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旅男「ルビーイーターか……」

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Part11
132 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:24:32.37 ID:DwPfEm8AO
博士「二人とも無理はするなよ?」
旅男「分からん」
藍「私は無理はしません、ヤバかったら旅男さんも見殺しにします」
旅男「おい」
茶髪「死なない程度に死んでこいよ!」
旅男「死なねえよ!」
充分な準備を済ませると、藍と旅男はA地区を出てI地区へと向かう
旅男「ルビーイーターか……」
…………
眼帯「あらあら、ヤバいんじゃないの?」
マント「ルビーイーターだと?」
女医「流石に皆死ぬかもねえ」
眼帯「うへっ」
マント「とりあえず隠れてやり過ごそう」
眼帯「賛成だ」
帽子「一体何があったの?」
眼帯「おう、お嬢ちゃんも餓鬼共と地下に降りて隠れてろ」
眼帯「ルビーイーターが出たらしいから当分は外出禁止だ」
女医「参ったわね、薬が残り少ないのよ」
眼帯「はあ……」
眼帯「ルビーイーターって討伐されたことあったよな」
マント「ああ、旅男が殺った」
眼帯「旅男さんを待つか、俺らでやるしかねえ」
帽子「旅男が来るの?」
眼帯「お嬢ちゃん……、逃げろっつの」
帽子「旅男……、絶対来る」

133 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:26:49.44 ID:DwPfEm8AO
眼帯「なんでそんなはっきり言えるんだよ」
帽子「アーティフィシャルな運命を上回る運命だから」
眼帯「意味が分かんねえ」
帽子「私が生まれたのは旅男の為なんだって」
帽子「それがアーティフィシャル、人工的な運命」
帽子「でも旅男はそれが嫌なんだって」
眼帯「分かるねえ、その気持ち」
マント「アーティフィシャルな運命か……」
帽子「でもね、ここの冴えないおっさん達より私は旅男が好き」
眼帯「ぶっ!」
マント「はっきり言うなあ……」
帽子「私が旅男とずっと一緒だったのは、それが作られた運命だからじゃないの」
帽子「たまたまメンテナンスを委託したのが同じ博士だっただけ」
帽子「それって、本物の運命だよね?」
眼帯「確かに」
女医「素敵ねえ……」
眼帯「じゃあお嬢ちゃん、五人で旅男さんを待ちますか!」
帽子「勿論!」
帽子「五人?」
眼帯「あいつを連れて行こう」
マント「そうだな」
…………
旅男「桃が撃ち殺されたのは俺が叩き殺したルビーイーターじゃなく、逃げた方だった」
藍「じゃあもしかしたら」
旅男「仇の可能性があるな、ルビーイーターなんてこの辺りには数体しかいない」

134 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:29:02.67 ID:DwPfEm8AO
藍「絶対仇ですよ」
旅男「なんで言い切れるよ?」
藍「運命ですから!」
旅男「……」
旅男「はっ、映画の見過ぎだ!」
…………
I地区を彷徨う巨大なルビーイーター
ハンターを狩り、サンルビーを食らう食性の、化け物の中の化け物だ
ルビーガンも通用せず、逆に閃光を放ってくる
近くのビルは次々に崩れていく
その形は大型アイアンイーターのような多脚型であり、角を生やし痩せたフォルムはファンタジーのドラゴンのようである
多くのビルが倒れ、舞い上がる粉塵を旅男と藍はビルの上から眺めている
旅男「運命……、か……」
藍「まさか……」
旅男「アイツだ、桃を殺したルビーイーター」
藍「アイツなんですね……」
旅男「あの特徴的な角、忘れる訳がねえ……」
藍「旅男さん、アイツと一緒に……」
旅男「……」
旅男「仕方ねえな、どいつもこいつも俺とアイツを引っ付けたがりやがって!」
藍「これはアーティフィシャルな運命じゃありませんよ!」
旅男「分かってる」
旅男「桃への思いも桃の仇と一緒に、断ち切ってくる!!」

135 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:32:25.66 ID:DwPfEm8AO
旅男はルビーイーターの死角を狙い、ビルを縫ってルビーイーターに近付いていく
崩れるビルの粉塵が凄まじい
旅男「さて、どう近付くかな……」
ビルの影に隠れる旅男に近付く男がいた
友「そうだな」
旅男「!?」
友「久し振りだな、旅男」
旅男「友!」
旅男「この野郎、こんな美味しい所だけさらう気か!」
友「お前の討伐の邪魔をしに来た訳じゃない」
友「お前、まだ桃の事迷ってるだろう」
旅男「……ああ」
友「その迷いを断ちに来た」
旅男「何を……、ぐおっ!」
旅男は友に強かに殴りつけられた
友「いつまでもウジウジしてるんじゃねえよ、あんな可愛いお嬢さんがお前を待ってるのに!」
旅男「何?」
遠くのビルの上、数人の人影がある
帽子「……旅男……」
帽子「旅男……、死なないで」
…………
友「お前がアイツを倒すんなら、俺もお前に謝ろうと思う」
友「落ち込んでるお前から離れて、お前を余計に苦しめちまった事を……」
旅男「それは全然気にしてない」
友「ちょっとは気にしろよ!」
旅男「はははっ」
旅男「ちょいと狩ってくるわ」
友「おう」

