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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





108: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:10:37 ID:2D9GO7t/YM
神娘「しかしやはり外の空気は良い」

男「夏は何とも言えぬ香りが致します」

神娘「この日差しも久しぶりに浴びた」

神娘「虫の鳴き声も動物の気配も…洞窟の中ではなかなか感じれぬからな」

男「どのくらいあそこにおられたのですか?」

神娘「十年ほどか」

男「じゅ、十年ですか!」

神娘「何をそれほど驚く?…ああ、お前たち人間からしてみれば長い時間か」

男「筋金入りの引きこもりではないですか」

神娘「褒めてはおらんよな、それ」

男「私もそうやってのんびりと過ごしていきたいものです」

神娘「お前がそれをやったらただの怠け者だろうが」
109: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:11:17 ID:2D9GO7t/YM
夜ー

パチパチ…

神娘「お前、村の者には何と言って出てきたのだ」

男「その牛車に積んである荷を西の村の友人に届けると言ってきました」

神娘「…空だぞこれ」パカッ

男「嘘ですよ。西の村に友人などおりません」

神娘「なんだ、そうなのか」

男「それどころか、あの村以外の場所に住む人のことなど全く知りませんから」

神娘「日々の生業に追われ、外に出る機会もないであろうからな」

男「時々気になります。いったい私の住むこの地はどこまで続いているのか」

男「果たして終わりはあるのか、それはここからどれほど歩けばよいのか…と」

神娘「ふん、お前はまるで子どものような事を考えるな」

男「神様は御存知なのですか」

神娘「さあな。私にも手が負えぬ広さだが」

男「いつか行けるようになるのでしょうか。神様のように様々な場所へ、自由に」

神娘「…なるかもな。お前たちが願っていれば」
110: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:11:52 ID:2D9GO7t/YM
男「正直、今回のこの旅は楽しみでした」

神娘「ん」

男「村の外を見る良い機会となったのですから」

神娘「そうか」

男「行き先はどこかよく分からぬ地である点が不安でしたが、それも昼間に解決しましたし」

神娘「呑気なものだな」

男「御安心を。私の命に代えても、神様は必ずや目的の地へお連れ致します」

男「それに神様の御友人にお会いするのも楽しみですし」

神娘「あやつ、お前には姿を現さんかもしれぬぞ」

男「そうなのですか?」

神娘「人間の前に滅多に顔を出さん奴だからな」

男「むうう…それは残念です」

神娘(以前にこやつを面倒な奴だと紹介した事は黙っておくか)
111: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:12:27 ID:2D9GO7t/YM
男「神様、荷台の上の寝心地は悪くありませんか」

神娘「最悪だと言わせてもらおうか」

男「ですよね」

神娘「だがあの洞窟の岩場で十年寝た身だ。もう慣れておる」

男「逞しくて助かります」

神娘「お前こそ、そんな地べたでいいのか」

男「いやあ、背中が痛いです。そちらへ行っても…?」

神娘「隣は空いとらん」

男「分かってました」

男「まあ私も地べたで寝る事には慣れております故、御心配は無用です」

神娘「そうか」

男「似た者同士ですな、私たちは」

神娘「ふん。何よりの屈辱だ」

男「ははは。それでは、休ませていただきま…」グー

神娘「早っ!」
112: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:13:11 ID:2D9GO7t/YM
リーンリーン

神娘「……」

神娘(月を見るのも久しぶりだ)

神娘(もうすぐ満月か?…いや、これから欠けるのか満ちるのかわからぬ)



男「ZZZ」グーグー

神娘「……」

神娘「何が命に代えてもお連れします、だ」

神娘「人間ごときが粋がりおって」



神娘「……」

ゴソゴソ



神娘(まあ、この程度なら念力を使っても…)スッ

フワフワ…



パサッ



神娘(夏とはいえ暖かくして寝ろ、馬鹿者)

神娘(…お前に風邪などひかれては困るからな)

神娘(さて、私も休むとしよう)

ZZZ…
113: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:13:23 ID:1ohBGYj0YI
サラサラ…

男「あっ、崖の下に小川がありますね」

神娘「うむ」

男「少し水の補給をしてきてもよろしいでしょうか」

神娘「それはよいが、あそこまで降りれるのか?」

男「ここの岩場をつたっていきますので…」

神娘「では私はここで待っていよう」

男「はい。…神様」

神娘「なんだ」

男「寂しくても泣かないでくださいね」

神娘「よし、早く行けるように突き落としてやるか」ビュオッ

男「風で押すのはお止めください」
114: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:15:06 ID:1ohBGYj0YI
神娘「ふぅ…しかしまだかかりそうだな」

神娘「お前にも苦労をかけるな」

牛「モォーッ」

神娘「うむうむ。恨むならお前を連れてきたあやつを恨んでくれ」

牛「モー…モッ!?」ピクッ

神娘「ん?どうし…」



ガササッ



野犬「ガルル…」

神娘「っ!」

神娘「野犬の群れ…食糧の匂いに釣られたか」

神娘「待てお前たち!食糧なら分けてやろう。だからここから…」

野犬「ワウワウッ!」

牛「ンモー…」タジッ

神娘「!」

神娘(まずいな、こやつらの狙いはこの牛か!)

