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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





344: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:52:51 ID:p94zDc5KUg
男「あの日、私はいつもの通り山菜を採りにきていたのですが」

男「ふと、いつもよりも山奥を探そうとこの道に入ったのです」

神娘「ほう」

男「すると、何やらこの先に何かがあるような予感が致しまして」

男「どんどん進んでいった結果、あの洞窟を見つけたのです」

神娘「何かがお前を呼び寄せたのか?」

男「そのような気が致します。神様ご自身では?」

神娘「う〜む…あの時はむしろ誰も来ないよう願っていたのだがな」

男「そうでしたね」

神娘「だが、無意識の内では…誰かを呼んでいたのかもしれん」

神娘「私を見つけ、あの状況を解決する手助けをしてくれる者を…」

男「神様…」

神娘「お前が来たことは幸運だったのだろう」

神娘「そうでなければ私はあの洞窟で朽ち果てていたのだからな」

男「光栄です」
345: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:53:14 ID:p94zDc5KUg
神娘「だが不思議なものよ。結局廻り廻ってこの地で生きる事になるとは」

男「本当に。不思議な縁ですね」

神娘「だからこそ大事にせねばならん」

神娘「お前の村に行っても、さらに育てていかねばな」

男「ええ」

神娘「本神になるその日まで…世話になるぞ、男」

男「はい。お任せを」

男「ですが私の助けを借りてばかりでは一人前になれませんよ」

神娘「一言多いわ。山神殿の言うことを真に受けるな」

男「ははっ」

神娘「よし、では早く行くぞ。ぐずぐずしておれぬ」タタッ

男「あっ、神様!」

神娘「どうした男!置いていくぞ!」タッタッタ

男「前を見てください!」

神娘「ん?」

男「そこは急な斜面に…」

神娘「えっ」

神娘「うわわ〜っ!」ザザザッ

ゴロゴロ…
346: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:53:36 ID:p94zDc5KUg
ザザッ

男「よっと」スタッ

男「神様、大丈夫ですか?」

神娘「う〜ん…」ピヨピヨ

男「ふう、これでは先が思いやられます」

神娘「や、やかましい…」

男「ははっ」

神娘「…わはは」

男「さあ、神様。お手を」スッ

神娘「ん」スッ

ガシッ

神娘「…」

男「どうかなさいましたか?神様」

神娘「……」

神娘「…本当はな」

男「え?」

神娘「不安でたまらんのだ」
347: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:00 ID:p94zDc5KUg
神娘「お前の村の者たちが良い連中である事は分かっているつもりだ」

神娘「お前を瓦礫の中から救い出そうと…皆必死になっている姿を見たしな」

神娘「だが…それと私を受け入れてくれるかは別の話」

男「…」

神娘「それに、私自身この地の事をまるで知らぬ」

神娘「文字通り一からの出直しだ」

神娘「上手くやっていく自信は正直あまり…」

男「大丈夫ですよ」

神娘「…!」

男「私も、山神様も、村娘様も、大丈夫だと言っているのです」

神娘「それはそうだが…」

男「これは無責任な励ましなどではありません」

男「神様のことを知った上でそう申し上げているのです」

男「大丈夫。神様なら上手くやっていけますとも」

神娘「…」

男「それに、どうにもならなくなれば私がなんとか致します」

男「この地に神様より先に生きる者として…出来る事なら何でも」

神娘「男…」
348: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:33 ID:p94zDc5KUg
男「ですから、そのような不安げな顔をなさるのはおやめください」

男「村の者たちも神様には感謝しております」

男「神様が来てくださると分かれば、諸手を挙げて喜びますとも」

神娘「…」

神娘「…大丈夫、か」

男「ええ」

神娘「相変わらず生意気なことばかり言うな」

男「その点に関しては諦めてください」

神娘「わはは。だが、不思議だな」

神娘「お前がそう言うのなら…大丈夫な気がしてくるぞ」

男「ははっ」

神娘「進むと決めたのだ。弱音ばかり吐いてはおれぬな」

男「その意気ですよ」

神娘「だが、まあ…たまにならよいか?」

男「それも構いません。いくらでも受け入れますとも」

神娘「…すまぬな」
349: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:58 ID:p94zDc5KUg
男「しかし、急に弱気になられたので驚きましたよ」

神娘「うむ…それなのだが」

男「?」

神娘「男、もう一度手を出してくれ」

男「手ですか?はい…」スッ

神娘「…」ギュッ

男「…」

神娘「…」

男「…あの、神様。手を握ってどうされました?」

神娘「…やはり温かい」

男「えっ?」

神娘「先ほど気付いたのだ」

神娘「お前に触れたり、触れられたりすると心が温かい」

神娘「気が緩んでしまい、つい弱音の一つも零れ出てしまう」

男「は、はあ…」
350: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:55:22 ID:p94zDc5KUg
神娘(そういえばこの感覚…)

