ーむか〜しむかし、とある場所で
2: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:07:27 ID:I.XMW0eHSk
ーとある山中、洞窟内ー
神娘「…で、なんでまたここに来たのだ」
男「神様がお腹を空かしているのではないかと思いまして」
神娘「ふん、私は神であるぞ。腹など…」グウウ
男「……」
神娘「……」
神娘「…今のは神力が弾けた音だ。決して、決して腹の虫の音などではない」
男「分かりました。では先ほど狩った野兎の肉、ここに置いていきますね」ドサッ
神娘「あっ、お前信じておらんな。私をあまり馬鹿にするなよ」
男「馬鹿になどしておりません」ニヤニヤ
神娘「いいや、しておる。その面で分かるぞ」
男「もともとこういう顔つきですから」
神娘「適当なことばかり言いおって…」
男「ではまた来ます」
神娘「ふん、もう来るな」
3: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:07:51 ID:I.XMW0eHSk
神娘「…と言ったのに凝りもせずまた来たか」
男「駄目でしたか?」
神娘「何度も言っているつもりだが。もうここへは来るな、と」
男「しかし、やはり気にはなりまして…」
神娘「お前に気にかけられることなど何一つない」
男「とりあえず、今日のところはこの山菜でご勘弁ください」トサッ
神娘「まるで無理に私が取り立てているような言い方はよせ」
男「本当は神様にはもっと精のつくものを差し上げたいのですが…」
神娘「…ふ、ふん。その心遣いだけはありがたく受け取っておいてやる」
男「育ち盛りでしょうからね」
神娘「育ち盛りて。こんななりだがもう成長せぬ」
男「見た目だけなら私よりも年下に見えます」
神娘「分かった。やはりお前、私を馬鹿にしているな?」
男「滅相もない」
4: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:08:15 ID:I.XMW0eHSk
男「神様、いらっしゃいますか?」ザッ
神娘「また来たのか…」
男「今日はこんな物をお持ちしました」
神娘「なんだこれは。漬物か?」
男「村で採れた大根を塩漬けにしたものにございます」
神娘「なんでわざわざ持ってくるのだ…」
男「村で初めて採れた野菜ですから。神様にも食べていただきたいのです」
神娘「人間の作った物などいらぬ」
男「それでも結構です。置いていきますから、どうぞご自由に」ドサッ
神娘「あっ、待て。…あやつめ、さっさと行ってしまった」
神娘「…ふん、誰が手を付けるものか」ゴロン
神娘「……」
神娘「…」
神娘「…」ゴソッ
ポリポリ
神娘「…なかなか美味い」
男「……」ジーッ
神娘「お、お前っ!いたのか!?」ビクッ
男「あ、ばれた」
5: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:08:53 ID:I.XMW0eHSk
男「神様〜」ザッ
神娘「…」
男「か〜み〜さ〜ま〜!」
神娘「聞こえとるわっ!昼寝の邪魔するな!」ガバッ
男「あ、生きてた。よかったです」
神娘「人間に生死を心配される神など聞いた事がない」
男「まあまあ、たまには神様のお話でもお聞かせください」
神娘「暇なのか?お前」
男「いえ。村に帰ればまた畑仕事三昧です」
神娘「大事な事ではないか。とっとと行け」
男「ですが、今日は神様のお話を聞きたい気分なのです」
神娘「自由人か」
男「村では真面目な好青年で通っております」
神娘「自分で言うのか?それ…」
男「でも実際は人知れずこうして遊んでおります」
神娘「いるわな。こういう怠け方が上手い奴」
6: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:09:37 ID:I.XMW0eHSk
神娘「とにかく、人間に話す事などない」ゴロン
男「神様は何の神様なのですか?」
神娘「……」ムシ
男「どうしてこんな洞窟においでで?」
神娘「……」ムシ
男「…神様のお好きな食べ物は?」
神娘「……」
神娘「……餅」
男「あっ、喋った」
神娘「うるさいっ!昼寝の邪魔だと言っておろう!」ガバッ
男「餅がお好きでしたか。ちょうど村ではもち米を作っているところです」
神娘「なにっ、そうなのか?…ではなくて!早く失せろと言っているのだ!」
男「では、来年の年明けには餅を搗いてお持ち致します」
神娘「なんと、それは楽しみ…ではなくてだなっ!」
男「それでは今日は失礼致します」スタコラ
神娘「言いたい事だけ言って逃げるなぁっ!」ドカーン!
7: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:10:10 ID:I.XMW0eHSk
男「神様!」ザッ
神娘「…なんだ」
男「強い雨が降りましたが、雨漏りはありませんでしたか?」
神娘「ここ、洞窟だぞ」
男「地盤が緩むと洞窟も崩れやすくなります。ご注意を」
神娘「いっそ崩れてくれんかな」
男「何を仰います!?それだけ悲観なさるほど何かが…」
神娘「そうすれば誰もここに来れなくなるからな」
男「掘ってでも開通させます」
神娘「何なのだ、お前のその頑張りは」
男「流石にここが崩れれば神様とて無事では済まないでしょう?」
神娘「大丈夫だぞ」
男「本当ですか?」
神娘「なにせ神だからな」
男「納得しました」
神娘「そうだ、もっと崇めよ」
男「御見それしました」
神娘「ふふん」エッヘン
男「…胸を張ってもやはり色々小さいですね」ボソッ
神娘「聞こえたぞ」
8: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:10:39 ID:I.XMW0eHSk
男「ふう…」ザッ
神娘「もはや挨拶も無しか」
男「あ、お邪魔します神様」
神娘「遅いし。それに挨拶すればいいというものでもないぞ」
男「いや〜、最近暑いですね。神様」
神娘「都合の悪いことを聞き流すな」
神娘「それに今は夏だ。当然のこと」
男「でもこの洞窟内は比較的涼しいです」
神娘「陽が当たらんからな」
男「えっ、神様のお力ではないのですか?」
神娘「神とてそんな便利能力持っておらん」
男「そうなのですか…」ショボン
神娘「何故かすごく落胆された」
9: ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:11:24 ID:I.XMW0eHSk
男「水浴びでもしとうございます」
神娘「そこらに小川があっただろう。行ってくればいい」
男「足を取られて流されたらどうするのですか」
神娘「そんなに急な流れでもなかろう。泳げばいい」
男「私は泳げないのです」
神娘「情けないな」
男「神様が一緒に来てくだされば安心なのですが」
神娘「まず村の者と一緒に行く発想はないのか」
男「たまには神様も外に出ませんと」
神娘「…できるならそうしておるわ」ボソッ
男「えっ?」
神娘「なんでもない。私はここにいるのがいい」
男「閉じこもってばかりでは不健康にございます」
神娘「やかましい奴だな。お前は私の親か」
男「もう保護者のようなものだと思っておりますが」
神娘「何を言っておるのだこやつは」
10: 名無しさん@読者の声:2015/12/10(木) 15:27:39 ID:P/e0w/9NA6
しえん
11: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:02:32 ID:ORtSgFaG7A
男「では村の者たちと行って参ります」
神娘「そうしろ」
男「神様は置いていきますからね」
神娘「放っておいてくれ」
男「本当によろしいのですか?」
神娘「しつこい」
男「後悔しませんね?」
神娘「さっさと出ていけっ!」ドカーン!
男「う〜ん、残念だなあ」スタコラ
神娘「ついでに二度と来るなぁ!」
神娘「…まったく、残念って何がだ」
神娘「どうにも調子が狂う。やはり人間と関わって良い事などない」
神娘「…そもそも、あの時に上手くあいつを追い払えていれば…」
神娘「そうすれば、今も平穏に過ごせていただろうに」
12: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:03:07 ID:ORtSgFaG7A
ーー回 想ーー
チリーン…
神娘「…しかしこれは本当に何なのだろうな」
神娘「ああ、暇だ。今日はどうしようか…」チリンチリン
「…ん?今、奥から鈴の音が…」
ザッザッ
神娘「むっ!」ピクッ
神娘(しまった、誰かいたのか…?)