野犬「バウッ!」ガバッ

神娘「くっ」スッ
115: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:15:56 ID:1ohBGYj0YI
神娘「吹き飛べっ!」

ビュオッ!

野犬「キャインッ!」ドサッ

神娘「はぁ…生憎だがこやつはお前たちにやれん」

神娘「ここは大人しく…」

野犬「ガウガウッ!」ババッ

神娘「!」

神娘(私を狙ってきたか…あまり力を使いたくないが、止むを得ん)スッ

ダダッ

男「はっ!」

バキッ!

野犬「ワウンッ…!」ズザッ

男「間に合ってよかったです。油断なりませんね」

神娘「お前…」

男「神様、そこの鍬を取っていただいても?」

神娘「ん、これか」ガタッ

男「ありがとうございます。では少々お待ちください」ガチャッ

野犬「バウバウッ!」
116: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:17:23 ID:1ohBGYj0YI
バキッ!ズカッ!



野犬「キャインキャインッ」ダダダッ

ガサガサッ

男「ふぅ、しつこい連中でした」

神娘「…やるな」

男「だてに猪を狩ったりしませんよ」

神娘「確かに」

男「それよりもお怪我はありませんか」

神娘「ああ、無事だ。こやつも」

牛「モーッ」

男「それは良かったです」ボタボタ

神娘「というよりお前が怪我しているではないか」

男「ああ、腕を少し引っ掻かれましたが掠り傷ですよ。放っておけば治ります」

神娘「……」

ビリッ

男「神様?何故お召し物を…」

神娘「ほら、腕を出せ」

男「はあ…」スッ

ギュギュッ

神娘「その…お前に何かあれば、誰が私を連れて行くのだ」

神娘「だから気を付けるがいいぞ、うん」

男「…はい」
117: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:17:55 ID:1ohBGYj0YI
男「しかし、もう少し来るのが遅ければどうなっていたか」

神娘「…ふん、私の力で追い払う事など容易いわ」

男「でもそうすれば神様は弱ってしまわれるのでは?」

神娘「い、いや、そんな事は…ない」

男「…」ジトー

神娘「そ、それより早く行くぞ!ほれっ!」

男「了解しました」

牛「ンモー」

ガラガラ…



神娘「………がとうな」ボソッ

男「何か言いましたか?」

神娘「何でもないっ!」
118: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:41:16 ID:ZdjbHGVS7E





そんな調子で五日程−





119: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:41:44 ID:ZdjbHGVS7E
神娘「ここだ、この社だ」

男「ここが神様の御友人のお社でございますか」

神娘「うむ。間違いない」

神娘「この鳥居…見覚えがある。少し色褪せたか」

男「行きますか」

神娘「ああ」

男「それでは…よっと」オンブ

神娘「ん」オブラレ

男「お疲れではありませんか?」

神娘「五日も揺られて元気なわけあるか」

牛「モー…」

神娘「ああ、お前のせいではない。よく頑張ってくれたな」ナデナデ

牛「ンモーッ♪」

男「私も頑張りました。ああ、疲れたな〜」

神娘「さて、あやつはいるかな。早く中へ行くぞ」

男「いっそ清々しい扱いの差ですね」
120: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:42:10 ID:ZdjbHGVS7E
ミーンミンミンミン…



ザッザッ

男「さて、中まで来たものの…」

神娘「誰もおらぬな」

男「誰もいませんね」

神娘(あやつの気配もせぬ。不在なのか…?)

カサッ…カサッ…

神娘「ん?」

男「何か音がします」

カサッ…ササッ…

男「箒で地面を掃くような音ですが…」

神娘「社の裏手から聞こえるな。誰かいるのかもしれん」

男「そうですね。行ってみましょうか」

神娘「うむ」

ザッザッ…
121: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:42:38 ID:ZdjbHGVS7E
コソッ

??「〜♪」ササッ…カサッ…

神娘「…誰かおるな」

男「あれが神様の御友人ですか?」

神娘「いや、あそこにいるのは人間だ」

男「あの服装…この神社の巫女様でしょうか」

神娘「ふむ、以前はそのような者はいなかったと思うが…」

男「とにかく尋ねてみましょうか」

神娘「いやだ、人間には関わりたくない。…特にこの地の者とは」

男「そんな事仰らずに。さあ行きましょう」ザッ

神娘「ま、待てっ!もう少し様子を…」

巫女「どなたですか…?」

男・神娘「!」

巫女「…出てきてくださいませ」

男「ほら、神様が大声を出すから…」

神娘「出させたのはお前だろうが」

男「もう観念して行きますよ。…どうもこんにちは」ザッ

巫女「…っ!」

巫女「背中に女子を背負って…山賊か人攫いですか?」キッ

男「ああ、あらぬ勘違いをされています」

神娘「無理もないな」
122: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:43:03 ID:ZdjbHGVS7E
男「待ってください。私たちは怪しい者ではありません」

