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旅男「ルビーイーターか……」

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Part6
67 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/11(土) 22:43:41.46 ID:5iVKQBYAO
藍「あ、旅男さんには連続シリーズの釣り映画が……」
旅男「釣りは映画で見るもんじゃねえ、自分の竿で当たりを味わうもんだ!」
藍「釣れないですね〜」
旅男「俺は美味い魚で美味い酒を飲む、これは決定事項だ!」
藍「なんでそんなに映画を嫌うんですか……?」
泣き落としが入った
旅男「き、嫌ってない、ただ明日はそう言う……」
藍「明後日ならOKですね、それでですね、旅男さんも推理物なんか好きかなって……」
旅男「はあ……、すまん、映画はまた今度頼みに行くから遠慮してくれ、別に嫌いじゃない」
藍「手強いですね」
旅男「倒す気で来るな」
藍「まあ二人釣れたんで上出来でしょう……、旅男さんは次に釣り上げてみせます」
旅男「釣るのは好きだが釣られるのはな……」
博士「私も明日は釣りに行こうかな」
旅男「お、やるのか?」
博士「生物の研究は大好物なんだ、一番専門的に勉強してる分野だしな」
旅男「よし、明日は二班に別れて遊ぶぞ!」
藍「おーっ!」
帽子「楽しみだな、お買い物もいっぱいできるし……」
茶髪「一千万とか良いな〜」

70 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 17:47:29.84 ID:+rbMeROAO
…………
朝から旅男と博士は地下五階の釣り堀に来ていた
地下生活が主体となっている現代、野菜も魚も全てが工場生産されている
地上に船など作ろうものならすぐにイーターの餌になる
博士「さて、釣れるまでちょっと雑談しようか」
旅男「ああ」
博士「君はイーター種の最初に現れた物は何だと思う?」
旅男「一番シンプルなのはアイアンイーターだが……、しかし人類がアイアンイーターを作る意味が見当たらない」
旅男「もちろん瓦礫処理にあてた可能性は有るが……」
博士「答えは、グリーンメーカー」
博士「以前行ったB地区地下工場もグリーンメーカーを作る工場だった」
旅男「ふうん……」
旅男「ちょっと待て、あいつら自然に進化するよな?」
博士「そうだ、そこだよ旅男」
博士「だから私はバグを探していたんだ、本来彼らは進化などしない」
博士「だがほぼ全てのグリーンメーカーは進化し、アイアンイーターやマンイーターに変わった」
博士「グリーンメーカー自体も本来の機能を果たしていないんだ」
旅男「それは……、随分根源的な問題がありそうだな」

71 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 17:52:08.97 ID:+rbMeROAO
博士「それがバグだよ……、おっと」
旅男「ん、デカいな」
博士「鯛が釣れた」
旅男「良いねえ、お、こっちも」
旅男「シマアジかな?」
博士「へえ、そんなの釣れるんだな」
旅男「全部養殖だからな〜」
博士「……バグは養殖物のグリーンメーカーには入るはずがなかった、工場で調べた限りでは」
博士「天然で交配している中でバグが入った可能性は無くはない」
旅男「世界規模だからな、そう考えた方が自然だ」
博士「でも人為的に書き換えられた痕跡が見受けられるんだ」
博士「自然に起こったバグなら、あんなに急激に多岐にわたる進化を遂げるには、どう見積もっても数千年はかかるはずなんだ、最低でな」
博士「更に言えばバグを自動修復するプログラムもあったが、これも機能していない」
博士「世界のどこでも同じ傾向で進化をしている」
旅男「人為的な臭いがするな」
博士「だろう?」
博士「お、また来た」
旅男「カワハギか」
博士「面白いな」
旅男「ハントと同じで獲物が手に入ったら最高だろ?」
博士「魚は高価だしな」
旅男「安い餌で高価な魚を釣って味わうのが最高なんだ、ここは料理もしてくれるぞ」