神娘(似ておるな。あの時、目覚める瞬間のものと)

男「神様?」

神娘(あの時感じた、胸の温かみと)

男「神様、どうかされましたか?」


『………………たのです』


神娘(…思い出した。こやつの声が聞こえたのだ)

神娘(何と言っていたのかは分からぬが)

神娘(……)

神娘(…だが。そうか。そうだな)

神娘(私は知っている。この感覚の正体を)

神娘(ずっとあったのだ。私の中に。強く、強く…)

男「神様、無視なさらないでくださいよ」

神娘「…ん、ああ。すまないな」

男「やはりお加減でも優れないのですか?」

神娘「いや、そうではない。少し思案していただけだ」
351: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:55:59 ID:p94zDc5KUg
神娘「だが、大事なことが分かったぞ」

男「大事なことですか?」

神娘「ああ」

神娘「私はお前の事を好いておる、という事だ」

男「ははぁ、それはそれは…」

男「えっ」

神娘「わはは、滑稽な顔だ」

男「からかわないでくださいよ」

神娘「すまんすまん。だが、これは戯れではないぞ」

神娘「もっとも、神のくせにと馬鹿にされるやもしれぬが」

男「確かに驚きを隠せませんが」

神娘「だろうな。別に気にする必要は…」

男「まさか先に言われてしまうとは…不覚です」

神娘「?」

男「神様、畏れ多くながら…」

男「私も神様をお慕いしておりました」

神娘「えっ」
352: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:56:25 ID:p94zDc5KUg
神娘「お前も同じ気持ちだと言うのか?」

男「はい」

神娘「むむ…なんと」

男「はは、滑稽な顔をしておられます」

神娘「からかうでない」

男「神様の真似をしただけですよ」

神娘「まったくこやつは…」

男「愚かな事だとは分かっております」

神娘「いいや。単純に嬉しいぞ。それ以外の言葉が見当たらぬ」

男「そうですか…!」

神娘「思い出した。先ほど目覚める時、お前の声を聞いた」

『お慕いしていたのです』

神娘「お前のその言霊が私を呼び戻したのだな」

男「…聞いていたのですか」

神娘「山神殿が言っていた、特別に強い想いとはこの事だったのか」

男「恥ずかしいのでお止めください」

神娘「わはは」

神娘「…ありがとうな、男。お前のおかげで今ここに私がいるというわけだ」

男「神様…」
353: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:56:56 ID:p94zDc5KUg
神娘「…だが」

男「?」

神娘「私にも私の立ち位置というものがある」

神娘「お前の村につく神としての立場が…な」

男「はい」

神娘「私は村の者に対し中立でなくてはならぬ」

神娘「お前だけを…特別扱いするわけにはいかんのだ、男」

男「…」

神娘「つまりだな、ええと……何と言えばよいのか…」

男「分かっておりますよ、神様」

神娘「…」

男「私は神様の心中をお聞かせいただき、嬉しかった」

男「神様がこれから先、いつでも近くにおられる」

男「それだけで私は…満足ですよ」

神娘「男…」

男「神様は存分に修行にお励みください」

男「今まで通りに。それが一番なのですから」

神娘「……すまんな」
354: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:57:22 ID:p94zDc5KUg
男「では参りましょう。私の村へ」

神娘「うむ」

神娘「…なぁ、男」

男「はい」

神娘「その…村に着くまででよいのだが…」

神娘「この手を離さないでいてくれ。頼む」

男「…勿論ですとも。何があろうと」

神娘「では行こう」

男「はい」

ザッザッ…

………

……


355: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:30:36 ID:BDOoSr5JZ.



・・・・・・・・・・



356: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:31:10 ID:BDOoSr5JZ.



