あらすじ
永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く
遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する
南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される
敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した
一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち
かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる
穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった
忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない
友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに
109:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:20:56 ID:H.1URhAHDs
東の騎士「向こう方の戦力はいかほどと数えられる?」
東の大臣「…低く見積もっても20万単位は」
東の騎士「ふむ。難しいな」
酋長「たった7万の違いだろうが?恐れるに足らずだ!」
東の騎士「(…ほ、本気で言っておるのだろうか)」アセアセ
酋長「そうと決まれば戦支度だ!里に戻るぞ、ルイ!」
ルイ「お、お爺ちゃん!気が早いよ!」アセアセ
酋長「バカモン!善は急げと言うだろうが!」
ルイ「い、急がば回れとも言うし…」
酋長「なぁにぃ〜!?そんな腑抜けた御託を並べるのはどこのどいつだ!?」
ルイ「し、知らないよぉ!」
東の大臣「ほ、本当に彼らを信じていいのか?」ヒクヒク
東の騎士「い、いい…筈だ。おそらくは…」ヒクヒク
110:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:24:02 ID:LXHCKgwcFk
東の大臣「おっと…大事なことを忘れるところだった。先日に王国の使者が参られ、王妃様に宛てた書状が届いた」
東の騎士「王国…!」
ルイ「ヒメからってこと!?やっぱり助けてくれんの!?」パァァ
東の大臣「…いや、協議を持ち掛けてきた。これ以上の争いを続ける意思はないのだろう」
ルイ「え!?そんなぁ!ウチらだって協力してあげたじゃんか!」
酋長「チッ!腰抜けが…!やる気のない輩の言葉に耳を傾ける意味などないわ!」
東の大臣「あちらも事情があるのですから仕方ないでしょう」
東の騎士「…王妃は読まれておるのか?」
東の大臣「無論だ…。返事をする気はないようだがな」
東の騎士「左様でござるか…」
東の大臣「…とにかく我々は速やかに拠点への配置を済ませなければな。
一ヶ所に充てられる兵が極端に少なく、それだけに守りが重要となる」
酋長「何が守りだ。狩りに守りもクソもあるまい。これだから人間は!」
東の大臣「(噛み合わん…彼らとは形だけの共闘になりそうだな。あまりあてにはしない方がよいか)」
ルイ「ま!守りはともかく待ちは大事だよね」
東の騎士「待ち?」
ルイ「そ!ただ闇雲に追っかけるだけじゃ獲物にありつけないし、その為にウチらは罠を張るの!」
酋長「ただ数を集め、悠長に待っているだけでは格好の標的よ。
城を持たぬ儂らホビットにとって山に聳える木々や川は防壁も同じ。それらを最大限に活かす工夫が罠だ」
東の騎士「なるほど…して、どのように?」
ルイ「山と森なら任せてよ!人っ子一人寄せ付けないから!」
東の大臣「うーむ。その確証が得られるなら…我が国の地形を察するに国土の7割を防衛出来ることになりますが」
酋長「土地によって生え揃う樹木も水源の出入りも幾重に異なる。うぬらの持つ情報を全て差し出し、早急に調査せい」
東の大臣「(もしも可能だとしたら何よりありがたい話だが…地形情報を渡すということはホビット族に手の内をさらけ出してしまう事を意味する)」
東の騎士「(迷っておられるな。やはり大臣殿はまだホビット族を信用しきれぬか)」
