サシャ「隠し味なんてどうでしょう?」
Part4
71 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:43:15 ID:VJymVjfI
マルコ「アニが行かないから、えっと……コニーとジャンは行っていいよ。ミカサはダメ」
ミカサ「……なんと」
ジャン「えっ? ミカサは行かねえのか? おいマルコ、やっぱり俺もパスーー」
コニー「よーし行くぞジャン! 雪下ろしだー!」ガシッ
ジャン「引っ張るんじゃねえよ服が伸びるだろうが! おい! 放せえええええええええ!!」ズルズル...
ミカサ「マルコ。どうして私は行ってはダメなの? アニがいないから?」
アニ「さりげなく私のせいにしないで」
マルコ「違うよ。アニがいてもミカサは登れないんだ」
ミカサ「ちゃんと説明してほしい。このままでは納得できない」
ライナー「女子が行っちゃいけないなら、サシャだって行けないはずだろ。何か理由があるんだよな?」
72 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:44:04 ID:VJymVjfI
マルコ「……」
アルミン「? マルコ? どうしたの?」
ベルトルト「もしかして、言いづらいこと?」
マルコ「……男子寮は、古いんだ。もう随分と手が入ってない」
アニ「いきなり何の話?」
マルコ「隙間風は入るし雨漏りはするし、寮の至る所で軋む音が聞こえるけど、寝るには不都合がないんだから別にいいじゃないかって、予算はいつも駆逐されてきた」
ライナー「なんだマルコ、はっきり言え」
マルコ「僕が言ったんじゃないんだ。僕のせいじゃないんだ、全部教官のせいなんだ。それをわかった上で聞いてほしい」
ミカサ「マルコ。言って」
マルコ「……重量制限だ」ボソッ
73 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:44:48 ID:VJymVjfI
ミカサ「……」
ミカサ「……」ジワッ...
ライナー「おっ、おいミカサ? どうした?」オロオロ
アニ「ちょっと大丈夫?」オロオロ
ミカサ「……平気。気にしてない。これは魂の汗。大丈夫」
ベルトルト「魂の汗っていうか……なんていうか……」
アルミン「みっ、ミカサ、ちょっとあっち行こうか。あったかいし」
ミカサ「気にしてない……ので、平気…………………………」グスッ
アルミン「ほ、ほら、あっちでクリスタとミーナが火をおこしてるからさ、行こうよ。ねっ? あったまりに行こう? 僕が右手繋いであげるから」グイッ
アニ「そうだよ、私もついてってあげるから。ほら行こう? 私は左ね?」グイッ
ミカサ「……うん」ズルズル...
74 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:45:28 ID:VJymVjfI
ライナー「……」
ベルトルト「……」
マルコ「……」
ライナー「マルコォッ!! お前頭がいいんだからもうちょっと言い様があっただろう!?」
ベルトルト「そうだよ!! いくらミカサでも傷つくよ!!」
マルコ「そんなこと言われたって、他になんて言えばよかったんだ!!」
ライナー「身長制限とかもう少し他のぼかし方があるだろうが!」
マルコ「ダメだよ、それだとジャンも行けなくなっちゃうだろ!?」
ベルトルト「ジャンはミカサが行けないって知ったら嫌がってたじゃないか! どうして無理矢理行かせたの!?」
マルコ「じゃあ逆に聞くけどさ。ーージャンがいないと、屋根の上はどうなると思う?」
ライナー「……あー、なるほど」
ベルトルト「そういうことね」
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:46:08 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
エレン「うっ、うおおおおおお……!」ワクワクワクワク
コニー「屋根の上って見晴らしいいなー! すげー!」
ジャン「これくらいの高さなら、いつも立体機動で飛んでんだろうが」
サシャ「ジャンはわかってませんねえ、この視点で訓練所を見下ろすっていうのがまた新鮮でいいんですよ!」
ジャン「ああそうかよ。ーーそれよりお前ら命綱結んだか? 今のうちに確認しとけよ」ゴソゴソ
コニー「結んだ!」
サシャ「結びました!」
エレン「準備万端だぜ! ーーよしっ、下ろすか!」
コニー「おうっ!」
サシャ「やりましょう!」
ジャン「ちょっと待て。……この中で雪下ろしやったことある奴はいるか?」
76 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:46:53 ID:VJymVjfI
サシャ「……」チラッ
コニー「……」チラッ
エレン「……」チラッ
ジャン「おいおい……エレンもねえのかよ」ハァ
エレン「シガンシナ区じゃそんなに雪降らなかったからな。開拓地は屋根の高い建物なんてなかったしよ」
ジャン「トロスト区だって滅多にここまで降らねえよ。……仕方ねえな、俺も見よう見まねで覚えたからあまり詳しくねえがーー」