男「うわ、なんとも薄暗い洞窟だなあ…ん?」
神娘「!」
男「!」
神娘「やはり人間…っ!」バッ
男「君は誰だ?」
神娘「去れっ!」
男「へっ?」
神娘「人間など嫌いだ!顔も見とうない!」
男「何を言っているの。君も人間だろう」
神娘「私は人間などではない。神だ」
男「はい?」
13: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:04:00 ID:ORtSgFaG7A
神娘「お前、難聴か?もう一度言う、私は神だ」
男「そういうのいいからさ、どこから来たの?君…」
神娘「君とはなんだ。人間ごときが失敬だぞ」
男「はいはい。どこかの村から出てきたの?」
神娘「だから、私は…」
男「こんな所に一人でいては野犬に襲われるよ」
神娘「…落ち着いて聞け、人間。私は八百万の神。今はここに腰を落ち着けているのだ」
男「……」
神娘「私はお前たち人間は嫌いだ。ここに立ち入る事を許さぬ。今すぐここを出ていけ」
男「またまた。何の事情があるかは知らないが、そんな見え透いた嘘を吐くなって」
神娘「は?」
男「私はこの山の麓の村に住んでいる。行くあてがないなら一緒に来ないか?」
神娘「人間の村に!?冗談ではない!」
男「なんだ、まったく我儘だなあ」
神娘「いいから放っておいてくれ。人間の世話になどならん」
男「放っとけないよ。後から君の屍が見つかったりしたら後味が悪い」
神娘「ぐぬぬ…」イライラ
14: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:04:37 ID:ORtSgFaG7A
神娘「…信じぬというのだな?私が神であるという事を」
男「うん」
神娘「即答とは良い度胸だ。ならば見せてやろう。神のみが使える術、神技をな」パンッ
男「えっ」
神娘「…んんっ」ググッ
男「なんだ、周りの石が浮いてる…!?」オロオロ
神娘(ふふ、この石をぶつけて追い払ってくれる)ニヤリ
神娘「さあて…その身をもって味わうがいい」ゴゴゴ
神娘「私を信じず、あまつさえ無礼千万働いた天罰を!」ヒュッ
ヒュヒュヒュンッ!!
男「あわわ…っ!」
神娘(さあ、これで…)
ドクンッ!
神娘「!?」フラッ
神娘(しまっ……まだ駄目であったか…っ!)
ドサッ
男「あっ…」
神娘(く…っ、意識…が……)
神娘「……」
15: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:05:10 ID:ORtSgFaG7A
神娘「………」
神娘「……う…ううっ…」
神娘「ん…」ムクッ
神娘(…誰もいない。さすがにあの人間も去ったか)
神娘(それにしても、あの程度の神技でも体に支障をきたすとは…)
神娘(まだまだ当分、ここにいなくてはならんな)
神娘(…あ、まずい。あの人間、麓の村の人間だと言っていた)
神娘(きっとここの事を村の仲間にも話すに違いない)
神娘(そうすれば、また他の人間どもがここに来るかもしれん)ゾッ
神娘(急いでここから移動せねば…!)スクッ
フラッ
神娘「っ!」ドサッ
神娘「うう…」
神娘(か、体が言う事を聞かん…)
神娘(くうぅ…情けない、情けない…)グスッ
「だ、大丈夫…ですか?」
神娘「ん?」
グイッ
神娘「おっとっと」
16: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:05:33 ID:ORtSgFaG7A
男「……」
神娘「お、お前っ!何故ここに!?」アセッ
男「目の前で急に倒れたので村に気付け薬を取りに行ってたんですよ」
神娘「人間の薬など私には効かぬ」
男「そうですか…あ、それよりも」スッ
神娘「?」
男「神様、先ほどは大変な失礼を致しました」ガバッ
神娘「お、おう?」
男「どうかお許しください」
神娘「なんだ、どうして急に信じる気になった」
男「あの術はとても人の為せる技とは思えません」
神娘「…まあ、信じてもらえたなら何よりというもの」
男「しかし、どうして倒れたりなど…」
神娘「お前には関係のない事だ。心配はいらん」
男「…それなら良かったです」
神娘「とにかく、お前に言いたい事はただ一つ」
男「はい」
神娘「ここから出ていけ。今すぐに」
男「えっ」
17: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:06:57 ID:ORtSgFaG7A
神娘「最初に言ったな?私は人間が嫌いだ」
男「……」
神娘「すぐに出ていき、ここへは二度と近寄るでない」
男「……」
神娘「あと、お前の村の者たちにも決してここの事を話すな」
神娘「もし禁を破れば…今度こそ天罰を下す」
男「…分かりました。ここの事は誰にも言いません」
神娘「よろしい」
男「ですが神様、私は困っている者を放っておけない性格でして」
神娘「…は?」
男「先ほどの様子を見るに、神様は弱っておいでの様子」
男「せめて、神様のお加減が良くなるまで時折様子を見に参ります」
神娘「いらん。弱ってなどおらん」
男「顔色が悪うございますが」
神娘「…も、元々だ」
男「またまた。何か食べ物でも持って参りましょう」
神娘「いらぬと言うておろうが!」
男「ではまた来ますね」
神娘「お前、本当にどうかしているんじゃないのか!?」
ーー回想終了ーー
18: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:08:52 ID:ORtSgFaG7A
神娘(…というような訳の分からぬやりとりがあったが)
神娘(結局、それからあの人間がここに通うようになった)
神娘(他の者を連れてこない所を見ると、本当に誰にも口外していないようだが)
神娘(やれ何が狩れただの、やれ何が採れただの…)
神娘(うっとおしくて敵わん)
神娘(あの時倒れるような事が無ければ…)
神娘(力が戻れば、今度は岩でもぶつけてくれようか)
神娘(力が戻れば…な)
神娘(……)
19: ◆WjgYlacz.c:2015/12/11(金) 22:10:14 ID:ORtSgFaG7A
>>10
支援ありがとうございます。
昔話の雰囲気でのんびりやっていきたいと思います。
20: 名無しさん@読者の声:2015/12/17(木) 23:47:44 ID:k3dbX4oWXs
つ紫煙
やりとりかわいい
21: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:01:19 ID:L58MV1qlVg
男「神様、失礼しますよ」
神娘「…なんだ、その網は」
男「ああ、これですか」ドサッ
ビチビチッ
神娘「魚ではないか」
男「あの後川に皆で行き、釣りをしたのです」
神娘「本当に行ったのか」
男「なかなか大漁でございました」
神娘「それを持ってくるのはいいが、まだ活き活きしておるぞ」
男「はい。多少困るほどに」
神娘「これを食えというのか?」
男「まさか。ただ見せに来ただけです」
神娘「」
男「いやあ、いっぱい獲れました。ありがたい事です」
神娘「」
男「…冗談です。ちゃんと焼いてきましたのがこちらに」
神娘「べ、別に期待などしとらんわ!」
男「若干涙目ですが」
神娘「うるさいうるさいっ!」
22: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:01:43 ID:L58MV1qlVg
神娘「…まっはふ、はみをはははうほははんとはひははひな」モグモグ
男「???」
神娘「…」ゴクンッ
神娘「…まったく、神をからかうとはなんと罰当たりなと言った」
男「そうでしたか」
男「まあ、そう言いながら結局食べているんですけどね」
神娘「文句あるのか?」ギロッ
男「いえ」
神娘「わはひがほほろのひほいはみでほはっはな」モグモグ
神娘「もっほわはひをおほれふがひい」モグモグ
男「あの、喋るか食べるかどっちかにしてくれませんかね」
※「私が心の広い神で良かったな」「もっと私を畏れるがいい」
23: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:02:10 ID:L58MV1qlVg
神娘「…陽気だ。とても穏やかな」
神娘「うむ…どうも眠くなる……ぞ…」コクンコクン
神娘「……」zzz
…………
………
……
『神様〜!今年も良き米が採れましてございます!』
「おお、そうか」
『これも全て神様のおかげでございますな!』
「何を言う。お前たちの努力が全てだ」
『これからもこの村を守ってくだされ!』
『神様!』
『神様!』
「わはは、任せておくがよいぞ!」
「…生きるために頑張る人間の姿は好きだ」
「これからも、この村で共に…」
……
………
…………
神娘「……っ!」ハッ
神娘「…いかん、うとうとしていた。しかし…」
神娘(懐かしい夢を見たな。ふん、何を今さら…)
男「…神様」
神娘「わあっ!?」ビクッ
24: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:02:36 ID:L58MV1qlVg
神娘「い、いたのかお前…」
男「眠っておいででしたか」
神娘「少しだけな」
神娘「…というより何で勝手に入ってきているのだ。今さらだが」
男「そろそろ慣れてくださいよ」
神娘「馬鹿者。そもそも立ち入りを許可しておらぬ」
男「まあまあ。それより、何か良い夢でも?」
神娘「へっ?」
男「神様、眠りながら少し笑っておりました」
神娘「…」
男「そういえば神様が笑っておられるところは初めて見ました」
神娘「…お前には関わりない事だ」
男「そう言うと思いました。でも、そのお顔が見れただけで少し嬉しいです」
神娘「な、何を言っておる」
男「いえいえ。こちらの話です」
神娘「仕返しのつもりか?」
男「滅相もない」
神娘(また何か企んでるのか?こやつ…)
25: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:04:56 ID:L58MV1qlVg
男「神様!」ザッ
神娘「おう、よく来たな!」ニコーッ
男「…えっ」
神娘「待ち侘びておったぞ。さあ、そこに座れ」ニコニコ
男「あの、神様…」
神娘「ん?」ニコニコ
男「どうしたのですか。またお加減でも…」
神娘「…大事ない。たまには趣向を違えて歓迎してみたのだ」フウ
男「何故そのような事を…」
神娘「逆に気味悪がって寄り付かなくなるかと思って」
男「それなら何故あっさり白状してしまったのですか…」
神娘「自分で自分に耐え切れなくなった」
男「左様ですか」
神娘「押して駄目なら引いてみる手筈だったのだが」
男「たしかに何だか気持ち悪うございました」
神娘「…狙い通りなのだがもう少し歯に衣着せよ」
男「ですが、そのくらいでは来なくなりません」
神娘「」
26: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:06:45 ID:L58MV1qlVg
男「はあ、はあ…」ザッ
神娘「…なんだそれは」
男「…ふう」ドサッ
男「ああ、重たかった…先ほど狩った猪でございます」
神娘「ほう、なかなかに大きいな」
男「苦労致しました」
神娘「…まさか、お前一人で狩ったのか?」
