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幽霊「殺されました」

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Part2
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 16:52:49.05 ID:i0vNqOgb0
21
女「で」
幽霊「はい」
女「剛速球で帰ってきました」
幽霊「お帰りなさい」
女「はいただいま。でもついてきてたよね」
幽霊「ついていきましたね」
女「とにかくこれであたしは朝食を食べられる」
幽霊「良かったです」
女「まったくだ。終わったらネットしよ」
幽霊「このあと激写用カメラ買いに行きましょうよ」
女「低月給にそんな高価な物買わせるんじゃありません!」
幽霊「申し訳ない」
女「犯罪の瞬間を撮ることだってできる。そう、アイフォンならね」
幽霊「写りも綺麗なんですよね、それ。私も変えておけばよかった…」

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:20:53.56 ID:i0vNqOgb0
22
女「……」
幽霊「なにか」
女「はい、チーズ」
幽霊「チーズ」
女「やっぱり写らないなぁ」
幽霊「肉体ないですから」
女「射影機なら写せるかもしれない」
幽霊「除霊はやめてください」
女「『祭』!」
幽霊「超チートのアレですね」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:21:32.00 ID:i0vNqOgb0
23
女「やはりぺにょぺにょのコーンフレークは美味しい」
幽霊「私はパリパリとヘナヘナの中間あたりが好きでした」
女「あれもなかなかイケるよね」
幽霊「そういえば、樋口さんの守護霊さんがよろしくと言ってました」
女「あたしに守護霊いたの?」
幽霊「影からそっと見守っています」
女「ふぅん、どんな人?」
幽霊「ガチムチの身体に鎧を着けて刀を下げたおじさんです」
女「最強すぎるだろあたしの守護霊」

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:22:13.66 ID:i0vNqOgb0
24
幽霊「中身は非常にナイーブですが」
女「なにそのギャップ」
幽霊「樋口さん大事にされていますね。私は危うく死ぬところでした」
女「ツッコむべき?」
幽霊「出来れば」
女「もう死んでるじゃん」
幽霊「そうでした」
女「こちらとしては非常に反応困るからさそれ…」
幽霊「気を付けます」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:22:57.70 ID:i0vNqOgb0
25
女「うー」
幽霊「寝ころびながらネットで動画を見る未婚のOLの図」
女「やかましいわ!」
幽霊「元気ですね」
女「空元気だからねこれ。殺人犯が近くにいて平静保つのでやっとだから」
幽霊「でも、さっき出かけたきり帰ってきていませんよ」
女「じゃあ仕事かな? でも結局はここに帰ってくるからなぁ…」
幽霊「ここからいったん離れたらどうです? 実家に帰るとか、ホテルに行くとか」
女「実家は新幹線で二時間だから出勤無理だし、ホテル住まいのお金なんてない」
幽霊「困りましたね」
女「あー、今日中にどっかでポカして逮捕されてくれないかなー」
幽霊「そんな都合のいい話などあるわけないでしょう」
女「あっさり否定された」
幽霊「つい」


