ーむか〜しむかし、とある場所で
304: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:34:56 ID:x.m4zI.Brs
男「……」
男「そう…お慕いしていたのです」
男「気付いたのはお会いして、しばらく経ってからの事でしたが」
男「……」
男「…とんでもない考えですよね」
男「私などが神様にこのような事…余りにも畏れ多い」
男「神様もきっと笑われることでしょう」
男「しかしそれでも…色々な思考を巡らせる前に…」
男「神様がおられる内にお伝えしておきたかった」
男「…私は、臆病者だったのです」
男「今になってこれほど後悔することになろうとは…」
男「はは…自業自得というものですね」
男「神様がいなくなられたのも全て…私の責任だというのに…」
305: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:35:19 ID:x.m4zI.Brs
男「…神様」
男「別れ際、私の事を気に入っていると…」
男「私とまた会いたいと言ってくださいましたね」
男「神様からその言葉をいただいた時、どれほど嬉しかったか」
男「神様のお言葉を胸に、この数ヶ月頑張ってこれました」
男「神様に褒めていただけるような村造りをしていこうと」
男「これまでよりも、一層頑張りましたとも」
男「……」
男「これからもずっと」
男「神様との日々や、そのお言葉を胸に」
男「そうやって私は生きて参ります」
男「神様からいただいたこの命」
男「大事に…大事に使っていきます」
男「同じく神様が守ってくださった私たちの村のために…」
306: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:35:47 ID:x.m4zI.Brs
男「腕が治ったら、村の皆さんとここに祠を建てましょう」
男「この鈴を入れて…神様を祀らせていただきます」
男「神様が安らかに眠れるように…」
男「神様がおられた証を残しておけるように…」
男「今度は私たちが、この鈴を守っていきますよ」
男「ですから神様。安心してください」
男「願わくば…」
男「私たちの事を見守っていてくださると幸いです」
男「……」
男「……」
男「…では、そろそろ行きます」
男「神様。またお話し致しましょう」
チリンッ
男「…」ゴソッ
男「よいしょっと」スック
ザッザッ…
307: 名無しさん@読者の声:2016/9/10(土) 08:12:59 ID:GdOmmD92..
切なすぎる…
支援
308: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:19:35 ID:pIT98fGQ1s
>>307 支援ありがとうございます!
更新遅くなってすみません。
309: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:20:06 ID:pIT98fGQ1s
男「さて、これからどうしようか」
男「山菜くらいなら採って帰れるかな…」
サアッ…
男「ん?」
サアアア…
男「おお、良い風が吹き込んできている」
男「暖かい風だ。近頃にしては珍しい」
男「なんだか懐かしい感覚…」
男「…そうだ。これは」
男「神様の吹かせていた風に似ている」
男「…神様の風…か」
男「そういえば以前、山神様のお社でこんな事を聞いたなあ」
ーーー
ーー
ー
310: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:20:36 ID:pIT98fGQ1s
男『そういえば神様』
神娘『なんだ?』
男『神様は風の神様ではないのですか?』
神娘『どういう事だ』
男『以前に神様が風を吹かせていたではないですか』
神娘『ああ…そういえばな』
男『お力があまり使えない状態でもあれが使えるというのは…』
神娘『あんなのは訳ない』
神娘『念力と同じく初歩の術だからな』
男『そうなのですか』
神娘『まあ以前も言ったが…力が戻れば規模は段違いだぞ』
神娘『私の本気もいつか見せてやりたいものだ。お前自身の身をもって』
男『おお、楽しみにしております』
神娘『えっ』
男『えってなんですか』
神娘『…皮肉が通じぬ奴だというのを忘れておった』
311: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:21:36 ID:pIT98fGQ1s
男『しかしそのように自在に風を吹かせるというのもまた羨ましい力です』
神娘『そうか?そうそう役立つ場面も少ないが』
神娘『とはいえ元々神は風とは縁が深いものでな』
男『そうなのですか?』
神娘『この神風もそうだし、天罰に使う竜巻もいわば風の集まりだ』
神娘『風と共に生まれ落ち、風と共に天に帰るとも言われておるしな』
男『なんと。神様も生まれた時はそうだったので?』
神娘『覚えている筈なかろう』
男『ですよね』
神娘『しかし、山神殿の話によると…その通りらしい』
神娘『不自然な突風が吹いたので見てみたら、私がいたと』
男『ほうほう』
男『子どもは風の子、神様も風の子というわけですね』
神娘『子ども扱いは腑に落ちぬが…言い得て妙だな』
ー
ーー
ーーー
312: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:22:11 ID:pIT98fGQ1s
男「…ははは、本当に身をもって知りましたよ」
男「神様の本気のお力を…」
男「できれば直接見たかったですけどね」
男「……」
ヒュオッ…
男「ん?」
ビュオオオッ!!
