2chまとめサイトモバイル

旅男「ルビーイーターか……」

Facebook Twitter LINE はてなブックマーク
Part4
40 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:02:16.84 ID:b28ts1/AO
少し見ている間に次々とアイアンイーターは狩られていく
旅男「思ったよりデカい群だったな」
帽子「大型が居ないのが不思議なくらいの密集率だね」
旅男「いや」
先頭を走る茶髪と藍の前に、巨大なアイアンイーターが姿を現した
旅男「十メートル級だな」
茶髪「……やっつけてやる!」
藍「無理はしないでください!」
巨大なアイアンイーターは黙々とビルの鉄骨を剥ぎ取り、食べている
茶髪の運動能力で頭を叩くのは無理だし、ルビーガンも飛距離が遠くなると急速に威力が落ちる
下敷きになれば一撃で死ぬ
常人にしてみれば途轍もない難敵である
茶髪「こいつを……、倒す!」
茶髪はまず山椒魚のような丸い尻尾から削って行くことにした
うっかりこちらに倒れてくれば茶髪の短い人生は終了だ
尻尾を撃ちながら出来るだけ走り、位置を変えていく
藍は茶髪をサポートしつつ体幹に攻撃を加える
アイアンイーターは耳をつんざく叫び声を上げ、暴れ始めた!
体長十メートルのモンスターは周囲のビルに体当たりしては打ち崩していく
茶髪「くっ……、ごほっ、ごほっ」
茶髪「ぱねえっ!」
藍「ど、どうすれば倒せるんでしょう!」

41 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:04:07.34 ID:b28ts1/AO
旅男「落ち着け!」
旅男「お前この前に俺が十五メートル級倒した所を見ていただろう!」
茶髪「そ、そうだ」
茶髪「あいつあんなナリしてるけど、脳味噌があるんだ!」
藍「牽制します、トドメをお願いします!」
藍は崩れる瓦礫の中を俊敏に突き抜け、巨大アイアンイーターを少しずつバラして動きを止めていく
茶髪は必死に走ったが、明らかにAHについていけはしない
イーター狩りは機動力も大事な要素だ、それは間違いない
ただ
茶髪「男は、根性ーっ!!」
茶髪はイーターの上を走りながら槍でイーターの身体を切り裂いて、頭まで走る
茶髪「トドメだあーっ!」
イーターの頭と思しき部分に、深く槍を突き刺した
もしイーターが跳ね起きれば死ぬ
茶髪はそのまま槍を捨てイーターから転がり落ちて出来るだけ遠くに走った
しかし、巨大アイアンイーターは、もう動くことは無かった
茶髪「や、やったのか?」
しばらくして旅男がアイアンイーターの撃退を確認し、槍を抜いて茶髪の元に歩いて来た
旅男「……ふっ」
旅男「やりやがって!」
旅男は茶髪の手を掴んで、無理やり起こした
茶髪「や……、やったの?」

42 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:06:57.27 ID:b28ts1/AO
旅男は茶髪の頭を撫で回し、頷く
茶髪「やった、やったーっ!」
帽子「AHみたいな戦いぶりだったね、ボクもびっくりしたよ」
藍「すごかったです、茶髪さん!」
茶髪「えっ、えへへ」
旅男「博士に連絡を取ろう、いくらになったかな?」
茶髪「え、俺も報酬もらえるのか?」
旅男は茶髪を見て、ニッと笑う
旅男「何を言ってやがる、英雄!」
…………
博士「二人での共同作戦、一地域のアイアン殲滅と認識され、それぞれの報酬は八十万ちょっとだな」
茶髪「えっ」
旅男「稼いだな〜、英雄」
藍「そっ、そんなに?」
帽子「一般的なイーター一地域殲滅報酬だね、少し少ないくらい」
茶髪「もう俺一年くらい寝てる」
旅男「さすがにそれは無理だろ」
博士「オールドタイプがAHを連れていたとは言え大型イーターを狩るのは珍しい」
博士「茶髪がそんなにできる子だとは知らなかったな」
旅男「トレーニングはしてるからな」
茶髪「うへへっ、マジ嬉しい」
藍「でもアイアンイーターの暴れ方次第で命を落としたかも知れないのは忘れたら駄目です」
帽子「その通り」
茶髪「うん、……ビギナーズラックだったんだよな」

