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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その3】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/29(土) 21:15:11 ID:.RxhzfPc96
あらすじ

永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く

遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する

南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される

敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した

一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち

かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる

穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった

忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない

友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに


228: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:53:39 ID:hiov.r88ZA
宣教師「分かりました……」

政務官「……?」

宣教師「私は何をすればいいですか?」

政務官「……」

宣教師「あなたにお任せします。たとえ道具のように扱われても……ヒメくんもカロルくんも、そしてたくさんの人たちが救われるのなら」

政務官「……すまない」

宣教師「こちらこそごめんなさい。頼ることしか出来なくて」

政務官「そんなことは……」

宣教師「私たちはいつも簡単に理想を口にするけれど、それを実現する為に動いてくれてるのは現実を口にするあなたのような人たちですから」

政務官「……その理想がなければ人々は付いてこない。今までもそうだったんじゃないか?」

宣教師「そうですね。あの大樹での永遠の命を巡る争いが遠い昔のよう。あれはまさに理想を追い求めた戦いでした」

宣教師「でも今は違います。理想を守る為にあらゆる現実に立ち向かっている」

宣教師「その結果、幼い子たちが絶望し、苦しんでいるのなら私も現実を見なくてはいけません」

政務官「幼子などとは思わんが……陛下を支えるのが私の務めだ。存分にあなたを利用させてもらう」

宣教師「遠慮なく使ってください。私に政治は向かないので」ニコッ

政務官「ふん……」クスッ
229: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:54:08 ID:hiov.r88ZA



宣教師「まずは教団の信用回復を図りますか?」

政務官「もちろんだ。だが今はその時ではない」

宣教師「サイレンス大聖団を見極めてからですか」

政務官「まあな……」

宣教師「私の知る限り彼らは神や教えといった主張らしい主張をしていませんが、いったいどうやって信徒を募っているのでしょう?」

政務官「調べさせたいところではあるがあいにくと人手が足りなくてな。教団から一部の人間に声を掛け、調査させるのが妥当だろう」

宣教師「ふむふむ。それなら私が潜入しましょうか」

政務官「……本気か?」

宣教師「どのみち私はしばらく身を隠さなければなりません。下手に公爵派の目がある城内にいるより姿を変えて大聖団の一員として振る舞った方がよいのでは?」

政務官「それはそうかもしれんが万が一正体が割れたらどうするつもりだ?」

宣教師「サイレンス大聖団には各界から大物の方が入信されていると聞きますし私もその1人だと言えば信じるでしょう。なんせ世間から私は誰にでも身体を委ねる淫売と囁かれてますから」

政務官「そんな真似をしてみろ。教団の名が地に堕ちるぞ」

宣教師「経験上ですが危険を犯さなければ何事も成し得ません。私達の戦いはいつも0か100でした」

政務官「……」

宣教師「お願いします」

政務官「(たしかに彼女は1人の宣教師として教団の闇を暴こうと立ち上がり、幾度も死線を潜り抜けてきた。
私も北国の問題に掛かりきりで国内には目を向けられん……。ここは任せてみるべきか)」

宣教師「私にやらせてもらえませんか?」ジッ

政務官「……サイレンス大聖団の弱みを握り、教団の信頼を回復させる。それがあなたの役目だ」

宣教師「分かりました」ニコッ
230: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/19(火) 22:58:49 ID:hiov.r88ZA
>>218
すみません。
前回も3年待たせてしまって今回も気付けば3年経っていました……。
正直、自分でも謝罪も感謝も薄っぺらな嘘に思えるほど毎回裏切ってしまっています。
ですが更新を待ってくれている人が1人でもいる事が心から励みになっています。
いつもありがとうございます。
待たせてしまってごめんなさい。
もしまた待たせてしまったらごめんなさい。
更新できるように頑張ります。
231: 名無しなのよ:2023/12/20(水) 13:57:56 ID:7fuLV14Ddo
>>230
大丈夫です。いつだって何年だって、完結するまで、ずっとここで待ってますから作者さんの気が向く時筆がのる時に進めてくだされば幸いです
日中との寒暖差があって風邪ひきやすい時期ですのでご自愛くださいね
232: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/21(木) 21:28:12 ID:hiov.r88ZA
ーーー王国領北の町ーーー

