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女剣士「目指せ!城塞都市!」魔法使い「はじまりのはじまり」

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Part5
83 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:06:42.67 ID:se91g7ZAO
〜〜勇者の隠れ里、オリファンの町〜〜
女剣士「とりあえず魔法使いが狼主様に許可を取りに行ってるが、それ以外に開拓できる土地はある」
大工頭「とにかくこの宿はいずれ城に建て替えるとして、西に対しても東に対しても攻撃しやすい形を取るべきです」
大工頭「南の山から俺らが入れたことも鑑みて、南に砦の形で宿舎を建てやしょう」
女剣士「わりと頭が働くんだな、簡単に魔族に砦を奪われたクセに」
大工頭「ありゃとにかく相手が化け物でしたからね」
女剣士「その話をアンタらから聞けるのもすごく大きな収穫だったよ」
女剣士「町が大きくなれば功績をたたえてもいいくらいだ」
大工頭「もったいない話です!」
僧侶「ごはんができましたよ〜♪」
大工頭「はあ〜い♪」
女剣士「四十男の猫なで声は非常にキモい」
大工頭「あんまりでさっ」

84 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:08:56.75 ID:se91g7ZAO
大工A「それにしても」
大工B「勇者パーティーはみんな料理できるんっすね」
大工C「嫁にほしい……」
大工D「俺らは間違いなくモブだから諦めろ」
大工A「人生では主役なんだけどなあ」
大工B「兄貴、哲学ですね」
大工C「似合わねえなあ」
大工D「……まあ俺たちであの魔法使い様をびっくりさせるような仕事してみたいよな」
大工A「分かるわ〜」
大工B「俺は安定してうまい飯食えるだけで大満足だけどな」
ヤマナミ大工「頭ぁ、今後ともよろしくお願いしやす! こいつはヤマナミの名酒です、ぜひ飲んでくだせえ!」
大工頭「すまねえ、じゃあ一献いただくか」
大工頭「しかし俺なんかがいきなりあんたらの頭になっても良かったのかね?」
ヤマナミ大工「俺らは現地で仕事するよう言われただけの雇われ大工でさ! 大工頭殿みたいなリーダーがいるならそこにまとまった方が仕事もやりやすいってもんでさ!」
魔法使い「私たちの現在最大の目的は城塞都市建設。」
魔法使い「言わば、今は君たちが主役と言っていい。」
大工頭「総指揮は魔法使い様でさ!」
ヤマナミ大工「期待してますぜ!」

85 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:10:27.84 ID:se91g7ZAO
魔法使い「しくじったら今研究中の麻酔薬が……」
大工頭「勘弁してくだせえ」
ヤマナミ大工「こえぇ」
僧侶「魔法使いちゃんの薬は安全安心だよぉ〜♪」ニコニコ
大工A〜D&ヤマナミ大工衆「僧侶さまぁ〜! ラブリぃー!!」
魔法使い「いいなあ。」
大工頭「えっ」

86 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:13:33.26 ID:se91g7ZAO
そして春の月半ば、あらゆる策謀が渦巻く中、砦をかねた宿舎の建設が始まった
大工頭「とりあえず城壁も平行して、まずは木造でがっちり作ります」
魔法使い「生木は燃えにくいからね。 とりあえず建てる分には木造はなかなかいい。」
大工頭「まあ実際は木を乾かしてから使わないと割れたりするんで、城壁の方は応急で生木ですが、これから北の山の石を切り出させてそれでもって作り直す方針です」
魔法使い「実に助かるなあ。」
魔法使い「山賊になる必要があったのか。」
大工頭「不景気な時に一番に仕事を無くするのが俺ら大工ですから」
魔法使い「すごく勉強になる。」
大工頭「魔法使い様は現場主義で俺らにとっちゃ賢者様より賢者でさ」
魔法使い「おだてられる免疫がない。」///
大工頭「うちの衆は僧侶ちゃん命だけど、勇者パーティーはみんな可愛いよなあ」
大工頭「まあうちの衆以外と結婚してもらいたいもんだが」
魔法使い「親の心境みたいだね。」
大工頭「実際年の差は親子ですしね。 甘えてくだせえ」
魔法使い「毒針を手に入れたから実験したい。」
大工頭「勘弁してくだせえ」

