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料理人と薬学士

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Part2
15 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:12:40.57 ID:IlYXT6yAO
見た目と言えば薬学士である
見た目はほとんど湖に住んでいる妖精さんなのに、マジックアイテムらしきものを振るいほとんどの魔物を一撃で追い返す
それらを自作する知性も瞬間的な判断力も、料理人にはすごく意外だった
ただほとんど子供の性格が災いしてか、風で揺れる木をモンスターと勘違いして危うく山火事にしそうになったりもしたが
まあそういったドジも可愛らしく感じる
学者「薬学士ちゃん、今度一緒に山に入って〜」
薬学士「いーよ!」
薬学士「うーん、このあとはお買い物するから、明日一日準備して、明後日なら」
学者「了解でやすっ」
料理人「じゃあお弁当作らないとね」
学者「マジですかい?!」
薬学士「やったあ〜!」
料理人「ふふ、可愛いんだから……」
美味しいごはんで嬉しそうにする子供が大好きな料理人には、とても幸せなことだった
料理人「明日は私は食材を取りに森に入るかな?」
料理人「この辺りの地理に詳しい人が居たら教えて欲しい」
学者「それなら狩人くんですねえふひひ」
学者「暗い森の中、若い男女が二人きり……むふひ」
料理人は思わず出刃包丁を構えたくなった……

16 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:23:33.60 ID:IlYXT6yAO
その日は料理人の服を買いに出掛け、三人で長身にはワンピースだの、冒険者にはハーフパンツだのと盛り上がった
晩御飯も三人で食べ、三人娘の仲は深まっていった
翌日、薬学士は部屋に籠もる
学者が料理人と狩人を引き合わせた
狩人は地元の少年である
弓やナイフが得意で、薬草にも詳しい
ただその見た目は、くりくりした目、学者とさほど変わらない身長で、可愛いと言っていいほどである
年も薬学士と同い年だった
料理人「よろしく」
狩人「よや、よろしくですっ」
狩人「綺麗な方ですねっ」ポッ
料理人「あ、ありがとう」///
二人は手早く準備をすると、すぐにも森に入ることにした
料理人「お昼はサンドイッチとか用意してあるから、二人で食べて」
学者「はいはい、了解でやすっ、森の中できゃっきゃうふふをお楽しみくださいっ」
料理人は出刃包丁をちらつかせた
学者「ふひいっ! すみませんすみませんちょーしのりゃしたっ」ガクブル
料理人にしてみれば保護者気分にはなるものの、恋愛対象としては見られない
この子なら安全だろうし、道案内には打って付けである

17 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:29:00.81 ID:IlYXT6yAO
狩人「料理人さんは戦える人ですか?」
料理人「それは大丈夫だよ、でっかいしね」
狩人「でっかいと言うかスラッとしてますよね」
料理人「あはっ、ありがとう」
あまり容姿をほめられるのは得意ではない
なんだかむずがゆくなる
それより魔物のいる森だ、油断はできない
料理人は緩やかに気を引き締めた
料理人「とりあえず川に仕掛けをしておきたいかなあ」
料理人「野鳥や猪なんかも捕獲できるならして欲しいかな?」
狩人「罠はいくつか仕掛けていますので見回ってみます」
料理人「そう、地元だものね」
狩人は薬学士同様に土地勘はしっかりしているようだ
明日学者も連れて山に入るのは若干不安ではあるが……
主に学者がいることが
料理人「ん、この辺りのキノコは食べられる奴ばかりだな」
狩人「詳しいんですね」
料理人「私の料理の師匠が自分で食材を取って初めて一流って主義の人でさ」
料理人「時には毒キノコも食べさせられたよ……」
狩人「は、ハードですね」
料理人「魚やカニも獣肉もだいたい自分で取って食べてたなあ……皆に振る舞いもしたし……」
狩人「……」
狩人(なんだか寂しそう……)