キャッキャッ ワイワイ

宣教師「……」ザッ

『サイレンス大聖団は王都から外れた北の町に本部を置いている。今、分かっていることはそれだけだ』

『入信希望者は皆、一度ここを訪れて入団手続きを受け、無事審査を通れば正式な一員となれるらしい』

ゾロゾロ ゾロゾロ

聖団員1「はい、入信希望の方はこちらにお並びくださーい!」

宣教師「」スッ

聖団員2「順番の方こちらへどうぞ。まずは瞳を見させていただきますね」

宣教師「どうぞ」メガネハズシ

聖団員2「はい、問題ありません。係の指示に従って行ってください。次の方〜」

宣教師「(最初に瞳の色を見てホビットでないか確かめるんですね)」スタスタ

聖団員3「お待たせしましたー!こちらで採寸を取らせてくださいね!」テキパキ

宣教師「(あとは採寸を取り、サイズの合う団服を支給する。つまりたったあれだけで審査は通過してるのですね)」
233: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:29:20 ID:hiov.r88ZA
宣教師「(拍子抜けするくらい簡単に潜入出来ちゃいました)」

聖団員4「採寸を終えた方どうぞ!最後に簡単な質問をさせてください!」

宣教師「分かりました」

聖団員4「教団の司祭……」

宣教師「!?」ドキッ

聖団員4「についてどんなイメージがありますか?」

宣教師「あ、ああ……そ、そうですね。司祭ですか。えーと(バレたかと思いました……)」ドキドキ

聖団員4「いえね、私達サイレンス大聖団はともかく教団の古参の方たちは異教を嫌うでしょう?
トラブルにならないよう入信前に教団の信者か確かめておかないといけないんで」

宣教師「異教を嫌う、ですか?私達……いえ、教団はそんなことを気にしないと思いますけど」

聖団員4「えーウソですよー。現に対立が生まれてますもん。熱心な教団の信者の人たちは私達を怪しい団体だって決めつけて腫れ物扱いしてくるんですよー?」

宣教師「それはサイレンス大聖団が一方的に教団を貶める内容の記事を流してるからでは?」

聖団員4「いやいや私達は真実しか伝えてませんしー?なんで私達が悪いみたいになってるんですかー?」プクー

宣教師「わ、悪いというか……」

聖団員4「あなたもしかして教団の信者です?」ジト

宣教師「……!」タジッ
234: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:30:33 ID:hiov.r88ZA
宣教師「(ここはとりあえず自然に乗り切らなければ……)」

聖団員4「さっきから教団を庇うような言い方だしぃ?別にいいんだけどあんな終わってる宗派に義理立ててもしょうがなくない?」

宣教師「そ、そうですね。あなたのおっしゃる通りです……」

聖団員4「でしょ?今どきの若い子はみんなそうですよ?
サイレンス大聖団は難しい教えも厳しいルールもなくて誰でも歓迎だし団服もオシャレで信者同士も和気藹々としてるし楽しいイベントも充実してるんですから!」

宣教師「(たしかに宗教というより地域のコミュニティのような感じですが……)」

聖団員4「多いんですよ。あなたみたいに教団の信者だったっていう人。でも大丈夫!こっちの方が絶対楽しいですから!」

宣教師「……」

聖団員4「古いのは忘れて新しい事を楽しみましょ!ね?」

宣教師「そ、そうですね」ニコッ
235: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:31:54 ID:hiov.r88ZA
宣教師「なんとか切り抜けられました……」フー