87 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:16:38.72 ID:se91g7ZAO
女剣士「すごいな、こんなに早く家って建つものなのか」
魔法使い「まだ骨組みだけだけどね。 でも山賊たちはかなり優秀でビビった。」
魔法使い「とにかく一番大きかったのはヤマナミから製材を輸入し放題になったことだけどね。」
賢者「ヤマナミ王は女剣士様のためには協力を惜しみませんよ」
女剣士「……ありがたい」
魔法使い「……ふふっ。」
商人「彼らへの給金もヤマナミ王からの支払いですから、僕たちの負担は資材費用と山賊の皆さんへの給金だけです」
大工頭「山賊は勘弁してくだせえ、向いてなかったし」
魔法使い「あっはっは! 確かに!」
女剣士「」
僧侶「」
大工頭「ん?」
女剣士「いや、魔法使いがここまで明るいのは初めて見たかも」
僧侶「珍しいねえ」
大工頭「新しい仕事ってのはワクワクしますからねえ!」
盗賊「……僕も何か手伝えないかな」
魔法使い「私に抱っこされなさい。」
女剣士「」
僧侶「魔法使いちゃんハイテンションだねえ」ニコニコ
賢者(魔法使いさんは不思議な人ですねえ)
女剣士「そうだ、盗賊君に剣技を教えるように魔法使いに言われてた」
盗賊「えっ! 本当ですか!」


88 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:18:27.51 ID:se91g7ZAO
女剣士「最初の計画通りなら君は城塞都市を守る初めての騎士になるわけだからね」
魔法使い「嫌じゃなければ今日から騎士を名乗ってもいい。」
盗賊「……僕が?」
盗賊「いやっ!イヤじゃないんですけどっ!」
盗賊「……夢みたいだ……」
商人「いいなあ。 僕も財務担当とかすごく大きな仕事だけどね」
賢者「たまたまこの町に来たような私たちがこんなに優遇されて良いものでしょうか」
僧侶「みんなたまたまこの町に来ただけだから気にしなくていいんだよっ!」
女剣士「僧侶にそれを言われたら痛いな」ハハッ
魔法使い「全く。」フフ
盗賊「……可愛い」

89 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:20:32.21 ID:se91g7ZAO
赤髪を振り回すような女剣士の立ち回りは、まるでそのものが炎のようで
その翠眼は槍のように心を貫く
それに対し魔法使いはいかにも大人しいくるくる栗色の巻き毛に柔らかなブラウンの瞳が愛らしい
僧侶はクリーム色のセミロングで明るく太陽の光を跳ね返し、蒼の瞳が美しい
賢者「いいですねえ、勇者パーティーに男がいたら大変だったろうなあ」
女剣士「なにをひとりでぶつぶつ言ってんの? こっちきて飲みなさいよ」
賢者「ヤマナミ法では18で成人ですが飲み過ぎですよ」
女剣士「大丈夫、君より酔ってない」
僧侶「酔ってる人は楽しいよねえ、なんだかお酒を飲んでなくても楽しい気分になるの」
盗賊「わかるなあ」
商人「……お祭り……」
女剣士「ん?」
商人「お祭りを開けば人が集まるかも知れません!」
魔法使い「ナイス! 採用!」
女剣士「マジで!?」
商人「つか魔法使いさん16歳じゃなかったっけ?」
盗賊「なんで酔ってるっぽいの?」
僧侶「魔法使いちゃんはきっと空気で酔ってるんだね!」
魔法使い「なるほど。」
女剣士「まずは春の月、桜の舞い散る日は勇者祭りだな」

90 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:22:48.41 ID:se91g7ZAO
夏の月後半、宿舎完成パーティーの中で、女剣士たちのお祭り計画が盛り上がりを見せていた
盗賊「……でも本当に魔法使いさんの料理美味しい」
商人「胃袋をつかまれてしまうよね」
賢者「なにか怪しいほれ薬でも実験してるのかと」
盗賊「」
商人「」
賢者「……疑いそうですがそれはなさそうですよ、たぶん」
盗賊「たぶん!?」
商人「そこは断言してくださいよ」
女剣士「それで具体的な計画はあるのか?」
魔法使い「仮にとは言え宿舎が完成したから、本格的な人集めはすぐにでも行いたい所。」
商人「夏も真っ盛りだし、夏野菜を使ったお祭りが一番に考えられますね」
賢者「そもそもお祭りは収穫を祝うところから始まったわけですからね」
盗賊「商人くんっていろいろ知ってますよね……」
女剣士「私たちは剣士として努力すればいいのさ」
女剣士「知恵で言えば私は魔法使いに頼りすぎなくらい頼ってる」
魔法使い「いや、実際頼りすぎだけど。」
魔法使い「私なんかおおよそ賢者のくくりには入れない存在なのに。」
賢者「!」