サシャ「積もりましたもんねー」ヒョイ
コニー「だよなー。山の中みてえ」ヒョイ
ジャン「だあああああっ!! 馬鹿二人危ねえよ、端に行き過ぎだ!」グイッ
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:47:43 ID:VJymVjfI
ジャン「ったく、いいか? まず雪下ろしをする時は『上から下に』が基本だ。必要以上に軒先に近づくな」
コニー「どこから下ろしても同じじゃねえの?」
ジャン「低い場所から始めたら、万が一落ちた時地面に叩きつけられることになるだろ。上からやればそれまで下ろした雪がクッションになる。最悪滑って落ちても骨折くらいで済むかもな」
エレン「おおー……頭いいな、ジャン」
ジャン「……馬鹿にしてんのか?」
エレン「いや、普通に感動した」
ジャン「……今日は晴れてるからな。午前中とはいえ雪が緩んでるかもしれねえ。ちゃんと足元の音を聞け。特にそこの馬鹿二人は耳はいいんだからよ」
サシャ「はーい」
コニー「おう、聞く聞く」
ジャン「それと、全部下ろすんじゃなくて少しだけ残して足場にしろ。そのほうが滑りにくいからな」
サシャ「少しってどれくらいですか?」
ジャン「今やってやるからちゃんと見てろ」ザクザク
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:48:46 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
クリスタ「……ジャンが何か説明してる」
ユミル「キルシュタイン先生の青空教室だなー」ケケケ
アニ「女子でもう一人くらい登ったほうがよかったかもね。……私は嫌だけど」
ミーナ「うーん……私はどちらかと言えば行きたかったんだけど、他の人たちの足引っ張っちゃいそうなんだよねー」
ユミル「私はパス。下手に登って怪我したくねえし。クリスタは保護者権限で拒否権発動だ」
クリスタ「私は行きたいって言ったのに、ユミルってば」ブーブー
ミカサ「ーー私は、行きたかった」
一同「……」
ミカサ「とても、行きたかった……」グスッ
アルミン「ほらミカサ、一緒にエレンを応援しよ? ね?」ナデナデ
79 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:49:31 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
エレン「教官の闇討ちがないから気楽にできていいよな。雪下ろしって」ザクザク
ジャン「教官が『やれ』って言ったのに邪魔してきたら理不尽すぎるだろ」ザクザク
サシャ「でも、なんで雪かきとか雪下ろしって必要なんですかねー」ザクザク
コニー「だよなー。俺の村じゃやらなかったぞ」ザクザク
ジャン「山の中だって多少はやるだろうが。雪で道が塞がって、近くの村や町と連絡が取れなくなったらまずいだろ?」
サシャ「確かに冬の備蓄の燻製だけじゃ口が寂しいですもんね。パンは定期的に買いに行かないと手に入りませんし」グー...
ジャン「そうだな。お前の腹もそう言ってるしな」
サシャ「……あっ」
サシャ(あああああ、また食べ物の話題……! しかもお腹の音とセットだなんて、恥ずかしい……!)ザクザクザクザク
コニー「おーっ、サシャ早いなー。よーし俺も負けねえぞ!」ザクザク
エレン「俺もだ! やるぞぉー!」ザクザク
80 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:50:11 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
ミカサ「ああっ、エレン……! そんなに軒先に近づいては危ない……!」ドキドキ
ベルトルト「コニー、本当に大丈夫かな……」ハラハラ
ライナー「そんな端に立つんじゃない、サシャ……!」アセアセ
マルコ「ジャン、頑張って……!」グッ
ユミル「子どもを心配する親かお前らは」
ライナー「ならユミル。……あそこにクリスタが登ってると考えてみろ」
ユミル「クリスタが……?」
ユミル「……」
ユミル「クリスタぁっ! 今行くぞ待ってろぉっ!!」ダッ
クリスタ「ユミル!? 私ここだよ!?」ダッ
ミーナ「あったかいねー」ホカホカ
アニ「……ね」ホカホカ
81 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:50:58 ID:VJymVjfI
ーー しばらく後 男子寮 屋根の上
ジャン「よーし、こんなもんだろ」
エレン「結構時間かかったな。そろそろ昼だ」
コニー「思ったより範囲広かったからなー。……あー、腹減った」
ジャン「そろそろ下に降りるか。お前ら先に行っていいぞ」
コニー「おう! じゃあ俺いっちばーん!」
エレン「じゃあ次は俺が降りるな。……今日は色々教えてくれてありがとな、ジャン」
ジャン「……」
エレン「? なんだよ、変な顔して」
ジャン「……お前からそんなこと言われると気持ち悪いな」