宣教師「(楽しい、か。私達は戒律こそ厳しくないものの差別を無くすというはっきりとした目標を持って活動してる)」

宣教師「(若い人たちにとってはそういうものが重苦しく感じるのかもしれませんね……)」

青年1「今日は入信した人気の役者たちが演劇を披露してくれるってよ!」

青年2「俺、生の女優見るの初めてだぜ!」

青年3「教団とはやる事が違うよな!あっちじゃ今頃ゴミ拾いだ草むしりだ炊き出しだとボランティアばっかやらされてんじゃないか?」

宣教師「(……ボランティア以外にも礼拝や孤児院の子供達がふれあいの場を作る院外活動など交流はしてますが新鮮味に欠けるのでしょうか)」

若い女1「見てみて!このアクセサリー!オシャレでしょう?」チャラッ

若い女2「すごーい!どこで買ったの?」

若い女1「ブランドに詳しい貴婦人が集会で教えてくれたの!貴族の間でこれが流行ってるんですって!」

若い女2「えー!私も参加したかった!」

若い女1「今度社交会で流行りのメイクを教えてくれるって言うから行こうよ!」

若い女2「やった!絶対行く!」

宣教師「(ふむふむ、若者が好む遊びや流行りをしっかり押さえている。なるほど、これは私たちにはない発想ですね)」

宣教師「町の住人にも聞き込みしてみますか」
236: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:33:14 ID:hiov.r88ZA
店員1「ほらほら寄った寄ったー!サイレンス大聖団御用達の土産屋だよー!」

店員2「うちは今一番アツい競馬レースだ!勝ち馬を予想して当てたら賞金!まだやった事がないなら試しに賭けてみて!」

店員3「王国貴族ご推薦の素晴らしい品々をご覧あれ!王都広しとはいえこれだけの物を取り扱ってるのはウチだけですよ!」

宣教師「すごい賑わいですね」

町民1「ええ!そりゃもう!サイレンス大聖団様々ですわ!」

宣教師「この町に進出して日が浅いでしょうに」

町民1「そこですよ!私どもも頭が追いつかないくらい急速に変化しちゃって!」

宣教師「(急拵えでところどころテント張りやハリボテで賄っている店舗を豪華な飾りつけや目を引く商品で誤魔化してる訳ですか。
競馬場は広い牧場を借りたのでしょう。町の開発に携わった方々のアイデアと依頼主の徹底した節約が光ってます)」キョロキョロ

町民1「サイレンス大聖団が本部を置いてからこの町はめざましい発展を遂げましたよ。
今まで貴族の間だけで楽しまれた娯楽や贅沢品を惜しみなく私達庶民に流通させてくれたからです!」

宣教師「たしかに……普通なら手の届かないような品ばかり目に入りますね」

町民1「私も今じゃサイレンス大聖団のファンですよ。特に最近は教団も良い噂を聞かないしね」

宣教師「……やはり司祭は信用出来ませんか?」

町民1「俺は話したこともなきゃ会ったこともないからどんな人か知らないですけどねぇ。火のないところに煙は立たずとも言うし……」

宣教師「(今話してるのが噂の張本人だと知ったらどんな顔をするんですかね)」クスッ

町民1「どうしたんです?」

宣教師「あ、いえ。お話ありがとうございました」ペコリ
237: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:35:15 ID:hiov.r88ZA
町民2「とにかくサイレンス大聖団には感謝してますよ!教団なんかにはもう付いていけません!」

