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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その3】
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1: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/29(土) 21:15:11 ID:.RxhzfPc96
あらすじ

永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く

遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する

南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される

敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した

一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち

かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる

穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった

忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない

友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに


89: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 21:59:49 ID:mpOxahS5ac
ザワザワ ザワザワ

裏通りのホビット2「なんだよ、これ!あんまりじゃないか!」

裏通りのホビット3「僕達の居住区を取り潰すってなに!?」

裏通りのホビット4「どうして急に!?何も悪いことなんかしてないのに!」

裏通りのホビット5「教団と国王が繋がってる…?なんなんだろ?この件と関係あるのかな?」

裏通りのホビット6「とにかくこんなの絶対に反対だ!ただでさえ、こっちに追いやられて窮屈してるのにさ!」

裏通りのホビット7「俺なんて仲間とお金を貯めて、やっとお店を出せたばかりなんだぞ!困るよ!」

裏通りのホビット8「この前の争いにも協力したのに!俺たちだって戦ったんだぞ!」

裏通りのホビット9「そうだよ!しかも司祭様は戦いが終わったら僕達も王国民として認めてもらえるって言ったんだ!嘘だったのか!?」

宣教師「嘘なんかではありませんよ」ザッ

裏通りのホビット's「わぁぁ!?」ビクッ
90: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:02:30 ID:gQj8L.R5T.
裏通りのホビット10「し、司祭様だ!」

裏通りのホビット11「これはなんなんですか!?」

裏通りのホビット12「僕達どうなっちゃうんだよ!?」

司教「お、落ち着きなさい!そんなに詰め寄るんじゃない!」アセアセ

裏通りのホビット13「いいから答えてくださいよ!」

裏通りのホビット14「教団!?王国!?どっちが決めたの!?」

宣教師「ここに書いてある内容は全くのデタラメです!」

裏通りのホビット's「え…?」

宣教師「おそらく誰かの悪戯でしょう。本気にしてはいけません」

裏通りのホビット2「じや、じゃあ居住区がなくなるっていうのは…?」

宣教師「ありえません」キッパリ

裏通りのホビット3「で、でもこれにはそう書いて…」

宣教師「ですからデタラメです。そんな話は聞いていません」

裏通りのホビット4「だ、だけど!」

宣教師「安心してください。もしそれが本当だとしたら私が許しませんから」

裏通りのホビット5「こ、ここには王国と教団が繋がってるって書いてあるぞ!裏でなんか企んでるんじゃ…」

宣教師「いいでしょう。この話が真実かどうか城に赴いて尋ねてみます」

裏通りのホビット's「……」

宣教師「教団と王国の繋がりは決して不正な物などではありません。これまで皆さんには隠し事のない活動を示してきたつもりです」

裏通りのホビット7「司祭様がそこまで言うんなら…」

裏通りのホビット8「うん…。司祭様は信用してる」

宣教師「ありがとうございます」ニコッ

司教「…いったいどうした事でしょうか?」

宣教師「今からそれを確かめに行くんです。付いてきてください!」ダッ

司教「は、走らずとも…!」ダッ
91: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:03:17 ID:gQj8L.R5T.
―――城下町(表通り)―――

宣教師「」タタタッ

司教「い、急ぎすぎっ…です。も、もう少し…ペースを……」フラフラ

宣教師「急ぐべき事態です!皆さんの信用に関わるのですから!」タタタッ

司教「ひぃ!ひぃ…!し、司祭様…戦に出られてから、体力が尋常ではない…!」ゼェゼェ

ヒューヒュー! ピーピー!

宣教師「ん?」ピタッ

司教「も、もう…走れん…」バタッ

宣教師「」チラッ

町民1「見たか?このビラ?」ペラッ

町民2「おう!北国と戦争だってな!」

宣教師「……!?」

町民3「きっとまた国王様がなんとかしてくださるさ!」

町民4「そうだそうだ!俺達にはあの恐ろしい西の国を撃退した国王様が付いてるんだぜ!」

町民5「北の国がなんぼのもんよ!あんな奴らルフィアス団長を始めとした最強の軍がちょこっと摘まんでポイッてな具合だぁ!」

町民6「こいつはいい!早速前祝いに宴といこうぜ!」

町民7「王国バンザーイ!ヒメ様バンザーイ!」

町民8「このまま大陸まるごと王国にしちまえーい!」

ヒューヒュー! ピーピー!