91 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:24:20.82 ID:se91g7ZAO
僧侶「私、魔法使いちゃんがいなかったら、死んでたの」
僧侶「魔法使いちゃんのためなら、私どんな回復魔法でも覚えるよ!」
魔法使い「それ以上すごくなる必要あるのかね?」
女剣士「……僧侶はあんまり戦わないから凄さって伝わりにくいけど」
魔法使い「実際最強なのは僧侶ちゃんなんだよね。」
賢者「不思議ですよねえ」
賢者「皆さんまだまだ若いのに……」
女剣士「君も私と二つしか変わらないだろ」
魔法使い「……やっぱりそういうことなのかも。 勇者の力って……」
賢者「!」
女剣士「どういうこと?」
かつて
犬の勇者がいた

92 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:26:51.25 ID:se91g7ZAO
それはいかなる歴史書を紐解いても、一度も現れたことがない
犬勇者
魔法使い「勇者の力、光の力はおそらくこの世界に定まった量存在している」
魔法使い「今回はイレギュラー的に勇者が倒されてしまった。」
魔法使い「その結果、力の逃げ場として、仮にだと思うけれど犬に勇者の力が与えられた……」
魔法使い「しかし、器としては浅かった。」
賢者「それで……あの女剣士さんの力……勇者の魔法……」
魔法使い「勇者の力は漏れ出して、パーティーに与えられた。」
魔法使い「実質魔王にトドメを刺したのは女剣士と言っても過言ではないし」
女剣士「えっ、ちょっ」
僧侶「女剣士ちゃんが今の勇者なんだねえ!」
賢者「……いや、一番強く力を受け継いでるのはどう考えても僧侶さんですが」

93 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:29:16.57 ID:se91g7ZAO
魔法使い「僧侶ちゃんの能力は明らかに異常。」
女剣士「たかが13歳の僧侶だが、実戦をしたら私も負ける」
魔法使い「女剣士にここまで言わしめるのは世界で僧侶ちゃんだけ。」
賢者「……つまりそのそばにいる私たちにも、勇者の加護が働いているのでは……」
魔法使い「それは有り得ると思う。」
魔法使い「魔王を倒した後に私たちが更に強くなった理由とも合致する。」
僧侶「……犬ちゃんが亡くなったからだね……」
商人「……これだ」
賢者「?」
魔法使い「どれ?」
商人「最初に闘技大会を開催しましょう!」
魔法使い「ふふっ、勇者の加護を受けられる祭り!」
女剣士「ははっ、そりゃすごいな」
僧侶「みんなが強くなるならいいよね!」
賢者(……あまり良くないことのように思うのですが)
賢者(敵が増える可能性は考えないんでしょうか)
魔法使い(そこは勇者の力を正義の力と信じてるからだろうね)
魔法使い(私たちが正義であったかは、今となってはものすごく疑わしいんだけど)
賢者(!?)

94 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:31:56.64 ID:se91g7ZAO
魔法使い(私たちは、魔王が悪であると考えていた)
魔法使い(そしてその勢いのまま、魔物をひたすらに倒し続け、魔王と対峙し、魔王を倒した)
魔法使い(どこの侵略者?)
賢者(……)
魔法使い(私たちには晴らしても晴らしきれない恨みがあった)
魔法使い(私たちのパーティーは全員、肉親を魔物に殺された)
魔法使い(私は自殺さえ考えたほど苦しんだ……)
盗賊「!」
賢者(……まさか、それらが誰かの仕組んだ計略であったと……?)
魔法使い「そうだったら、やだな。」