37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:23:23.85 ID:i0vNqOgb0
26
女「そういえば」
幽霊「どうしました」
女「あなた食べられたんだよね」
幽霊「はい」
女「それにしては今の姿がきれいだなと。傷一つないじゃん」
幽霊「本気出しましたから」
女「出したんだ」
幽霊「片目と腕と足がなくて肋骨がむき出しで内臓が半分出ている幽霊に話しかけられたくないでしょう?」
女「あー…なんかごめん」
幽霊「もう終わったことですから」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:25:53.24 ID:i0vNqOgb0
27
女「強いね」
幽霊「ただの諦めです」
女「諦め」
幽霊「はい。もうどうしようもないので」
女「……」
幽霊「だから、せめて残った身体だけでも家族のもとに帰したいんです」
女「そうだよね」
幽霊「ごめんなさい。こんな話」
女「ううん、いいよ」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:26:15.31 ID:WSqaR4G00
28
幽霊「結局ネットで午前中終わりましたね」
女「やっているときは楽しいけど、ふと何してるんだろう自分って虚しくなる」
幽霊「わあきつい」
女「お昼はパンにしよう」
幽霊「ラピュタパンにしないんですか?」
女「あれ食べにくい」
幽霊「なるほど」
女「それに目玉焼きに醤油かけないと死ぬ病気にかかってるから」
幽霊「めんどくさい病気ですね」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:26:47.90 ID:WSqaR4G00
29
女「食パンと醤油って合うのかなぁ…」
幽霊「試してみないと何とも言えません」
女「試してみよう」
幽霊「感想をお願いします」
女「…いけなくもない」
幽霊「つまりは微妙だと」
女「そういうことになる」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/12(月) 22:27:19.82 ID:WSqaR4G00
30
幽霊「テレビ見ないんですか?」
女「見たい?」
幽霊「久しぶりに」
女「おっしゃ。スイッチ・オン」
幽霊「そいやそいや」
女「何してるの?」
幽霊「ボタンぐらいなら触れるだろうかと思いまして」
女「それでついたらマジもんのホラーだからやめて」
幽霊「つけた本人が見えているからいいじゃないですか」
女「幽霊がテレビつけるところから怖いんだってば」

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:54:34.30 ID:w1SR7+I60
31
幽霊「お昼ですからワイドショーぐらいしかないですね」
女「そうだねー。なんかみたいのある?」
幽霊「この姑と愛人のバトルが見たいです」
女「佐野さんはわりとえげつないもん好きなのね」
幽霊「あんまり興味はありません」
女「おい」
幽霊「おっと鋭い右ストレートだ」
女「再現ドラマでわざわざ殴り合わなくてもいい気がする」

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:55:01.62 ID:w1SR7+I60
32
幽霊「綺麗な左シャブです」
女「もうなんだこれ。なんだこれ」
幽霊「なにがすごいって、この一連の事件はあんまり関係ないところですよね」
女「もうただ殴りあわせたいだけじゃねーのコレ」
幽霊「お茶の間に刺激を与えたいんでしょうか」
女「衝撃しかないよ」
幽霊「ですね」

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:56:11.76 ID:w1SR7+I60
33
女「あ、行方不明事件のことやってる」
幽霊「みたいですね」
女「…まだちゃんとした犯人像はできてないのかな」
幽霊「二十代ほどの男性っていう目撃情報だけですからね。ずいぶん念入りにやってんだあの人」
女「犯人は男か女、年齢は二十代から三十代それか四十代から五十代とかいうのよりマシじゃない?」
幽霊「日本人もしくは外国人である」
女「そうそうそれ。あれネタだっけ」
幽霊「だと思います。…たぶん」
女「犯人が犯行当時に生きていたっていうのが最も重要な情報」
幽霊「あはは、違いありません」

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:56:37.89 ID:w1SR7+I60
34
女「さて」
幽霊「さて?」
女「夕方になったし、夜の買い出しに行くか」
幽霊「朝はあんなに外に行くこと渋っていたのに」
女「余裕がちょっとできた」
幽霊「できたんですか」
女「なんかあったら報告よろしく」
幽霊「分かりました。ところで」
女「え、なに。さっそくなんかあるの?」
幽霊「お風呂場の蛇口の締めが甘いです」
女「そういうことは早く言おうよ!」
幽霊「もしかしたらわざとなのかと…」
女「どういうわざとさなの!?」