宣教師「…司教さん。すみませんが先に行ってますよ」ダッ

司教「お、お気をつけて…」グッタリ
92: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:04:37 ID:gQj8L.R5T.
―――城(応接間)―――

宣教師「……」

ガチャッ

宣教師「」ピクッ

ネバル「お、お待たせしてすみませんです!ネバルと申しますです!な、何とぞよろしくしますです!」ペコッ

宣教師「…はじめまして」ペコッ

ネバル「え、えっと!本日のご用件はなんですだか…?」

宣教師「このようなビラが城下で配られてました」ピラッ

ネバル「はいです…?」パシッ

宣教師「ご説明いただいてもよろしいですか?」

ネバル「な、なんです?これ…!?」ギョギョッ

宣教師「なんですって…あなた方が出されたのでは?」

ネバル「し、知らねーですだよ、こったらもん!オイラ聞いてねーです!」オロオロ

宣教師「…他の役人の方は?」

ネバル「ないです!役人は合議で動くから…オイラが知らねーってのはありえないです!」アセアセ

宣教師「確認を取れませんか?」

ネバル「そ、そりゃもちろん!すぐにご報告するです!」コクコク
93: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:04:58 ID:mpOxahS5ac
宣教師「それからもう一件」

ネバル「ま、まだあるです!?」

宣教師「裏通りに作ったホビットの居住区を取り潰し、貴族の歓楽街にするとの話を耳にしました。これについても返答願います」

ネバル「ひょえー!?そ、そんなぶったまげた話…どこで!?」

宣教師「裏通りの掲示板に貼り出されていましたよ」

ネバル「〜〜〜!!」

宣教師「どういう事なのか、きちんと納得のいく説明をしていただけますか?」

ネバル「あわわ…お、オイラじゃなんとも…!リルラ様も出払ってるですし!」アワアワ

宣教師「国王はどうしているのです?」

ネバル「へ、陛下は…」

宣教師「?」

ネバル「と、とにかくオイラもその!じ、事情が分かり次第、連絡しますです!」

宣教師「…お願いします」
94: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:05:45 ID:mpOxahS5ac
ネバル「わ、わざわざ教えてくださってありがとうございますです!教団の司祭様にご足労させちゃって!」アセアセ

宣教師「いえいえ、城下の騒ぎは知らされていなかったのですか?」

ネバル「は、はいです。そんなでっかい報せが打ち上がったなんて全く知らないです…」

宣教師「……」

ネバル「あ、もしかしたら…」ハッ

宣教師「心当たりが?」

ネバル「い、いやぁ!なんでもないですだよ!あ、あとはこっちでやっときますですから!あはは!」アワアワ

宣教師「そうですか…」

ネバル「じゃ、じゃあオイラはこの辺でおいとましますです!」ガタッ

宣教師「あ、待ってください!」

ネバル「は、はい!?」

宣教師「カロルくんの様子はどうですか?」

ネバル「…か、カロルくん?」キョトン

宣教師「はい。こちらにお泊まりしてる筈なのですが」

ネバル「あ、あ〜救い主様ですだね!え、え〜…元気ですよ!」

宣教師「それは良かった。来たついでにご挨拶に伺いたいのですが」

ネバル「え!?」

宣教師「はい?」

ネバル「い、今はちょっと!また今度じゃダメですか!?」アセアセ

宣教師「何か会わせられない理由でも?」

ネバル「そ、そうじゃ…ないですけど」モゴモゴ

宣教師「……」ジッ

ネバル「あ、いや…」オロオロ

宣教師「……」ジーッ

ネバル「うぅ〜…ご案内するですぅ」ショボン

宣教師「ありがとうございます」ニコッ
95: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:06:42 ID:mpOxahS5ac
―――王宮(客室)―――

ネバル「こ、ここです…」シブシブ

宣教師「(先日、泊まった部屋ですね…)」

ネバル「お、オイラが会わせたって絶対言わないでくださいですよ!?」

宣教師「やはり会わせられない理由が?」

ネバル「あっ」

宣教師「今の発言はそうとしか取れませんが」

ネバル「あ、あ〜!もうこんな時間です!忙しい忙しい!じゃあ後はお任せしますです!」ピュー

タタタッ………

宣教師「……役人と思えないくらい素直な方ですね」
96: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:07:18 ID:gQj8L.R5T.
宣教師「」コンコン