72 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 17:54:44.09 ID:+rbMeROAO
博士「楽しみだ」
旅男「おっし、アナゴが釣れた」
博士「後少し釣ったら食べよう」
旅男「新鮮な方が美味いからな、そうしよう」
博士「ヒラメ釣れないかな」
旅男「刺身が食いたいな」
…………
旅男「乾杯」
博士「乾杯、私はジュースだがな」
旅男「藍たちは今頃映画を見てる頃か」
博士「普通の人、オールドタイプがAHのふりをする映画だったか、どうやってごまかすんだろうな?」
旅男「リタイアしたAHが協力して遺伝子提供したり色々検査をごまかすんだと」
博士「それでごまかしきれる物かね?」
旅男「分からん、映画だから上手くやるんだろ」
博士「……いつ頃からAHに対して普通の人間をオールドタイプと呼ぶようになったのかな?」
旅男「最初は普通の遺伝子を弄らなかった人々の自嘲から始まってるみたいだが、定着してしまったな」
博士「私や君とか帽子に比べたら殆どのAHがオールドタイプな訳だが」
旅男「そいつらがオールドタイプを差別してるのを見ると笑えるよ、お前等も俺に比べたらオールドだってね」
博士「ははっ」
旅男「普通の人間だって頑張ればAHも苦戦する大型イーターを狩れるんだ、差別することなどあるものか」

73 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 17:56:45.26 ID:+rbMeROAO
博士「それを考えれば茶髪は本当に偉業を成し遂げたな」
旅男「ああ、俺のルビー擬き退治よりよっぽど勇気がいった筈だ」
旅男「それに俺達の人工遺伝子なんて所詮は他人の力なんだからな」
博士「君の完成を見た時の科学者達はどれほど歓喜しただろうね」
博士「従来のAHに比べ出力にして三割増し、それなのに従来のAHより安定しているって言うんだから」
旅男「だから奇跡的なバランスなんだってさ、その俺の遺伝子バランスを出来るだけ崩さずに別の遺伝子パターンで作られたのが帽子」
博士「君の遺伝子パターンをそのまま持ったコピーではなく、何年もかけて新作って言うのがな、その研究者魂には感心するよ」
旅男「ここだけの話だが、あいつは……、いや、やめておこう」
博士「なんだ?気になるな」
旅男「いや、博士なら分かるだろ、ハンター型AHなのになんで女なのかって話だよ」
博士「……結構深刻な話だな、よし、この話は無しだ」
旅男「大切な妹分だからな、大事にしてくれて助かるよ」
博士「メンテは任せておけ」
旅男「さて、美味い魚を食った所で、どこで遊ぶかな」
博士「私は帰って仕事するよ」
旅男「お疲れさん」


74 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 17:58:47.10 ID:+rbMeROAO
旅男が街をぶらぶらと歩いていると、前から賑やかな三人組が歩いてくる
茶髪「あ、旅男みっけ!」
帽子「旅男〜!」
旅男「おう、映画どうだった?」
帽子「良かったよ、ラブストーリーもあって」
茶髪「俺には難しかったな〜」
藍「次はラブストーリーですよ!」
茶髪「俺はもういいかな〜」
藍「観ましょうよ〜!」
旅男「まあ茶髪は俺が連れてくわ、二人で見てこいよ」
帽子「分かった〜」
藍「くっ、次は茶髪君好みの映画を選びます!」
藍「旅男さんも覚悟してくださいね!」
旅男「あ〜、いずれな、いずれ」
茶髪「行くか、何しよう」
旅男「飯は食ったからな、ぼんやり買い物でもするか」
茶髪「本屋行こうぜ」
旅男「トレーニングはしないのか?」
茶髪「今日はオフだ」
旅男「格好いいな、オールドタイプの英雄は」
茶髪「明日からちゃんとやる」
旅男「真面目だな、まあ俺は明日も遊ぶけど」
茶髪「AHみたいにメンテしなきゃいけない訳じゃないから、その分は努力しないとな」
旅男「次はマンイーターだな」
旅男「ヘボいAHに横取りされる前に倒さなきゃな」
茶髪「おう」

