれしいのよ。今は自分のことだけ考えていなさい」

156: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:27:55 ID:xo/qm8TjTw

―――――――――


千織「い…」

千織「いなかった…?」

車掌「あぁ」

ブリアン「え。それってやばくない?」

千織とブリアンが目を丸くする

ブリアン「魚人に食べられちゃったってこと?」

車掌「いや。魚人は何者かに殺されていた。誰かが連れ去ったのだろう」

157: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:32:02 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そんな…!」

千織「そんな、じゃあどうすればいいんですか!? 沖くんは…!!」

ブリアン「落ち着いて。車掌のことだから、ちゃんと調べてきたんでしょ?」

車掌「…」

車掌「…魚人は銃で殺されていた。だが、この世界で銃を使える者がいるとは聞いたことがない」

車掌「連れ去ったのは魚人ではないと思う。だが、それが具体的に誰なのか私にはわからない」

千織「…!」

158: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:36:53 ID:xo/qm8TjTw

千織「そ、そうだ臭いは!?人間の臭いがわかるんですよね!?」

車掌「広範囲で判別できるわけではない。距離が近いときにわかるというレベルだ」

千織「…」

千織はへなへなと座り込んだ

そのまま、ぼろぼろと涙をこぼしはじめる

車掌「…」

ブリアン「…あーあ」

159: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:39:58 ID:xo/qm8TjTw

ブリアン「ミヤコ駅で一晩停車してる場合じゃなかったね。すぐこっちへ戻ってくるべきだった」

車掌「…列車業務は放棄できない」

ブリアン「そりゃそうだけどさー」

黙ったまま涙をこぼす千織を見る

車掌「…」

ブリアン「…」

ブリアン「…まさか、可哀そうだからすぐに人間界に送り返してやろうだなんて思ってないよね?」

160: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/27(土) 23:44:19 ID:xo/qm8TjTw

車掌「別に」

ブリアン「別にってなんだよ」

車掌「女に泣かれるという経験がないから、どうすればいいかわからないだけだ」

車掌は懐に手を入れると、ハンカチを取り出した

車掌「千織」 スッ

千織「…」 グスッ

車掌「…いらないのか」

千織「…鼻水が止まらないので、ティッシュがいいです」

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