東の大臣「(罠を張るには我が領の山々に手を掛け、拠点を構えさせなければならない。頼らざるを得ない状況と言えども、それはさすがにリスクが高すぎる…)」
東の騎士「(この苦境を乗り切るには団結が不可欠…まず互いの猜疑心を取り払わねば戦いにすらならん…。しかし大臣殿も酋長も譲れる立場ではなかろうしな…)」
111:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:27:03 ID:H.1URhAHDs
酋長「とっととカタを着けるぞ。ルイ!里の者を呼びつけろ!」
ルイ「あいあいさ〜!」
東の大臣「お待ちください」
東の騎士「!?」
東の大臣「その前に一つ約束していただきたい」
酋長「…なんだ、人間」ギロッ
東の大臣「そちらとの共闘を結ぶに当たり、我々は情報を差し出すばかり。それでは後々の不安が拭えません」
酋長「だったら白紙に戻すまでだ。誰もうぬらなどあてにしとらん」
東の大臣「っ…せめて保証してほしいのです。あなた方が裏切らないという絶対的な確信が」
酋長「裏切るもクソも…ハナから味方ではなかろうが?」
東の大臣「それでしたら我が領は明け渡せません!」
酋長「はぁ…!?」
東の大臣「ひとまずのところはそちらの里から200名ほど人質を頂戴したい。あくまでも信用を確かめる為の一時的措置です」
酋長「」ビキッ
東の騎士「だ、大臣殿!」アセアセ
東の大臣「戦いに打ち勝ったとしても、これでは戦後また国土を略奪されかねん!だいたいにして不平等だ!」
東の騎士「不平等ではござらぬ!某らは国を護る為に今出来る最善を提供し、彼らは力を以て防衛に尽くすのでござるぞ!」
東の大臣「黙れ!ブルードル陛下も宰相殿も倒れてしまった今、この国を護れるのは私達しかいないのだ…!」
東の騎士「しからば発言を慎重になされよ!決別しては元も子もあるまいに!?」
酋長「いぃぃや…よい」
東の騎士「!」
酋長「回りくどいのは好まん…。王妃の部屋に案内せい…!」ビキッビキッ
東の騎士「!!?」ギョギョッ
ルイ「や、ヤバっ!お爺ちゃんぶちギレてる!!」アワアワ
112:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:29:01 ID:H.1URhAHDs
東の大臣「み、ミリア様に何をされるおつもりか!」
酋長「知れたこと!ごちゃごちゃと能書き垂れる人間など邪魔にしかならんわ!頭からカチ割ってやる!!」
東の騎士「お待ちあれ!今一度!今一度話し合おうではござらぬか!」アセアセ
酋長「くだらん!時間の無駄だ!」
ルイ「お、落ち着こ?ね?落ち着こ?やっぱりウチらだけってのも寂しいじゃん!?」アセアセ
酋長「あぁん!?」ギロッ
ルイ「あ、はい」スンッ
東の大臣「とうとう本性を表したな!ホビット族が我々と共闘する筈がなかったのだ!」
酋長「たわけぇ!!うぬらが勝手にほざいたんだろうがぁ!!儂は誰の指図も受けんわい!」
東の騎士「(くっ…どうしたものか!両者共に主張を覆す気がないでは…!)」
ルイ「(あっちゃ〜。こうなったら、もうダメだわ!お爺ちゃん、一回言い出したら絶対に曲げないし!)」
東の騎士「(まさに水と油…ヒメ殿もよくこの二つの陣営を結び付けたものよ)」
ルイ「(ヒメとか宣教師はすっごい上手にやってくれたんだけど…ウチらじゃどうにも)」
東の騎士&ルイ「(誰か…なんとかしてくれる誰かは!?)」アセアセ
「何事でしょう?」スタスタ
ザワッ
東の大臣「み、ミリア王妃…!?」
酋長「…出てきよったなぁ!」ギロッ
113:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:30:30 ID:H.1URhAHDs
ミリア「あら、ルイちゃん!いらしてたの?」パァァ
ルイ「え、えっと…まぁ」オロオロ
ミリア「この前、頂いたリーフのブレスレット使ってますのよ?どう?似合うかしら?」スッ
ルイ「う、うん!似合います!似合いますんですけど…あの…今はちょっと取り込み中?」ヒクヒク
ミリア「? なにかございまして?」キョトン
東の大臣「お離れください!王妃様!?」
ミリア「?」
東の大臣「危害を加えられる前に!」
ミリア「まぁ!酋長さんもいらしてたのね。ご挨拶が遅れて申し訳ございません!」ペコッ
酋長「……!」ギリッ
東の大臣「お、王妃様!」
ミリア「この度は私共に力をお貸しくださり、まことにありがとうございます。