宣教師「皆さんそうおっしゃいますね。聖団はずいぶんと教団を目の敵にしてるみたいですけど」

町民2「逆ですよ!逆!教団が聖団を敵視して頑なに拒んでるんだ!」

宣教師「そうなんですか?」

町民2「実はここだけの話、聖団員が信者に嫌がらせを受けてるんですよ」

宣教師「嫌がらせ?」

町民2「ウチんとこはポストにゴミを詰められたんです」

宣教師「なぜ教団の信者の仕業だと分かったんですか?」

町民2「そんなの簡単です!みんなやられてんですから!」

宣教師「みんなって……証拠はあるんですか?」

町民2「ええ!聖教新聞にしっかり書いてありますよ!教団の嫌がらせ被害が相次いでるってね!」

宣教師「その記事を書いた方はどうやって加害者の信者を特定したんですか?」

町民2「そんなのウチらは知りませんよ!とにかく書いてあるんだから間違いないんですよ!」

宣教師「なるほど……」

町民2「あなたも入信したってことは聖教新聞を取るんでしょう?ちゃんと読んだ方がいい!あれには真実が書かれてるから!」

宣教師「……そうですね。ぜひ読んでみたいです」
238: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:36:57 ID:hiov.r88ZA
新聞屋1「はい!聖教新聞一部ですね!どうぞ!」バサッ

宣教師「お代はこちらに」チャリンッ

新聞屋1「まいどどーも!」

宣教師「(ずいぶんと分厚いですね。新聞というよりはパンフレットのような見た目ですが……)」ピラッ

『衝撃!!教団の悪事がまたも明るみに!!』

宣教師「(分かりやすい太文字で大袈裟に誇張した表現……これならたしかに目を惹きますね)」ペラッ

宣教師「(寄付金の不正な使い込み……孤児たちに過酷な強制労働……強引な勧誘……札や御守りの押し売り……非入信者への嫌がらせ行為の数々……)」イラッ

宣教師「……」ブンッ

聖教新聞「」バサッ

宣教師「」ハッ

宣教師「いけませんいけません!道ばたにゴミを捨てるなんて聖職者としてあるまじき行為!それこそ記事に書かれてしまいます!」アセアセ

宣教師「(それにしても酷い書かれようですね。以前までの教団ならいざ知らず現在は真っ当な活動しかしていないのに)」

宣教師「(だいたいにしてこの不正な使い込みというのも先日の夜会に出席した件を結びつけて色んな社交会に顔を出しては散財してるなんてでっち上げを並べて!
なんですか、関係者は語るって!あの夜、私以外に教団関係者なんていなかったじゃないですか!)」ムカムカ

宣教師「(孤児院の子供達の強制労働も院外学習でボランティアをした時の出来事を取り上げて悪く書いてますし強引な勧誘や押し売りに至っては私が引き継ぐ前の頃の話でしょうに!)」

宣教師「(非入信者への嫌がらせはさっき町の人も言ってましたね……。でもよく読むと"そうに違いない"とか"見ていた人の話によると"なんていう曖昧な情報や憶測を書き連ねてホントのように見せてるだけ!)」