男「そうでなければ村に持って帰らなければならないでしょう」
神娘「それはそうだろうが…」
神娘(何者なのだ?こやつ…)
男「どうぞ、お召し上がりください」
神娘「あのな、それをそのまま持ってきて私にどうせよと言うのだ」
男「え?食べていただきたく思います」
神娘「そのまま食えというのか!?」
男「神様ならきっとできるかと思いまして」
神娘「…むむ」
男「できないのですか…そうですか」シュン
神娘「なに?私が悪いのか?」
27: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:25 ID:L58MV1qlVg
パチパチ…
神娘「まさかここで火を焚くとは思わなかったぞ」
男「風通しは良い洞窟ですから。煙も籠りませんし」
神娘「まあ実は生肉で食えない事もないのだがな」
男「そうなのですか?」
神娘「神だからな」
男「納得しました」
神娘「しかし焼いた方が美味いのは間違いない」
男「まったくです」
神娘「山の恵みには感謝せねばな」
男「はい、焼けました」スッ
神娘「うむ」スッ
はむっ
神娘「……」モグモグ
男「…」ジーッ
神娘「…何を見ておる」
男「いえ」
神娘「おかしな奴だ」モグモグ
28: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:58 ID:L58MV1qlVg
神娘「……」モグモグ
男「……」モグモグ
神娘「…おい」
男「はい」
神娘「何故お前も普通に食べているのだ」
男「お腹が空いてございます故」
神娘「本能に忠実か!」
男「猪など滅多に狩れませんから」
神娘「これ、私への供え物だろう」
男「そうです」
神娘「お前が今やっているのは罰当たりな事ではないか」
男「しかし神様一人でこれ全て召し上がれるとは思えません」
神娘「う、うむ…」
男「この時期、肉などすぐに腐ってしまいますからね」
男「ここで食べてしまう方が得策でしょう」
神娘「正論なのだが釈然とせぬな」
男「ご安心を。普段は節度を守り、道端の地蔵に供えられた饅頭などにも手を付けません」
神娘「今のお前はそれとほぼ同義だと言っているのだが」
29: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:08:36 ID:L58MV1qlVg
男「…」モグモグ
神娘「…なあ」
男「はい」
神娘「正直に言え。何か企んでおるのか?」
男「?」
神娘「よく考えればおかしいぞ。何の目的もなくここに来るなど…」
男「目的ならありますよ。神様にこうして美味しいものを食べていただき、早く元気になっていただきたいのです」
神娘「何故お前が私の世話を焼くのだ」
男「…責任を感じております」
神娘「責任?」
男「あの時倒れたのは、神様がそのお力を使ったからでしょう?」
男「私が素直に神様の言う事を信じていれば、ああはならなかった筈です」
神娘「……」
男「だから、こうしているのは一種の罪滅ぼしなのです」
男「もし神様に何かあれば目覚めが悪いですから」
神娘「…本当にそんな理由か?」
男「それだけです」
神娘「馬鹿馬鹿しい。私の調子が悪いのはあれが原因ではない」
神娘「よってお前に責任などない。分かったか」
男「そうですか…しかし、調子が悪いのは確かなのですね」
神娘「あっ…」
男「ならば、私は神様を放っておくことはできません」ニコッ
神娘「もうやだこの人間」
30: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:09:12 ID:L58MV1qlVg
男「…あの、神様」
神娘「む?」
男「今度は神様の事を少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
神娘「……」モグモグ
神娘「ふぅ、食った食った」ポンポン
男「……」
神娘「…何故聞きたがる。お前に利は無いぞ?」
男「利など要りませんが」
神娘「では何なのだ?」
男「ただの興味本意です」
神娘「…」
神娘「お前は馬鹿なのか何なのか分からん」
男「馬鹿でも何でもいいです」
神娘「分かったよ。美味い肉の礼だ」
男「おお、ありがたや」
神娘「とは言っても、何から話せばいいものか…」
31: 名無しさん@読者の声:2015/12/31(木) 00:12:47 ID:iGoluuLBq.
神様と男のやりとり見てるとほんわかする(´∀`*)
作者さんには
つCCCC
神様には
つ つきたての餅(きなこ、あんこ、抹茶、砂糖と醤油の4種類)
32: 支援ありがとうございます ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:16:13 ID:6EINa3wIrQ
男「神様、>>31から搗き立てのお餅が送られてきましたよ」
神娘「>>31とは誰だ。それに、人間からの施しなどいらん」ジュルリ
男「神様、言動が一致しておりません」
神娘「き、気のせいだろう。いらんものはいらんのだ」ソワソワ
男「そうですか。では持って帰って村の皆で食べますね」
神娘「!」ピクッ
男「なんと良い匂い…これは良いもち米を使っておりますね」
神娘「ぐっ…」
男「しかも味も4種類用意するとは気が利いておりますね。私はきな粉派ですが…」
神娘「うっ…うぅ〜…」ジワア
男「…神様、やせ我慢は体に毒です」
神娘「あぅ…」
男「正月に餅を食べるくらい、何もおかしくありませんよ」
神娘「…」
神娘「……あ、味見くらいはしてやろう」
男「はい」
この後、1人と1柱で美味しくいただきました。
33: ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:18:51 ID:6EINa3wIrQ
男「あっ、SS板の皆様、明けましておめでとうございます」
神娘「おい」
男「今年ものんびり更新していきますので、温かい目で見守りください」ペコッ
神娘「お前、誰に何を言っておるのだ?」
男「神様も一緒に頭を下げていただけませんか」
神娘「嫌に決まっているだろう。というより誰にだ?」
男「こんな神様ですが、皆様よろしくお願いします」
神娘「こんなとはなんだ。そして誰と喋っているのだと聞いておる」
34: お久しぶりです ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:13:05 ID:Q4px5cWK5o
以下、>>30続き
35: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:14:40 ID:Q4px5cWK5o
神娘「そうだ。お前、前に聞いてきた事があったな」
男「いつの事でしょう?」
神娘「ほれ、>>6でだ」
男「ああ、そんな事もありましたっけ」
神娘「…忘れているという事はどうでもいいのだな」
男「いえいえ。気になります。興味があります。夜も眠れません」
神娘「どれだけ必死なのだ」
36: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:15:56 ID:Q4px5cWK5o
神娘「とにかく、あの時お前は私が何の神であるかと聞いてきたな」
男「そうでしたね」
神娘「あれに答えてやろう」
男「ありがたやありがたや」
神娘「…とは言っても、そこまで詳しくは答えてやれないんだがな」
男「えっ?」
神娘「神には神の、人間には人間の領域というものがある。迂闊にお前たちにこちらの事情を話す事はできん」
男「はあ」
神娘「それに…私は何の神でもない」
男「どういうことですか?」
神娘「私にはまだ神としての役割がないということだ」
男「なんと」
37: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:16:32 ID:Q4px5cWK5o
神娘「お前たちの言葉で言えば…八百万の神とでも言うのかな」
神娘「私は神としては修業中の下級神だ」
男「神様にも身分があるのですか」
神娘「うむ。そこは人間の感覚と一緒だろう」
男「では、神様はまだ神様ではない?」
神娘「いや、神に属する存在だ。神技も使えるし」
男「しかし今は神技を使えない身ですよね?」
神娘「それは力が尽きているからであって…」
男「ですがそれでは…」
神娘「分かった。怒らないから今考えている事を言ってみよ」
男「神様が神様でなければ、もうあれこれ供え物を用意せずとも済むかと」
神娘「そんな所だろうと思った」
男「さすが神様」
神娘「ついでに更に気兼ねなく無礼を働けるとでも思っているのだろう」
男「そそそんなわけないではないですか」
38: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:18 ID:Q4px5cWK5o
神娘「こほん、とにかく下位であろうとも私は神たる存在。お前たち人間より上に立つ者だぞ」
男「ははーっ」
神娘「本来ならお前の無礼の数々、万死に値する」
神娘「しかし私は心が広い故、見逃してやっているのだ」
男「……」
神娘「今はお前に馬鹿にされてもろくに仕返しもできぬ体たらくだが、今に見ておれ」
神娘「きっといつか本神となり、お前に天罰を…っておい」
男「……」コックリコックリ
神娘「…」
男「…あっ、すいません。なんの話でしたっけ?」ハッ
神娘「都合の悪い話の流し方が雑だぞ」
39: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:54 ID:Q4px5cWK5o
男「ところで神様、その修行というのは何をされているので?」
神娘「……」
男「神様?」
神娘「言ったはずだぞ。神には神の領域があると」
男「…」
神娘「それは話せない」
男「…そうですか」
神娘「お前には関係のない事だしな」
男「何かお力になれる事があればと思ったのですが」
神娘「……」
神娘「神の事情だ。お前のような人間に出来る事などない」
男「差し出がましい事を申しました」
神娘「…ふん」プイッ
40: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:18:29 ID:Q4px5cWK5o
神娘「ふう、今日はもう帰れ」
男「お疲れの様で」
神娘「主にお前のせいでな」
男「ご冗談を」
神娘「…本当にお前の頭に雷でも落としてやりたいもんだ」
男「くわばらくわばら」
神娘「鬱陶しい。ほれ、日が傾いてきたぞ」
男「あっ、はい。では失礼します、神様」
タッタッタッ
神娘「……」
41: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:20:44 ID:Q4px5cWK5o
神娘「…いかんな。どうにも喋り過ぎてしまう」
神娘「私も懲りないものだ」
神娘「口は災いの元とはよく言ったものだな」
神娘「あの男も所詮は人間。欲深い存在に変わりない」
神娘「…人間になど、もう気を許さんぞ」フンス
神娘「……」
神娘「…そういえば言い忘れたな」
神娘「もう来るな、と」
42: 名無しさん@読者の声:2016/2/14(日) 22:15:43 ID:w.7DrG1zg2
神娘様の過去にいったい何があったのか気になる…
支援!
