あらすじ
永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く
遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する
南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される
敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した
一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち
かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる
穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった
忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない
友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに
162:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:32:06 ID:ZYNDGhvvpo
―――大聖堂(謁見の間)―――
宣教師「失礼しま……」ガチャッ
領主「受けて立とうじゃないか!!」ダンッ
ポルカ「おぉ望むところだ!?」ダンッ
宣教師「(…もう縺れてますね)」
領主「私兵に呼び掛けろ!憲兵団にも助力を要請するんだ!」
付き人「かしこまりました。旦那様」
ポルカ「うーし!早速、外の仲間に知らせてやらぁ!」ガタッ
宣教師「あのー」
ポルカ「あ?なんだよ、お前?」
宣教師「えーと、私は一応、教団という組織の司祭をしているものですが」
領主「司祭様!?」
宣教師「あなたが領主の?」
領主「はい!辺境地を任されております、コドルド伯爵家のフザと申します!」
163:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:32:38 ID:ZYNDGhvvpo
宣教師「不在にしている間、この件を預かってくださり、感謝します。あとは私からお話しますので」
領主「そうは参りません!このホビット共は我が地を害そうと謀る悪しき者!捨て置く訳にはいきませんな!」
宣教師「捨て置くとは言ってません。私が引き継ぐと言ってるのです」
領主「高名なる猊下にこう申すのは憚られるが、領土を巡る問題は私の領分にございます!」
宣教師「(猊下……私のことでしょうか。いまいち判別しにくいですが)」
領主「このホビット共は私が責任を持って討伐します!どうかお引き下がりくださいませ!」
宣教師「私は国王の命を受けて彼らを説得するよう仰せつかりました」
領主「」ピクッ
宣教師「恐縮なのですが、ここは一度、私に任せてもらえないでしょうか?」
領主「王族の名を出せば私が怯むとでも?」ジロッ
宣教師「はい?」
領主「いつまでもその威光を掲げられると思わぬ事ですな」
宣教師「おっしゃっている意味が…?」
領主「王国は生まれ変わるのですよ…。あるべき形へと」
宣教師「…よく分かりませんが、こうしていても時間を浪費するだけです。お下がり願えますか?」
領主「ふん…よいでしょう。ひとまずは猊下の顔を立てるとしましょうか」ガタッ
宣教師「(やっぱり猊下って私のことなんですね)」
164:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:34:54 ID:ZYNDGhvvpo
宣教師「すみません。お待たせしました」ペコッ
ポルカ「だからなんなんだ、あんた」
宣教師「とりあえずお掛けになって。落ち着いて話しましょう」ストッ
ポルカ「いいから早く明け渡すと言えよ!それで全部、丸くおさまんだ!」
宣教師「? なにをですか?」
ポルカ「この土地をだよ!回りくどいのは性に合わねぇ!是か否か!?」
宣教師「強引に物事を推し進めようとなさる気性は酋長さんにそっくりですね」クスッ
ポルカ「あんた…じっちゃんを知ってんのか?」
宣教師「えぇ、共に力を合わせて窮地を脱した仲ですから。ルイさんはお元気ですか?」
ポルカ「ひょ、ひょっとして…あんたが噂の?」
宣教師「噂?」
ポルカ「王国の国王ヒメだなぁ!?」ガタッ
宣教師「違いますよ」
ポルカ「」ズルッ
宣教師「国王以前に女ですし先に司祭と名乗ってますし」