本来はこちらから出向くのが筋ですのに、わざわざ遠路はるばるお越しくださいまして…」ペラペラ
酋長「ん?お、おう…」
東の大臣「……!?」
ミリア「以前の戦でも勇猛果敢に敵方の兵を蹴散らし、王国の方々を救われた活躍ぶりは聞き及んでおります。
地形や道具の持ち味を存分に発揮された緻密な戦略も!とても私共には思い付かない鮮やかなものだったそうで?」
酋長「ま、まぁそうだな?10割方、儂が勝利に導いてやったようなもんだ?」ドヤッ
ルイ「(あ…お爺ちゃんの機嫌がだんだん良くなってる)」
ミリア「今回に置きましても私は何も心配しておりません。酋長さんが手腕を振るってくださるなんて、それ以上の安心はございませんもの!」
酋長「ふん!なかなか分かっとるな?」
ミリア「東の国はホビット族の皆様を信頼しています。私共にお手伝いさせていただける事がありましたら、なんなりと仰せ付けくださいましね!」ニコッ
酋長「わっはっは!よかろう!よかろう!」ゲラゲラ
東の騎士「(酋長殿が笑われた…!)」ハッ
東の大臣「な、なんと軽々しい…!」ワナワナ
114:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:32:26 ID:LXHCKgwcFk
ミリア「あら、このポンチョ!私がルイちゃんに贈ったもの?」マジマジ
ルイ「は、はい!せっかく貰ったんで着てみちゃいました!」ファサッ
ミリア「嬉しい!絶対に似合うと思って選びましたのよ!酋長さんも見てあげて?」
酋長「うぅん?わ、儂はこういうのは分からん!服なんぞ寒さを凌げりゃなんでもよかろうが!」
ミリア「まぁ?そんなことありません!女の子は着飾るものですよ?
ほら、可憐な赤の布地に工夫を凝らした黄色い刺繍が合わさって可愛らしい!」
ルイ「え、えっへへ〜!可愛いなんて?そんな?またまた〜?」デレデレ
東の騎士「(か、完全に手懐けておられるとはさすが王妃様でござる!)」
東の大臣「い、いけませんぞ!そのような者らと馴れ合っては!?」
ミリア「」キッ
東の大臣「」ビクッ
ミリア「あなた達がそんなやりとりをする度に私が執り成しておりますのよ?」ジトー
東の大臣「し、しかし私は…」
ミリア「助けてもらう立場にありながら図々しい要求は控えなさい!敬意を以て信頼を築くのです!」ピシャリ
東の大臣「う……」タジッ
ミリア「私は東の国の代表としてホビット族を愛し、敬い、認めています。あなたはそれでも否定を唱え、協力を拒みますか?」
東の大臣「い、いえ…滅相もございません」シュン
ミリア「ではご相談の邪魔になりますので私はこれで…。お互いにより良い案が出る事を祈ります」ペコッ
東の大臣「しょ、承知致しました…」ズーン
酋長「うむ!全部儂に任せておけ!」ゲラゲラ
東の騎士&ルイ「(丸く収まった…)」ホッ
115:🎍 名無しさん@読者の声:2017/6/15(木) 18:47:01 ID:ssz5K42WmA
東の騎とルイは苦労人だなぁ…二人とも頑張れーp(^-^)q
つ支援
116:🎍 名無しさん@読者の声:2017/6/15(木) 18:48:21 ID:ssz5K42WmA
士落っことしてた
騎士、です東の騎士名前ミスってごめんね…
117:🎍 すみません!遅れた分ガッツリ更新します! ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:43:33 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数週間後〜〜〜
―――王国(議場)―――
高官1「申し訳ありません!!」ドゲザ
政務官「…謝らなくていい。南国の理解を得られなかったのは私の準備不足によるものだ」
高官1「いえ!政務官の責任では…!」プルプル
政務官「そうしていてもラチがあかない。顔を上げ、席に着け」
高官1「〜〜…は、はい!」ガタッ
政務官「東国はどうだ?」
高官2「書状は受け取っていただけましたが…門前払いを受けまして」
政務官「なにも得られなかったのか?」
高官2「同行させた役人達と都を中心に聞き取り調査をしてみましたが芳しい情報は得られませんでした」
政務官「つまりは…開戦間近か」
高官2「はっ…城にホビット族が出入りし、各地の防衛配置も行われているそうで」
政務官「ふぅー…難局だな。正直どちらにも賛同しかねる」
バァンッ!
