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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





88: 名無しさん@読者の声:2016/3/21(月) 12:00:34 ID:chf.eBHwDE
いったい村で何があったのか気になります…
支援!
89: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:35:54 ID:Jn8a761Fdk
タタタッ

「はぁ、はぁ…」

ワーワーッ!

『こっちに逃げた!』

『くそ、やはりすばしっこい!』

(何故だ…)


………………


(くっ…足が…)ズキズキ

ドタドタッ!

「っ!」

『いたぞ!捕まえろ!』

「おい!お前たち、目を覚ませ!」

『追い詰めたぜ!』

『これで…これで俺たちに恩賞が…!』

ウオオーッ!!

(駄目だ。話が通じぬ…)



(うぅ…)

(信じていたのに…何故なのだ…っ)

ワーッワーッ!!
90: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:36:31 ID:Jn8a761Fdk
神娘「うぁっ!」ガバッ

神娘「はぁ…はぁ…」

神娘(ゆ、夢…か…)

神娘(最近思い出す事もなくなったというに…山神のせいだ)ブルブル

神娘(震えているか。まったく情けな…)

「神様?」

神娘「っ!」ビクッ

男「どうかされましたか?大声を出して…」ザッ

神娘「な、何でもない…」

男「顔色が優れませんが」

神娘「何でもないと言っている」

男「それにすごい汗をかいておいでです。少し横にでもなった方が…」ザッ

神娘「やめろ!近付くな!」

男「!」ビクッ

神娘「あっ」

神娘「…ほ、本当に何でもないのだ。私に構うな」プイッ

男「神様…」
91: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:37:57 ID:Jn8a761Fdk
男「今日は真にお疲れのおいでのご様子。また日を改めて伺います」クルッ

神娘「…」

神娘「ま、待っ…」

男「えっ?」

神娘「あ〜、えと、そのだな…」

神娘「さ、最近お前の村の調子はどうだ?」

男「…」

男「順調ですよ。作物もしっかり育っていますし」

神娘「お、おう。そうか」

男「もち米も秋には採れます。さすれば餅を搗いてお持ちしますよ」

神娘「それは楽しみにしておいてやろう」

男「そういえば2日前に子が生まれましてございます」

神娘「な、なにっ。お前妻がいるのか」

男「いえ、私の子ではありません。独り身ですし」

神娘「そうか。そうだな。そうに決まっている」

男「そんなに断定されると悲しくなるのですが」
92: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:38:27 ID:Jn8a761Fdk
神娘「お前は女子に好かれそうな雰囲気がせぬ」

男「ぐはっ」

神娘「まあ色欲に溺れるような不埒な奴よりましだろう」

男「確かにその点については同感ですが」

神娘「そういった奴は信用ならぬからな」

男「では、私は信用に足るというわけですか」

神娘「人間自体信用できん」フン

男「望みがありませぬ」ガクン

神娘「そもそも色欲以前にお前はもっと働け。働かぬ奴はもてぬ」

男「おかしいですね、こんなに真面目なのに」

神娘「…もう何度その点に突っ込めばいいのだ」

男「うん、そうだ。世の女性の見る目がないのです。そうに違いない」

神娘「そうやって周りのせいにしていれば楽であろうな」

男「今日はやたらと攻撃的ですね」
93: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:39:19 ID:Jn8a761Fdk
男「しかし、やはり今日の神様は少し変です」

神娘「喧嘩を売っているのか?」

男「いえ、そういったつもりでは…」

男「元気がないだけでなく、村のことを気に掛けてくださるとは。勿論ありがたいのですが」

神娘「気に掛けるなど…そんなつもりはない」

男「何かおありなのでは?お話しいただけませんか」

神娘「…」

神娘「…近頃昔の夢をよく見るのだ」

男「夢、ですか…」

神娘「そうだ。少々思い出したくない事でな。辟易しておる」

男「何かお辛い事があったのでしょうか」

神娘「…うむ」

男「私でよろしければお話をお聞きしますが」

神娘「…ん」

神娘「いや、いい。お前に話しても仕方ない事だ」

男「そうですか」

神娘(いかんな。不意に縋りたくなってしまう)
94: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:52:27 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…」ボーッ