シーン

宣教師「カロルくん?」コンコン

シーン

宣教師「(…どうしたんでしょう?)」

宣教師「カロルくーん!私です!宣教師ですよー!」コンコン

ガチャッ

カロル「宣教師さま…?」オソルオソル

宣教師「はい」ニコッ

カロル「」キョロキョロ

宣教師「? どうかしましたか?」

カロル「う、ううん!なんでもないよ!」ニコッ

宣教師「……?入ってもいいですか?」

カロル「うん!入って!」アセアセ

宣教師「は、はぁ」スッ
97: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:10:37 ID:mpOxahS5ac
宣教師「改めて見ても広い部屋ですね。一人ではもて余すでしょう?」

カロル「うん…でも慣れたよ!」

宣教師「ふふ。どうですか?お城での生活は?」

カロル「すごいよ!お城の人たちが毎日お部屋をキレイにしてくれるし、ごはんも見たことないのばっかり!」

宣教師「ふむふむ。居心地は悪くなさそうですね」ニコニコ

カロル「お風呂もね、こーんなに広いんだ!泳いでもぶつからないくらい!」

宣教師「それは楽しそうですね」ニコニコ

カロル「…た、楽しいよ。とっても!」

宣教師「?」

カロル「宣教師さまはどう?お仕事うまくいってる?」

宣教師「えぇ、順調ですよ。ホビット族との仲も良好になってます」ニコニコ

カロル「そっか!よかった!お母さまも大喜びするよ!」ニコニコ

宣教師「…それはそうと先ほど呼び掛けた時に応答がありませんでしたが何かしていたのですか?」

カロル「……!」ドキッ

宣教師「(分かりやすい)」
98: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:12:07 ID:gQj8L.R5T.
カロル「あ、あの…えと…」シドロモドロ

宣教師「見たところ…こざっぱりしていますし退屈しそうですね?」キョロキョロ

カロル「…ほ、本があるよ!こんなに!」ビッ

宣教師「読書ですか。しかしこの棚にある本は難しい物ばかりですよ」

カロル「お母さまに教えてもらってるから読み書きはできるよ!ちょっぴりだけど…」モジモジ

宣教師「…歴史書に医学書、純文学ですか。キミにはまだ早いのでは?」

カロル「そ、そうかな?読んでみるとおもしろいよ!」アタフタ

宣教師「ではこの『氷の丘』という本はどんな内容でした?」スッ

カロル「え?こ、こおり……か、かき氷のお話だっけ!」メダパニ

宣教師「いいえ、これは身分ゆえに結ばれなかった男女の恋愛模様を文字に起こした物語です」

カロル「えっ」

宣教師「平民の男がどれだけ想いを成就しようともがいても、あらゆる障害が立ちはだかって、ささやかな逢瀬さえも叶わない」

宣教師「貴族の娘は抗うこともせず、ただ報われない恋を悲しみ、運命に翻弄されるまま咽び泣く」

宣教師「まるで氷の丘を這いずるように滑り落ちていく二人の男女…それがこの本の大まかな筋書きです」

カロル「……か、かき氷は?」

宣教師「出てきません」キッパリ

カロル「!?」ガーン
99: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:14:21 ID:mpOxahS5ac
カロル「あう…」ズーン

宣教師「その様子では何かあったんですね」

カロル「うぅ…ウソついてごめんなさい…」シュン

宣教師「怒りませんよ。叱るまでもなくウソは良くないものだと分かっているでしょうから」

カロル「はい…」

宣教師「問題は…キミがウソをついてまで隠したいと思っている事です」

カロル「……」キュッ

宣教師「話したくないですか?それなら、それで構いませんよ?」

カロル「……」

宣教師「ただし…キミが打ち明けられず思い悩んでいるなら、いつでも相談してください」ニコッ

カロル「宣教師さま…!」ウルッ

宣教師「はい…?」ニコニコ

カロル「ボクね、ボク…!」ウルウル

宣教師「(彼が私に隠そうとした悩み…。あの一件から間もないですし、きっと重大なことなのでしょう)」

カロル「ヒメくんとケンカしちゃったの!」ブワッ

宣教師「」ズルッ

カロル「どうしよう!?宣教師さまぁ!?」ダキッ

宣教師「(そ、そうでした…。こういう子でしたね…!)」ヒクヒク
100: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:15:35 ID:mpOxahS5ac
カロル「ボクがね、ヒメくんのおやつ…食べちゃったの。だから…だから…うわーん!」シクシク