・・・・・・・数ヶ月後



357: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:31:40 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「………」

神娘「……んんっ」

神娘「朝か…」ムクッ

神娘「んんっ…」ブルルッ

スタスタ

ガララッ

神娘「おお…」

シンシンシン…

神娘「やけに寒いと思ったら…雪が積もったか」

神娘「見事な銀世界だな。美しい」

神娘「だが、こういう日は引きこもっているのが一番だな」

神娘「こんな日では皆も生業はできまい」
358: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:32:12 ID:BDOoSr5JZ.
神娘(あれから数ヶ月が経ち、すっかり冬となった)

神娘(今は村の近くにあった廃寺で寝泊まりしている)

神娘(村の皆は私を快く迎えてくれた)

神娘(おかげで神力もかなり回復してきている)

神娘(まとまった信仰がある場所だと、こうも回復が早いとはな)

神娘(ありがたい事だ。この信仰を早くあやつらに返していかなければ)

神娘(…だが、寒いので今日は休む事にしよう)

神娘(急ぐことはないな、うん)

チリーン…

神娘「む?」

チリリーン…

神娘「鈴の音…男に持たせている物か」

神娘「何か用があれば鳴らすよう伝えておいたが…」

神娘「この雪だしな。何かあったか?」

神娘「休むと決めた傍から…落ち着かんな」

スタンッ!
359: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:32:34 ID:BDOoSr5JZ.
ヒュウウウ…

スタッ

神娘「ふぅ、到着」

百姓二「あっ!神娘様だぁ!」

百姓一「おはようごぜえます、神娘様」

村人たち「「「おはようございます!」」」

神娘「ああ、おはよう」

神娘「…ってどうした、皆揃って」

百姓一「へえ、実は…」

男「あ、神様。来てくださいましたか」

神娘「男。何かあったのか?」

男「はい、一大事です」

神娘「聞こう」

男「雪が積もりました」

神娘「うむ」

男「珍しいので村は大騒ぎです」

神娘「皆慌ててしまっているか。まあ無理も…」

男「大騒ぎで皆遊んでおります」

男「神様も是非ご一緒にと思いまして」

神娘「は?」
360: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:32:57 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「大騒ぎってそういう意味か」

男「ええ」

神娘「というか遊んでおるだと?この雪の中を?」

男「はい。雪合戦に雪だるま作りなど」

神娘「わんぱくか」

男「たまには皆、童心に帰るものです」

神娘「それは別に構わんけどな」

男「では神様も…」

神娘「断る」

男「えっ」

神娘「今日は引きこもっていると決めた」

男「そんな」

神娘「こんな寒い日に外にいたら死んでしまう」

男「神様も寒さで死んでしまわれるのですか」

神娘「いや、死にはせんな。うん」

男「ですよね」
361: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:33:26 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「ともかく、今日は有事以外では外に出ん」

神娘「私は戻るぞ」

百姓二「ええ〜?神様戻っちまうのかぁ?」

神娘「お前たちもほどほどにしておけ。体に障るぞ」

神娘「この時分の風邪は長引くからな」

男「神様、そう堅い事を仰らずに」

神娘「うるさい。戻ると言ったら戻るのだ」

男「お待ちくださ」ツルッ

男「うわ、足が滑っ…!」ヨロッ

神娘「えっ」

ドンッ

神娘「わっ」ボスッ

神娘「ゆ…雪が柔らかくてよかったが…」

神娘「急に押し倒すな!」

男「申し訳ありません」

神娘「…」

男「…」

神娘「い、いつまで馬乗りになっているのだ!」ブンッ!

男「いてっ!」ベシャッ!
362: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:33:53 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「いい気味だ」

男「やりましたね、神様」

神娘「ん?」

男「えいっ」ブンッ!

ベシャッ

神娘「うわっ!?」

男「雪合戦の開始ですよ」

神娘「ぬぬ…こやつ…!」

神娘「よかろう。神相手に戦を挑んだ事、後悔するがいいぞ!」バッ

ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!

男「あわわっ!すごい数の雪玉が…へぶっ!」ベシャベシャベシャッ!

神娘「わはは、どうだ参ったか」

男「この程度で私は参りませんよ。それそれっ!」ヒュンヒュンッ!

神娘「なんのこれしき!」ババッ

百姓二「…あ〜あ。また二人でおっ始めちまったなぁ」

百姓一「本当に仲が良いもんだぜ」

百姓二「さっさとくっ付けばいいのになぁ、あの二人」

百姓一「がっはっは、まったくだな」
363: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:34:28 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「わはは、手も足も出まい!」

男「ぐぬぬ」

神娘「さあて、これでしまいだ」ババッ!

男「うわわ〜」

ベシャアッ!

神娘「うっ!?」

百姓二「今日は無礼講だなぁ?神娘様!」

百姓一「よ〜し、俺たちも混ざるとするか!」

村人たち「「「おおお〜!」」」

男「皆…」

神娘「なんと」

百姓一「さて…我らが村の団結力、お見せしやすぜ神娘様!」

神娘「わはは、ならば私も更なる神の力を見せてやろう!」ゴゴゴ…

男「よし…行こう、皆!」

村人たち「「「うおおお〜!」」」

神娘「来い!」
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sage:


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