男「神様〜」ザッ

神娘「…」ボーッ

男「神様?」

神娘「ん、お、おう。来ていたのか」

男「やはりお疲れのご様子で…」

神娘「い、いや、そうではない。考え事をしていただけだ」

男「はあ…あ、それより神様。また川へ魚を捕りに行って参りました」

神娘「そうか」

男「そうしたらこんなものが網に引っかかりまして」

神娘「ん?」

ビチビチッ

神娘「これは鰻ではないか」

男「はい」

神娘「珍しいものが捕れたな」

男「鰻は疲れに効くと聞きます。神様に召し上がっていただきたくお持ちしました」

神娘「お前…」ジーン

神娘「ふ、ふん。なんだ、気が効くな。たまには褒めてや…」

男「さあ神様、お召し上がりください」グイッ

神娘「踊り食い…だと!?」
95: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:53:30 ID:2D9GO7t/YM
男「神様…ぬるぬるして掴みづらいのですから早く…っ」ビチビチッ

神娘「馬鹿かお前!いったんしまえ!」

男「そ、そんなこと言いましてもこいつが暴れて…」

神娘「褒めようとした矢先に…ええい、近付けるなっ!」

スルッ

男「あっ」

神娘「わわっ!」キャッチ

神娘「きゅ、急にこっちに寄越すな!」

男「神様!今です!」

神娘「今ですじゃない!とにかくしまうから早くその籠を…」

ビチビチッ

神娘「うわわっ!?」スルルッ

男「あっ、神様の服の中に…」

神娘「ちょっ…中で暴れて…っ」

神娘「わははっ!く、くすぐったい!」ジタバタ

男「わあ、絵的にまずい事に」

神娘「お、おいっ!早くこいつを取り出せ!」バタバタ

男「え〜っと…よろしいので?」

神娘「い、いや待て!やはり自分で何とかする!」アセッ

男「無念」チッ
96: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:54:15 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…散々な目に遭った」ゲッソリ

男「おいたわしや。不届き者の鰻のせいで…」

神娘「お前のせいだ、愚か者」

男「面目ありません」

神娘「…山神め、何が活き活きだ。こやつが来るたび疲れるだけだ…」ブツブツ

男「えっ、何か言いましたか?」

神娘「独り言だ」

神娘「だいいち、鰻は生では毒があるのだぞ。踊り食いなぞできぬ」

男「そうなのですか」

神娘「本当にわざとやってるんじゃないだろうな、お前」

男「滅相もございません」

男「しかし、そんな毒ごとき神様は大丈夫なのでは?」

神娘「この下界におる間、私の体質はお前たちとさほど変わらぬ」

神娘「毒にあたれば腹も壊すし、怪我もする。まあ流石に死にはせんがな」

男「衝撃の事実」

神娘「不便なものだ、まったく」

神娘「人間に化けねば下界に適応できぬとは…」

男「えっ」

神娘「あっ」
97: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:55:37 ID:2D9GO7t/YM
男「神様のそのお姿は、本来のものではないのですか?」

神娘「しまった…また口を滑らせた」

男「神様」

神娘「ええい、いいか。この程度なら…」

神娘「そうだ。人間の姿を模しているだけだぞ」

男「神様にもそのような能力が」

神娘「神本来の姿では下界におれぬ。天界と環境があまりにも違うからな」

男「興味深い話です」

神娘「またいらぬことを聞かせてしまった。これ以上は話せん」

男「そうですか」

男「ちなみに、人間以外の姿に化ける事も?」

神娘「…言うと思ったわ」

神娘「だが、私にはその能力はない。この人間の姿を保つので精一杯だ」

男「なんだ。残念です」

神娘「狸や狐の類ではないのだぞ」

男「しかし神様の本来のお姿とは如何なるものなのか…」

神娘「人間ごときが目にできるものではない。諦めろ」
98: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:56:31 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミン…