宣教師「(喧嘩と言うから、どれほどの事かと思えば…なんて浅い…)」ヒクヒク

カロル「部屋から一歩も出ちゃダメって言われちゃって謝りたいのに出られないの…!」グスッ

宣教師「あぁ、なるほど…だからさっきは出てこなかったんですね」

カロル「イチゴのジャムおいしそうだったから…我慢できなくて!わぁぁん!」ビエー

宣教師「いつもの冗談ですよ。彼はそんなつまらない事で腹を立てたりしませんから、ね?」ナデナデ

カロル「ううん…ちがうの」ギュッ

宣教師「?」

カロル「いつものヒメくんじゃなかった…。目がすごく怒ってて怖かったもの…」グシッ

宣教師「……」

カロル「西の国から帰る時もピリピリしてた…。寝ないで、ずっとお仕事してて」

宣教師「…きっと疲れているんですよ。日を置いたら、またいつもの調子に戻ります」

カロル「でも…ちゃんと謝りたいよ。ボクがわるいんだもの」

宣教師「でしたら、こういうのはどうです?」

カロル「……?」

宣教師「一緒に食事をしようと誘うんです。おいしいご飯を食べながら談笑すれば怒りなんてどこ吹く風とばかりに仲直りできますよ」

カロル「!」パァァ

宣教師「部屋から出られないのなら使用人の方に頼んで伝言してもらうといいでしょう。
彼も気にしてるでしょうし二つ返事で応じてくれますよ!」

カロル「ホント!?」キラキラ

宣教師「えぇ」ニコニコ

カロル「宣教師さま、すごい!ボク、ぜんぜん思いつかなった!」

宣教師「それほどでも」ニコニコ

カロル「ありがとう!そうするね!」ニコッ

宣教師「いえいえ、どういたしまして」ニコニコ
101: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:18:51 ID:gQj8L.R5T.
宣教師「ではそろそろ私は戻りますね」

カロル「うん!来てくれてありがとう!」ニコニコ

宣教師「……」

カロル「……?どうしたの?」キョトン

宣教師「いえ…ではまた?」ニコッ

カロル「えへへ!またね!」フリフリ

宣教師「」ガチャッ

バタンッ

カロル「……っ」キュッ
102: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:19:52 ID:gQj8L.R5T.
―――城内(通路)―――

宣教師「」スタスタ

役人1「今夜もまたやりなさるそうだ」

役人2「またか。毎晩、毎晩、豪遊三昧…やや度しがたいものがあるな」

宣教師「」ピクッ

役人1「お誘いが来ているが…どうする?」

役人2「断ろうにもあまり無下には出来んしな…」

宣教師「」ソソーッ

役人1「だよな。はぁ…それどころではないがお家柄、私は公爵様に頭が上がらん」

役人2「俺もだ…。このところパーティーに付き合わされ、仕事が追い付かんよ」

役人1「ネバルの一派は平民出身だからいいよな。お誘いも来ないし、陛下に睨まれる事もない」

役人2「国王様は大の貴族嫌いだからな…。一時は積極的にパーティーに出席していたが関係は改善されていないらしい」

役人1「実際、役人の殆どは貴族出身だ。公爵様には逆らえんし、陛下からは嫌われる。陛下も立派な貴族だというのに」

役人2「まぁそう言うな。最初こそ快く思わなかったが陛下の志には胸を打たれる部分もある。真面目に働いてる者にはとても良くしてださるしな」

役人1「それにしたってやりにくい。陛下は貴族を押さえつけ過ぎたんだ。早い内から懐柔しておくべきだったんだよ」

役人2「…それが最も望ましかったがな」

役人1「大后様まで夜会に入り浸って引き抜かれる役人も少なくないんだ。政務官一人のお力ではいい加減……」

役人2「私とて…今の貴族に染まりたくはない」

役人1「…リルラ様はこの城で誰よりも現実的な政策を練られている。それなのに陛下は…いつになったら分かってくださるんだ!」

役人2「行き先は同じといえ理想を追う陛下と現実に抗うリルラ様の手段は別天地だ。我々は…どう動いたらよいのか」

役人1「くそっ!このままじゃ王族派は…」

宣教師「……」
103: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:21:38 ID:gQj8L.R5T.
―――城下町裏通り(バックヤード)―――