宣教師「(やっぱりこの団体は何かおかしいですね……!必ず真実を突き止めなければ!)」メラメラ

???「」ジー

宣教師「ん?」

宣教師「(な、なんでしょう。人のことをじろじろ見て?)」ドキドキ

???「ねえ、もしかして」

宣教師「(まさか私の正体に気付かれた……!?)」ハッ

???「宣教師様?」

宣教師「違います!私は決して司祭では……へ?」キョトン

???「覚えてないの?ぼくだよ。ほら」フードヌギッ

宣教師「き、キミは!」
239: 名無しなのよ:2023/12/21(木) 21:39:51 ID:hiov.r88ZA
???「久しぶり」ニコッ

宣教師「ぱ…パッチくん!パッチくんじゃないですか!」パァァ

???(パッチ)「宣教師様ったらひどいや。村で毎日お話聞いてたのに忘れちゃったの?」

宣教師「ご、ごめんなさい!ずいぶん背も伸びて大人びていたので」

パッチ「あれから何年経ったのかな。村で過ごしてた頃が懐かしいね」

宣教師「ええ、キミもルーボイくんもまだ幼くてよく手を焼いていましたっけ」シミジミ

パッチ「ルーボイくんか。よく一緒に遊んでたなぁ」

宣教師「彼も元気にしてますよ」

パッチ「そうなんだ。まあそれくらいが取り柄だもんね」

宣教師「ふふ、本人に聞かれたら怒られますよ?」

パッチ「思い出すなぁ。魚屋のテパ兄ちゃんともよく遊んだし村長はよく勉強を教えてくれたっけ」

宣教師「そうですね。あの村にはとてもお世話になりました」

パッチ「……うん。そうだよね」

宣教師「それよりもパッチくんはなぜここに?今までどうしていたんですか?」

パッチ「僕?そうだね……。親切な人に拾われたんだ」

宣教師「そうでしたか。とにかく無事でなによりです。あなたと再会出来てどれほど嬉しいか……!」ウルッ

パッチ「ありがとう。僕もうれしいよ。宣教師様にまた会えて」ニコッ

宣教師「っ……ホントに、うれしいです」グスッ

パッチ「ここじゃなんだし僕の家においでよ。積もる話もあることだしさ」ニコニコ

宣教師「そうですね。お邪魔させてもらいます」ニコッ
240: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 15:10:19 ID:6KwZzvLqkY
パッチ!!懐かしいなぁ元気そうでよかった
でもちょっと怖いぞこの登場の仕方…

つCCCC
241: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/22(金) 21:51:40 ID:hiov.r88ZA
ーーー北の町(寄宿舎)ーーー

パッチ「ここだよ」

宣教師「へぇ、立派な建物ですね!学生寮ですか?」

パッチ「そんな感じ。親切な人が僕らの為に用意してくれたんだ」

宣教師「ここに住んでる人はみんな同じ人に拾われたんですか?」

パッチ「そうだよ。今どき僕みたいな境遇は珍しくないしね」

宣教師「キミを助けてくれた上に大勢の人たちを救ってるなんて、とても素晴らしい方なんですね!」キラキラ

パッチ「うん。いい人だよ」

宣教師「機会があれば是非会ってお礼をしたいです。こんなに素敵な再会が出来たんですから!」

パッチ「そうだね。今度会ったら伝えてみるよ」

宣教師「お願いしますね!」

パッチ「そろそろ中に入ろうか。少し歩かせちゃったし宣教師様も疲れたでしょ?」

宣教師「そうですね。キミとゆっくりお話したいですし上がらせてもらいます!」ウキウキ

パッチ「僕もだよ」ニコッ
242: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:53:02 ID:hiov.r88ZA
バタンッ

宣教師「お邪魔します」

パッチ「どーぞ。狭いけどくつろいでって」ニコニコ

宣教師「綺麗にしてますね。さすがしっかり者のパッチくんです!」

パッチ「あはは、よしてよ。ただ無趣味で物が溜まらないだけなんだから?」

宣教師「そんなことはありませんよ。キミはいつもわんぱくなルーボイくんと対照的に落ち着いてましたし」

パッチ「そうだったかなぁ?」

宣教師「そうですよ。彼なんて未だにガキ大将気分が抜けてないんですから?」

パッチ「そっか。まあ座ってよ。今お茶入れるからさ」トポトポ

宣教師「ありがとうございます。失礼しますね」ストッ

パッチ「はい。大した物は出せないけど」コトッ

宣教師「いえいえ、キミが入れてくれたお茶を飲めるなんてこれほどの贅沢はありませんよ」ニコニコ

パッチ「ふふふ、大袈裟だなぁ。まるでもう会えないと思ってたみたいじゃん?」

宣教師「あ、いえ!そ、そんなつもりじゃ……」アワアワ

パッチ「ほらほら、慌てるとこぼしちゃうよ?」

宣教師「ご、ごめんなさい。でもホントにそういう意味じゃないんです」シュン

パッチ「分かってるよ。ちょっとからかってみただけだって?」クスッ

宣教師「ああ……それなら良かったです」ホッ
243: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:54:13 ID:hiov.r88ZA
パッチ「僕のこともいいけどさ。宣教師様は何してたの?」