神娘「ん?」

ミーンミンミン…

ジジジ…

神娘「おお、蝉か」

神娘(この声を聞くと夏という感じがする)

神娘(ろくに外に出れぬから、この暑さ以外に夏らしさを感じれなかったからな)

ミーンミンミン

神娘「……」

ミーンミンミン…



……………

『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』

「ん?おお、蝉か。よく捕れたな」

『えへへ、すごいでしょ!』

「うむ、すごいぞ。だがもう放してやれ」

『えっ。もったいないよ』

「蝉はお前たちよりずっと短い間しか生きれぬ」

「その間くらいは、自由に飛び回らせてやってほしいのだ」

『むぅ〜…』

「な?」

『…分かった』パッ
99: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:07 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミン…

『ばいばい、蝉さん!』フリフリ

「よしよし。良い子だ」ナデナデ

『えへへ〜』

『ね、ね、神様って優しい人だよね!』

「ん?優しい…?」

『うん!私、神様みたいな人になる!』

「わはは、そうかそうか。ならばこれからも良い手本にならねばな」

『神様、これからも私たちと遊んでね!』

「ああ。お前たちが望む限り、私はお前たちと共に在る」



「…これからも、共に」





神娘「っ!」ズキッ

ミーンミンミン…

神娘「っ、ふぅ…」

神娘(まただ。また不意に思い出してしまった)

神娘(最近はそのたび、頭や胸が痛む)

神娘「ふふっ、とうとう私もおかしくなり始めたかな?」

ミーンミンミン…
100: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:46 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…懐かしい気分になるな」

男「小さい頃はよく追いかけたものです」

神娘「そうか」

男「逃げられ際に小水をかけられた事もありました」

神娘「わはは。よくあるな、それは…」




神娘「…ってお前、いつの間に入ってきたのだ」

男「あれ、とっくに気付いておられるかと思いました」

神娘「せっかく何とも言えぬ気分に浸っていたところだったのに」フゥ

男「あっ、どうぞ私にお構いなく」

神娘「またすぐに余計な事を話し出すくせに」

男「そのような野暮な事は致しません」

神娘「ふぅん、それならば少し黙っておれ。というか出ていけ」

男「出ては行きませんが、静かにはしております」

神娘「こやつ……まあいい」
101: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:58:51 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミー…



「……」



ミーンミンミン…



「……」



ミーンミンミン…



ミーンミンミン…





「…なあ」





「はい?」





神娘「お前が本当に静かにしておると気持ちが悪いな」

男「ひどい」
102: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:59:29 ID:2D9GO7t/YM
神娘「いつものように、どうでも良い事をべらべらと喋れ」

男「神様が静かにしろと仰ったのに」

神娘「うるさい。何でもいいから早く…っ」

男「…神様?」

神娘「私の…っ、気を……紛らわせろ…っ」ポロポロ

男「ど、どうかされましたか!?」アセッ

神娘「うぅ…ぐぅぅ…」ポロポロ

男「神様…」



神娘「思い出したくなかったのに…っ」

神娘「忘れたままでいたかったのに…!」ギリッ

神娘「最近になって思い出してしまうのだ…今までお前たちへの嫌悪で包まれていた思い出を…っ」

男「……」

神娘「今になって…!」ポロッ

神娘「何故こうも輝いて見えてしまうのだ…!」ポロポロッ

男「…神様」

男「誰しも抱えた想いに押し潰され、涙が溢れる事はよくあります」

男「私はここにおります故、存分に吐き出してください」

神娘「うぅ…っ、うあぁぁ……」ポロポロ

男「……」
103: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 12:00:50 ID:2D9GO7t/YM
神娘「……」グスッ

男「落ち着かれましたか」

神娘「…見苦しいところを見せた」

男「いえ、そのような」

神娘「最近はよく眠れぬ。少し気が弱っていたようだ」

男「そのような神様も悪くはありませんでした」

神娘「やかましい。すぐに忘れろ」

男「尽力致します」

神娘(だが、もう放ってはおけぬ)