宣教師「ただいま確認してきたところ、この掲示板に書かれている内容は全く信憑性のないデマだと判明しました」

裏通りのホビット1「や、やっぱり…」ホッ

裏通りのホビット2「そうだと思ってたよ!」

裏通りのホビット3「まったくひどいイタズラだよな」

裏通りのホビット4「疑ってすみませんでした!司祭様!」

宣教師「お気になさらず?疑いが晴れたなら、それでいいんです」ニコッ

バラバラ バラバラ

司教「解決して何よりですな。城下の騒ぎも憲兵が駆けつけ、説明を行ったそうで」

宣教師「そうですか…」

司教「しかし誰がこのような…イタズラにしてはタチの悪い」

宣教師「単なる悪ふざけではないかもしれませんよ」

司教「は?」
104: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:22:21 ID:gQj8L.R5T.
宣教師「どうやら城内にも不穏な気配が漂っているようです」

司教「ふ、不穏な気配とは…?」

宣教師「カロ…救い主が軟禁状態にありました」

司教「軟禁ですと!?し、しかし国王様は親友関係にあるのでは!?」

宣教師「どうなっているかは分かりません。もしかしたら城内で貴族勢が何か働きかけている可能性もあります」

司教「…な、なぜ今になって」

宣教師「広場に出回っていた噂は北国と戦争をする、というものでしたね」

司教「は、はい…。呆れたことに民衆は浮かれ上がっておりましたな」

宣教師「もし噂の出所が貴族だとするなら…北国との間にただならぬやりとりがあったと見るのが筋でしょう」

司教「も、もしや…また…!?」

宣教師「調べる必要がありそうですね」スタスタ

司教「どちらへ!?」スタスタ

宣教師「一度、教会に戻って予定を立て直します」

司教「し、しかし活動は…」

宣教師「…いくつかは後回しにしてしまいますがやむを得ません」

司教「なぜこうも立て続けに…王国は平和を勝ち取ったのではなかったのか…!?」

宣教師「平和とは常に脅威に立ち向かう苦行なのかもしれませんね」

司教「くぅ…!」

宣教師「しかし逆を言えば…私達は平和を形にしているという事です」

司教「……!」

宣教師「まだまだ希望はありますよ。未来を明るくするのは私達の今ですからね」ニコッ

司教「…お供致します!」コクッ
105: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:23:40 ID:gQj8L.R5T.
―――南の国(議場)―――

顧問官「……」ペラッ

高官1「」ドキドキ

顧問官「…ふむ」バサッ

高官1「い、いかかでございましょうか…?」

顧問官「いかが?」ジッ

高官1「っ…!」ゴクリ

顧問官「ふん…」

高官1「ど、どうか!もう一度、共に!我々は潔白であると証明していただきたい!」

顧問官「……」

高官1「確かに我々は禁を犯したかもしれませぬ!しかしそれは正当な理由あってのこと!此度の戦争は正義を通した結果であると理解頂きましょうぞ!」

顧問官「正義…」

高官1「北国の要求は明らかに倫理を逸脱しております!各々に正義を見出した連合軍の誇るべき勝利をこのような形で汚されてもよいのですか!?」

顧問官「声ばかり大きくしているが言いたい事はまるで聞き取れん」

高官1「!?」
106: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:27:16 ID:gQj8L.R5T.
顧問官「正義も悪もない。この論争に答えを問えるのは主導権を握った者のみだ」