エレン「あぁっ? んだよ、人がせっかく礼言ってるのに!」イラッ
ジャン「第一お前のためなんかじゃねえよ、全部ミカサのためだからな! ーー訓練ならともかく、雪下ろしで死んだら馬鹿らしいしよ」
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:51:38 ID:VJymVjfI
コニー「そうだサシャ、降りたら寮からみかん取ってきてやるよ。本当は夜の自由時間に持ってこうと思ってたんだけど、ちょうど今全員いるしな」
サシャ「……どうも」
ジャン「なんだ、嬉しくねえのか? ていうか座り込んでないでとっとと降りろよ」
サシャ「お腹が空いて動けません……」グッタリ
ジャン「……お前さっきまで走り回ってただろうが」
エレン「ジャン、サシャは風邪引いてるんだ。無理させちゃいけねえよ」
ジャン「風邪っぴきなら雪下ろしなんて重労働に志願してんじゃねえよ。それこそ一番に降りろ」
サシャ「……私、最後に降ります」
ジャン「ああ?」
サシャ「今……ちょっと、下に行きづらいので」
ジャン「……コニー、エレン。先行ってていいぞ」
エレン「おう、じゃあまた後でな」
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:52:31 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
コニー「あっちー、疲れた疲れた!」バッサバッサ
ベルトルト「コニー、ほらタオルだよ。上着は預かっててあげるから、これで身体拭いて」
コニー「おう、ありがとなー。……ん? クリスタとユミルは?」フキフキ
マルコ「そういえば、まだ戻ってきてないな……コニーは二人とすれ違ったりしなかった?」
コニー「いいや、見てないぜ。……あっ、そうだアルミン、黄金って売りさばくにはどうしたらいいんだ? 市場にそのまま持っていけばいいのか?」
アルミン「市場にそのまま持って行っちゃえば混乱すると思うけど……なんでクリスタたちの話から突然黄金の話になったの?」
コニー「それはなーージャンの目から黄金が出るからだ!」キリッ
ミカサ「……それは病気なのでは?」
アルミン「コニー、脈絡って言葉を知ってる?」
アルミン(目から黄金かぁ……いったい何の話を勘違いしたのかな……)
84 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:53:37 ID:VJymVjfI
エレン「おーっす、みんなお疲れー」パタパタ
ミーナ「お疲れさまー」
ミカサ「エレン、まずは上着を脱いで汗を拭いて。そしてこの白湯を飲むといい。少し冷ましておいたからすぐ飲めると思う」テキパキテキパキ
エレン「いいって、自分でやるよ。タオル寄こせ」
アニ「……ねえ、ジャンとサシャは? いないみたいだけど」キョロキョロ
エレン「あいつらならまだ上で何か話してるぞ。二人きりで」
ライナー「……ほう」
コニー「あっ、そうだ! 俺みかん取ってこないと」ダッ
ベルトルト「コニー! タオルは上着と交換するために渡したんじゃないよ! 上着は着てよ! ねえ!!」ダッ
85 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:54:38 ID:VJymVjfI
ーー 同刻 男子寮 屋根の上
ジャン「……」
サシャ「……」
ジャン「降りろ」
サシャ「嫌です。ジャンがお先にどうぞ」
ジャン「断る。お前を置いて俺が先に降りたら、俺がお前の保護者連中に袋叩きにされちまうからな」
サシャ「それは……かわいそうですね。ジャンが」
ジャン「そう思うなら下に行けよ」
サシャ「それは……その……」モジモジ
ジャン「……あのなぁ、そうやって先延ばしにしておいてもいいことなんかねえぞ。本当に降りられなくなっちまう前にさっさと行けって」
サシャ「……でも」
ジャン「でもじゃねえよ。うだうだしてるとタイミングを逃しちまうぞ。……いっそ言っとけばよかったって、俺は今まで何度思ったことか」
サシャ「……ジャンだって、タイミング逃してばっかりじゃないですか」
86 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:55:23 ID:VJymVjfI
ジャン「俺のことは別にいいんだよ。どうせ無理だってとっくの昔にわかっちまったし……高望みはしてねえよ」
ジャン「俺はミカサの笑う顔が見られるなら、それで充分だ。……本当は俺が笑わせられたら一番なんだけどな」
サシャ「……ミカサは幸せ者ですね」
ジャン「お前もある意味幸せ者だろ。なんでもかんでも食い物に繋げちまう思考はお花畑そのものだよな」
サシャ「……それを直したいんですよ」ボソッ
ジャン「らしくねえことはやめとけよ。……ほら、コニーがみかん引っ提げて下で待ってるぞ」
サシャ「そうでした!! みかん!!」スクッ
ジャン「やっぱり直す気ねえだろ、お前」
サシャ「……ああーっ!」ジタバタジタバタ
ジャン「……面倒くせえな。俺は先に降りるから、気が済んだら戻って来いよー」スタスタ...