政務官「」ビクッ
ネバル「た、大変!大変です!」ゼェゼェ
政務官「ネバル…貴様、南の山脈再開拓計画の最中ではないのか!?」
ネバル「そ、それが…すんごい事になって…急いで報告しなきゃと…」ゼェゼェ
政務官「先日のデマ騒動の件であれば貴様から寄越された手紙で確認しているが?」
ネバル「そ、そんなこっちゃねぇです!もっとえんれー事ですだ!」アセアセ
高官3「い、いったい何事だと言うのだ!?」
ネバル「東領の辺境地に…ホビット族の大群が押し寄せてきたって…!」
政務官「なっ…」
高官's「なぁにぃぃいいいいいい!!!!?」ギョギョッ
118:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:45:49 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数日前〜〜〜
―――王国辺境地(国境の山脈)―――
ザザザザザッ
ホビットの若者「へっ!ここが王国さんかい!」
里のホビット1「すっげー!川!草原!林!なんでも揃ってる!」
里のホビット2「ほんとにここもらっちゃっていいのかな!ポルカさん!」
ホビットの若者(ポルカ)「おうともよ!じっちゃんが国王とかいう偉いのに約束させたんだ!」
ホビットの娘「で、でもー…酋長様やルイさんに言わなくていいの?」モジモジ
ポルカ「けっ!んなオドオドすんなよ、コロン!じっちゃんに限って、しち面倒くせぇ事ごちゃごちゃ言ったりしねぇって!」
ホビットの娘(コロン)「でもー…私達、まだお世話になって日が浅いし」モジモジ
ポルカ「だからだろ?新参の俺たちにゃ狩り場も水場も住み処も余っちゃいねぇ。他部族といっしょくたんなって狭苦しい生活させられてよ」
里のホビット1「そうそう!やってらんねぇよな!」
里のホビット2「それもこれも王国やら東の国やらが約束した土地をくれないからだ!」
コロン「でもー…ルイさんは絶対に約束を守ってくれる人たちだから大丈夫って言ってたよ?」モジモジ
里のホビット1「そんなの嘘っぱちだ!」
里のホビット2「人間が約束なんか守るかよ!」
里のホビット3「あのルイにしたって酋長の孫で余裕があるから俺たちなんかどうでもいいと思ってんだ!」
コロン「そうかなー…ルイさん、すごく明るくていいホビットだけどなー…」モジモジ
ポルカ「だー!もういいじゃねーか、こまけぇこたぁ?こんな肥沃な土地を貰えりゃじっちゃんだって大助かりだろうよ!」
コロン「……」モジモジ
ポルカ「心配すんなって?ここまで拡げりゃ俺達どころか他部族まで悠々と生活出来る。そうすりゃみーんな笑顔だ!な?」ポンポン
コロン「う、うん…」モジモジ
ポルカ「へへ!こうやってガッツリ土地拡げて、じっちゃんにも認めてもらってよ!将来はおめぇを酋長の嫁さんにしてやっからな!」ニカッ
コロン「……!」カァァ
ポルカ「まーずは…とっ散らかったとこから片付けてもらわねーとな」ジロッ
119:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:02 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜現在〜〜〜
―――王宮(議場)―――
高官4「な、何をしに来たんだ!そのホビット共は!?」
ネバル「約束した、土地をもらうって…そればっかりで!」ゼェゼェ
高官2「バカな!南の山脈の一部を明け渡すということで話は着けてあるんじゃないのか!?」
ネバル「そう言ってあるです!だからオイラも視察してたです!」
高官3「なぜだ!伝わっていないのか!?」
ネバル「だーから!オイラにもわかんねーですよ!」
政務官「予定では2ヶ月後には東のホビット族から一部が定住するのだったな」
ネバル「は、はいです!でもなんだか全然分かんなくて!」
高官5「東のホビット族から使者は出てないのか!?」
ネバル「例の北国と一触即発になってからは誰も顔を出さないです!」