136 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:34:28.62 ID:DwPfEm8AO
旅男はすっかり吹っ切れた
ルビーガンを冷却線モードにセットする
何発かルビーイーターを撃つと、効果が有ったようだ
より激しく全身の砲門からレーザーを吐き出すルビーイーター
旅男はビルを幾つか挟んでその嵐をやり過ごす
何度か冷却線を浴びせ、レーザーを吐かせると、やがてルビーイーターのレーザーの出力は落ちてきた
旅男「この戦術は使える!」
ルビーイーターはレーザーを吐くのをやめて走り出した
こちらに向かってきたかと思えばビルの影に隠れる
ルビー保持型を更に上回る高速だ
その上戦術も身に付けていた
これが旅男達の最強の敵なのだろう
旅男は出来る限りの距離を取り、ルビーイーターを冷却線で撃つ
反撃のレーザーも少なくなって来ていた
思い切って懐に飛び込み、ルビーブレードで斬りつけ、尻尾を叩き斬る
出来る限りルビーイーターの攻撃手段を削らなくてはならない
六本ある脚の内、右後ろの脚を斬りつけた
すかさずその場から跳ねて下がり、暴れるルビーイーターから一旦離れた後
旅男「ふう……、タフな敵だ」


137 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:37:13.31 ID:DwPfEm8AO
旅男が一息ついていると遠くから足音が響いてくる
そうだ
この地区にはあいつがいた
EE「アンギャーッ!」
旅男「EE!」
旅男はEEがレーザーで撃たれるのを避けるため、EEとは反対に回り冷却線を撃ちまくった
ルビーイーターが旅男の方に向き直った瞬間、EEがルビーイーターに食らいつく!
ルビーイーターの絶叫!
旅男はルビーイーターの真正面に立ち、下顎を斬り払い、下から上顎にルビーブレードを叩き込んだ
ルビーブレードの刃先から噴き出すレーザーの刃がルビーイーターの鋼の骨格を焼き斬り、その奥にある脳を焼き斬っていく
そして頭が落ちてくるのを慌てて避けた旅男
EEは勝利の雄叫びを上げた
旅男「やったか!」
旅男「……まさか賞金博士と山分けかな……?」
旅男がEEの鼻先を撫でてやっていると、後ろから奇襲を受けた
旅男「この貧乳……帽子だな!」
帽子「貧乳で当てられた!」
帽子「……おめでとう、旅男」
旅男「ああ」
旅男「おい帽子、顔になんかついてるぞ?」
帽子「へ?」
旅男は帽子の顎に手を当てると
優しくキスをした
藍「あらあらまあまあ」
旅男「げっ」

138 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:39:27.70 ID:DwPfEm8AO
…………
眼帯「お嬢ちゃん、帰るのか?」
帽子「うん、迎えが来たしね」
眼帯「そうだな」
マント「AHの国にあんたらが入らないのは寂しいが、仕方ないだろう」
友「あいつは寂しがりだから、もう離さないでやれよ」
帽子「知ってるし、分かってる」
帽子「もう離さない」
旅男「はあ……、仕方ねえ、年貢の納め時って奴か」
友「まあまだ手を出すのは早いかな?」
女医「旅男さんってロリコンだって友達が言ってた」
旅男「その友達酒場に居着いてるだろ」
藍「じゃあ、帰りますか」
旅男「ああ」
…………
旅男達は眼帯達やEEに別れを告げると、A地区への家路に着く
旅男「EEに乗って帰れたら楽だと思わねえ?」
帽子「乗り心地悪いよ、EEちゃん」
旅男「もうすぐA地区か、帰ってきたな」
帽子「そうだね、久々だ」
旅男「帰ったら何食おうかな」
藍「最低でも一億五千万ですかあ」
旅男「EEが入ってこなかったらなあ……」
帽子「仕方ないって、それも運命!」
旅男「運命か」
帽子「これも運命!」
帽子は旅男を抱きしめた
旅男「これは良い貧乳」
帽子「躊躇えよ」
藍「良いなあ」