87 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:56:01 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の下
ジャン「あーあ、いらねえ世話焼いちまったなー……」ブツブツ
ミカサ「……ジャン。ちょっといい?」タタタッ
ジャン「! ……ミカサか。どうした?」
ミカサ「エレンに雪下ろしのやり方を教えてくれてありがとう。タオルと白湯を用意しておいたので、よかったらどうぞ」スッ
ジャン「……お、おお、おう、ありがとよ」
ジャン(手渡し……!! ミカサが、俺のためだけに用意してくれたタオルを、手渡し……!!)ドキドキ
ミカサ「……」ジッ...
ジャン「……? なんだミカサ、何か他に用でもーー」
ミカサ「東洋には、『病は気から』ということわざがある。どんな病でも、気の持ちようで改善することがある」
ジャン「? それがどうした?」
ミカサ「私は心配しかできないけれど……お大事に。それだけ」
ジャン「?? おう、どうも……?」
88 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:56:45 ID:VJymVjfI
ライナー「お疲れ、ジャン。ーーサシャは?」
ジャン「ライナーか。……まだ上にいるぞ。降りたくねえんだと」
ライナー「……連れ戻してくるか」ハァ
コニー「おーい、みかん持ってきたぞー! ーーん? サシャはどこ行った?」キョロキョロ
ミカサ「まだ上にいる。……らしい」
コニー「なんだよ、せっかくみかん持ってきたのによー」ブーブー
ライナー「コニー、よかったら一つもらってもいいか? サシャに渡してくる」
コニー「あいよ。ーーほれっ」シュッ
ライナー「よっと。……ん? コニー、俺は一つって言ったんだが」パシッ
コニー「ああ、間違ってねえよ。一人一つだろ?」
ライナー「……なるほどな。ありがたくもらっとく」
コニー「おう! サシャが降りてきたら後で宝探しやろうぜ! ここで待ってるからよ!」フリフリ
89 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:57:40 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
サシャ「……」グ-
サシャ(お腹空いた……)ガジガジ
ライナー「ーーおい、シャベルは食うなよ」
サシャ「! ……ライナー」
ライナー「よお。屋根の上は風が強いな」スタスタ...
サシャ「……」
ライナー「膝抱えてどうした? 動けないのか?」
サシャ「……もうちょっと、立ち直るまで時間ください」
ライナー「そうか、わかった。……隣いいか?」
サシャ「……どうぞ」
ライナー「どうも」スッ
90 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:58:56 ID:VJymVjfI
ライナー「お前、よくこんな寒いところに黙っていられるな」ブルッ
サシャ「……寒いの、得意なので」
ライナー「得意なのはわかった。だが、汗も拭かないでこんなところにいるのは感心しないな」
サシャ「……ごめんなさい」
ライナー「いや、俺もタオル持ってきてやるの忘れたからな。おあいこって言えばそうなんだがーー」チラッ
サシャ「……」
ライナー「……あー、まあなんだ。冷える前に下に降りないか?」
サシャ「……」
ライナー「……」ボリボリ
サシャ「……ライナーは、自分がなんなのかわからなくなる時ってありますか?」
ライナー「……たまにあるな」
サシャ「私、今はそういう状態です」
91 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:59:31 ID:VJymVjfI
サシャ「……私は、犬じゃありません」
ライナー「そうだな、そりゃそうだ。見ればわかるぞ」
サシャ「さっきまで、私も思ってました。でも今は自信がないです」
ライナー「なんだそりゃ。誰かにそうやって言われたのか?」
サシャ「……私、口を開けば食べ物の話ばかりだって、最近気がつきました」
ライナー「それくらい、腹が減ってたら当たり前だろ」
サシャ「人間誰しもお腹が空くんです。でもそういうの、我慢できる人は世の中にたくさんいます。我慢できないのは人じゃなくて獣です」
ライナー「そうか、犬なのか……」
サシャ「私、なんでいつもこうなんでしょう……」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「お手」スッ
サシャ「……わん」ポン
ライナー「よしよし、いい子だな」ナデナデ
マルコ「アニが行かないから、えっと……コニーとジャンは行っていいよ。ミカサはダメ」
ミカサ「……なんと」
ジャン「えっ? ミカサは行かねえのか? おいマルコ、やっぱり俺もパスーー」
コニー「よーし行くぞジャン! 雪下ろしだー!」ガシッ
ジャン「引っ張るんじゃねえよ服が伸びるだろうが! おい! 放せえええええええええ!!」ズルズル...