高官1「なんでだ!クソォッ!?」ダンッ
政務官「落ち着け!それぞれの下から出払える役人はいないのか!?」
高官1「わ、私共は再度、南国との関係維持を呼び掛ける為、手が空きません!」
高官2「東国の問題に向き合っていく上では私の方で対処するべきなのでしょうが…残念ながらホビット族との交渉手段は持ち合わせていない」
高官3「こっちだって公爵家の圧力で役人たちは悲鳴をあげてますよ…」
高官4「今月に入って6名が引き抜かれ、公爵を後ろ楯に貴族制度の復権を掲げておりますし…毎夜のパーティーに付き合わされて過労で倒れた者も何人か」
高官5「私もだ!国内の協調を強めようと舞踊や絵画、武術の催しに行事の手配と人手が足りん!」
ネバル「お、オイラだってホビット族と特別な繋がりはないですし、陛下の決めた段取りに沿ってやってるだけですだよ!」
政務官「…生憎と私も北国含む三国との問題で余力がない」
ネバル「ど、どうするですか?」
120:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:44 ID:e4mtUywSu.
政務官「確か東のホビット族の協力を執り成したのは陛下と司祭だったな」
ネバル「そ、そういえば陛下は…!?」
政務官「…暫く一人にしてほしいと仰せだ。自室で公務を行っておられる」
ネバル「え?こ、ここで議論しないですか?」
高官1「最近の陛下はどうもおかしい…」
高官2「うむ…西国から帰ってきて変わられた」
高官3「このところは妙に苛つかれていて声も掛けられないしな」
高官4「難問が同時多発している、この時にこそ凛々しくあってほしいものだが…」
高官5「あぁ、陛下があれでは我々も気力を削がれるというものだ」
ネバル「(あんなに頼もしかったのに…どうしちゃったですか、陛下?)」シュン
政務官「…教団と憲兵団に連携してもらい、解決を促そう。
苦肉の策だが我々は我々で集中しなければならない問題が山積みだからな」
高官's「ははっ!」ピシッ
121:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:49:27 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜夜〜〜〜
―――王宮(国王の間)―――
ヒメ「(どうしたらいい?どうしたら争いを避けられる…!?)」バサッ
ヒメ「(東国が話し合いの意思を見せない限り、王国の出る幕はない…!)」ワシワシ
ヒメ「(北国の無茶な要求が引き金だとしたら直接、北国に譲歩してもらえるよう取り計らうしかないが…)」
ヒメ「(それでもし要求が加速したら…それこそ大惨事だ!)」ギリッ
ヒメ「(どちらかと言えば、その可能性が高いか!北国にしてみたら利権を根こそぎ頂ける、またとない好機だもんな!)」
ヒメ「(それでなくても各国に政策じゃなく侵略で国を豊かにする思想が芽生え始めてる…!)」
ヒメ「(その流れを産み出してしまったのは……)」ググッ
ヒメ「(どう転んでも混沌だ。救いようのない…!)」ガバッ
122:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:50:50 ID:VfV4LPRyvs
コンコン コンコン
ヒメ「…入れ」
給仕1「失礼します!ご公務捗ってますかー?」ガチャッ
ヒメ「……」
給仕1「お、お食事の支度が整いましたので!」アセアセ
ヒメ「そうか。ここに持ってきてくれ」
給仕1「あ、今日はその…食堂で召し上がられませんか?」
ヒメ「は?」
給仕1「す、救い主様が一緒に食べたいと…申し出てまして?」モジモジ
ヒメ「…悪いがそんな気分にはなれない。断ってくれ」
給仕1「あ、で、ですが…」アセアセ
ヒメ「なんだ?」ジロッ
給仕1「な、仲直りしたいとも…おっしゃられてました」
ヒメ「仲直り…?」