43 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:09:07.45 ID:b28ts1/AO
茶髪「とにかく慎重じゃなきゃ、命がいくらあっても足りない仕事なんだ……」
旅男「分かってりゃいい、飯を食いに行くか!」
博士「藍はちょっとメンテしていけ」
藍「あ、はい」
旅男「茶髪の初陣と戦勝祝いだからな、間に合わせてくれよ博士」
博士「ふふっ、了解だ」
茶髪「……そっか」
茶髪「AHだってハンデを背負って生きてるんだよな……」
旅男「まあな」
茶髪「俺、甘えないよ」
茶髪「いつかマンイーターを倒したら、もう危ない戦いはしないようにする」
旅男「……この世で一番賢いのは、自分の力の底が分かってる奴だ」
旅男「マンイーター狩り、必ず俺も連れて行けよ」
茶髪「こ、こっちのセリフだろ」
茶髪は頬を掻きつつ酒場へと入る
客「うおおおおおっ!」
客2「英雄のご帰還だ!」
客3「やってくれたな、俺らオールドタイプの英雄!」
茶髪「あ……」
旅男「ふふっ、皆耳が早いな」
茶髪「俺……、ほんとにやったんだ……」
茶髪は子供らしく目を腫らし、泣いた
旅男「さあ親父、今日はこの若いオールドタイプの英雄をもてなしてやってくれ!」
酒場親父「任せろ、とびきり美味い飯食わせてやる!」

44 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:11:46.74 ID:b28ts1/AO
その日の酒場は、かつて無いほどの賑わいを見せた
藍もメンテの結果異常無しとして酒場に駆けつけた
酒場は一層盛り上がった
その日は旅男も、美味い酒を飲んだ
帽子「ハンターって言うのは、いい仕事だよね」
帽子「命を懸けた分、報われる」
旅男「みんなが苦しんでいる証拠でもある」
帽子「……頑張らなきゃね……」
旅男「無理はするなよ」
帽子「私は無理しなきゃ……、ルビーキラーの妹分だもの」
旅男「たまたまだって……」
旅男「死なないでくれよ……」
帽子「それだけ約束する」
帽子は頭を旅男の胸に埋めた
酒場親父「ほれ、手羽先の照り焼き、と、こっちはゴーヤ炒めな」
酒場親父「今日はたっぷり食えよ、博士にも言われてるからな」
旅男「ああ、博士は仕事してやがるのか」
酒場親父「今日は特別な日だから出てくるってよ」
旅男「そうか」
旅男「親父、水割り」
酒場親父「ボトル一本サービスだ、お前のお陰でうちも賑わってるからな」
旅男「ありがてえ」
やがて店に博士が来る
旅男「例の解析終わらないのか」
博士「うん……、だな」
博士「異常が無い」


45 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:14:07.19 ID:b28ts1/AO
旅男「そりゃ、そうなんだろうな」
旅男「生産段階で異常があればテストを抜けてないんだから」
博士「それでも生産ラインに持ってくる時にバグが入ることは有り得る」
博士「しかし、どうもそれもなさそうだ……」
旅男「誰かがプログラムを後から加えているとして、……例の宗教が怪しいのか?」
博士「完全監視社会で監視を逃れているのは地上の砂漠で暮らす一部の人間達だけだ」
博士「しかしイーターが減り、そういう監視から逃れて生きる人間も増えている」
博士「お前のかつての仲間のように……、な」
旅男「今日はやめよう、酒が不味くなる」
博士「ああ、お祝いだものな」
茶髪「いえーいっ!」
客「もっと脱げー!」
旅男「誰だ茶髪に酒飲ましたの!」
客2「置いてたライムチューハイ間違って飲んじゃったらしい」
旅男「ほら、お巡りさん来るからそれ以上脱ぐな!」
茶髪「うん……、寒い」
帽子「砂漠の夜は冷えるからね〜」
藍「私も早くお酒を飲めるようになったら旅男さんのお相手出きるんですけどね〜」
旅男「確かに飲み仲間が居ないのは寂しいけど、まあ俺達は寿命が無いとされてるんだし、のんびり待つよ」