ミカサ「マルコ。どうして私は行ってはダメなの? アニがいないから?」
アニ「さりげなく私のせいにしないで」
マルコ「違うよ。アニがいてもミカサは登れないんだ」
ミカサ「ちゃんと説明してほしい。このままでは納得できない」
ライナー「女子が行っちゃいけないなら、サシャだって行けないはずだろ。何か理由があるんだよな?」
72 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:44:04 ID:VJymVjfI
マルコ「……」
アルミン「? マルコ? どうしたの?」
ベルトルト「もしかして、言いづらいこと?」
マルコ「……男子寮は、古いんだ。もう随分と手が入ってない」
アニ「いきなり何の話?」
マルコ「隙間風は入るし雨漏りはするし、寮の至る所で軋む音が聞こえるけど、寝るには不都合がないんだから別にいいじゃないかって、予算はいつも駆逐されてきた」
ライナー「なんだマルコ、はっきり言え」
マルコ「僕が言ったんじゃないんだ。僕のせいじゃないんだ、全部教官のせいなんだ。それをわかった上で聞いてほしい」
ミカサ「マルコ。言って」
マルコ「……重量制限だ」ボソッ
73 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:44:48 ID:VJymVjfI
ミカサ「……」
ミカサ「……」ジワッ...
ライナー「おっ、おいミカサ? どうした?」オロオロ
アニ「ちょっと大丈夫?」オロオロ
ミカサ「……平気。気にしてない。これは魂の汗。大丈夫」
ベルトルト「魂の汗っていうか……なんていうか……」
アルミン「みっ、ミカサ、ちょっとあっち行こうか。あったかいし」
ミカサ「気にしてない……ので、平気…………………………」グスッ
アルミン「ほ、ほら、あっちでクリスタとミーナが火をおこしてるからさ、行こうよ。ねっ? あったまりに行こう? 僕が右手繋いであげるから」グイッ
アニ「そうだよ、私もついてってあげるから。ほら行こう? 私は左ね?」グイッ
ミカサ「……うん」ズルズル...
74 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:45:28 ID:VJymVjfI
ライナー「……」
ベルトルト「……」
マルコ「……」
ライナー「マルコォッ!! お前頭がいいんだからもうちょっと言い様があっただろう!?」
ベルトルト「そうだよ!! いくらミカサでも傷つくよ!!」
マルコ「そんなこと言われたって、他になんて言えばよかったんだ!!」
ライナー「身長制限とかもう少し他のぼかし方があるだろうが!」
マルコ「ダメだよ、それだとジャンも行けなくなっちゃうだろ!?」
ベルトルト「ジャンはミカサが行けないって知ったら嫌がってたじゃないか! どうして無理矢理行かせたの!?」
マルコ「じゃあ逆に聞くけどさ。ーージャンがいないと、屋根の上はどうなると思う?」
ライナー「……あー、なるほど」
ベルトルト「そういうことね」
75 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:46:08 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
エレン「うっ、うおおおおおお……!」ワクワクワクワク
コニー「屋根の上って見晴らしいいなー! すげー!」
ジャン「これくらいの高さなら、いつも立体機動で飛んでんだろうが」
サシャ「ジャンはわかってませんねえ、この視点で訓練所を見下ろすっていうのがまた新鮮でいいんですよ!」
ジャン「ああそうかよ。ーーそれよりお前ら命綱結んだか? 今のうちに確認しとけよ」ゴソゴソ
コニー「結んだ!」
サシャ「結びました!」
エレン「準備万端だぜ! ーーよしっ、下ろすか!」
コニー「おうっ!」
サシャ「やりましょう!」
ジャン「ちょっと待て。……この中で雪下ろしやったことある奴はいるか?」
サシャ「……」チラッ
コニー「……」チラッ
エレン「……」チラッ
ジャン「おいおい……エレンもねえのかよ」ハァ
エレン「シガンシナ区じゃそんなに雪降らなかったからな。開拓地は屋根の高い建物なんてなかったしよ」
ジャン「トロスト区だって滅多にここまで降らねえよ。……仕方ねえな、俺も見よう見まねで覚えたからあまり詳しくねえがーー」
サシャ「積もりましたもんねー」ヒョイ
コニー「だよなー。山の中みてえ」ヒョイ
ジャン「だあああああっ!! 馬鹿二人危ねえよ、端に行き過ぎだ!」グイッ
77 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:47:43 ID:VJymVjfI
ジャン「ったく、いいか? まず雪下ろしをする時は『上から下に』が基本だ。必要以上に軒先に近づくな」