ポルカ「じゃ、じゃあ誰なんだよ、ちくしょう…」ムクッ
165:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:36:19 ID:iFM3aw6sIs
宣教師「ルイさんからは宣教師と呼ばれていますね」
ポルカ「宣教師…!?」
宣教師「はい」
ポルカ「ちょ、ちょっともっかい立ってみてくれ…」
宣教師「へ?まぁいいですけど…」スクッ
ポルカ「」ジーッ
宣教師「……?」
ポルカ「ほ、ホントだ!乳がでけぇ!?」
宣教師「は?」
ポルカ「ルイの言ってた通りだ!乳牛みてぇに乳のでけぇ女がいるって聞いてたがマジだったのか!」
宣教師「は?」
ポルカ「ちょ、ちょこっと試しに揉んでもいいか?」 ソーッ
宣教師「」パシンッ
ポルカ「ぶけっ!?」ヒリヒリ
宣教師「……」
ポルカ「な、なにしやがる!?」クワッ
宣教師「反対側の頬も差し出しなさい」
ポルカ「あぁ!?」
宣教師「」パシンッ
ポルカ「いたぁっ!?」ヒリヒリ
パシンッ パシンッ パシンッ
166:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:37:49 ID:ZYNDGhvvpo
ポルカ「痺れやがる…」パンパン
宣教師「ふぅ、それでは何から話しましょうか」パッパッ
ポルカ「よくここから話し合いに移ろうと思えるな…」ジトッ
宣教師「下心を取り払ってあげたんです。反省なさい」
ポルカ「くそっ…やってられるか!」ガタッ
宣教師「御手洗いは一階ですよ」
ポルカ「便所じゃねぇよ!!」
167:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:38:56 ID:ZYNDGhvvpo
ポルカ「ふざけやがって!手まで出しやがったんだ!こうなりゃ何がなんでも明け渡してもらうぞ!」
宣教師「その前に酋長さんの許可は取ってあるのですか?」
ポルカ「許可?そんなもん取ってねーよ」
宣教師「やはりそうでしたか」
ポルカ「は?」
宣教師「あの方は横柄な態度が目立ちますが横紙破りをするような卑劣漢には見えませんでした。再三の要求はあなたの独断ということでよろしいのですね?」
ポルカ「お、おう?」
宣教師「ではこちらに非がない以上、あなたの要求に応じる謂れはありません。領地の明け渡しは真っ向からお断りさせていただきます」
ポルカ「な、なんだとぉ!?」
宣教師「ですが観光なら自由ですよ。こちらの風土に興味がありましたら案内させますが」
ポルカ「ふざけるな!」
宣教師「ふざけているのはあなたでしょう」
ポルカ「あぁ!?」
宣教師「突然ずかずかと人様の敷地に上がり込み、気に入ったから明け渡せと言われても納得できるものですか」
ポルカ「うるせぇ!お前らがさっさとしねぇからだろ!」
宣教師「ではその足で南の山脈の開拓を手伝ったらいいじゃないですか」
ポルカ「はぁ!?」
宣教師「人任せにしている内は文句を言う資格なんてありませんよ。土地が欲しければ自分たちで耕して整地なさい」
ポルカ「く、くぬやろ〜〜〜!!!」ギリッ
宣教師「それとも私が直接、酋長さんと話しましょうか。彼らと信頼を築き、共闘を成し得た、この私が」
ポルカ「!?」
168:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/25(火) 23:39:37 ID:ZYNDGhvvpo
宣教師「どうしますか?」
ポルカ「ど、どうするもこうするも!」
宣教師「今ならまだ無かったことにしてもいいんですよ」
ポルカ「っ…な、無かったことに?」タジッ
宣教師「はい。あなた方が独断専行した暴挙にも目を瞑ります。これまでと変わらず友情を育みましょう」
ポルカ「わっかんねーな!どういう意味だよ!」
宣教師「ご自分の立場を省みなさい。あなたは酋長さんに値する決定権をお持ちなのですか?」
ポルカ「け、決定権って…んなのは……」
宣教師「あなたのやろうとしている事を里の方々に説明すれば、きっと怒りに触れますよ」
ポルカ「お、俺は…ただ里の為を……」モゴモゴ
宣教師「なにせ自分たちの目を盗んで抜け駆けしようと目論む同胞がいたなんて知れれば…とても信用しきれませんからね」
ポルカ「そ、そんなんじゃ!」アセアセ
宣教師「そもそも種族を代表して交わした約束をあなた一人の意思で左右できる道理がありません。身勝手な判断は綻びに結び付きますよ」
ポルカ「く…く……!」ギリッ
宣教師「どうです?まだ食い下がりますか?」