75 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:00:52.63 ID:+rbMeROAO
…………
数日後、長いメンテナンスを終えた旅男は茶髪の悲願であるマンイーター狩りに出掛けることにした
ーーD地区ーー
C地区に並ぶマンイーター出現ポイントのD地区は、中級ハンターが大物を狙う名所のようになっている
今もいくらかのAHのハンターがマンイーターを倒したり食われたりしているのが、響く声で分かるほどだ
このポイントで注意しなくてはならないのは敵マンイーターの実戦経験の高さと、乱戦になる可能性の高さだ
旅男なら苦戦しないが、当然茶髪では要注意ポイントであり、それを庇いつつ戦うため、旅男にとっても難しいミッションとなる
侵入した所で砂漠用のマントを羽織っているAHが旅男を見つけ、声をかけてきた
マント「よう、旅男さんじゃないか、あんたみたいな上級ハンターがこんな面倒なエリアに何の用だい?」
旅男「ああ、弟子の付き添いでな」
茶髪「おっす!」
マント「お、お前かぁ、大型イーターを食った天才オールドタイプは」
旅男「持ち上げるな、調子に乗るから」
茶髪「えへへっ、俺有名人?」
マント「AHでも大型を狩れずにメンテナンス代で苦しんでるハンターはかなり居るからな」

76 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:02:46.62 ID:+rbMeROAO
マント「餓鬼とは聞いていたが、本当に小さいな、いや、馬鹿にしてる訳じゃないんだ」
マント「AHのクセに大型狩れないグズはどうしようもないが、あんたは英雄だからな」
茶髪「あ、有り難う」
マント「いよいよマンイーターを狩るわけだ」
旅男「そう言う事だ、五百万のマンイーターの居場所は分からないか?」
マント「さっき叫び声がした辺りに居るんじゃないか?」
旅男「ああ、聞こえたな」
マント「熟練のマンイーターを舐めるからああなる、気をつけろよ、少年」
茶髪「お、おう」
マント「まあ釈迦に説法かも分からんがな、あはは」
茶髪「あははっ」
旅男「調子に乗るなと」
茶髪「わ、分かってるよ」
旅男「とりあえず俺が先に行く、雑魚とボスの足止めは俺がやるからお前はトドメを刺せ」
茶髪「分かった」
マント「見物させてもらおうか」
…………
旅男達がポイントに入ると、ビルの上からイーターの気配がする
上からの攻撃が優位であると考えるマンイーターであろう
旅男にしてみれば、地面を離れ自由落下するただの的であるが
それなりに実力があるはずの雑魚イーター達は次々肉達磨になって転がっていく

77 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:05:02.72 ID:+rbMeROAO
茶髪は得意の槍でどんどんトドメを刺して行く
旅男「多いな、まあこいつらならルビー代を気にする必要はないが」
旅男「ルビーを変える、警戒していろ」
茶髪「分かった」
茶髪はルビーガンを構える
正面からマンイーターがジグザグに走ってくる
茶髪の一撃は見事にマンイーターの脚を貫いた
茶髪「ラッキー!」
旅男「上だ!」
ルビーガンのルビーを入れ替えた旅男が上から奇襲をかけてきたマンイーターを撃ち抜く
茶髪「……助かった」
旅男「油断をするなと」
やがて少し遠目のビルから六メートル近い大型マンイーターが降りてくる
茶髪「あれか……」
旅男「作戦は分かってるな?」
茶髪「あ、ああ」
茶髪の頭の中に何パターンか死ぬパターンが思い浮かぶ
咬まれたら死ぬ
踏まれたら死ぬ
飲まれたら死ぬ
跳ねられたら死ぬ
押し潰されたら死ぬ
瓦礫が落ちてきて死ぬ
蹴り飛ばした石に当たり死ぬ
巨大マンイーターはまず、ビルを崩し石を蹴りつけてきた
茶髪「おわっ!」
イメージ通りだが、最悪だ
旅男は茶髪を気にせず、瓦礫を突ききり、ルビーガンの射程圏に巨大マンイーターを捉える

