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妹「電気つけないでぇっ!!!!」

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Part4
442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:00:43.84 ID: Kav2TyQH0

――ただ純粋に生きたかった、現実の兄に優しくしてほしかっただけの妹。


兄「妹…」

妹「…うん?」

兄「これから、ずっとおまえのそばにいてもいいかな」

なんて、ベタで恥ずかしいこと言ったり

妹「…いいよ」

そんな幸せそうに言う妹を抱きしめ続けたり。

…こんなのを、ずっと望んでいたのかもしれない。
僕の可愛い、ただ一人の妹は。

450:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:08:32.53 ID: Kav2TyQH0

そのまま放心したまま、どれだけの時間が経ったのだろう。

すると1階から、いつもの足音が聞こえてくる。
とても耳障りで、妹が怖がっている――いつものやつだ。

母「部屋片付けたんだろうなっ…ってちゃんと片付いてるし」

そして、抱きしめ合う僕たちを一瞥すると

母「…何やってんのあんたら? …それより、パソコンつかってないなら電源消せっていってんだろっ!」


妹は、母の怒鳴る声など聞いてすらいなかった。
それが癪に障ったのか、

母「…おい、なんだよその態度は!ちょっとこっち来い」

妹「――っ」

妹の髪の毛を鷲掴みにした。
でも大丈夫、僕が…おにいちゃんがついてるから。

458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:14:41.97 ID: Kav2TyQH0

兄「っ ――――やめろっ!!」

気付けばそう叫んでいた。

轟音が部屋を揺らすように響き渡り、鷲掴みにする母の腕を思い切り掴んだ。
骨を折ってしまうんじゃないかと思うくらい力を込めて――

母はぎょっ目を丸くした目で僕をみつめ、すかさず妹から手を離した。

兄「…次手を出したら、その前歯圧し折るからな」

少なくとも、親に向かって聞く口ではない。
そんなことは分かっているのに、どうしても大事な妹に暴力を振るう母が許せなかった。







476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:22:10.85 ID: Kav2TyQH0

兄「大丈夫か…? 痛かったな」

優しくそう声を掛け、僕は可愛い妹の頭を撫でた。

妹「……」

妹は茫然とした目でこちらをみつめていた。
何が起きたのかわからないような類の。


兄「怖かったな…でも、もう大丈夫だよ」

僕はぎゅっと妹のことを抱きしめ、背中を撫でてやる。

妹「…ん」

妹は、心地よさそうな声を上げると僕の顔をみつめ、少し顔を赤くして照れたような素振りをみせた。

482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:29:32.82 ID: Kav2TyQH0

それからずっと、妹と過ごした。
夜明けがやってきたのか、徐々に外が明るくなって行くのにつれ部屋に明るさが増していく。

妹「…ふふ、お母さん凄かったよ」

兄「ん…?何が」

妹「さっき、信じられないような目してた…。おにいちゃん、凄い怒ってたから」

妹はそう言って、くすくすと笑い始めた。

(そう、か…)

これで、正しかったのかもしれない。
こうやって妹が笑ってくれるのが、兄である僕にとって…とても幸せなことだ。

兄「なぁ…」

妹「んー?」

兄「一緒に、この家から出ないか…?」


490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:35:13.89 ID: Kav2TyQH0

妹「それって…家出ってこと?」

兄「うん…」

いっそのこと、国から出たかった。
妹を追い詰める、冷たい目で見下す、この世の中から。

妹「でも…宛てはあるの?」

兄「……」


僕たちは所詮学生。
バイトで溜めた金があるが、そんなちっぽけなものじゃ妹と暮らすなんて、たかが知れてる。

妹「別にいいよ、おにいちゃん…」

兄「…ごめん」

妹「いいの。おにいちゃん庇ってくれた時、すごい嬉しかったから…」

そう言って、妹は僕にもたれついた。

497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:40:43.69 ID: Kav2TyQH0

妹「この家で、おにいちゃんと一緒なら私はそれで…わたしは怒られても、殴られても別にいいよ」

兄「……」


…妹は、怒られるようなことをしたのか?
殴られるようなことをした?

なぜ冷たい目でみられないといけないんだろうか。
どうして世の中から、後ろから指を差されないといけないのだろうか。

――妹は、なにか悪いことをしたのだろうか?