43: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:22:11 ID:ebUsa8u8JU
>>42支援感謝です!
男「神様、お邪魔します」ベチャベチャ
神娘「なんだ、またお前か…ってなんだその格好は!?」ビクッ
男「ああ、すいません。途中でぬかるみに嵌ってしまって」ベチャア
神娘「昨日かなり降っていたからな」
男「うっかりしました」
神娘「そんな姿でここへ来るな」
男「しかし、せっかくまた野菜をお持ちしたので」
神娘「どうせその野菜も泥だらけになのだろう!?」
男「大丈夫です、これだけは死守しましたから」ドサッ
神娘「ん、確かに無事そうだが…しかし器用な奴だな」
男「あの時の華麗な身のこなし、神様にも見せたかったです」
神娘「別に見たくない」
男「またまた、遠慮なさらず。今再現をば…」スッ
神娘「やめい、泥が跳ねる」
44: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:22:38 ID:ebUsa8u8JU
男「まあとにかくお納めください」
神娘「うむ…ってまた大根ばかりではないか」
男「まともに採れた野菜がそればかりでして」
神娘「そういえば前にこれを持ってきた時、村で初めて採れた野菜だと言っていたな」
男「そうでしたか?まあ、確かにその通りなのですが…」
神娘「出来たばかりなのか?お前の村は」
男「去年の秋から開拓を始めましたばかりでして」
神娘「ほう、そうか」
男「しかし畑もまだまだ拓けきっていません故、お納めできる品も貧相になってしまいます」
神娘「それではまだ大忙しであろう」
男「はい。日夜あくせく働いております」
神娘「…お前がここへ来る頻度を考えるとそうは思えん」
男「やる時はやる性分なのです」
神娘「自分で言うのかそれは」
45: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:23:01 ID:ebUsa8u8JU
神娘「ここへ来る暇があったら働け。というか来るな」
男「最後のが本音でしょうか」
神娘「私は最初からそう言っていたのだが」
男「まあそれはさて置き…」
神娘「さて置くな」
男「珍しいですね」
神娘「何がだ?」
男「神様が我々の事を聞いてくるなど」
神娘「むっ」
男「人間に興味など無いのでは?」
神娘「単なる気まぐれだ」
男「そうですか」
神娘「お前たちが何をしようと私には関係ないぞ」
男「…」
神娘「…ん、これは貰っておく。帰るがいい」
男「はい。それでは」スクッ
ザッザッ
神娘「……」
46: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:24:13 ID:ebUsa8u8JU
男「神様、失礼しますよ」ザッ
ヒュウウウ
男「ん?奥から風が…」
神娘「…」ヒュオオ
神娘「ふう、まだこんなものか。しかし良い調子だぞ…」ブツブツ
男「神様」
神娘「む、またお前か」
男「今のはいったい…?」
神娘「おう。神風という」
男「風…ですか?」
神娘「神技の一つだ。まだ規模は小さいが、これが使えるようになったという事は力が戻ってきているという事なのだ」
男「はあ」
神娘「…いかん。お前に聞かせるべきではなかった」
神娘「回復の兆しが見えた高揚感でつい…」
男「別に口外など致しませんよ」
神娘「そうしろ」
男「ですが、せっかくですからもう少しきちんと見たいのですが」
神娘「そうか?それならば…」ハッ
神娘「…こほん。見せ物ではないぞ」
男「今、神様…」
神娘「黙らっしゃい」
47: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:25:39 ID:ebUsa8u8JU
男「神様、後生ですから」
神娘「まったく、何を考えておるのだ」
神娘「いいか。今は少しでも力を使うのは抑えなければならない」
神娘「それにこれは神の力。お前たち人間にそう容易く見せるわけには…」
男「…」キラキラ
神娘「…」
男「…」キラキラ
神娘「…」
男「…」キラキラ
神娘「…」スッ
ビュオッ
男「うわ〜っ」ゴロン
神娘「身をもって味わったか」
男「…ふう、なるほど。体が押されるほどの風を感じました」
神娘「今はこの程度だが、本当なら大岩でも吹き飛ばせるほどの風圧が出せる」
男「なんと」
神娘「これで満足であろう」
男「はは〜っ、御見それしました」
神娘「ん、そうかそうか。もっと畏れるがいいぞ」エッヘン
男「やはり小さい…」ボソッ
神娘「一応言っておくがタグでそればっかり取り上げられた事、少し根に持っているからな」
48: ◆WjgYlacz.c:2016/2/19(金) 16:27:36 ID:qQSuhjvDgM
神娘「……」メイソウチュウ
ザッ
神娘「…む?」
ザッザッ
神娘「足音…またあいつか」
コソコソ
神娘「そこにいるのは分かっているぞ。出てこい」
「………」
神娘「おいって」
「……」
ヒョコッ
仔犬「クゥーン」
神娘「」
49: ◆WjgYlacz.c:2016/2/19(金) 16:28:15 ID:qQSuhjvDgM
男「神様、失礼しま…」
ワアッ、ヤメロトイッテオロウ!
男「!」
タタッ
男「神様!いったい何が…」ザッ
神娘「わはは、くすぐったいだろうが!」
仔犬「キャンキャン!」ペロペロ
神娘「これ、待たんか〜」ゴロゴロ
仔犬「ワンッ!」
神娘「はは、まったくこやつ…め…」ハッ
男「……」
神娘「……」
仔犬「?」
神娘「…こほん、なんだ、来ておったのか」
男「あの、神様…」
神娘「な、何も言うでないっ!」アセッ
50: ◆WjgYlacz.c:2016/2/19(金) 16:28:39 ID:qQSuhjvDgM
男「なるほど、迷い込んだのですか」
神娘「親からはぐれてしまったらしい」
男「どうして分かるのですか?」
神娘「こやつが言っておる」
仔犬「アンアンッ!」
男「…さすが神様」
神娘「どうにか親元へ連れて行ってやりたいが…」
男「難しいでしょうかね」
神娘「まだ迂闊に動けぬ身である事が悔やまれる」
仔犬「クゥ〜ン…」
神娘「ん?腹が減ったのか」
仔犬「ワゥン…」
神娘「おいお前、今日も何か持ってきているのだろう?出すがいい」
男「生憎ですが今日は手ぶらでして…」
神娘「なんで今日に限ってそうなのだ」
男「すいません」
神娘「もういい。お前を焼いて食料になってもらおう」スッ
仔犬「ワンッ!」
男「何か狩ってきますからやめてください」
51: ◆WjgYlacz.c:2016/2/19(金) 16:29:03 ID:qQSuhjvDgM
仔犬「ワンワンッ」バクバク
神娘「よく素手で野兎を獲ってこれたな」
男「生きるための術です」
神娘「そこは素直に驚くべき所だな。…美味いか?」
仔犬「アンッ!」
神娘「そうかそうか。わははっ」
男「…神様もそんな表情をされるのですね」
神娘「むっ」
男「動物はお好きなのですか」
神娘「悪いか」
男「いえ、全然」
神娘「ふん」
男「ただ、少し悔しゅうございます」
神娘「なんだと?」
男「…人間も動物なのですが」
神娘「なんだ、私に好かれたいのか」
男「嫌いだと言われて良い気はしないでしょう?」
神娘「…ん、そうかもな」
仔犬「ワウッ?」バクバクッ
52: ◆WjgYlacz.c:2016/2/19(金) 16:29:58 ID:qQSuhjvDgM
神娘「確かに私からすればこの地に生きるものとして同じ括りだ」
神娘「だが、やはり人間は動物とは違う」
男「…」
神娘「動物は見返りを求めぬからな」
男「…なるほど」
仔犬「クゥン…」
神娘「ん?腹いっぱいになったら眠くなったか」
仔犬「ワゥン…」
神娘「よしよし、我が膝元でしばし眠るがよいぞ」
仔犬「…」zzz
神娘「…さて、あまり話すとこやつが起きる。お前も帰れ」
男「そうしましょう」スクッ
神娘「…おい」
男「はい?」
神娘「ありがとう」
男「えっ」
神娘「と、さっきこやつがお前に言っていた」
仔犬「…」zzz
男「…どういたしまして」
53: 名無しさん@読者の声:2016/2/20(土) 19:16:20 ID:3U3Hhll63g
仔犬にはデレちゃう神様かわいい
支援
54: 支援ありがとうございます ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:46:07 ID:hUs1BKM8Q.