給仕1「陛下を怒らせてしまったのは、きっと自分が何か間違いを犯したから、と思い悩んでるみたいで…」
ヒメ「(…なんだよ。あいつ)」
給仕1「本当によろしいのですか…?」
ヒメ「いい。それよりもあいつを部屋から一切出すな。なるべく人の目に触れないよう注視しておけ」
給仕1「か、かしこまりました…」シュン
ヒメ「……」カリカリ
バタンッ
123:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:52:18 ID:VfV4LPRyvs
ヒメ「……」カリカリ
ヒメ「(なんだよ。なんだよ…なんだよ!)」ピタッ
ヒメ「なんなんだよ!あいつはぁ!?」ブンッ
万年筆「」カンッ コロコロコロ
ヒメ「仲直りしたい…?怒らせたのは自分のせい…?なんにも分かってないな!!」ダンッ
ヒメ「(僕が…一人で悩んでるだけだ!勝手に必死になってるだけだ!)」ギリッ
ヒメ「(なんで、なんであんな大事に巻き込まれて…痛みを伴って…それでもヘラヘラ笑ってられるんだよ!?)」イライラ
ヒメ「(無事に帰れたのがそんなに嬉しいか!家族がそんなに愛しいか!平穏な生活がそんなに楽しいか!?)」
ヒメ「(それを守ってやる為に…頑張ってるのは誰なんだよ!?)」
ヒメ「(全て終わって一件落着なら、どんなに良かったか…!分かってないんだ!あいつは…なにも!)」ガバッ
ヒメ「(なんにも…!)」ブルッ
ヒメ「…どんな顔して会えばいいんだよ」ギュウウ
ヒメ「僕は…おまえとの約束を守れそうにないんだぞ?」ボロッ
コンコン
ヒメ「……!?」
124:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:55:25 ID:e4mtUywSu.
「夜分に恐れ入ります。入ってもよろしいでしょうか?」
ヒメ「…あぁ」グシッ
ガチャッ
政務官「失礼…」ペコッ
ヒメ「…手短に言え」
政務官「では前置き無しに伺いますが大后様とは話し合われたのですか?」
ヒメ「…まだだ。予定が合わなくてな」
政務官「予定が合わない?大后様は毎晩、夜遊びに興じておられますが?」
ヒメ「僕が、だ。分かるだろ」
政務官「いいえ、分かりかねる」
ヒメ「……」
政務官「今日は議会を欠席されていましたが…私はてっきり大后様に会っていらっしゃるものとばかり?」
ヒメ「公爵家が余計な動きをしてるみたいだな…」
政務官「はい。正直に申し上げますが…貴族側が本腰を入れれば我々、政治に与する者にとって致命的です」
ヒメ「資金繰りか…それともコネか?」
政務官「それも重要ですが…もっと根本的な部分です」
ヒメ「役人の八割が貴族出身だと言いたいんだろ…?」
政務官「そうです。そして彼らは爵位に忠実でなければなりません」
ヒメ「くだらない…」
政務官「そのくだらない制度によって貴方は国王の地位を授かっているのです」
ヒメ「王族は貴族を束ねる官職で国民の代表だ。あいつらとは違う!」
政務官「……」
125:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:56:10 ID:VfV4LPRyvs
政務官「…未だにお母上を恨んでらっしゃるか」
ヒメ「」ピクッ
政務官「確かに貴方から見れば行きすぎた価値観の持ち主かもしれないが…王族としての振る舞いを心掛ける上では当然の考え方です」
ヒメ「……」
政務官「あのお方も決して根の悪い人間ではございません。古い感覚が染み付いて時代錯誤しているだけなのですよ」
ヒメ「恨んでなんかない…。ただ…」
政務官「ただ?」
ヒメ「母上は頑としてホビットを認めようとしない…。僕とは正反対なんだ」
政務官「その食い違いは重々…しかし貴方が自ら説得を試みない限り溝も永遠に埋まりませんぞ」
ヒメ「母上は僕の話なんて聞こうともしない。一方通行で疲れるだけだ」
政務官「ですが、お父上とは和解なされた筈。その時のようにはいきませぬか?」
ヒメ「和解と言ったって…ほんの少しの間だ。それに父上も最後までホビットを認めてなかった」