男「うわっ!?」フラッ
ドサッ
チリンッ
男「いてて…」
男「急な突風が吹いたなあ」
男「はは、これもまた神様の如く…」
男「…しまった。鈴が転がって…」
コロコロ…
男「おーい、待て待て」タタタ
コロコロ…
313: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:23:11 ID:pIT98fGQ1s
コロコロ…
コロン…
ヒョイ
「おいおい、大事な物だ。傷付けるでない」
314: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:23:41 ID:pIT98fGQ1s
男「えっ」
神娘「傷付けるなと言ったのだ」ポンポン
男「…」ポカーン
神娘「…久しいな、男」
男「か……神…様…?」
神娘「ああ。私だぞ」
男「ううっ…!」
男「神様っ!」ガバッ
神娘「うわあっ!」
男「良かった…生きておられたのですね…!」ヒシッ
神娘「…ああ。生きておる…な」
神娘「それよりその…離してくれぬか。少し苦しいのだが」
男「お断り致します」キッパリ
神娘「……」
神娘「…ま、仕方あるまい。もう少しこのままでも…」
男「神様…」ギュッ
神娘「わはは…男、心配かけたな」ギュッ
315: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:24:01 ID:pIT98fGQ1s
・・・・・・・・・・
316: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:24:31 ID:pIT98fGQ1s
男「取り乱してしまい、申し訳ありません」
神娘「まったくだ。急に抱きしめるなど…」
男「しかしこの小ささ、間違いなく神様です」
神娘「それは背丈の話か?胸の話か?」
男「それより何故ここに?先ほどまでは誰もいなかったはずですが…」
神娘「流すなし。今、気付いたらここにおったのだ」
神娘「そうしたら足元にこれが転がってきて、お前が走ってきた」
男「その…消滅されたわけではなかったのですか?」
神娘「いや、確かにあの時消滅した」
神娘「私の限界を超える力を使ったからな。当然だろう」
男「…申し訳ありません」
神娘「謝られても困る。私が勝手にやった事だ」
男「では…訂正します」
男「本当にありがとうございました」ザッ
神娘「ああ。その方がずっと良い」ニコッ
317: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:24:58 ID:pIT98fGQ1s
男「しかし…消滅したとなれば、何故今ここに…?」
神娘「う〜む、それが…私にもよく分からぬ」
男「えっ?」
神娘「力を使い果たしたあの瞬間から…先ほどまでの記憶が全くない」
男「そうなのですか…」
神娘「まあ手がかりになるかは分からぬが…」
男「?」
神娘「先ほど目を覚ます直前、ある感覚を覚えた」
神娘「何と言えばいいのか…とても温かいような、胸が熱くなるような…そんな感覚だ」
男「はあ…」
神娘「うむ、訳が分からぬな。忘れてくれ」
神娘「大事なのはどうしてではない。私が生きているという事実だ」
男「そうですね、仰る通りです」
318: ◆WjgYlacz.c:2016/9/21(水) 11:26:26 ID:pIT98fGQ1s
神娘「お前も無事で良かった。力の使い甲斐があったというもの」
男「神様のおかげでございます」
神娘「だが…腕を怪我しておるのか」
男「この程度、何でもありません」
神娘「村での仕事でも影響が出るだろう」
男「今は安静にしているのみです」
神娘「う〜む…治癒の術を使ってやりたいところだが、その…」
男「神様方の手を煩わせるわけには参りません」
男「それに、また消滅されては困りますしね」
神娘「…理解しているようで助かる」
男「やはり今また神力は空なので?」
神娘「そうらしい。またこの身を保っているので精一杯な状態だな」
男「それはいけません。私の村で少しお休みください」
神娘「お前の村で?」
男「はい」
319: 名無しさん@読者の声:2016/10/18(火) 02:04:37 ID:VTSHWpWAVQ
2人が幸せになりますように
( ・ω・)っCCCC
320: ◆WjgYlacz.c:2016/11/2(水) 18:37:24 ID:69YocRD1R.
>>319 支援ありがたくいただきます!
間が空いてしまいすみません。更新再開します。
321: ◆WjgYlacz.c:2016/11/2(水) 18:38:04 ID:69YocRD1R.
神娘「……」
男「神様、共に行きましょう」
神娘「…ならぬ」
男「えっ?」
神娘「お前の村には行けぬと言った」
男「何故でしょう」
神娘「…それは」
神娘「もう幾日も山神殿の下を空け、修行が遅れておる」
神娘「すぐにでも戻らねば。心配をかける事になろう」
神娘「それに…」
男「…それに?」
神娘「…いや、なんでもない」
男「はあ」
神娘(今行けば…帰りたくなくなりそうだしな)
322: ◆WjgYlacz.c:2016/11/2(水) 18:38:30 ID:69YocRD1R.
男「分かりました。無理強いは致しません」
神娘「うむ。気遣いは感謝するぞ」
男「滅相もありません」
神娘「では、行くとしよう」
男「歩けますか?」
神娘「問題ない」スック
神娘「おっとっと…」フラッ
男「神様」ガシッ
神娘「…うむ…少し立ちくらみがしたな」
男「やはりお体の調子が…」
神娘「大事ない。さあ行くぞ」
男「…」
男「では、せめて外に行くまでこのままお体を支えさせてください」
神娘「大事ないと言っておるのに…」
神娘「…すまぬな。頼もう」
男「お任せを」
323: ◆WjgYlacz.c:2016/11/2(水) 18:38:52 ID:69YocRD1R.
ザッザッ……
男「……」
神娘「……」
神娘(静かだな…)
神娘(この洞窟に来るのも…本当に今日で最後だろう)
神娘(ここから出れば…またこやつとも離れ離れ、か)
神娘(…何を考えておる)
神娘(自分で選び、進むと決めた道だ)
神娘(それでよいのだ。それで…)
神娘(…)
神娘(…だが、思うだけなら…悪くはないよな?)
神娘(寂しい、と…思うだけなら…)
神娘「…」
男「どうかされました?神様」
神娘「ん、いや、なんでもない」
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