78 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:07:43.57 ID:+rbMeROAO
旅男にターゲットとされた瞬間にマンイーターは逃げなければならなかった
一瞬の間があれば、光速の熱線がイーターを貫く
この歴戦のマンイーターにして、有ってはいけない油断である
その油断を誘ったのは明確にルビーガンの射程を把握していた旅男ではあるが
巨大マンイーターは脚を撃ち抜かれ、もがいた
今近付くのはとても危険だ
茶髪はとりあえずルビーガンでマンイーターを撃つ
撃つ
撃つ
やがて巨大マンイーターはゆっくりと動きを止めた
旅男「博士」
博士「巨大マンイーター生命反応消滅、討伐確認、お疲れ」
旅男「だとさ」
茶髪「……やったのか?」
茶髪「なんか呆気なかったな……」
茶髪「でも、やったのか……」
茶髪「やったんだな……」
旅男「おめでとう、お前は本物の英雄だ」
茶髪「うはっ」
茶髪「段々実感が湧いてきた……」
マント「よう、やったな」
旅男「ああ、楽勝だったな」
マント「楽勝か……、あんな警戒心の強い歴戦イーターに正面から奇襲をかけるのが楽勝ね……」
旅男「倒したのはこいつだ」
マント「確かに」
マント「あんた、俺達のグループに入らないか?」

79 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:10:40.48 ID:+rbMeROAO
旅男「お前のグループ?」
マント「AHの自由を守るための組織……」
旅男「お前……」
マント「例の宗教とは関係ないぜ」
マント「くだらないプロパガンダで俺達は家族を持つことも許されない、そう言う雰囲気にされている」
マント「そう言った差別的な社会から脱し、俺達AHの社会を作るんだ……」
旅男「夢の見過ぎだ」
旅男「俺達の生活を支えてくれているのは多くのオールドタイプだぞ?」
旅男「食糧生産も高エネルギー薬、メンテナンス用薬剤、それらの他にも生活用品全てだ」
マント「すぐに解れとは言わない」
マント「そもそも俺達はオールドタイプに離反してる訳じゃないんだ」
マント「AHの国を作るんだ……」
それに答えたのは、旅男ではなく茶髪だった
茶髪「くだらねえ」
茶髪「あんた言ったじゃん、俺にも勝てないグズなAHも居るって」
マント「……惜しいな、お前がAHなら引き入れたのに」
マント「お前の所にもう一人凄腕ハンタータイプAHがいたな……」
旅男「あいつには手を出すな」
旅男「殺すぞ」
マント「……思想信条は個人の自由だぜ」
旅男「……」
マント「そ、そんなに凄むなよ、英雄」

80 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/12(日) 18:12:50.78 ID:+rbMeROAO
マント「またな……」
旅男「もう二度と現れるな」
マント「どこで会うかなんて分からないだろ」
マント「あばよ」
旅男「……ふん……、気分が悪い」
茶髪「それより早く帰ろうぜ、報酬額楽しみだ」
旅男「そうだな、おめでとう、茶髪」
茶髪「サンキュー」
…………
博士「討伐対象以外のマンイーターに意外と美味しいのがいてな」
博士「討伐対象五百万、雑魚の総計が五百万、地域殲滅報酬三百万」
博士「一人六百五十万だ、おめでとう」
茶髪「やったあ!」
旅男「まああの地域はすぐにまたマンイーターが集まってくるがな」
博士「未熟なハンターが稼ぎに行くのに丁度良い地域だからな」
博士「マンイーターの餌も豊富って訳だ、わははっ」
茶髪「笑えねえ」
旅男「全くだ」
博士「他に報告はあるか?」
旅男「いや、何も」
博士「そうか」
博士「メンテナンスするから脱げ」
旅男「脱げとか言うな!」
博士「うへへ、若い肌はええのう」
旅男「お前はいくつだ!」
茶髪「俺先に酒場行ってるよ!」
旅男「ああ、またお祝いだな」
博士「しっかりメンテナンスしてたっぷり飲んでこい」
旅男「ああ」