男「神様どうも〜」
神娘「なんだろう、挨拶が軽くなってきたな」
男「気のせいでしょう」
神娘「気のせいなものか」
男「ところで神様、あの仔犬はどちらに?」
神娘「ん?もう出ていったぞ」
男「なんと。それで良かったのですか?」
神娘「良いも悪いもないだろう。ここにいた所で何もない」
神娘「私はこんな身であるから、あやつにしてやれる事もないしな」
男「食べ物なら私が持ってきますのに」
神娘「お前がそうやって来る口実になるのも嫌だ」
男「ぐぬぬ」
55: ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:46:55 ID:hUs1BKM8Q.
神娘「あやつにはあやつのいるべき場所がある」
神娘「そこへ自分から帰るよう諭したまで」
男「ほうほう」
神娘「そしたらあやつ、振り返りもせず出て行きおった」
神娘「愛嬌のあるやつであったが…これで良かったのだ、うん」
男「と言いつつ寂しげな目をしておられる神様でした」
神娘「そ、そんな事ないぞ。私は神として…」
男「まあ私がおります故、ご安心ください」
神娘「安心できぬわ。お前もいるべき場所に帰れ」
男「まあまあ。その内帰りますからそんなに焦らず」
神娘「…お前にあの犬の聞き分けの良さを少し分けてやりたい」
56: ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:47:32 ID:hUs1BKM8Q.
男「しかし困りました」
神娘「どうした」
男「あの仔犬にこれを持ってきたのですが」ヒラッ
神娘「なんだこれは。藁を編んだものか?」
男「寝る時にでも敷いて使ってもらおうかと」
神娘「この季節にいるか?」
男「洞窟は冷たいですから」
神娘「まあ、地べただしな」
男「しかし、いないとなれば無駄手間でした。せっかく夜なべをしたのに」
神娘「なんだ、これお前が作ったのか?」
男「はい」
神娘「器用な奴」
男「神様に褒めていただけるとは」
神娘「ふん、少し驚いたまでのこと」
男「またまた、素直でいらっしゃらない」
神娘「こんな事で鼻を高くする方がどうかしている」
男「…確かに、これは失礼を致しました」
神娘「む?」
57: ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:48:03 ID:hUs1BKM8Q.
男「考えてみれば、神様にかかればこんなもの手間ではありますまい」
神娘「ん…お、おう。当然だ。私を誰だと思っている」
男「さすがは神様。それでは、お願いいたします」パササッ
神娘「なんだこれは」
男「藁でございます」
神娘「見れば分かる。何故ここに置くのだと聞いているのだ」
男「私どもの村はまだ仕事に不慣れな者が多くて…」
神娘「…まさか、私に手ほどきせよなどと言うのではないだろうな?」
男「神様、よろしくお願い致します」ペコッ
男「神様が手本を見せてくだされば、村の者たちの技術も向上致しましょう」
神娘「私がそんな事をする義理はないぞ」
男「そこをなんとか、どうかこの通りです」
神娘「というよりお前が手ほどきすれば良かろう。作れるのだから」
男「私は畑仕事で手一杯でして…」
神娘「ここに来る暇があるならやってこい!」
58: ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:48:43 ID:hUs1BKM8Q.
男「神様、お願い致します」
神娘「断る」プイッ
男「……」
神娘「……」
男「…まさか、神様」
神娘「…」ピクッ
男「できない、などと言うことは…」
神娘「っ!」
神娘「なっ、なっ、何を言うかっ!」アセッ
神娘「わ、私は神だぞ!そんな人間ごときのやる作業など、できぬはずがなかろう!」アセアセッ
男「本当ですか?何やら慌てているようにお見受けしますが」
神娘「そ、そんなことはにゃい!」ガチン
男「にゃい?」
神娘「うぅ…舌噛んだ…」ヒリヒリ
男「やはり慌てているではありませんか」
神娘「うぬぬ…いいだろう、そんな疑惑を持たれたままでは目覚めが悪い」
神娘「お前がそこまで言うならやってやろう!」ビシッ
男「えっ、本当ですか」
神娘「明日取りに来るがいいぞ」
男「ははーっ、さすが神様。楽しみにしております」
神娘「見ていろ」フンッ
59: ◆WjgYlacz.c:2016/2/28(日) 23:50:05 ID:hUs1BKM8Q.
「ふん…こんなもの簡単に…」
「……」
「……む?」
「あ、あれっ?」
「…なんだこれは、どうすればいいのだ?」
「……くっ…」
「……」
「……………」
60: 名無しさん@読者の声:2016/2/29(月) 12:01:47 ID:N4jwCkModw
男の反応が楽しみだ(ニヤニヤ
61: 名無しさん@読者の声:2016/3/5(土) 01:03:34 ID:C0bns94KII
男「神様〜こんにちは〜」
「……」シーン
男「神様、できましたでしょうか?」
神娘「…」スースー
男「…お休みでしたか」
男「ん?」ヒョイッ
男「これは」クスッ
62: 名無しさん@読者の声:2016/3/5(土) 01:04:07 ID:C0bns94KII
神娘「…んっ」ノビッ
神娘「いかん、ついうとうとと…ん?」
男「あ、神様。お目覚めでございましたか」
神娘「なんだ、もう来ていたのか」
男「すでに日は高く上がっております」
神娘「なにっ」
男「ところで神様、例の物ですが」
神娘「あ〜…えと、そのだな…」アセッ
神娘「…あ、あまりにも会心の出来栄え故、人間に見せるには勿体ない」
神娘「お前たちの手本にもならぬ程だ。よって諦めるがよい」
男「なるほど、確かに素晴らしい出来の草鞋にございます」パタパタ
神娘「ん、そ、そうか?わはは、やはり神たる者は…」
神娘「って何故お前がそれを持っている!?」
男「ああ、すみません。先ほど神様が微睡んでいらっしゃった隙につい…」
男「しかし斬新な草鞋でございます。左右の大きさが全く違」
神娘「皆まで言うな!」
63: 酉忘れてました ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:05:12 ID:C0bns94KII
神娘「馬鹿にしおって…返せっ!」
男「馬鹿になどしておりませんよ。素晴らしい出来だと言いました」
神娘「…む?」
男「確かに形こそ歪でございますが」
神娘「うるさいぞ」
男「しかしながら、この編み込み一つ一つがとても丁寧で美しい」
神娘「…」
男「まるで、神様の御心を映しているかのようです」
神娘「私の…心?」
男「心にございます」
神娘「……」
男「ものづくりには真心が必要です。それが無ければいくら見栄えが良いものでも、塵芥と同じ」
神娘「…ん」
男「この草鞋にも神様の心が宿っております」
男「この上なく良きものでございますよ」
神娘「…ふ、ふんっ。人間が知ったような事を」
男「まあ実用性には欠けるのですがね」
神娘「一言多いわ!」
64: ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:05:58 ID:C0bns94KII
神娘「偉そうなことばかり言いおって」
男「そうですね。失礼致しました」
男「しかし、これは確かに私が受け取るには勿体ありません。お返し致しま…」スッ
神娘「…やる」
男「えっ?」
神娘「それはお前にやる」
男「いえ、しかし…」
神娘「手本にするのだろう?持って帰れ」
男「よろしいのですか?」
神娘「生憎だが私には不要だ。それに…」
男「…それに?」
神娘「…お前たちの役に少しでも立つなら、その草鞋も本望であろう」
男「神様…」
神娘「んっ…もう一眠りする。お前も帰れ」
男「ははーっ、ありがとうございます」
65: ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:06:31 ID:C0bns94KII
神娘(……)
神娘(またらしくないことを言ってしまった)
神娘(あれではまるで、私があやつらの役に立ちたいと願っているようではないか)
神娘(…人間に利用されるのはごめんだ)
神娘(私はもう以前のお人好しとは違う)
神娘(今回は魔が差しただけ。そうだ、それだけだ)
神娘(……)
神娘(なんだか疲れたな。休むとしよう)
66: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:22:35 ID:jYsrRUwwzs
男「神様、少しお尋ねしたいことが」
神娘「断る」
男「これの事なのですが」スッ
神娘「おい、聞け」
男「いいではないですか。暇でしょう?」
神娘「好きで暇しているのではないのだがな」
男「少し見ていただけませんか」
神娘「…言っても無駄か。なんだこれ、茸か」
男「これが食べられるものかお教えいただきたいのです」
神娘「食べてみればいいだろう」
男「毒があったら大変でしょう」
神娘「お前が人柱になって試すことも大事だろう」
男「そんな殺生な」
神娘「生物とはそうやって進歩するものだ」
男「とりつく島もない」
67: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:23:31 ID:jYsrRUwwzs