18 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:32:33.57 ID:IlYXT6yAO
キノコや木の実、山菜を中心に魚や野鳥なども沢山収穫できたので今日は帰ることにした
料理人「これで一週間は持つかなあ」
狩人「じゃあ帰りましょうか」
料理人「晩御飯はごちそうするから、おいでよ」
狩人「ほんとですか! ありがとうございます!」
料理人「お米や小麦粉の買い置きはしてあるから……野鳥とキノコと……」
狩人「……職人さんなんですね」
料理人「いや、ただ好きなだけだよ」ハハッ
狩人「晩御飯楽しみだなあ」
料理人「うん、楽しみにしてて」
その後少し魔物との戦闘があったが、二人は無事に村に帰り着いた
学者「お楽しみは?! はやいっ! もっとくんずほぐれつ! 長時間愛撫しあいきゃっきゃうふふと……」
料理人「頭大丈夫?」
サクッと出刃包丁で頭をかち割りたいところをグッと我慢する
狩人「じ、じゃあ夜にまたお邪魔します」
学者「おうふ、夜這い宣告?」
さくっ
料理人「たくさん料理を用意して待ってるからね」
学者「えおおっ、なんですかこの出血はっ、目の前が暗くっ、回復薬ください薬学士さあんっ!!」
料理人「うるさいな」

19 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:35:05.85 ID:IlYXT6yAO
薬学士はその日のうちに赤や青の例のビー玉様のマジックアイテムや回復薬を用意していた
薬学士「旅立ち前に回復薬一本消費……」
疲れてるのか、どこか雰囲気がおかしい
料理人「紅茶入れてあげる、待ってて」
薬学士「ありがとう!」
料理人が声をかけると、すぐに元気な妖精さんが蘇った
料理人(やっぱり薬学士の仕事は大変なんだなあ……)
学者「私は砂糖少なめでっ」
料理人(……こいつは何をやっているのか……)
薬学士「出荷用のポーションも作らないとなあ……」
料理人「あまり根を詰めすぎるのも良くないよ」
薬学士「うん、ありがと」テヒヒ
料理人「仕事、大変なんだね」
薬学士「うん、お客さんに『助かった』って言われるとすごく嬉しいんだけど」
薬学士「基本的にお客さんの顔が見えない仕事なんだよねえ〜」
料理人「偉いよ、薬学士は」
料理人「……そろそろいいかな」
料理人がティーカップによく蒸らした紅茶を注ぐ
スプーンをセットして砂糖とミルクを揃えて出す
薬学士「喫茶店みたい!」
学者「たまらん香りですなあ」
料理人「さて、仕込みしておくか」


20 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:40:53.88 ID:IlYXT6yAO
最初に時間を置いた方が美味しい煮込みの準備をして火にかけ、魚、肉類をさばいて、今日食べないものは塩漬けにしておく
野草をよりわけていくつかを干しておく
キノコもオイルに漬けておく
料理人は学者と薬学士がぼんやりティーカップを抱えて見つめている間、手早く動いていく
薬学士「すごぉい……」
学者「森から帰ったばかりで、全くすげータフなお嬢さんですねえ」
料理人「時間はっ……と」
料理人「うん、グリルの下準備しておこう」
料理人「ん? どうしたの二人とも」
薬学士「かっこいいなって」ニヘヘ
学者「ぱわふりゃ〜ですなあ」
料理人「ば、ほめても何にも出ないよっ!」
料理人「あ、デザートの用意しておこうか」
デザートと聞いて二人の娘はだらしなく涎を垂らしはじめた
料理人「待っててね、今日のは美味しいよ!」
薬学士「いつも美味しいよ〜」
学者「サンドイッチも美味かったでやす」
料理人「そうか、良かった」
料理人にとって一番嬉しいほめ言葉だ
…………
狩人「お、お邪魔します」
学者「ナイスタイミング!」
薬学士「いらっしゃ〜い!」
料理人「さっそくテーブルに着いてよ」