コニー「どこから下ろしても同じじゃねえの?」
ジャン「低い場所から始めたら、万が一落ちた時地面に叩きつけられることになるだろ。上からやればそれまで下ろした雪がクッションになる。最悪滑って落ちても骨折くらいで済むかもな」
エレン「おおー……頭いいな、ジャン」
ジャン「……馬鹿にしてんのか?」
エレン「いや、普通に感動した」
ジャン「……今日は晴れてるからな。午前中とはいえ雪が緩んでるかもしれねえ。ちゃんと足元の音を聞け。特にそこの馬鹿二人は耳はいいんだからよ」
サシャ「はーい」
コニー「おう、聞く聞く」
ジャン「それと、全部下ろすんじゃなくて少しだけ残して足場にしろ。そのほうが滑りにくいからな」
サシャ「少しってどれくらいですか?」
ジャン「今やってやるからちゃんと見てろ」ザクザク
78 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:48:46 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
クリスタ「……ジャンが何か説明してる」
ユミル「キルシュタイン先生の青空教室だなー」ケケケ
アニ「女子でもう一人くらい登ったほうがよかったかもね。……私は嫌だけど」
ミーナ「うーん……私はどちらかと言えば行きたかったんだけど、他の人たちの足引っ張っちゃいそうなんだよねー」
ユミル「私はパス。下手に登って怪我したくねえし。クリスタは保護者権限で拒否権発動だ」
クリスタ「私は行きたいって言ったのに、ユミルってば」ブーブー
ミカサ「ーー私は、行きたかった」
一同「……」
ミカサ「とても、行きたかった……」グスッ
アルミン「ほらミカサ、一緒にエレンを応援しよ? ね?」ナデナデ
79 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:49:31 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
エレン「教官の闇討ちがないから気楽にできていいよな。雪下ろしって」ザクザク
ジャン「教官が『やれ』って言ったのに邪魔してきたら理不尽すぎるだろ」ザクザク
サシャ「でも、なんで雪かきとか雪下ろしって必要なんですかねー」ザクザク
コニー「だよなー。俺の村じゃやらなかったぞ」ザクザク
ジャン「山の中だって多少はやるだろうが。雪で道が塞がって、近くの村や町と連絡が取れなくなったらまずいだろ?」
サシャ「確かに冬の備蓄の燻製だけじゃ口が寂しいですもんね。パンは定期的に買いに行かないと手に入りませんし」グー...
ジャン「そうだな。お前の腹もそう言ってるしな」
サシャ「……あっ」
サシャ(あああああ、また食べ物の話題……! しかもお腹の音とセットだなんて、恥ずかしい……!)ザクザクザクザク
コニー「おーっ、サシャ早いなー。よーし俺も負けねえぞ!」ザクザク
エレン「俺もだ! やるぞぉー!」ザクザク
80 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:50:11 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
ミカサ「ああっ、エレン……! そんなに軒先に近づいては危ない……!」ドキドキ
ベルトルト「コニー、本当に大丈夫かな……」ハラハラ
ライナー「そんな端に立つんじゃない、サシャ……!」アセアセ
マルコ「ジャン、頑張って……!」グッ
ユミル「子どもを心配する親かお前らは」
ライナー「ならユミル。……あそこにクリスタが登ってると考えてみろ」
ユミル「クリスタが……?」
ユミル「……」
ユミル「クリスタぁっ! 今行くぞ待ってろぉっ!!」ダッ
クリスタ「ユミル!? 私ここだよ!?」ダッ
ミーナ「あったかいねー」ホカホカ
アニ「……ね」ホカホカ
81 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:50:58 ID:VJymVjfI
ーー しばらく後 男子寮 屋根の上
ジャン「よーし、こんなもんだろ」
エレン「結構時間かかったな。そろそろ昼だ」
コニー「思ったより範囲広かったからなー。……あー、腹減った」
ジャン「そろそろ下に降りるか。お前ら先に行っていいぞ」
コニー「おう! じゃあ俺いっちばーん!」
エレン「じゃあ次は俺が降りるな。……今日は色々教えてくれてありがとな、ジャン」
ジャン「……」
エレン「? なんだよ、変な顔して」
ジャン「……お前からそんなこと言われると気持ち悪いな」
エレン「あぁっ? んだよ、人がせっかく礼言ってるのに!」イラッ
ジャン「第一お前のためなんかじゃねえよ、全部ミカサのためだからな! ーー訓練ならともかく、雪下ろしで死んだら馬鹿らしいしよ」