巫女「こんなに怪しい方も珍しいです」

男「神様も何とか言ってくださいよ」

神娘「…ふぅ、仕方ない」

神娘「そこの者、案ずるな。私は攫われているわけではない」

巫女「えっ、そうなのですか…?」

神娘「私はここの主に会いに来ただけだ」

巫女「主…?」キョトン

神娘「山神殿だ。神職の者ならば通せるであろう?」

巫女「あっ、えっと、私は…」オドッ

神娘「神娘という名を伝えよ。そうすれば分かる」

巫女「神娘……」

巫女「……」

神娘「…?」





巫女「か、神娘様っ!?」

男・神娘「えっ」
123: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:45:44 ID:ZdjbHGVS7E
タタタッ

巫女「ああ…本当に神娘様だ…」

巫女「なんとお懐かしい…帰ってきていただけるなんて…」ウルッ

神娘「……」アゼン

男「神様、お知り合いの方ですか?」

神娘「いや、知らぬ。気安く話しかけるな」ギロッ

巫女「あっ…」ビクッ

巫女「そ、そうですよね…私、小さかったし。覚えていらっしゃらないのも…」

神娘「小さかった…?」



ミーンミンミン……





『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』





……ンミンミー

神娘「……蝉」

巫女「…!」

神娘「お前は…昔、私に捕まえた蝉を見せてきたな?」

巫女「は、はいっ!」パアッ

神娘「たしか名は……村娘、といったか」

巫女改め村娘「はい!村娘にございますっ!」パアアッ
124: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:46:11 ID:ZdjbHGVS7E
村娘「神様…またお会いしとうございました…!」ウルッ

神娘「…っ」ピクッ

村娘「神様がいなくなられてからも私…」

神娘「…」ギリッ

神娘「ま、また会いたかっただと…!?」ワナワナ

村娘「!」

男「神様…?」

神娘「あの村の人間が!!どの面を下げてその様な事を言うのだ!!?」ゴオッ!

村娘「…う、うぅ」

神娘「私がどのような思いをしたと思っている!!お前たちのせいで私は、私は…っ!!」

男「神様、落ち着いてくださ…」

神娘「お前は黙っていろ!!」

男「しかし…」

村娘「…いいのです」

男「えっ?」
125: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:46:36 ID:ZdjbHGVS7E
村娘「私たちは…っ、それだけの事をしてしまったのです…」ポロポロ

男「…」

村娘「許していただけるはずなどありません…」

神娘「……」フーッ、フーッ

村娘「ごめんなさい、失礼します…っ!」

タタタッ

男「あっ、待っ…」

男「行ってしまった。神様、今のはどういう事ですか?」

神娘「…お前には関わりのない事だ」

男「……」

神娘「それよりも…いつの間に戻っていたのだ?山神殿」

男「?」

『随分早い再会になったわね、神娘』

神娘「ふん」

サアアアッ

男「うわっ、風が…」

バサバサッ
126: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:47:06 ID:ZdjbHGVS7E
カラス「カアーッ」バサバサ

男「えっ、烏?」

神娘「なんだ。近頃はその姿が気に入りなのか?」

カラス「飛べる姿の方が何かと便利なのよね」

男「か、烏が喋った…」

山神「うふふ、初めまして…になるのかしらね、男さん。私はこの山の守り神、山神と言います」

男「何故私の名を」

山神「当然よ、これでも神だもの」

男「ははーっ」ズザッ

神娘「…私が以前教えたんだろうが」

山神「ちょっと。そこは黙っててほしかったわね」

男「以前…?」

山神「実はつい最近、あの洞窟に私も行っててね」

山神「その時にあなたを見ているのよ。私は姿を消していたけど」

男「そうだったのですか」

山神「よくこんな手のかかる神を相手してくれてるわね」ケラケラ

神娘「やかましい」

男「いえいえ、たしかに手はかかりますが放ってもおけませんし」

神娘「何だこれ、いじめ?」
127: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:47:35 ID:ZdjbHGVS7E
山神「さ、おぶったままじゃ疲れるでしょ。ここへ座って」トントン

神娘「うむ、そうさせてもらおう」

男「では失礼…よっと」

神娘「ん」ストッ

山神「長旅ご苦労だったわね、男さん」

男「いえ、そのような」

山神「男さんを使ってまでここへ来たからには何か理由があるんでしょうね?」

神娘「…話合わねばならぬ件があってな」

山神「そう、良いわよ」

男「あ〜っと…私は少しはずしていた方がよろしいでしょうか?」

山神「そうね。人間に聞かれてはいけない話もあるかもしれないし…」

男「分かりました。牛も気になりますし、私は外へ」

神娘「ああ」

男「それでは失礼致します」

タタタッ
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sage:


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