21 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:43:37.42 ID:IlYXT6yAO
スープや野草の酢漬け、魚の煮込み、野鳥のグリル、定番のキノコサラダ、フルーツカクテル、ちょっとしたケーキまでが並んでいく……
テーブルにどんどん並ぶ料理に三人は涎を隠せない
薬学士「美味しそう……」
学者「はやくっ食べましょうっ、逃げるっ」
狩人「逃げません」
狩人「でもこんなごちそう初めてかも……」
料理人「良かったら家族の方にお土産も用意するよ」
狩人「ほ、本当ですか? すみません!」
料理人「じゃあ、冷めても良くないから食べようか」
薬学士&二人「いたらきまーっ!」
料理人「いただきます」クスッ
四人で美味しいごはんを食べながら、明日の山岳探索の話で盛り上がる
さながら遠足前日の宴会のようである
料理人「明日は何を探すの?」
学者「当然一番は魔晶石ですが、まず大きい結晶は見つからないのでえ」
薬学士「小さい晶石はあるから私はいくらか集めるよ」
学者「私は魔法菌類がついてそうな石をいくつか回収しますぅ」
薬学士「山道をたくさん歩くから今日は体をゆっくり休めてね」
料理人「体力は問題ないよ」
狩人「料理人さんがいたらボディガードも楽だなあ」

22 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:46:59.76 ID:IlYXT6yAO
むしろ一番の問題は
学者「むは?」
料理人はなんとなく、明日はリュックを背負わないですむ装備で行こう、と思った……
…………
4人は朝早く集まり、朝ご飯を薬学士の家ですました
学者「このベーコンサンド最高でさ!」
狩人「こんな美味しい朝ご飯食べれるのすごく嬉しいです」
薬学士「うはー! 山越えして海水で塩を作れるくらいパワーでるう!」
料理人「みんな大げさだよ、お昼はもうちょっと考えないとね……」
薬学士「楽しみ!」
学者「全くでやすなあ」
狩人「今日は僕頑張る!」
料理人「ははっ……有り難う」
…………
北の山ーー
山を登りはじめてすぐに、薬学士と学者はあちこちで極小のハンマーで小石を叩きはじめる
薬学士「この石惜しいな〜、魔法菌類は居るかも」
学者「マジですか、それデカい、いただきやしょう!」
いきなり荷物が増えた
料理人「まさかこの勢いで岩石を拾っていくのか?」
学者「当然でやしょう」
薬学士「ごめんね、一番ハードなルートなんだ」
狩人「僕はこのルートで鍛えられました……」

23 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:48:43.49 ID:IlYXT6yAO
料理人は背中に汗をかくのを感じていた
次々と岩石を背負わされている狩人がちょっぴり可哀想である
いや、かなり
薬学士「あ、あの崖上の石叩いてみたい」
学者「のう! ありゃけっこういい結晶の気配がしやすなあ」
料理人「いままで何度も登ってるんじゃないのか?」
薬学士「興味の的は尽きないんだよっ!」
学者「それこそ料理人様の料理に匹敵するでありますっ!」
料理人「あ、……そうなんだ……」
言ってることは良く分からないがとにかくすごい熱気だ
狩人「料理人さん、ガンバって!」
この二人の研究にかける情熱が桁外れにパワフルなのだと言うことだけ、料理人は悟った
料理人は長く一人旅をして、冒険者としての実力も特筆するレベルではある
しかし、研究者の研究にかけるバイタリティをわずかに甘く見ていたかも知れない
もはやこの二人の研究意欲は化け物と言っても過言では無かろう
料理人(私もまだまだ未熟だな……)
最初ははるかに下に見ていた学者ですら尊敬に値すると思えるレベルの熱意である
料理人(料理だって研究だ……負けないぞっ!)グッ

24 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:55:40.38 ID:IlYXT6yAO
山岳を右に左に上に下に飛び回る薬学士と学者
料理人は早くも帰りのことを考えていた
狩人「いつもはここで引き返します」
どうやら狩人の限界点に達したようである
薬学士と学者は色々なポイントを探っていたが
ふと一点に目をつけた
そこには異常な魔力が集まっている
薬学士は、見つけた、と言う喜びの表情ではなく、なんでこんな存在があるの、と言う表情
料理人「なんだ? 薬学士が何かを見つけた……」
そこに存在していたのは、巨大な魔晶石である
…………
料理人「魔晶石ってこんなにでっかいの?」
料理人の半身に及ぶ巨大な発光する鉱石…………
薬学士「こんなの自然に存在するわけない……」
学者「嘘だ……魔晶石結晶化にしたってこの大きさ、禁断の秘術レベル……」
薬学士「……師匠に聞かないと駄目……、これ放置できない……」
料理人「……??」
かつて、魔晶石とは、人工結晶が主流であった
そこにあった魔晶石は自然生成の五千倍、人工生成の千倍を超えようかと言う規模の大きさがあるらしい
薬学士「もしこれ全部エネルギーに変わったら……この辺りが……滅びる……」
料理人「」
料理人「……えっ!?」