82 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:51:38 ID:VJymVjfI
コニー「そうだサシャ、降りたら寮からみかん取ってきてやるよ。本当は夜の自由時間に持ってこうと思ってたんだけど、ちょうど今全員いるしな」
サシャ「……どうも」
ジャン「なんだ、嬉しくねえのか? ていうか座り込んでないでとっとと降りろよ」
サシャ「お腹が空いて動けません……」グッタリ
ジャン「……お前さっきまで走り回ってただろうが」
エレン「ジャン、サシャは風邪引いてるんだ。無理させちゃいけねえよ」
ジャン「風邪っぴきなら雪下ろしなんて重労働に志願してんじゃねえよ。それこそ一番に降りろ」
サシャ「……私、最後に降ります」
ジャン「ああ?」
サシャ「今……ちょっと、下に行きづらいので」
ジャン「……コニー、エレン。先行ってていいぞ」
エレン「おう、じゃあまた後でな」
83 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:52:31 ID:VJymVjfI
ーー たき火近く
コニー「あっちー、疲れた疲れた!」バッサバッサ
ベルトルト「コニー、ほらタオルだよ。上着は預かっててあげるから、これで身体拭いて」
コニー「おう、ありがとなー。……ん? クリスタとユミルは?」フキフキ
マルコ「そういえば、まだ戻ってきてないな……コニーは二人とすれ違ったりしなかった?」
コニー「いいや、見てないぜ。……あっ、そうだアルミン、黄金って売りさばくにはどうしたらいいんだ? 市場にそのまま持っていけばいいのか?」
アルミン「市場にそのまま持って行っちゃえば混乱すると思うけど……なんでクリスタたちの話から突然黄金の話になったの?」
コニー「それはなーージャンの目から黄金が出るからだ!」キリッ
ミカサ「……それは病気なのでは?」
アルミン「コニー、脈絡って言葉を知ってる?」
アルミン(目から黄金かぁ……いったい何の話を勘違いしたのかな……)
84 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:53:37 ID:VJymVjfI
エレン「おーっす、みんなお疲れー」パタパタ
ミーナ「お疲れさまー」
ミカサ「エレン、まずは上着を脱いで汗を拭いて。そしてこの白湯を飲むといい。少し冷ましておいたからすぐ飲めると思う」テキパキテキパキ
エレン「いいって、自分でやるよ。タオル寄こせ」
アニ「……ねえ、ジャンとサシャは? いないみたいだけど」キョロキョロ
エレン「あいつらならまだ上で何か話してるぞ。二人きりで」
ライナー「……ほう」
コニー「あっ、そうだ! 俺みかん取ってこないと」ダッ
ベルトルト「コニー! タオルは上着と交換するために渡したんじゃないよ! 上着は着てよ! ねえ!!」ダッ
85 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:54:38 ID:VJymVjfI
ーー 同刻 男子寮 屋根の上
ジャン「……」
サシャ「……」
ジャン「降りろ」
サシャ「嫌です。ジャンがお先にどうぞ」
ジャン「断る。お前を置いて俺が先に降りたら、俺がお前の保護者連中に袋叩きにされちまうからな」
サシャ「それは……かわいそうですね。ジャンが」
ジャン「そう思うなら下に行けよ」
サシャ「それは……その……」モジモジ
ジャン「……あのなぁ、そうやって先延ばしにしておいてもいいことなんかねえぞ。本当に降りられなくなっちまう前にさっさと行けって」
サシャ「……でも」
ジャン「でもじゃねえよ。うだうだしてるとタイミングを逃しちまうぞ。……いっそ言っとけばよかったって、俺は今まで何度思ったことか」
サシャ「……ジャンだって、タイミング逃してばっかりじゃないですか」
86 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:55:23 ID:VJymVjfI
ジャン「俺のことは別にいいんだよ。どうせ無理だってとっくの昔にわかっちまったし……高望みはしてねえよ」
ジャン「俺はミカサの笑う顔が見られるなら、それで充分だ。……本当は俺が笑わせられたら一番なんだけどな」
サシャ「……ミカサは幸せ者ですね」
ジャン「お前もある意味幸せ者だろ。なんでもかんでも食い物に繋げちまう思考はお花畑そのものだよな」
サシャ「……それを直したいんですよ」ボソッ
ジャン「らしくねえことはやめとけよ。……ほら、コニーがみかん引っ提げて下で待ってるぞ」
サシャ「そうでした!! みかん!!」スクッ
ジャン「やっぱり直す気ねえだろ、お前」
サシャ「……ああーっ!」ジタバタジタバタ
ジャン「……面倒くせえな。俺は先に降りるから、気が済んだら戻って来いよー」スタスタ...