神娘「というかお前、これはどこに生えていたのだ」
男「この近くです。もし食べられるなら貴重な食料に」
神娘「何とも地味な色だな」
男「美味しそうではないですか」
神娘「そうか?食べられないと思うぞ、これ」
男「思う…とは、自信がおありでない?」
神娘「まあ、私もこの地の事まで何でも知っているわけではない」
男「神様なのに?」
神娘「やかましい。だが、茸は食べられないものの方が多いのだぞ」
男「そうなのですか…」
神娘「お前、よくそんな事も知らないで山菜を採っていたな」
男「食べられると信じて食べれば、意外と何でもいけるものですよ」
神娘「なんだそのよく分からない精神論は」
68: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:24:46 ID:jYsrRUwwzs
男「しかし困りました」
神娘「どうした」
男「いつも採っている場所に茸が生えなくなりまして」
神娘「ほう」
男「新しい採取場を探していたら、これを見つけたのです」
神娘「それは気の毒だが、他を探した方がいいぞ」
男「この辺りはかなり探し回ったのですが」
神娘「ではまた生えてくるまで待つ他あるまい」
男「う〜ん…」
神娘「それともさっきお前が言った通り、食えると信じて食べてみるか?」ケラケラ
男「そうですね、そうしてみましょう」
神娘「えっ」
男「火を起こさせていただきますね」ゴソゴソ
神娘「…また面倒な事になったな」
69: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:25:18 ID:jYsrRUwwzs
パチパチ
男「さあ、焼いてみましょう」
神娘「やめておけと言うに」
男「食べられない確証はないのでしょう?」
神様「ん?まあ、そうだが」
男「ならば試すのみ」
神娘「何をそれほどまで意地になっているのだ」
男「…私の村は食料の確保には日々苦労しております」
神娘「人間の村など、どこもそんなものだろう」
男「ですから『いつか食料が見つかるだろう』では生き延びれません」
男「その『いつか』はいつ来るか分かりませんからね」
神娘「……」
男「ですので、食べ物となり得る物を見つけたその機会を容易く諦めるわけには参りません」
男「たとえ、人柱にならざるを得なくともです」
神娘「お前…たまには真面目な事を言うのだな」
男「いつも真面目ですが」
神娘「真面目な奴は畑仕事を怠けてここに来たりはしない」
70: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:26:04 ID:jYsrRUwwzs
男「さあ、焼けましたかね」
神娘「悪いことは言わんからやめ…」
男「南無三!」パクッ
神娘「あっ」
男「……」モグモグゴックン
神娘「…」
男「…」
男「あれ、大丈夫ですね」ケロッ
神娘「むっ」
男「なかなか美味です」
神娘「なんと」
男「いや〜、これは得をしました」
神娘「そんな馬鹿な」
男「ご覧の通りです」
神娘「どれ」ヒョイッ
パクッ
神娘「んん…」モグモグ
男「大丈夫でしょう」
神娘「確かに普通の味だな」ゴックン
神娘「思い過ごしだったよ…う……!?」クラッ
男「神様?」
神娘「ぐっ……」
神娘(なんだ?目眩が…)
71: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:26:39 ID:jYsrRUwwzs
ー数分後
神娘「わはははっ!あはっ、ははははは!」
男「…」
神娘「わはは!お、おい…はははっ!」
男「まさかの笑い茸とは」
神娘「な、何とかし…あははっ!」
男「えっ?なんですって?」
神娘(何とかしろと言っているのだ!)
男「どこからか神様の声が…」キョロキョロ
神娘「ひぃ〜っ、わははは!」
男「…はて」
神娘(喋れんから直接頭に語りかけておるのだ)
男「な、なんと。どうやってそのような事を」
神娘(神だからな)
男「納得しました」
神娘(何度目だ?このやり取り)
72: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:14 ID:jYsrRUwwzs
神娘「わはははははっ!」
男「しかし、何とかしろと言われましても…」
神娘「わは、わははは!ひぃーっ!」ジタバタ
神娘(死ぬ!腹がよじれて死ぬ!)
男「う〜ん…治まるのを待つしかないかと」
神娘(なんだと!)
男「治し方など知りませんし、笑い茸の症状は1時間ほどで治まると聞いたことがございます」
神娘(だ、駄目だ!このままだと笑うのに力を使い果たし消滅するやもしれん!)
男「!」
男「それはいけません」
神娘(だから今すぐどうにかせよ!)
男「だいいち、神様こそ治し方をご存知でないのですか?」
神娘(知るか!笑い茸なぞ食ったこともない)
男「神様、意外と知識が乏しいのですね」
神娘(…今はそれに反論する材料が見当たらん)
男「やむを得ません」スクッ
神娘(おっ、どうするつもり…)
男「神様、無礼をお許しください」
神娘(えっ)
ガバッ
73: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:46 ID:jYsrRUwwzs
ダキッ
神娘「あはは…はっ!?」ビクッ
男「…」ギュッ
神娘「あはっ、なっ、なっ、なななな…」
男「…」ギューッ
神娘「お、お、おい!待っ、待てっ」
男「…」ムギューッ
神娘「や、やめ…っ」プルプル
神娘「やめんかぁっ!」カッ
ビュオオッ
男「うわわっ」ドンガラガッシャ
神娘「はーっ、はーっ」ドッドッ
男「あたた…神風で吹き飛ばすなんてひどいじゃないですか」
神娘「お、お、お前っ!いきなり抱きしめるとはどういう了見…」
男「あ、治まりましたね」
神娘「えっ?」
男「笑い死なずに済みました」
神娘「あっ、ああ…」
74: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:28:23 ID:jYsrRUwwzs
神娘「……」プイッ
男「ですから神様、あれは治すための策ですってば」
神娘「…」ツーン
男「ほら、しゃっくりの時も驚かすと止まるではないですか」
男「あれと同じで神様を驚かせれば止まるかと思いまして」
男「実際に止まったのでこちらが驚きましたけど」
神娘「同時に私の心の臓まで止まるかと思ったわ」ギロッ
男「申し訳ありません」
神娘「…とはいえ、私を助けるためにやった事なのだな?」
男「はい。神様が消えてしまわれると聞き、無我夢中で…」
神娘「…ふん、元々はお前が蒔いた種だがまあ許してやろう」
男「ははーっ、ありがとうございます」
神娘「まったく、まだ胸の鼓動が収まらぬぞ」
男「あれ、神様。それはもしかして恋…」
神娘「やはり許さん」
男「戯れですって」
75: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:13 ID:jYsrRUwwzs
神娘「しかし合点がいかぬ」
男「何がですか?」
神娘「同じものを食べたのに、何故お前には症状が出ないのだ」
男「言ったでしょう。食べられると信じているからだと」
神娘「どこから突っ込めばいいのだ」
男「信じる力というのは大きいのですよ」
神娘「信じる力…ねぇ」
神娘「それで茸の毒性まで消し去るとは思えんが」
男「でも、現に消えていますし」
神娘「うぅ…納得いかんぞ」
男「とはいえ、一度笑い茸と分かった以上村の者に食べさせるわけにはいきません」
神娘「皆がお前のような超人ではないだろうしな」
男「お褒めに預かり光栄です」
神娘「別に褒めてはいないのだが」
76: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:58 ID:jYsrRUwwzs
男「では、新たな採取場を探しに行かなくては」
神娘「……」
男「神様、ありがとうございました。失礼し…」
神娘「待て」
男「?」
神娘「私の後ろにある岩場の影を見てみろ」
男「岩場の影ですか?」スッ
男「あっ」
神娘「沢山生えてるだろう、それは食えるぞ」
男「すごい。なんと立派な…」
神娘「この洞窟は水脈が通っているらしい。茸にとっても良い環境なのだろう」
男「採っていってもよろしいのですか?」
神娘「山の恵みだ。私のものではないし許可はいらんぞ」
男「お教えいただきありがとうございます」ペコッ
神娘「べ、別に…」ポリポリ
神娘「お、お前が何か見つける度に付き合わされるのが面倒なだけで…その…」
男「……」セッセッ
神娘「……」
男「…あ、すみません。採るのに夢中で…何か言いました?」
神娘「何でもないっ!」
77: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:31:00 ID:jYsrRUwwzs
男「いや〜、これでまたしばらく持ちます」
神娘「そりゃ良かったな」
男「何を怒っていらっしゃるので?」
神娘「うるさい。さっさと帰れ」
男「また採りに来てもよろしいですか?」
神娘「……」
神娘「ここのもそう多くはない。新しい採取場を早く見つけろ」
男「はい」