25 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 02:58:15.95 ID:IlYXT6yAO
魔王、破壊神、それらの存在はこの世界にいくつも現れ、暴虐を振るった
しかし、地域全体が破滅したケースは非常に少ない
しかし、目の前の魔晶石にはその力があると言うのだ
薬学士「……」
薬学士は真っ青になり、震えている
学者「嘘です……これは幻です……」
学者はその結晶が魔晶石でないと証明できる理由を探しているらしい
刺激を与えないようにさすってみたり虫眼鏡で見たりしている
薬学士「だめ、今すぐにでも師匠のところに行かないと、私じゃ処理できない……!」
薬学士はなにやら分からない薬を何杯も浴びせながら、呟く
しかし、魔晶石には何の変化もないようだ
学者「……なんだこれ……なんだこれええええ!!」
料理人はそれが異常な状況であると悟った
料理人「い、一旦帰ろう……!」
薬学士「かえろうっ、はやくお師匠様に会わなきゃ!」
学者「うおお……」
料理人は狩人と共に、無理矢理二人を引きずるように山を降りた……

26 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 03:01:04.82 ID:IlYXT6yAO
料理人は薬学士の家に着くと、素早く紅茶を用意した
料理人「すまん、お前たちが混乱しているのは分かるが、自分の中で整理がつかない」
薬学士「わかんない……私もわかんないよお……」
学者「あんなもんがあるわけないんすよ……なんなんすかあれ……」
狩人「……」
狩人はこの異常な事態に涙目で震えている
料理人「……とりあえず、あれを分析できるのは薬学士の師匠だけなんだな?」
薬学士「……うん」
薬学士「会いに行こう……」
薬学士「秋風峡谷の魔王に……!」
料理人「!」
…………
夕方
料理人にできるのは最善の料理を提供することだけである
貴重な木の実や薬草、野草、キノコから、レアな野鳥の肉まで惜しむことなく使い、彼女らを勇気づけようとする
薬学士「……あったかい……美味しい」
学者「……今はとても有り難いでありんす……美味い……」
どうやら少しは彼女らの力になれているようである
料理人「秋風峡谷はここから更に北、4日はかかる道程を越えないと辿り着けない、か」
料理人「途中でどれくらい食材を賄えるのかな……」

27 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/14(金) 03:09:19.13 ID:IlYXT6yAO
料理人は考えた
食料を得られる経路、長い時間保ち、持ち運びできる食料、往復八日、人四人を支える料理……
薬学士「明日……出られる?」
料理人「……うん、任せておいて!」
料理人の胸には高揚感があった
人を生かす食、今ここにその技が求められている……
料理人「途中に湖もある……楽勝でしょ……たぶん」
料理人が真っ先に考えたのは水と小麦粉、米である
料理人「最大で100キロは持てるかな? ……25キロくらいが戦闘があっても楽に運べる限界かな……?」
料理人「四人が1日一人六百グラムの計算で十日くらい? ……水は絶対で、他に塩や調味料……、行ける? う〜ん」
…………
翌日、四人は村長に挨拶してから、北の湖、その更に北、秋風峡谷を目指し旅に出た
薬学士「装備は、これだけあれば足りるはず……」
料理人(食糧は……足りるかなあ……)
四人はまず、川を目指すことにした
薬学士「湖まで1日かかるかな?」
狩人「もう少し早く着くよ」
狩人「でも食材確保のために湖でキャンプをして一日、湖を回って源流の川に辿り着くのに更に一日」
学者「そこから北に上がると谷の入り口」
料理人「そこまで3日か」
薬学士「谷の中を進んで行く道は足下が悪いので1日かかると思う」