95 : ◆5Q7Dc1cpwc/Q :2014/01/21(火) 01:33:53.14 ID:se91g7ZAO
賢者(勇者の力を彼女たちに与えている者とは誰だ)
賢者(なんのメリットがある)
賢者(なんだこのどうしようもない気持ち悪さは……)
賢者(……そもそもの魔王とは……!)
賢者(……)
魔法使い(……世界を女神が作り直そうとしているのかしら)
賢者(……私たちは遊ばれているのではないのか……)
魔法使い(楽しい遊びならいいわね)
賢者()
賢者(だからあなたは魔王と呼ばれないよう注意すべきです)
賢者(試みで世界を滅ぼされたりとかしたら困りますからね?)
魔法使い(困るですむのか。 大丈夫、私はみんなが好き。)
盗賊(僕も話に混ざっても良いですか?)

96 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:36:52.19 ID:se91g7ZAO
盗賊(……僕では力になれませんか?)
魔法使い「ラブリー!」ダキツキ
盗賊「ぐるじい…」
賢者「胸が無いとは言え」
魔法使い「死にたければいつでも」
賢者「私今日から愚者を名乗ります」
魔法使い「そうですね。」
盗賊「苦しい……」
女剣士「……私の時は変態扱いするくせに……」
女剣士「とりあえず夏の終わりに闘技大会、秋には収穫祭をしよう」
商人「収益を増やしたいところですね」
魔法使い「何種類か回復薬を作れるけど。」
女剣士「野菜とかも輸出できる規模で作れたらいいんだけどな」
僧侶「女剣士ちゃん、鍛治を始めたでしょ、なにか作れないかな?」
女剣士「大工に詳しい人がいて教えてもらってるけど、お互いまだそこまで技術がなくてさ」
大工D「とりあえず毎日鉄と向き合っていくレベルです」
魔法使い「なにか魔導具でも作ろうかな。」
僧侶「徹夜は駄目だよ〜!」
女剣士「例の秘薬の方はどう?」
魔法使い「だいたい捌けた」
魔法使い「効果を保存できる瓶を用意できたから当分は大丈夫。」
女剣士「でも無限ではないか」
魔法使い「いろいろ実験してきた成果はでている。」
女剣士「そもそも私はお前に頼りすぎだよな……」

97 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:39:14.84 ID:se91g7ZAO
?「頼もう!」
??「王子、そこはもう少し柔らかく」
?「? 頼まれて下さい!」
??「意味が分かりません」
女剣士「はいはい、どなた?」
女剣士「あ、旅人さんか、すまんね、今はごたついてて」
女剣士「宿の部屋は余ってるから、あ、後仕事がほしい人には宿舎もあるよ」
?「いや、そんな話をしにきたわけじゃないんだ……」
魔王「オレ現魔王なんだけどさ」

98 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:40:57.50 ID:se91g7ZAO
女剣士「……」ニッコリ
魔王「……ぼくわるいまおうじゃないよっ」プルプル
??「王子、そのセリフはスライムのレベルですよ」
女剣士「……!」
女剣士は再び戦闘態勢を取った
側近「すまん、私は敵ではないから」
女剣士「信じられるか!」
魔法使い「騒がしい。 どうどう。」
女剣士「」
魔王「だから俺は敵じゃないってば」プルプル

99 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/01/21(火) 01:44:08.62 ID:se91g7ZAO
魔法使い「来るのは推測してた。」
魔王「そうか」
魔法使い「私らはもうアンタらの敵じゃない。」
魔法使い(私がそう言っておけば女剣士は手が出せないから)
魔王(この人賢いなあ)
側近(勇者パーティーは魔王レベルの廃人であるのは間違い有りませんぞ)
魔法使い「四天王に勝てるのは魔王か側近レベルだけ。」
魔法使い「四天王と敵対していながら、魔王は四天王にトドメをさせない」
魔法使い「魔王は『悪』ではなかったとするなら。」
魔法使い「なら魔王は四天王と敵対している上で、四天王を倒しきれない理由を保持している。」
魔法使い「全部推測だけど、そうすると魔王が魔王以外の勢力と接近する、その際に一番自由に動ける勢力がうち。」
魔法使い「それだけ。」
側近「王子、この方も魔王ですよ」
魔王「オレはスライムとでも名乗ろうかなあ……」
魔法使い「気にしない。」