139 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:41:15.85 ID:DwPfEm8AO
旅男達がA地区の入り口にたどり着くと茶髪と博士が待っていた
藍「仕事もせずに帰ってきましたよ〜!」
旅男「藍はノーギャラか、なんか奢るわ」
藍「私は映画です、映画を観ます!」
旅男「仕方ねえ、観るか」
帽子「ボクもいい?」
藍「もちろんです!」
旅男「俺の金だろ!」
旅男「……さあ、メンテして、飲むぞ!」
博士「お帰り、旅男、藍、帽子」
帽子「ただいま」
茶髪「お帰り!」
旅男「ああ、ただいま!」
ーー終わりーー

140 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:43:08.39 ID:DwPfEm8AO
おまけ
ーーI地区・地下街ーー
I地区地下街は荒廃していた所をAHの国を目指す者達が開拓
安定した居住空間を作り出している
外部との取引も行っており、AHに必須のエネルギー剤などの確保も滞りなく行われている
危険区域であるためAH以外が訪れる事は珍しいが、普通の人間もいる
居住上の問題点は娯楽が少ないことくらいであろうか
眼帯「お嬢ちゃん、また来たのか」
帽子「赤ちゃん見たかったからね〜」
マント「ここに住んじまえば良いのに」
帽子「遊ぶ所無いからやだ」
マント「あいたた……」
眼帯「そのうち映画館やレストランくらいは作ろうと思うが、まあしばらくはAHの人材集めだ」
帽子「ただでさえ少ない上に、AHは狩りで死んじゃう人も多いから大変だね」
眼帯「生産ももう行われてないからな……まあこうやって餓鬼が生まれてきはじめたのが幸いだが」
帽子「子供の身体能力や健康状態を聞いてこいって博士に言われたんだけど」
女医「概ね異常は見られない。 AHとしての能力も持っている」
女医「母体もダメージは少ないな。 案ずるより産むが安し、か」

141 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:44:28.28 ID:DwPfEm8AO
帽子「でもやっぱり危険性は高いんだよね」
女医「管理状態がしっかりしていないならやめた方がいいな」
女医「博士ちゃんなら大丈夫かも知れないが……まあ先の話か」
帽子「このままAHが増えていくとどうなるんだろう……」
眼帯「オールドタイプに溶け込めたら良いが、多少の差別や問題は起こるだろうな」
眼帯「とは言っても止める気は無いが」
帽子「平和に子供を作れる社会になったら良いね……」
マント「そうだな」
…………
旅男「さあ、二億分ゆっくり休もうか」
藍「映画行きましょう、グレイトフルゾンビライス」
茶髪「嫌なネーミング」
旅男「どっかのチェーン店のメニューっぽいな」
藍「協賛です」
旅男「パス……、またあのチェーンで飯を食ってたら思い出しそうだ」
博士「釣りに行くか」
旅男「良いねえ」
藍「じゃあ食事だけ奢って下さいね!」
旅男「もちろん」
茶髪「飯だ〜」
藍「最近できたCDショップも行きたいな〜」
旅男「まあ色々行ってみようぜ」

142 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:46:02.49 ID:DwPfEm8AO
…………
旅男「よしきた、大物だ」
博士「所で帽子とはどこまで進んだんだ?」
旅男「いきなりなんだセクハラ親父少女」
藍「私も聞きたいな〜」
旅男「なんもねえよ、まだあいつ十四だぞ?」
博士「私はいつでもオッケーだ」
旅男「ねえよ」
帽子「浮気したら許さないから」
旅男「うわあっ!」
博士「お帰り、どうだった?」
帽子「うん、順調みたいだったよ」
博士「AHの国なんてこだわりは差別的で好きではないが、まあ上手くいってるなら良かった」
帽子「旅男、子供作ろう」
旅男「いきなりストレート過ぎるだろ!」
帽子「まあ二十歳になるまでは待ってね」
旅男「おう」
藍「いいですね、幸せそうで」
茶髪「……」
博士「私は茶髪君でもいいぞ」
茶髪「……」
旅男「真っ赤になってんじゃねえマセ餓鬼」
帽子「あ、旅男、引いてるよ!」
旅男「お、よしよし」
博士「次のハントはどうするか」
旅男「イーターイーターを作りに行くか、森を作りに行くか……」
旅男「……ま、この先ものんびりやろうか!」
ーーおまけ、終わりーー

143 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:52:46.88 ID:DwPfEm8AO
ちゃんと更新できてるのか不安ですが、このお話はここで終わりです
中央政府に逆らうような風呂敷の広げ方も考えていましたが、準備が足りなかったのもあって、小さな恋の物語を主題にしました
次回作も作れたら良いなあ
SFは初めてで表現が受け入れられなかったのも素直に受け止めています
次もSFですが、楽しんでいただけたら幸いです
プロットはもう出来ています
来週か再来週には書き始めようと思ってます
見つけて下さったら嬉しいです
では、また