ポルカ「〜〜〜!?」ワナワナ
宣教師「無かったことにしましょう。お望み通り、それで丸く収まります」
ポルカ「……!ちっくしょうめ!」バンッ
〜〜〜〜〜〜〜〜
169:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:48:38 ID:asMbRZfNT2
―――城下町(教会)―――
宣教師「ということがありましてね」
司教「無事に収拾が着いたようで何よりにございます」
宣教師「そうですね…。私のいない間、何か変わった事はありましたか?」
司教「それなのですが実に喜ばしい出来事がございましたぞ!」
宣教師「喜ばしい出来事?」
司教「なんとここ数日、ホビット族が裏通りに出店した木工品市場の売れ行きが良く民衆の間で密かな話題となっているのです!」
宣教師「それは良いことですね。木工品というと家具や玩具ですか?」
司教「はい。それだけに留まらず餅と呼ばれるハンマーのような物で米をついて作るおやつまで売り出してましてな。そちらも好調であるとか!」
宣教師「ハンマーで米を…あまり想像が付きませんね」
司教「私も一度いただいたのですが、あれはなかなか味わえない珍味でしたぞ」
宣教師「ふむふむ、それは興味深いですね」
司教「それはもう一時は不穏だった流れも盛り返す勢いで!是非、司祭様にもおすすめします!」
宣教師「司教さんのお墨付きでしたら間違いありませんね。私も今度、購入してみましょう」ニコッ
司教「それがよろしいかと!」
170:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:49:42 ID:asMbRZfNT2
宣教師「ところで…例の件はお願いできましたか?」
司教「はっ…教団に協力的な領主に声をかけ、承諾を得てまいりました」
宣教師「では…」
司教「すぐにでも夜会に参加出来るよう手筈を整えてあります」
宣教師「ありがとうございます。これで彼らの真意を探れますね」
司教「しかし貴族に限定された夜会である為、司祭様と言えど制限があるやもしれません」
宣教師「貴族ですか…。良識を持ち合わせた方も多くいますが…おおよそ良いイメージは浮かびませんね」
司教「ホルウィの町のような例もありますからな…」
宣教師「…ですが、このところ王都に漂う不気味な雰囲気はおそらく貴族の影響でしょう。大聖堂で会った領主も気になる事を言ってましたしね」
司教「気になる事とは?」
宣教師「"王国はあるべき形に生まれ変わる"とか…」
司教「あるべき形…?」
宣教師「それが何を意味するのか私には分かりません。けれど国内の不和を指しているのは確かでしょうね」
司教「…やはり内部に入り込まなければ明らかにはなりませんな」
宣教師「えぇ。差別、戦争と続いて今度は何が起こるのか…この目で見極めてきます」
司教「…今夜、城内のダンスホールで開かれるそうです」
宣教師「分かりました…。私も出席しますと領主様にお伝えください」
司教「かしこまりました…」コクッ
171:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:51:33 ID:asMbRZfNT2
〜〜〜夜〜〜〜
―――城内(ダンスホール)―――
シャララララン
公爵「なんと素晴らしい事でしょう!今夜は実に華やかだ!」
ヒューヒュー ピーピー!
公爵「紳士淑女の皆様!お喜びください!わたくし共の催しにかの高名な大司祭猊下が足をお運びくださったのです!」
パチパチ パチパチ
宣教師「」ペコッ
公爵「我らが大后陛下と司祭様が並ばれれば、まさに麗しき二輪の花!我々も今宵は瞬きを封じねばなりますまい!」
ハハハハハハハハ!
宣教師「(…一見すると愉しげな会に思えますが)」チラッ
料理人「」カチャッ ズラァァァ
宣教師「(これだけの豪勢な振る舞いを毎晩続けるには相当な出費が掛かる筈…)」
公爵「さて、それでは新たな出会いと益々の盛宴を祝して乾杯と参りましょう!」スッ
カンッ カンッ カンッ カンッ
公爵「さぁ司祭様!」スッ
宣教師「どうも」カンッ
大后「」ニコッ
宣教師「(この方がヒメくんの…)」ペコッ
大后「お初にお目に掛かります。こうして猊下と祝杯を交わす機会をいただけるなんて光栄ですわ?」クスッ
宣教師「大后様からそのような…恐縮です」
大后「今後ともよしなに?」ニコニコ
宣教師「こちらこそ…」
公爵「ほほほ!今夜は心いくまで楽しんでいかれてください」
宣教師「えぇ、そうさせていただきます」
172:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:52:52 ID:ac/TeR61HE
領主2「よう、司祭さん」
宣教師「あぁ、クライリー様、今日は我が儘を聞いてくださってありがとうございます」
領主2(クライリー)「はは!様はよせよ?他ならぬ司祭様の頼みとあらば断る訳には参りませぬってな!」
宣教師「相変わらず気さくなんですね」クスッ
クライリー「領主や貴族ったって屁もこきゃ臭う普通の人間さ。それに俺ぁ成り上がりなんでね。堅物ばったのはどーも苦手なんだ」
宣教師「ふふ、それでよく続けていられますね?」
クライリー「なぁに。ちょいとおだててケツ振っときゃどーにかなる」
宣教師「ではたびたび申し訳ないのですが、こうした会に疎い私にクライリーさん流の作法をご教示くださいませんか?」
クライリー「おう!俺が隣に立ってエスコートして差し上げるさ」ニィィ
宣教師「それは助かります」ニコッ
クライリー「しかしあんたでもこういった道楽に関心があんだな?」
宣教師「役目上、見聞を広めるのも仕事の一環ですから」
クライリー「なるほどなぁ…」ジッ
173:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:54:11 ID:ac/TeR61HE
クライリー「ほーん?」ジロジロ
宣教師「どうされました?」フリフリ
クライリー「普段から修道着姿を見慣れているだけにな。身なりを整えたあんたが新鮮だ」
宣教師「似合わないとお思いでしょう。もとより化粧っ気もない貧相な出で立ちですしね」
クライリー「謙虚なことだ。だが普段の色気ねぇサマが際立って、むしろ華が増してるぜ」
宣教師「どうも?でもお世辞は結構ですよ」
クライリー「世辞じゃねーんだがな…」
宣教師「それにしてもドレスコードというのは面倒なしきたりですね。
少々、窮屈です。引き締まった布地のハリに慣れないせいか胸が圧迫されますし…」パツンパツン
クライリー「ふぅん…」ニヤニヤ
174:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:55:50 ID:asMbRZfNT2
クライリー「まぁ強張りなさんな!夜会っても交流を楽しむのがメインだ!おっかねーのもいるけどな?」
宣教師「おっかないとは…?」
クライリー「女にだらしねーのもいりゃ亜人、貧民と区別しやがる高慢ちきもいる。
中には異国やら古代のあくどい宗教にハマって儀式と称した人浚いを斡旋すんのもいるしな」
宣教師「……!本当にそんな事をしている人がいるなら見過ごせません」
クライリー「無理だね。あいつらを叩けるほどの実権は政府にゃねぇ。貴族の財力を失えば王国の貯金箱にヒビが入る」
宣教師「っ……ですが」
クライリー「この夜会はあんたが想像してるより、ずっと乱れてる。油断してっとイチコロだぜ?」
宣教師「どうなると?」
クライリー「さぁね、しこたま酒飲まされて玩具にされるか。
はたまたあんたの弱味を握って教団の地位を利用してくるか…考えりゃいくらでも出てくるさ」
宣教師「」ゾワッ
クライリー「だから今夜は俺がエスコートしてやるってんだよ。そんかし礼は弾んでもらうぜ」
宣教師「もちろんお礼はさせてもらいます。なにをお望みですか?」
クライリー「そうさなぁ。あんたと食事がしてぇと言ったら?」
宣教師「? 食事くらいでしたら全然構いませんよ」
クライリー「ほぉう?男が女を食事に誘うってのがどんな意味か分かってんのか?」
宣教師「はい、美味しい物を一緒に食べて談笑するんですよね」
クライリー「くっふふ。たまんねぇな?その続きがあんだろうが?」
宣教師「続き…?」
クライリー「食後のデザート…いや、メインディッシュか」
宣教師「……?」
クライリー「要領わりーな。女のあんたと対話がしてぇと、そう言ってんだよ」ススー
宣教師「……あの、なぜ頬をなぞるんですか?」ゾゾッ
クライリー「カマトトぶりやがって…処女って訳でもねーんだろう?」ニヤニヤ
宣教師「!!!」ブッ
175:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:56:34 ID:asMbRZfNT2
クライリー「社交界じゃもっぱら評判さ。なんせ前のブタヤロウ(※大臣)がでけぇ声で語り回ってたからな」
宣教師「な、な…!?」カァァ
クライリー「なぁ、俺にも教えてくれねーか?あんたの旨い所をよ」ニヤニヤ
宣教師「…冗談半分でからかうと承知しませんよ」キッ
クライリー「本気だとしたら?」