政務官「…ではせめて議会には出席していただきたい。持ち寄った案も直接のお許しを頂けなければ実行に移せず手間となります」
ヒメ「……」コクッ
政務官「…今は私情に駈られている場合ではございません。お母上との件もよくご検討くださいますよう」
ヒメ「あぁ、考えておくよ…」
政務官「宜しくお願い申し上げます…。失礼しました」ガチャッ
バタンッ
126:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:57:13 ID:VfV4LPRyvs
〜〜〜深夜〜〜〜
―――城(王立図書館)―――
ヒメ「……」ペラッ
「悩ましい事があると、書庫にこもって蔵書を読み耽る…変わりませんのね」スタスタ
ヒメ「」ビクッ
大后「そこに貴方の求める答えがありまして?」ニコッ
ヒメ「は、母上…!?」ハッ
大后「お隣、失礼しますわね」ストッ
ヒメ「…僕に何か?」ジロッ
大后「あら、なんて目をなさるの?わたくしは貴方の産みの親ですことよ?」
ヒメ「今夜も招かれているのでしょう。こんな場所にいてよろしいのですか?」
大后「今夜はいいの。陛下……いいえ、可愛い我が子と他愛もない話がしたくて参りましたのよ」
ヒメ「明日も早いので失礼します」ガタッ
大后「救い主…でしたわね」ボソッ
ヒメ「……!?」ピタッ
大后「聞くところによるとホビットの子供だとか」
ヒメ「それがなにか?」キッ
大后「解せないわ、とても…とても解せない」
ヒメ「っ……」ギリッ
大后「王国の救い主?ましてや国王の親友?なんて似つかわしくない響きかしら?」
ヒメ「母上には関係のないことです!」ダンッ
大后「……」ジッ
ヒメ「……!」ジッ
127:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:58:48 ID:VfV4LPRyvs
ヒメ「話は以上でしょうか…。僕は母上と違い、多忙ですので用が無ければ…」
大后「この飾り…」チャラッ
ヒメ「は…?」
大后「美しいと思いませんこと?」クスッ
ヒメ「…宝飾を愛でる趣味はありません」プイッ
大后「王族らしからぬ発言ですわね。こんなにも煌めいて鮮やかですのに?」チャラッ
ヒメ「なんとでもお言いください…」
大后「このアメジストなど、ほら?素晴らしい…庶民には一生、手の届きませぬ代物よ?」
ヒメ「…その宝石が民の労働に値する対価たりえるとは到底、思えませんね」
大后「貴方は何も理解出来てませんのね…」ハァッ
ヒメ「なんですって…?」イラッ
128:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:59:39 ID:e4mtUywSu.
大后「このラピスラズリも、エメラルドも、ルビーも、トパーズも、ダイヤモンドも…高貴なる者の証」チャラッ
大后「太古より宝石は身分の高い者にのみ行き渡りました。どの時代も、どの国でも」
大后「この輝きに価値があるのではなくて、この輝きを身に付けるに相応しい人間にこそ価値がありましてよ?」ニヤッ
ヒメ「……」
大后「貴方もそろそろ自覚なさい。この世は上下に分かたれる物…上位に生まれた誉れを存分に味わってはいかが?」
ヒメ「…この地位を授かれた幸運にはとても感謝しております」
大后「そう。それでいいのよ…?」ニィィッ
ヒメ「ですが…僕は地位に溺れる気はございません」
大后「」ピクッ
ヒメ「失礼します…」スタスタ
ガチャッ
バタンッ
大后「……」チラッ
本「」ポツン
大后「(何を熱心に読んでいるかと思えば、純愛小説……)」ヒョイッ
大后「愚かですわね…。王族に一途な恋が赦されると思っているのかしら…」ペラッ
大后「美しいだけの物語など、この世にありはしないというのに…」ポツリ
大后「あの子はまだまだ自覚が足りませんわ…」フッ
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