宣教師「私ですか?」

パッチ「うん。わざわざこんな所になんの用で来たの?」

宣教師「それは……王都で話題だったので興味本位で」

パッチ「ふーん。でもさ、宣教師様は今も教団の人なんでしょ?もしかして辞めちゃったの?」

宣教師「えーと、その……辞めたというか……」

パッチ「どうしたのさ?なんかはっきりしないね?」

宣教師「……」

パッチ「ひょっとして聞いたらまずかった?」

宣教師「そ、そんなことは……」ツツー

パッチ「ウソだー?すごい動揺してるもん?」

宣教師「ど、動揺ですか?あ、そうだ!森のくまさん歌いましょうか!」アセアセ

パッチ「それは童謡でしょ!」
244: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:54:58 ID:hiov.r88ZA
パッチ「ショックだなぁ?久しぶりに会えたのに隠し事されるなんて?」

宣教師「か、隠し事だなんて……」

パッチ「だってそうでしょ?この町に来た理由も話せないなんておかしいじゃん?」

宣教師「で、ですから観光で……」

パッチ「観光ねぇ。サイレンス大聖団になんか入信して?」

宣教師「ど、どうしてそれを!?」ガタッ

パッチ「どうしても何も聖団の団服着てるじゃん」

宣教師「ハッ!そういえば支給されて着替えたんでした!」

パッチ「ははは……昔からそういうとこあるよね?」ヒクヒク

宣教師「これには深い訳があるんです!どうか私が教団の人間だという事はナイショにしててください!」アセアセ

パッチ「別に言わないよ?僕は聖団員じゃないし?」

宣教師「ありがとうございます……!」ホッ

パッチ「でもここに来た理由くらいは話してほしいな?」

宣教師「分かりました…」
245: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:55:50 ID:hiov.r88ZA
パッチ「サイレンス大聖団を内側から探りに来た?」

宣教師「しっ!大きな声で言わないでください!隣の部屋に聞こえたら大変です!」

パッチ「いや、そんな大きい声出してないよ…」

宣教師「どこで誰が聞いてるか分からないんですから!」

パッチ「気にしすぎだよ。あんなの流行り好きな人たちの溜まり場じゃん」

宣教師「それでもです!なにせ今回の任務は王政府の勅命……あ、いや!勅命というか直面してるんですから!危機に!」アワアワ

パッチ「何言ってるのか分からないよ。お茶飲んで一息付いたら?」

宣教師「」ズズッ

宣教師「はぁ……沁みる……」ホッコリ

パッチ「どう?落ち着いた?」

宣教師「はい。見苦しいところをお見せしました……」

パッチ「とりあえず詳しく話してみてよ。僕も協力出来ることがあるかもしれないしさ」

宣教師「協力してくれるんですか!?」

パッチ「うん。するよ。だって僕は宣教師様の教え子だもん」ニコッ

宣教師「ぱ、パッチくん……キミという子は……!」ウルウル

パッチ「もー!泣かないでよ。相変わらず大袈裟だなぁ?」

宣教師「そんな風に言われたら……泣きたくなるに決まってますよ!」ゴシゴシ
246: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:56:56 ID:hiov.r88ZA
パッチ「ふーん、そっか。サイレンス大聖団が教団を悪者にして勢力を拡大しようとしてるんだね」