神娘(このままでは回復どころではないからな)

神娘(しかしこの胸にある濃霧のような蟠り、どう晴らせばよいのだ…)



『…機会があればまた私の山にいらっしゃいな』



神娘(…あまり気は進まぬが)

神娘(この事態を引き起こした張本人に、策を講じてもらおうか)

神娘(だが、どうやってあそこまで……)

男「神様?何を思い詰めたお顔を…」

神娘「……」ジーッ

男「えっ、どうされました?私の顔などを見て…」

神娘「…おい、お前」

男「はい?」

神娘「頼みがあるのだが」
104: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:08:00 ID:2D9GO7t/YM
数日後ー

バタバタ…

神娘「……」

男「ふう、神様。準備が整いました」

神娘「そうか。ご苦労」

男「それでは参りましょうか」

神娘「うむ」



男「よっと」オンブ

神娘「…自分で歩けぬ故、文句も言えんがあまり良い心持ちではないな」オブラレ

男「まあまあ、少しの辛抱ですよ」

神娘「しかしお前、細い身体だな。これで力仕事などできるのか?」

男「ははっ、ご心配なく。しっかりやれております」

男「神様こそ軽うございますね」

神娘「ふん。私がこんな華奢な体に化けていて良かったな」

男「そうですね。背中に膨らみも感じられないのが残念ですが」

神娘「…」ギュ−ッ

男「いだだっ!無言で抓らないでください!」
105: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:08:34 ID:2D9GO7t/YM
牛「モー」

神娘「おお、なかなか立派な牛だな」

男「私の村で一番の力持ちです」

神娘「大丈夫だったのか?連れ出して」

男「他にも牛はいますし、私は村の者からも信用されていますから」

神娘「やはりそれが解せぬ」

男「それに、神様の頼みとあれば聞かぬわけには参りません」

神娘「それはありがた……いや、当然だなっ」フンッ

男「では少し狭いですが、後ろの牛車に乗っていただきます。よっと…」モチアゲ

神娘「うむ」トスッ



男「さてと…準備はよろしいですか?」

神娘「おう、出してくれ」

男「はい。行くぞっ」

牛「ンモーッ」

ガラガラ…
106: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:09:10 ID:2D9GO7t/YM
ガラガラッ

神娘「うわわ、揺れるな…」グラグラ

男「申し訳ありません。あのままおぶって行ってもよかったのですが…」

神娘「それは私が勘弁してほしいぞ」

男「となりますと、これしか用意できませんでしたので御容赦ください」

神娘「仕方ない」

男「しかし驚きました。急にあの洞窟から連れ出せ、などと…」

神娘「どうしても行かねばならぬ場所なのだ」

男「それが例の山ですか」

神娘「うむ」

男「場所も知りませんし、どれほどかかるかも分かりませんが…」

神娘「構わぬ。急ぎの旅ではないし、道案内は任せろ」

男「はい。それでは酔わないようお願いします」

神娘「うむ…それは善処する」

神娘(すでに多少危ういが…)ウプ
107: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:09:57 ID:2D9GO7t/YM
ガラガラッ

男「神様」

神娘「ん?」

男「その山には何があるのですか?」

神娘「…仔細は聞くな、と言った筈だ」

男「神様を疑うわけではございませんが…」

神娘「…」

男「得体の知れぬ場所にはあまり行きたくないのが本音でございます」

神娘「途中で気が変わるかもしれんと?」

男「そうは言いませんが…」

神娘「分かったよ、お前の気持ちは分からんでもない」

神娘「案ずるな、古い友人に会いに行くだけだ」

男「なんと。意外にも神様に御友人が…」

神娘「一言多いわ」

男「その方に会えば、神様のお悩みも晴れるのでしょうか?」

神娘「ん…正直分からぬ。頼りにはなるが」

神娘「少なくともお前に害のある奴ではない。故に安心して連れて行け」

男「そうですか。それだけ聞ければ…十分です」
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名前:
sage:


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うpろだ
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