神娘「それまでの間なら…よし」
男「おお、ありがたや」
神娘「というより先程も言ったが、私の許可を取る必要などないぞ」
男「しかし、ここは神様の洞窟ですから」
神娘「別に私の洞窟ではない。ただ力が戻るまでここで休んでいるだけだ」
男「そういう事でしたら…」
神娘「うむ」
男「あの、神様」
神娘「?」
男「神様のお力はいつ頃戻られるのですか?」
神娘「神技がまともに使え始めている。そう遠くないだろう」
男「そうですか…」
神娘「何を落ち込んでおる」
男「いえ、失礼します」ザッ
神娘「……? 相変わらずよく分からん奴だな」
78: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:41:39 ID:Jn8a761Fdk
ヒュウウウ…
神娘「……」
バサッ
神娘「……」
バサバサッ
カラス「カァーッ」
神娘「…言っておくが戻る気はないぞ」
カラス「……」
神娘「何か言え。もう見抜いている」
カラス?「…あれぇ、おっかしいわね。神力は抑えているのだけど」
神娘「そんなに化け物のような大きな烏がいるものか」
カラス?「ふふ、残念。変化も久しぶりだから調整が効かなくって」
神娘「それで、今更何用だ?」
神娘「…山神殿」
79: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:42:33 ID:Jn8a761Fdk
カラス改め山神「…んもう、相変わらず愛想のない神ね」
神娘「ふん」
山神「一応あたしの方が格上なんだし、もっと弁えてほしいわぁ」
神娘「…何用だと聞いているのだが」
山神「はいはい。でも、言わなくとも分かっているでしょう?」
神娘「私を連れ戻しに来たか」
山神「ご名答」
神娘「断る。もうあの地に戻る気はない」
山神「そうは言っても全能神様の御意思だし」
神娘「それでも嫌だ」
山神「ふ〜ん。でも私も神としての役割があるから。それなら力づくで連れていくだけ」スッ
神娘「ふぅ、今はなるべく力は使いたくないが…仕方あるまい」スッ
神娘「…」
山神「…」
山神「なんてね。嘘よ、嘘!」
神娘「…は?」ポカーン
80: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:43:24 ID:Jn8a761Fdk
山神「連れ戻す気なんてないわよ。あんな事があったんだし…」
神娘「…」
山神「あなたの無事を確認しに来ただけ。まったく、しらみ潰しに探すの大変だったんだから」
神娘「心配をかけてすまない」
山神「でも無事は無事でも…神力はかなり弱くなってるようだけど?」
神娘「これでもかなり回復した方だ。ついこの前までは消滅寸前だったからな」
山神「こんな所まで逃げてきちゃうからよ。…にしても殺風景な洞窟ね」
神娘「仕方ないだろう。力が尽きる前に逃げ込める場所がここしかなかったのだ」
山神「逃げ込むって、人間から?」
神娘「…」コク
山神「…そう。まあ無理もないわね」
神娘「もう人間には関わりたくないのだ」
山神「この下界でそれは難しいんじゃない?それに、それだと本神になるのは…」
神娘「それでも!」
山神「……」
神娘「…もうあんな思いは…ごめんだ」
81: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:44:42 ID:Jn8a761Fdk
神娘「…」
山神「…ふふっ、懐かしいわね。あなたと初めて会ったのはもうどのくらい前だっけ」
神娘「私が山神殿の山の村を訪れた時だな。いつかなどはもう忘れたが」
山神「あはは、生意気な神が来たものだと思ったわよ。もっとも、今も変わらないけど〜」ニヤッ
神娘「むっ」
山神「…あんなに仲良くしてたのに。村の人間たちとも」
神娘「……」
神娘「…昔の話、だ」
山神「でも、これからどうする気?」
神娘「ひとまず回復したら、ここを離れる」
山神「そのあとは?」
神娘「…分からない」
山神「ねぇ、やっぱりまたあたしの所に…」
神娘「すまない。どうしても思い出してしまうからな」
山神「そう…」
82: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:17 ID:Jn8a761Fdk
神娘「なあ、山神殿」
山神「ん?」
神娘「村は…」
神娘「私がいたあの村は…どうなったのだ?」
山神「…」
山神「あの村はね………
「神様、おいでですか〜?」ザッ
神娘「っ!」
山神「あら、人間の声…」
神娘「山神殿、早く隠れろ!」
山神「なんで?ちょっと挨拶くらい…」
神娘「あいつは面倒な奴なのだ!関わらない方がいい!」
山神「そ、そう?分かったわよ」ポンッ
83: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:49 ID:Jn8a761Fdk
男「神様?」ヒョコッ
神娘「お、おう。やはりお前か」アセッ
神娘(山神殿、隠れているか)テレパシー
山神(大丈夫よ〜、不可視状態だから)
男「神様、さっきまで誰かとお話ししていませんでしたか?」
神娘「な、なんのことだ?」
男「焦っていらっしゃる」
神娘「うるさい。お前の気のせいだ」
男「う〜ん…」
神娘「それより今日は何をしに来たのだ」
男「ああ、そうでした。今日はこれを…」
84: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:46:20 ID:Jn8a761Fdk
男「…でして」
神娘「まったく、なんなのだお前は…」
男「しかしそれでは……」
神娘「ふん、生意気な事を言うでない」
山神「……」
85: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:08 ID:Jn8a761Fdk
男「おっと、長居してしまいました。今日はこれにて失礼します」
神娘「おう。もう来るな」
ザッザッ
神娘「ふぅ…どうせまた明日も来そうだな、あやつは」
山神「なんだ、人間が来てるんじゃない」ボワン
神娘「…ふん」
山神「ねぇ、今の人間は誰なの?」
神娘「麓の村に住んでいるらしい。この前見つかってしまって以来、ここをよく訪ねてくる」
山神「へぇ〜」
神娘「鬱陶しい奴だ。私が弱っている事を知っているから、色々こうして食べ物などを持ってくる」
神娘「私が神だと知りながら、碌に敬いもせず無礼ばかり働きおる」
神娘「きちんと力が使えればあんな奴すぐに追い出すというのに、まったく…」ブツブツ
山神「ふ〜ん…」ニヤニヤ
山神「でも神娘、楽しそうだったじゃない」
神娘「…は?」
山神「さっきあの人間と話してる時、なんだか活き活きしてたけどなぁ」
神娘「なっ、なっ、なっ…」
86: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:53 ID:Jn8a761Fdk
神娘「待て待て、いくら山神殿でも冗談が過ぎるぞ!」アセッ
山神「冗談なんかじゃないけどなぁ」
山神「まるで、昔のあなたを見てるみたいだった」
神娘「…」
山神「あたしはあなたの事はよく分かる」
山神「人間が好きだった頃の神「やめろっ!」
山神「…」
神娘「…」
神娘「私は…もう昔とは違う!」
神娘「人間など…人間など嫌いだ!」
山神「……」
山神「素直じゃないところも変わってないけどねぇ」
神娘「…山神殿、もう帰ってくれないか」
山神「そうさせてもらおうかしらね。あんまり山を空けてもいけないし」
山神「私としてはあなたの無事が確認できて満足だわ」
神娘「ありがとう。私は大丈夫だ」
山神「それじゃ、行こうかしらね」バサッ
神娘「……」
山神「…あっ、そうそう。忘れてたわ」
87: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:48:48 ID:Jn8a761Fdk
山神「あなたのいたあの村だけどね」
神娘「…おう」
山神「……」
山神「…天罰が下ったわ」
神娘「!」
山神「竜巻に巻き込まれて、跡形も無くなったの」
神娘「…そう、か」
山神「でもね、神娘…」
神娘「ふん、当然の事だろう」
山神「……」
山神「…機会があればまた私の山にいらっしゃいな。見せたいものもあるし」
神娘「残念だが、もう会う事はないだろうな」
山神「それも天命。でも、また会えると信じているわ」
バサバサッ
神娘「…」
神娘「……」
グスッ
88: 名無しさん@読者の声:2016/3/21(月) 12:00:34 ID:chf.eBHwDE
いったい村で何があったのか気になります…
支援!
89: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:35:54 ID:Jn8a761Fdk
タタタッ
「はぁ、はぁ…」
ワーワーッ!
『こっちに逃げた!』
『くそ、やはりすばしっこい!』
(何故だ…)
………………
(くっ…足が…)ズキズキ
ドタドタッ!
「っ!」
『いたぞ!捕まえろ!』
「おい!お前たち、目を覚ませ!」
『追い詰めたぜ!』
『これで…これで俺たちに恩賞が…!』
ウオオーッ!!
(駄目だ。話が通じぬ…)
(うぅ…)
(信じていたのに…何故なのだ…っ)
ワーッワーッ!!