高官1「は…!?」

顧問官「そちらの国王が我らを掻き乱してくれたおかげで南の国はどうなったと思う?」

高官1「こ、国王を…失われました」

顧問官「そうだ。それだけではない。本来、王位に就くべきであったラフテン様も討ち取られ、今も玉座は空席となっておる」

高官1「し、しかし…ローレン様もご納得の上で陛下に望みを託されたのでは」

顧問官「だからなんだ?」ジロッ

高官1「」ビクッ

顧問官「お主らは我らの大敗をよそに大勝利を挙げ、浮かれておっただろうが…こちらは空席となった玉座を巡って混沌の極みとなっておるのだぞ?」

高官1「も、申し訳ない…」

顧問官「せめて王の血筋を立てるべく候補を探しているが…しきたりに則って覇を争った王族には正統なる王位を持つ眷属がおらん」

高官1「……」オロオロ

顧問官「長らく先代をお支えして参った私が代理を務め、どうにか秩序を保ってみせているが…もはや崩壊の時は近い」

高官1「崩壊…ですと?」

顧問官「このまま行けば国を維持する事が出来なくなる」

高官1「……!?」ギョギョッ

顧問官「だからこそ私は北国に下る道を選んだ」

高官1「そ、それは…困りまするぞ!」アセアセ

顧問官「……」

高官1「ど、どうか!どうか今一度お考え直しを!?」

顧問官「ラフテン様によって斬られた私はお二方の覇権争いを見届ける事が叶わなかった」

高官1「……!」
107: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:28:24 ID:mpOxahS5ac
顧問官「あの時の事が今でも心残りだ。私は何をしてでもローレン様を排除し、ラフテン様を王位に就かせるべきだった」

高官1「ば、バカな!ラフテン王子は私欲にまみれた野心家と聞き及んでおります!何より長年、王家に仕えてきた貴方をなんの躊躇いもなく切り捨てたのですぞ!?」

顧問官「南国は代々王位争いに勝ち残った王を奉り、しきたりを守る事で優秀な国王を輩出してきた」

高官1「……!?」

顧問官「王国が首を突っ込み、馬鹿正直だけが取り柄の国王に代わった途端、この有り様だ」

高官1「ろ、ローレン様は最期まで立派に戦い抜いたではありませぬか!?」

顧問官「お主らにとっては英雄でも…南国にしてみれば愚か者でしかないのだよ」ギリッ

高官1「お、愚か者…!?」

顧問官「幸いにも先代が産ませた姫君は健在であらせられる。姫には北国の王子と婚約を交わし、北国の姫となっていただく」

高官1「お、おま…お待ちください!」アセアセ

顧問官「我らはもう…ローレン様のような愚を犯す気はない。帰って国王にそう伝えるのだな」

高官1「そ、そう結論付けるのは早計!こちらの話を…!?」ガクガク

顧問官「…忘れておるようだが」

高官1「わ、わすれ…!?」

顧問官「西国から勝ち取った領地を南国に壌土する。その条件でローレン陛下は連合を承諾された」

高官1「」ハッ

顧問官「おめおめと反乱軍などに帝都を引き渡されたのでは取り入りようもない。先に約束を反故にしてくれたのは貴様らの方だ」

高官1「そ、それは…やむにやまれず」モゴモゴ

顧問官「失せよ。二度と南国の地を踏んでくれるな」

高官1「」ブルッ
108: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:19:23 ID:H.1URhAHDs
〜〜〜朝〜〜〜

―――東の国(議場)―――

東の大臣「調べによると北国は我々を真似て三国連合を結成したようだ」

東の騎士「西の国ならいざ知らず国力も弱まり、規模も小さい我が国を相手にか。買い被られたものだな」

酋長「ふん!人間ごときが束になろうと関係ないわ。儂らは儂らでやるだけだ」

ルイ「もう!お爺ちゃんったら、またそんな事言って!」

東の大臣「実に頼もしいお言葉だが、そちらはいかほどの手勢で臨まれるおつもりか?」

酋長「13万は集められるだろうな」

東の大臣「13万!?」

東の騎士「さ、先の戦より多いのではござらぬか!?」

酋長「あれから各地に潜んでいた同族が移住を申し出てきてな。多部族を従え、我々の勢力も一層堅固になったわい」

ルイ「ウチらが国を作るのも噂になってたみたい!でもおかげで今の里じゃパンパンなんだよね…」

東の大臣「(ほ、本当にいいのだろうか…。今は共闘関係にあるが、このまま勢力を拡大され続ければ…)」

東の騎士「…余計な考えはなさいますな。疑惑は決裂に結び付く」コショコショ

東の大臣「う、うむ…そうですな」コホンッ

酋長「どうした?こそこそと気色の悪い?」

東の大臣「い、いえ、失敬…」
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名前:
sage:


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