46 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:18:51.60 ID:b28ts1/AO
旅男「さて、次はマンイーター狩りに行くか、早めにルビー擬きを狩っておくか、どうする」
博士「帽子とお前だけでルビー擬きを狩ってくるのが最善の選択だが、二人にお手本を見せるのも良いだろう」
藍「是非見ておきたいです、暴れる巨大イーターとどう戦うのか」
茶髪「見る見る〜」
旅男「ルビーイーターみたいに熱線を吐くように進化したら困るし、ルビー擬き討伐で決定だな」
旅男「藍はメンテ期間でもあるし、無理はするなよ」
藍「はい!」
帽子「まあ私と旅男の全力戦闘はあんまり参考にならないかもね」
藍「お二人は奇跡的なバランスで遺伝子を組まれた超AH種なんですよね」
博士「既存人類の存続危険性への考慮から量産はされなかったが」
藍「ロボット物のエース機みたいですね」
帽子「エース機か、悪くないね」
博士「AHは既存人類に被害を与えず且つイーター討伐に十分な戦力だけ生産されて生産中止になった」
博士「言うなれば二人は人類最後の希望だ」
博士「ルビーイーターを狩り尽くすまで、死なれては困るぞ」
旅男「ルビーイーターは当分遠慮するわ」

47 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:23:25.56 ID:b28ts1/AO
帽子「ルビーイーターだけは捕らえてられないからプログラムを書き直すのも無理だし、必ず殺らないとだけど」
旅男「新兵器で敵の射程外から撃ち殺すとか出来ないと危ないからな」
帽子「巨大レーザー戦車とか」
博士「そんなもの作ったらアイアンイーターの餌食だな」
帽子「大型機械もミサイルもアイアンイーターにさえ勝てないんだね……」
博士「軽装備で駆け回る最新AHが現在、対イーターでは最強の兵器だ」
博士「頭と胸だけでもレーザーから保護するバイオレザーアーマーとかは考えてる」
旅男「全身耐レーザーアーマーとか動きが鈍ってグリーンメーカーにも勝てなくなりそうだしな」
藍「他の国でもやっぱりAHを使ってるんですか?」
博士「だいたいはAH禁止条約ができる前に作られたAHやオールドタイプのハンターが戦ってる……、AHが全滅した国も無くはないけど、人海戦術とか地下からミサイルを撃って倒そうとしたり……」
博士「でも、あいつらは進化するからね」
博士「下手な化学兵器は使えないし、地下や水中に潜ってくるイーターなんか生まれたら最悪だ」
旅男「そんなの生まれたら手に負えないな」

48 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:25:57.80 ID:b28ts1/AO
博士「対抗手段として考えてるのはイーターを食うイーターやプログラムを打ち込むイーターとかだ」
博士「後はさっきの話に絡むがイーターが食えない軽い耐レーザーバイオレザープロテクター」
旅男「いろんな事できるよな、博士は」
博士「せっかく頭脳型AHとして作ってもらえたんだから、しっかり頭を使わないとね」
博士「しかし体も知恵も全然足りないよ、人間の限界なのかね?」
旅男「俺達のメンテまで任せてるしな、助手でもつけたら良いのに」
博士「年上の助手と言うのはどうもな……、一応研究データを解析してもらってる協力研究所はあるし」
藍「私が雑事だけでもこなしますよ?」
旅男「メンテ期間だけでもなんか手伝えればいいな」
博士「君達は命懸けで戦ってるんだから、遊んでたらいいんだよ?」
旅男「もちろん遊ぶ」
藍「ご飯作ったり洗濯したりならメンテ中でも大丈夫ですよね?」
藍「それに私細胞活性化したら多少の不調は治りますから!」
博士「それ細胞の負荷が増えるだけだから」
旅男「あはは、博士は騙せないな」
藍「むう〜」
博士「まあ身の回りの世話はやって貰おうかな、誰か他人を雇うより良いし」