宣教師「…残念ですが私は心に決めた人としか恋仲になるつもりはありません」プイッ
クライリー「でもファルージャとはキスしたんだろう?」
宣教師「!!!!!」ブーッ
クライリー「なぁ、どうだった?魔性の女帝様が繰り出す手練手管ってやつは?」
宣教師「それ以上聞くとひっぱたきますよ!」
クライリー「…なぁんてな。あんたのそういうとこが気に入ってんだ」
宣教師「はぁ…?」
クライリー「身分に左右されねぇで馬鹿話出来るってなぁ気持ちがいいだろう。お互い、成り上がりなんだからよ」ニカッ
宣教師「もう少しで軽蔑するところでしたけどね…」シラー
176:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:58:04 ID:ac/TeR61HE
男爵「お初にお目にかかる。わたくし、ビア家当主ゴードンと申します」
宣教師「はじめまして。私は……」
男爵「存じております。高名なる司祭殿に名乗らせる無礼は致しませんよ」
宣教師「自己紹介が失礼に当たるとはマナーの質が違うんですね…」コショコショ
クライリー「社交界なんてのは名を売ってなんぼの業界だからな。中には身分を尋ねるだけで激怒する爺もいるぜ」コショコショ
宣教師「ふむふむ、相手の機嫌を損ねないよう配慮しないとですね」
クライリー「心配すんな。司祭様のお立場はここでも飛び抜けて超一流だ。公爵様か大后陛下でもない限り、誰も口出し出来ねーよ」
宣教師「なぜです?私は平民の出身ですし爵位も持ちませんが…」
クライリー「国王陛下と並び立つ偉業の持ち主に誰が意見出来んだ?ちったぁ自分の威光を自覚しろよ」
宣教師「なんだかやりづらいですね…。勝手に持ち上げられても」
クライリー「へっ。結構じゃねーか。高いとこからじゃなきゃ目線の合わねぇ連中だ。偉そうにしてりゃいいんだよ」
宣教師「はぁ、そういうものですかねぇ…」
177:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 21:59:17 ID:ac/TeR61HE
宣教師「(さて、だいたいマナーは教えてもらいましたし、どなたから情報を聞き出しましょうか)」キョロキョロ
紳士「僕はラインタード家嫡男、ビュリフです。どうぞお見知りおきを」ナゲキッス
宣教師「どうも…」
紳士「貴女とは一度じっくりお話したいと思ってました。麗しきお方よ」ウインク
宣教師「(軽薄そうな方ですね。年は近そうですが話し相手としては不適切かもしれません)」
貴婦人「ンマァ貴女が司祭様?見るからに育ちのよさが窺えますこと?」ニヤニヤ
宣教師「(…なんか腹立たしいので却下します)」イラッ
令嬢「あたくし国王陛下とお近付きになりたいの。ねぇ、司祭様からもとりなしてしてくださらない?」ギラギラ
宣教師「(野心に燃える瞳が怖い)」
商人「私は複数の事業に成功してましてね!友人になったら損はさせませんよぉ!もちろん、ふかぁい仲に発展してもねぇ?」ニタニタ
宣教師「(複数のトラウマが蘇るので遠慮します)」
お坊ちゃん「おい、メス!ぼくの召し使いにしてやってもいいぞ!」
宣教師「(子供にこんな事を言わせる親にだけはなりたくありませんね)」
クライリー「はっはっは!会話が弾みまするな!ところでこのあと予定は…?」
お嬢様「ございませんわ…」ウットリ
宣教師「(あの人はいつの間にか私をほったらかして別の女性をエスコートしてますし)」
ワイワイキャッキャッ
宣教師「(やはり、夜会の主宰者を当たるのが良さそうですね)」チラッ
178:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 22:00:37 ID:asMbRZfNT2
公爵「いやぁまことに驚嘆致しました。まさか猊下が夜会に興味を示しておられたとは!これまで招待を怠った非礼、存分に詫びねばなりますまいな!」
宣教師「いえいえ、突然の申し出に応じていただいて感謝するばかりです」ペコッ
公爵「以前からこうした会に参加なされていたのですかな?」グビッ
宣教師「いえ、今回が初めてです」
公爵「ほう、ではどういった経緯で?」
宣教師「生まれが生まれなのでパーティーといった物に縁がなく、クライリー様からお声かけを受けましたので、せっかくの機会にと」
公爵「なるほど、クライリー君は雑草なりに花を咲かせた優秀な男だ。同じよしみの司祭様に通ずるものがあるのでしょう」ニコニコ
宣教師「雑草?」ピクッ
公爵「おっと失敬、口がすべ……いや、私とした事が言葉を間違えました」