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:57:52.73 ID:w1SR7+I60
35
幽霊「雪が降りそうですね」
女「この地方じゃめったに降らないよ」
幽霊「今年はちょっとだけ降るとか」
女「マジでか」
幽霊「私、雪が好きなんですよね。小さい時から」
女「ふぅん」
幽霊「だから家族旅行でスキーとか行くのがすごく楽しみでした」
女「ああ…そうなんだ」
幽霊「どうしましたか」
女「佐野さんの家族は佐野さん待ってるのかなって…」
幽霊「そう…ですね。連絡なしに消えましたから…」
女「うん、決めた」
幽霊「決めた?」
女「絶対に佐野さんをおうちに帰してあげるから」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:58:55.97 ID:w1SR7+I60
36
幽霊「いきなりどうしたんです」
女「そこは『きゃーかっこいい』ぐらい言ってよ」
幽霊「きゃーかっこいい」
女「今まで、幽霊の助けとか訴えとか聞かないふりして生きてたんだ」
幽霊「私が見えてるから霊感はあるのは知っていましたが、そこまでですか」
女「うん、怖くて仕方がなかった。でもさ、みんな戻るべきところに戻りたいんだよね。佐野さんの話を聞いて思ったの」
幽霊「樋口さん…」
女「だから、最初に佐野さんを救う」
幽霊「…無理はしない範囲で、お願いしますね?」
女「ええー、出鼻くじくようなこと言うなよー」
幽霊「あはは、でも」
女「ん?」
幽霊「ありがとうございます」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 02:59:31.23 ID:w1SR7+I60
37
女「ただいま」
幽霊「おかえりなさい」
女「大家さんから煮物のおすそ分けをもらいました」
幽霊「近所づきあいのあるアパートですね」
女「少ない住居人のうちの一人だしねぇ」
幽霊「たしかにここ少ないですけど、どのくらい入居しているんですか?」
女「…部屋数の半分」
幽霊「すくなっ」
女「ここら辺治安悪めだし、駅から遠いし、表がオンボロだからしかたないんだけどね」
幽霊「治安悪いんですか」
女「っていっても夜中にヤンキーが喧嘩して警察にしょっ引かれたりだけどね」
幽霊「よく独り暮らしできますね」
女「家賃やすいから…」
幽霊「それだけで決めるというのはいかがなものか…」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 03:00:03.87 ID:w1SR7+I60
38
女「さて、夕飯を作ります」
幽霊「はい」
女「肉を焼きます」
幽霊「離脱します」
女「えっ」
幽霊「その、ちょっと…自分の身体を使って料理させられたことがフラッシュバックしまして」
女「ごめん、小声で聞こえなかった。もっかい言って」
幽霊「幼少時に生肉食べておなか壊した記憶がよみがえりました」
女「ワイルド!」
幽霊「お肉焦げますよ」
女「うわ、やばい」

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 03:00:35.36 ID:w1SR7+I60
39
女「できました」
幽霊「見事な出来栄えです」
女「そんなに褒められても困っちゃう」
幽霊「ただ盛り付けを頑張ってください」
女「どうせあたし一人しか食べないんだからいいじゃん…」
幽霊「ここで変な癖作るとお嫁に行ったときに癖出ますよ」
女「うちのママンか」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 03:01:06.59 ID:w1SR7+I60
40
幽霊「なんというか」
女「ん?」
幽霊「まともな材料でまともに作られた料理ってこんなに美しいんですね」
女「大げさだよ…」
幽霊「もうこの数か月の食卓は赤赤赤で…」
女「オッケーいいかあたしは今ご飯中だえぐい話はやめよう」
幽霊「私の妹はスプラッタ映画みながら朝ごはん食べられる子でした」
女「いやすぎる」
幽霊「さすがに怒りましたけどね」


56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/14(水) 03:01:43.49 ID:w1SR7+I60
41
女「ごちそうさまでした」
幽霊「おそまつさまでした――って、私は作っていませんけどね」
女「とりあえず隣隣人をなんとかする作戦を立てようと思う」
幽霊「電話のベルみたいですね。リンリン」
女「さっそくだけど、強いの?」
幽霊「強いですね。筋肉があるというか、ポイントを押さえてますから」
女「ちからタイプじゃなくてわざタイプか…」
幽霊「樋口さんはなにか武道習ってました?」
女「ないんだなぁそれが」
幽霊「ではとにかく接触しないようにしないといけませんね」
女「そうだね。もし明日、例の捨ててるところを写真に撮れたら言うことないけど」
幽霊「うまくいくといいのですが」
女「わりと運とかいいからね、あたし」
幽霊「運に頼るんですか…」
女「所詮この世は運ゲー」
幽霊「その通りですけど」

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