49 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:28:25.99 ID:b28ts1/AO
博士「給料は月々のメンテ代無料って事で」
旅男「それは破格だな、一回のメンテで十万は取られるからな」
茶髪「たけーな」
旅男「言ったろ、コストがかかるんだよ」
茶髪「サンルビーガン一発で三〜五万だっけ……、この前冷却したので二十万くらいかかってる計算だな……」
博士「サンルビーの今の相場は一個二百二十万になってるぞ」
旅男「また上がってやがる……」
博士「月とか準惑星にルビー工場はあるんだが、イーターのせいでなかなかロケットも打ち上げられなくなったからな……」
博士「海上のルビー工場の他は地上にばらまかれたルビーを採集するか、ルビーイーターを倒すか」
旅男「ルビー保持型を倒せたらルビーを取り出せるか?」
博士「できるが、イーターが使いまくった劣化してるルビーだぞ?」
旅男「まあ賞金で補充した方が早いな」
茶髪「……この前暑いって文句言って悪かった」
旅男「だからマンイーター狩ったろ」
旅男「メンテ一回するまでに百十万以上稼いだから、薬の五万は月一、メンテ十万、ルビー代は十発で、……今は三十三万から五十五万か」
旅男「最低で四十万丸儲け、ひと月は遊べる計算だ」

50 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:31:29.06 ID:b28ts1/AO
茶髪「俺はメンテも薬もいらないからルビー代だけか」
茶髪「ん、つまり今回俺の方が稼いだのか?」
旅男「……似たようなもんかな?」
旅男「ま、ケチくさい話はやめだ」
博士「グリーンメーカー正常化に絡んで私とお前と帽子にそれぞれ五百万ほど報酬が出るかも知れないぞ」
旅男「マジか」
帽子「うわあ、森作りって本当にいい仕事なんだあ……」
茶髪「あれを捕まえるのは俺には無理だな……」
博士「まあしっかりと森が出来てグリーンメーカーが大地に還ったのを確認後になるがな」
旅男「そうだ、ルビー擬き討伐に蜘蛛の糸貰えないか?」
博士「いいよ、五十万で」
旅男「ねえよ……」
博士「討伐成功払いでいいよ」
旅男「それなら有り難い」
帽子「それならボクも一個頂戴ね」
博士「分かった」
茶髪「一匹倒したら千二百万だっけ、ちまちま狩ってる俺の比じゃねーな」
旅男「茶髪は十三だろ? オールドタイプにしたら稼ぎすぎなくらいだぜ」
茶髪「そっか」
旅男「お前も五百万のマンイーターを倒せ」
茶髪「……」
茶髪「そうだな」

51 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/27(土) 23:33:57.34 ID:b28ts1/AO
旅男「その後は中型の二十万くらい貰えるアイアンイーターを狩れば十分生活できるだろ」
茶髪「無理はそのマンイーター一回だけにする、誓うよ」
旅男「ああ」
旅男「まあその一回も俺は援護するからな」
茶髪「うん」
茶髪「旅男が仲間を亡くすのすごく嫌がるの、知ってる」
帽子「寂しがりだからね〜」
藍「可愛い」
旅男「お前たまに俺のことからかうな!」
博士「まあ最悪旅男にルビーイーター狩ってもらって養ってもらうとして」
旅男「もう突っ込まねーぞ……」
博士「遠慮するなよルビーハンター」
旅男「遠慮してねえよ!」
帽子「あ、突っ込んだ」
旅男「畜生めー!」
旅男は逃げ出した
帽子「一番死んで欲しくないのは、旅男だよ……」
博士「ああ、全くだ」
茶髪「守ろうぜ」
藍「はい」
帽子「オールドタイプに守られたんじゃあいつも落ち目だよ」
茶髪「だよな、俺じゃ逆に足引っ張りそう」
博士「期待してるよ、英雄君」
茶髪「死なない程度に……」
帽子「まあ巨大アイアンイーターを狩った時みたいな無茶はあんまりやらないようにね」
茶髪「おう」