宣教師「…公爵様は平民を雑草呼ばわりされるのですか?」
公爵「ふむ…彼らの暮らしのほとんどは私どもの資財から賄われている訳ですし、さながら花の栄養を吸い取って繁殖する雑草と相違ないかと」
宣教師「……」
公爵「ですがまぁ、やはり雑草は言い過ぎでしたかな」クスッ
179:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 22:01:36 ID:asMbRZfNT2
宣教師「…聞くところによりますと公爵様は、この会を毎夜に渡って主催されているとか?」
公爵「えぇ、そうですとも。バックヤードの封鎖に伴い、様々な改正が施され、最近は社交場が減りましてな」グビッ
ワイワイワガヤガヤ
公爵「ならばとこうして自ら執り行い、皆様に笑顔と賑わいを提供させていただいてる次第でございますよ」ニコニコ
宣教師「…あなたの仰る皆とは貴族に限定してのことですか?」
公爵「そこまでは?司祭様のような文化人も枠に入れて差し上げますよ」
宣教師「棘のある物言いですね」
公爵「そうですかな。癪に障ったのでしたら失礼」
宣教師「……」
公爵「おや?あまりお酒が進んでおられませぬが」
宣教師「普段は口にしないので…」
公爵「ははは!御聖職に就かれてる身では致し方ありませんか!」
宣教師「そうでもないですよ。少なくとも私はお酒に関して制限を課す事はしていません」
公爵「ほう?さすが寛容にございますな」
宣教師「趣味嗜好はそれぞれですからね。抑圧はせず自由性を尊重させています」
公爵「やはり徳の高いお方は心掛けからして違いまするな。国王にも是非、見習っていただきたいものです」
宣教師「なぜ国王に?」
公爵「いやいや、なんでもございませんよ。それよりお酒が苦手でしたら下げさせましょうか?」
宣教師「……ん、く」グビッ
公爵「? 飲まれないのでは?」
宣教師「ふぅ…私から無理を言って招いてもらったので少量程度ならお付き合いしますよ」ゴクンッ
公爵「ははは!気など遣わずとも!パーティーは楽しむ物です!ご無理は禁物ですぞ!」
宣教師「……えぇ、ほどほどにしておきます」ポワー
180:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 22:04:08 ID:asMbRZfNT2
宣教師「」スヤスヤ
大后「あらあらまぁ…大変ですこと。教団の司祭様ともあろうお人が?」
公爵「酔い潰れてしまわれたか。クライリー君、すまないが奥の部屋に運んで介抱してやってくれないか」
クライリー「お安いご用です。ハナから俺は付き添いですしね」
公爵「しかし…」チラッ
大后「えぇ…」チラッ
宣教師「しょ、しょんにゃ〜?わらし、へろへろじゃないですぅ〜?」ベロベロ
公爵「たった一口でよくもこうまで…」
大后「天性の下戸でいらっしゃいますのね…」
宣教師「ん〜?あとごふん…」ムニャムニャ
181:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/7/26(水) 22:06:17 ID:ac/TeR61HE
―――ダンスホール(衣装部屋)―――
宣教師「ん、ん……?」パチッ
クライリー「目が覚めたか?」
宣教師「く、クライリーさん……っ!」ズキッ
クライリー「たった一口で頭痛かよ。よえーなんてもんじゃねーな」
宣教師「」ポワンポワン
クライリー「まだボーッとしてるか。しょうがねぇな…ほれ」スッ ピトッ
宣教師「!」ピクッ
クライリー「気付けの水だ。ひゃっこくて気持ちぃだろ?」
宣教師「すみません…」パシッ ゴクゴク
公爵「ほほほ。お目覚めですかな、司祭殿」
宣教師「公爵様…?」
公爵「迎え酒はいかがですか?」キュポッ
宣教師「いえ…もうお酒は結構です」
公爵「ではゆっくりとお喋りでもしてみましょうか?」
宣教師「…はい」
公爵「聞きたい事などありましたら、なんなりとどうぞ。お答えしますよ」
宣教師「……」
公爵「遠慮なさらず?何か尋ねようとなさっていましたよね?」
宣教師「…城下に貼り出されていた報せは公爵様が指示されたのですか?」
公爵「はい、そうですよ」
宣教師「役人の方に確認したところ、そんな話は聞いていないと…」
公爵「言ってませんからね」
宣教師「…戦いを終えて平和へ向かおうとしている今、なぜ歩調を乱すような真似をするのですか?」
公爵「はてさて?乱しているのは王政府側では?」
宣教師「……?」
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