宣教師「そうなんです。それも物凄い勢いで」

パッチ「勉強と仕事で忙しくてあんまりよく知らなかったけど、そんなことになってたんだ?」

宣教師「この町も聖団の台頭によって急成長したと聞いてます。住んでいて感じる事はありませんか?」

パッチ「うーん。どうかなぁ?町は賑わってるけど僕は別に高級服も競馬レースも興味ないし」

宣教師「住人からするとそんなものなんですかね」

パッチ「まあね。観光名所とかって地元の人は案外行かないでしょ?そういう感じだよ」

宣教師「そうですよね。となると町の人たちは聖団に入信してない人がほとんどなのでしょうか?」

パッチ「ううん、みんな入ってるんじゃないかな?」

宣教師「へ?でもあまり関心は持たれてないのでは?」

パッチ「僕なんかは元々よそ者だからね。ずっと住んでる人たちはいい町おこしになって喜んでるよ」

宣教師「なるほど……」

パッチ「それに入信してないと嫌がらせがあるからね。興味なかった人たちもそれで渋々入信してるみたい?」

宣教師「」ピクッ
247: 名無しなのよ:2023/12/22(金) 21:58:09 ID:hiov.r88ZA
宣教師「その話詳しく聞かせてください!」ズイッ

パッチ「ち、近いよ……」

宣教師「大事なことかもしれないんです!」

パッチ「そ、そう?ただ単に聖団入信者は優遇されてそうじゃない人たちは不遇な扱いを受けるってだけだよ?」

宣教師「具体的にお願いします!」

パッチ「たとえば買い物する時に聖団員じゃないと値段を高くされたり公園や厠が聖団の敷地になってて使えなかったりするんだ」

宣教師「町の施設を聖団が所有してるんですか?」

パッチ「うん。特に困るのは水だよ。町には6つの井戸があるんだけど、そのうちの4つを聖団が区切って見張りを立ててるんだ」

宣教師「な、なんて横暴な!元々は町の皆さんが使ってた物じゃないですか!」

パッチ「そうだけど聖団は資金力にものを言わせてるんだよ。町長も領主も抱きかかえられてるんだ」

宣教師「それで町の人たちは仕方なく聖団員に……」

パッチ「そういうこと。僕も聖団服持ってるんだよ?」ビッ

宣教師「あ、壁に掛かってますね。ん?」
248: 支援ご感想ありがとうございます!:2023/12/22(金) 21:59:48 ID:hiov.r88ZA
宣教師「(本棚に初代教団の聖書が……なぜ今さらあんな物を?)」ジー

パッチ「どうしたの?」

宣教師「あ、いえ、見たことのある本があったので」

パッチ「ああ、聖書?懐かしいでしょ。よく宣教師様が読み聞かせてくれたもんね」

宣教師「……そうですね。今となっては恥ずかしい限りですが」

パッチ「そうなの?僕は大切にしてるよ」

宣教師「思い出、ですものね」

パッチ「まあね」

宣教師「パッチくんは……今の教団についてどう思いますか?」

パッチ「僕?」

宣教師「はい。聖団や町の人たちは否定する声が多かったので」

パッチ「僕は……」

宣教師「」ゴクリ

パッチ「よく分かんない」

宣教師「」ガクッ

パッチ「ほら、僕って神様とか信じないから?」ヘラヘラ

宣教師「な、なるほど……」
249: 名無しなのよ:2023/12/27(水) 21:37:28 ID:FfqO1ditts
最後に出た時はみんな嫌いだみんな死んじゃえと言ってたパッチ、あれからどうしてたんだろう?どうやって生きてこれたんだろう?

年末年始お忙しいとは思いますが体調崩さぬようお気をつけください
つC
250: ◆WEmWDvOgzo:2024/1/1(月) 00:11:31 ID:PPdTfIjnZQ
明けましておめでとうございます。
更新遅くて申し訳ありません。
感想とても励みになっております。
来年もよろしくお願い致しますm(_ _)m
251: 名無しなのよ:2024/1/8(月) 17:39:21 ID:0H4X6K45kU
𝐻𝑎𝑝𝑦𝑁𝑒𝑤𝑌𝑒𝑎𝑟
作者さんにとって良い一年となりますように
更新頻度はお気になさらないでください!
待つ時間も楽しいですし読み返して理解を深める良い機会ですから
今年もよろしくお願い致します
252: 名無しなのよ:2024/3/3(日) 02:13:17 ID:OFbOhCPxzw
待ってます
つC
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