90: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:36:31 ID:Jn8a761Fdk
神娘「うぁっ!」ガバッ
神娘「はぁ…はぁ…」
神娘(ゆ、夢…か…)
神娘(最近思い出す事もなくなったというに…山神のせいだ)ブルブル
神娘(震えているか。まったく情けな…)
「神様?」
神娘「っ!」ビクッ
男「どうかされましたか?大声を出して…」ザッ
神娘「な、何でもない…」
男「顔色が優れませんが」
神娘「何でもないと言っている」
男「それにすごい汗をかいておいでです。少し横にでもなった方が…」ザッ
神娘「やめろ!近付くな!」
男「!」ビクッ
神娘「あっ」
神娘「…ほ、本当に何でもないのだ。私に構うな」プイッ
男「神様…」
91: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:37:57 ID:Jn8a761Fdk
男「今日は真にお疲れのおいでのご様子。また日を改めて伺います」クルッ
神娘「…」
神娘「ま、待っ…」
男「えっ?」
神娘「あ〜、えと、そのだな…」
神娘「さ、最近お前の村の調子はどうだ?」
男「…」
男「順調ですよ。作物もしっかり育っていますし」
神娘「お、おう。そうか」
男「もち米も秋には採れます。さすれば餅を搗いてお持ちしますよ」
神娘「それは楽しみにしておいてやろう」
男「そういえば2日前に子が生まれましてございます」
神娘「な、なにっ。お前妻がいるのか」
男「いえ、私の子ではありません。独り身ですし」
神娘「そうか。そうだな。そうに決まっている」
男「そんなに断定されると悲しくなるのですが」
92: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:38:27 ID:Jn8a761Fdk
神娘「お前は女子に好かれそうな雰囲気がせぬ」
男「ぐはっ」
神娘「まあ色欲に溺れるような不埒な奴よりましだろう」
男「確かにその点については同感ですが」
神娘「そういった奴は信用ならぬからな」
男「では、私は信用に足るというわけですか」
神娘「人間自体信用できん」フン
男「望みがありませぬ」ガクン
神娘「そもそも色欲以前にお前はもっと働け。働かぬ奴はもてぬ」
男「おかしいですね、こんなに真面目なのに」
神娘「…もう何度その点に突っ込めばいいのだ」
男「うん、そうだ。世の女性の見る目がないのです。そうに違いない」
神娘「そうやって周りのせいにしていれば楽であろうな」
男「今日はやたらと攻撃的ですね」
93: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:39:19 ID:Jn8a761Fdk
男「しかし、やはり今日の神様は少し変です」
神娘「喧嘩を売っているのか?」
男「いえ、そういったつもりでは…」
男「元気がないだけでなく、村のことを気に掛けてくださるとは。勿論ありがたいのですが」
神娘「気に掛けるなど…そんなつもりはない」
男「何かおありなのでは?お話しいただけませんか」
神娘「…」
神娘「…近頃昔の夢をよく見るのだ」
男「夢、ですか…」
神娘「そうだ。少々思い出したくない事でな。辟易しておる」
男「何かお辛い事があったのでしょうか」
神娘「…うむ」
男「私でよろしければお話をお聞きしますが」
神娘「…ん」
神娘「いや、いい。お前に話しても仕方ない事だ」
男「そうですか」
神娘(いかんな。不意に縋りたくなってしまう)
94: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:52:27 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…」ボーッ
男「神様〜」ザッ
神娘「…」ボーッ
男「神様?」
神娘「ん、お、おう。来ていたのか」
男「やはりお疲れのご様子で…」
神娘「い、いや、そうではない。考え事をしていただけだ」
男「はあ…あ、それより神様。また川へ魚を捕りに行って参りました」
神娘「そうか」
男「そうしたらこんなものが網に引っかかりまして」
神娘「ん?」
ビチビチッ
神娘「これは鰻ではないか」
男「はい」
神娘「珍しいものが捕れたな」
男「鰻は疲れに効くと聞きます。神様に召し上がっていただきたくお持ちしました」
神娘「お前…」ジーン
神娘「ふ、ふん。なんだ、気が効くな。たまには褒めてや…」
男「さあ神様、お召し上がりください」グイッ
神娘「踊り食い…だと!?」
95: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:53:30 ID:2D9GO7t/YM
男「神様…ぬるぬるして掴みづらいのですから早く…っ」ビチビチッ
神娘「馬鹿かお前!いったんしまえ!」
男「そ、そんなこと言いましてもこいつが暴れて…」
神娘「褒めようとした矢先に…ええい、近付けるなっ!」
スルッ
男「あっ」
神娘「わわっ!」キャッチ
神娘「きゅ、急にこっちに寄越すな!」
男「神様!今です!」
神娘「今ですじゃない!とにかくしまうから早くその籠を…」
ビチビチッ
神娘「うわわっ!?」スルルッ
男「あっ、神様の服の中に…」
神娘「ちょっ…中で暴れて…っ」
神娘「わははっ!く、くすぐったい!」ジタバタ
男「わあ、絵的にまずい事に」
神娘「お、おいっ!早くこいつを取り出せ!」バタバタ
男「え〜っと…よろしいので?」
神娘「い、いや待て!やはり自分で何とかする!」アセッ
男「無念」チッ
96: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:54:15 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…散々な目に遭った」ゲッソリ
男「おいたわしや。不届き者の鰻のせいで…」
神娘「お前のせいだ、愚か者」
男「面目ありません」
神娘「…山神め、何が活き活きだ。こやつが来るたび疲れるだけだ…」ブツブツ
男「えっ、何か言いましたか?」
神娘「独り言だ」
神娘「だいいち、鰻は生では毒があるのだぞ。踊り食いなぞできぬ」
男「そうなのですか」
神娘「本当にわざとやってるんじゃないだろうな、お前」
男「滅相もございません」
男「しかし、そんな毒ごとき神様は大丈夫なのでは?」
神娘「この下界におる間、私の体質はお前たちとさほど変わらぬ」
神娘「毒にあたれば腹も壊すし、怪我もする。まあ流石に死にはせんがな」
男「衝撃の事実」
神娘「不便なものだ、まったく」
神娘「人間に化けねば下界に適応できぬとは…」
男「えっ」
神娘「あっ」
97: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:55:37 ID:2D9GO7t/YM
男「神様のそのお姿は、本来のものではないのですか?」
神娘「しまった…また口を滑らせた」
男「神様」
神娘「ええい、いいか。この程度なら…」
神娘「そうだ。人間の姿を模しているだけだぞ」
男「神様にもそのような能力が」
神娘「神本来の姿では下界におれぬ。天界と環境があまりにも違うからな」
男「興味深い話です」
神娘「またいらぬことを聞かせてしまった。これ以上は話せん」
男「そうですか」
男「ちなみに、人間以外の姿に化ける事も?」
神娘「…言うと思ったわ」
神娘「だが、私にはその能力はない。この人間の姿を保つので精一杯だ」
男「なんだ。残念です」
神娘「狸や狐の類ではないのだぞ」
男「しかし神様の本来のお姿とは如何なるものなのか…」
神娘「人間ごときが目にできるものではない。諦めろ」
98: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:56:31 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミン…
神娘「ん?」
ミーンミンミン…
ジジジ…
神娘「おお、蝉か」
神娘(この声を聞くと夏という感じがする)
神娘(ろくに外に出れぬから、この暑さ以外に夏らしさを感じれなかったからな)
ミーンミンミン
神娘「……」
ミーンミンミン…
……………
『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』
「ん?おお、蝉か。よく捕れたな」
『えへへ、すごいでしょ!』
「うむ、すごいぞ。だがもう放してやれ」
『えっ。もったいないよ』
「蝉はお前たちよりずっと短い間しか生きれぬ」
「その間くらいは、自由に飛び回らせてやってほしいのだ」
『むぅ〜…』
「な?」
『…分かった』パッ
99: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:07 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミン…
『ばいばい、蝉さん!』フリフリ
「よしよし。良い子だ」ナデナデ
『えへへ〜』
『ね、ね、神様って優しい人だよね!』
「ん?優しい…?」
『うん!私、神様みたいな人になる!』
「わはは、そうかそうか。ならばこれからも良い手本にならねばな」
『神様、これからも私たちと遊んでね!』
「ああ。お前たちが望む限り、私はお前たちと共に在る」
「…これからも、共に」
神娘「っ!」ズキッ
ミーンミンミン…
神娘「っ、ふぅ…」
神娘(まただ。また不意に思い出してしまった)
神娘(最近はそのたび、頭や胸が痛む)
神娘「ふふっ、とうとう私もおかしくなり始めたかな?」
ミーンミンミン…
100: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:46 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…懐かしい気分になるな」
男「小さい頃はよく追いかけたものです」
神娘「そうか」
男「逃げられ際に小水をかけられた事もありました」
神娘「わはは。よくあるな、それは…」
神娘「…ってお前、いつの間に入ってきたのだ」
男「あれ、とっくに気付いておられるかと思いました」
神娘「せっかく何とも言えぬ気分に浸っていたところだったのに」フゥ
男「あっ、どうぞ私にお構いなく」
神娘「またすぐに余計な事を話し出すくせに」
男「そのような野暮な事は致しません」
神娘「ふぅん、それならば少し黙っておれ。というか出ていけ」
男「出ては行きませんが、静かにはしております」
神娘「こやつ……まあいい」
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