87 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:56:01 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の下
ジャン「あーあ、いらねえ世話焼いちまったなー……」ブツブツ
ミカサ「……ジャン。ちょっといい?」タタタッ
ジャン「! ……ミカサか。どうした?」
ミカサ「エレンに雪下ろしのやり方を教えてくれてありがとう。タオルと白湯を用意しておいたので、よかったらどうぞ」スッ
ジャン「……お、おお、おう、ありがとよ」
ジャン(手渡し……!! ミカサが、俺のためだけに用意してくれたタオルを、手渡し……!!)ドキドキ
ミカサ「……」ジッ...
ジャン「……? なんだミカサ、何か他に用でもーー」
ミカサ「東洋には、『病は気から』ということわざがある。どんな病でも、気の持ちようで改善することがある」
ジャン「? それがどうした?」
ミカサ「私は心配しかできないけれど……お大事に。それだけ」
ジャン「?? おう、どうも……?」
88 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:56:45 ID:VJymVjfI
ライナー「お疲れ、ジャン。ーーサシャは?」
ジャン「ライナーか。……まだ上にいるぞ。降りたくねえんだと」
ライナー「……連れ戻してくるか」ハァ
コニー「おーい、みかん持ってきたぞー! ーーん? サシャはどこ行った?」キョロキョロ
ミカサ「まだ上にいる。……らしい」
コニー「なんだよ、せっかくみかん持ってきたのによー」ブーブー
ライナー「コニー、よかったら一つもらってもいいか? サシャに渡してくる」
コニー「あいよ。ーーほれっ」シュッ
ライナー「よっと。……ん? コニー、俺は一つって言ったんだが」パシッ
コニー「ああ、間違ってねえよ。一人一つだろ?」
ライナー「……なるほどな。ありがたくもらっとく」
コニー「おう! サシャが降りてきたら後で宝探しやろうぜ! ここで待ってるからよ!」フリフリ
89 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:57:40 ID:VJymVjfI
ーー 男子寮 屋根の上
サシャ「……」グ-
サシャ(お腹空いた……)ガジガジ
ライナー「ーーおい、シャベルは食うなよ」
サシャ「! ……ライナー」
ライナー「よお。屋根の上は風が強いな」スタスタ...
サシャ「……」
ライナー「膝抱えてどうした? 動けないのか?」
サシャ「……もうちょっと、立ち直るまで時間ください」
ライナー「そうか、わかった。……隣いいか?」
サシャ「……どうぞ」
ライナー「どうも」スッ
90 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/07(木) 22:58:56 ID:VJymVjfI
ライナー「お前、よくこんな寒いところに黙っていられるな」ブルッ
サシャ「……寒いの、得意なので」
ライナー「得意なのはわかった。だが、汗も拭かないでこんなところにいるのは感心しないな」
サシャ「……ごめんなさい」
ライナー「いや、俺もタオル持ってきてやるの忘れたからな。おあいこって言えばそうなんだがーー」チラッ
サシャ「……」
ライナー「……あー、まあなんだ。冷える前に下に降りないか?」
サシャ「……」
ライナー「……」ボリボリ
サシャ「……ライナーは、自分がなんなのかわからなくなる時ってありますか?」
ライナー「……たまにあるな」
サシャ「私、今はそういう状態です」
サシャ「……私は、犬じゃありません」
ライナー「そうだな、そりゃそうだ。見ればわかるぞ」
サシャ「さっきまで、私も思ってました。でも今は自信がないです」
ライナー「なんだそりゃ。誰かにそうやって言われたのか?」
サシャ「……私、口を開けば食べ物の話ばかりだって、最近気がつきました」
ライナー「それくらい、腹が減ってたら当たり前だろ」
サシャ「人間誰しもお腹が空くんです。でもそういうの、我慢できる人は世の中にたくさんいます。我慢できないのは人じゃなくて獣です」
ライナー「そうか、犬なのか……」
サシャ「私、なんでいつもこうなんでしょう……」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「お手」スッ
サシャ「……わん」ポン
ライナー「よしよし、いい子だな」ナデナデ
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