兄「そんなこと、いうなよ…」

妹「ん…」

僕は妹をさらに抱き寄せた。


505:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:48:22.22 ID: Kav2TyQH0

兄「なあ…」

妹「なぁに?」

兄「…今日は、一緒に寝ようか」

そうして、妹は小さく頷いた。





兄「んじゃ、電気消すよ」

僕の部屋に妹を連れ込むと、2人はそのままベッドになだれ込むように入った。

妹「…うん」

掛け布団で口を隠しながら、妹がそう頷く。

517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 04:57:26.56 ID: Kav2TyQH0
妹「…ねぇ、おにいちゃん」

明かりのない静謐な空間の中、小さく声をかけてくる妹。

妹「どうして…あの時、守ってくれたの?」

(ああ…)

思い出したくも無い。
母が妹の髪を鷲掴みにした時の映像が脳裏を過ぎった――

兄「おまえが、大切だからだよ」

あたりまえだ。
そう言って肩まで伸びた髪をそっと撫でる

妹「大…切?」

兄「…うん」

すると、妹は嬉しそうに目を細めると

妹「そっか…」

――ふふ、と嬉しそうに笑いを漏らした。

527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 05:01:25.93 ID: Kav2TyQH0

兄「さ、寝ような」

妹「…うん」

頭を撫でた後、背中に手を回し、ポン、ポン…と子供を寝かしつけるように優しくリズムを刻んだ。

…やがて妹の可愛らしい寝息が聴こえてくると、僕は天井をみつめた。


ふと、妹の日記のことを思い出した。


――森の中でログハウスを建てて、仲良く妹と2人暮らす。


…いつか、そんな日がくるのだろうか。

そんなことを考えながら、目を瞑ると徐々に意識が遠のいて行くのを感じた。





541:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 05:10:03.93 ID: Kav2TyQH0
ふと気がつくと、見えない鎖に縛り付けられていた。

(……う)

体が自由に動かない。
しびれるような感覚に、思わず吐き気のようなものに襲われた。

なんだろう、この恐怖感は。
誰かに睨み付けられているような――耳元で誰かが呟いているような。

慣れない感覚に、思わず体をもがくも指一本すら動かせない。

徐々に大きくなっていく耳鳴り、それが段々女の悲鳴のように聞こえ始める。
すると段々、意識な無くなるような…魂が抜けるようになり、わけが分からなくなる。

体が振動している。恐怖で震えているのか、誰かに揺らされているのかは分からない。

体の痺れが強まっていく――


妹「…おにいちゃん」

兄「――っ」

妹が、僕のことを見下ろしていた。

550:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 05:14:21.28 ID: Kav2TyQH0

視界には部屋の天井――そして、不安げにみつめる妹の顔。

妹「…汗、すごいよ」

兄「…う、うん」

なんだろう?――初めての体験に心臓の鼓動が止まらない。

(金縛りってやつか…?)


兄「…あ、もうこんな時間か」

妹「…?」

ベッドに置かれた時計をみると、既に8時過ぎを回っていた。






557:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 05:23:37.08 ID: Kav2TyQH0

友人「なんかおまえ顔色悪いぞ」

訝しげな顔して、前の席から授業プリントを回してくる友人。

兄「ああ、ちょっと両親と喧嘩して…」

朝の金縛りのせいではあるが、そんなことみっともなくて言えない。
この歳で金縛りを体験してトラウマになりました――なんてお笑い草だ。

友人「へえ…めずらしいな。どうして?」

兄「ちょっと、妹のことで…な」

友人「ほう。ま、首突っ込む気は無いけどさ、まさか妹を庇ったのか?」

兄「? そうだけど」


友人「あんまり、そういうの止めてさ…そっとしてやるのがいいんじゃないか?」

兄「…。どうしてだ?」

560:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 05:30:07.73 ID: Kav2TyQH0

友人「おまえの妹、対人恐怖症で引きこもりなんだろ?」

兄「…それがどうした」

どうしてなのか、徐々に湧き出てくる嫌な感覚。
とにかく、不愉快だった。


友人「そ、そんな怖い顔するなよ。別にそんなつもりで言ったわけじゃない。ただ…」

…ただ?

友人「おまえ、妹のこと、将来どうするつもりなのか訊きたくてさ」

兄「どうするって…」

友人「自分が養うつもりなら、…止めとけ」

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