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妹「電気つけないでぇっ!!!!」

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Part3
277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:31:01.27 ID: Kav2TyQH0

両親から虐待を受け、誰にも構ってもらえず、何年もの間この暗い部屋の中で…。

『だらしない』
『怠慢だ』
そうやって世間から後ろ指を指されながら、黙って暴行を受け続けて…

兄「……」

僕はこの数年間、妹に何をしてやれたのだろう?

ただ見てみぬふりをして、妹がどれだけ傷ついてきたのか。
ただ偽善を振舞って何をしていたのか。

本当に…。

282:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:34:32.58 ID: Kav2TyQH0

兄「…え?」

次の日、バイトから帰ると妹はリビングで倒れていた。

兄「おい、しっかり…」

そうやって妹を転がすと、手首に血がついていた。


――だから、もう遅いのかもしれない。

(そんな…)

吐き気のような不快感が喉を伝ってこみ上げてくる。
頭の中が真っ白になり、何をすればいいのか分からなかった。

290:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:38:00.28 ID: Kav2TyQH0

世の中から拒絶されて、家族から拒絶されて、今度は兄から拒絶されました?
だから手首を切りました?

――バカか、自分は。

僕は震える足を無理やり立ち上がらせ、電話のある方へ向かう。


そして救急車を呼ぼうと番号を打ちつける…
しかし、指が震えて何度も打ち間違えてしまう。

294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:42:01.98 ID: Kav2TyQH0
そして、しばらくして妹は救急車で運ばれた。
自分も同情して、妹の眠る顔をただ見つめていた。





幸い、妹は軽傷で済んだ。

人間そう簡単に死ねないということ。
そんなの、分かっている。


妹の部屋。
布団で眠る妹の顔は、とてもすっきりしているようだった。

兄「……」

どんな思いで、こいつは手首を切ったんだろうか。

298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:46:13.42 ID: Kav2TyQH0

『妹は過去に何度もリストカットをしている』

今日、病院で伝えられたこと。
どうして、もっと早く気付いてやれなかったのか。

徐々にこみ上げてくる、自分に対する怒りと嫌悪感。


妹は幼い頃から虐めを受け、両親から虐待を受けて――

本当に、辛い毎日だったのだろう。

(…なのに、僕は…っ)

思わず、拳に力を込めた。


306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:49:52.03 ID: Kav2TyQH0

いったい、どれだけ知らん顔してきたのだろう。

病む妹に対して、人と話せなくなった妹に対して。

それなのに、なんだ?
学校へ行け? 彼氏を作れ? 結婚しろ?

何なんだよ…僕は。
この、何もできやしない愚か者は。

守るべき人間が――妹を守るべきである兄が、それをできなくてどうする?


僕は妹の顔を撫でると、布団に涙を垂らし始めた。

319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 02:54:45.00 ID: Kav2TyQH0

それから、何時間経ったのだろう。
夜になり、それでもずっと、布団で眠る妹のそばに居続けていた。

家のドアが開く音がした。

(…やっと帰ってきたのか)

僕は妹の部屋を出て1階に下りていった…






326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:00:33.38 ID: Kav2TyQH0

父「ああ…居たのか、兄」

兄「父さん…、妹のことをどう思ってる?」

父「なんだ、急に」

兄「……」

そして、父は僕の顔をみつめて黙り込んだ末

父「妹はな、おまえと違って出来損ないなんだよ」

兄「だから…暴力を振るうのか?」

父「ああ」



335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:03:32.38 ID: Kav2TyQH0

父「だから厳しくやらないとダメなんだよ、あいつは。」

父はそう言うと、タバコを取り出し火をつける。


兄「…あのさ、父さん」

父「なんだ?」


兄「今日、妹が手首を切った」

父「……」

348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:07:03.71 ID: Kav2TyQH0

兄「以前から、何回も切ってる…」

それを聞いた父は、タバコを吸い込み、少し黙り込んだ後…

父「それが、どうした」

兄「――っ」

この場で殴り倒したくなるような感情に襲われた。
親だからとか――そういうのは関係なく。


兄「…そうかよ」

吐き捨てるような言い方だった。

…そのまま、僕は2階に上がり妹の部屋に入った。

372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:21:06.84 ID: Kav2TyQH0

妹と相変わらず眠ったまま。

僕は妹の横に腰をおろすと、妹の寝顔をみつめた。

兄「…ごめんな、今まで」

思わず、そう呟いてしまう。
それは今までの謝罪のつもりなのかどうかはわからない。

ただ、妹のことを守りたい――そう思った。


布団の下に、何かがはみ出ていることに気付いた。

(これは…)

あの時、妹の部屋を片付けているときに見つけた、妹の日記帳らしきものだった。

380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:25:23.65 ID: Kav2TyQH0

1ページだけ、…そんな思いで僕はノートを開いた。
妹がどんな日々を送っているのか、どんなことを思って毎日を過ごしているのか。

そんなことが、とても気になってしまった。

兄「……」


『森の中に家を建てることにした』
『おにいちゃんと建てたログハウス』
『朝おきると、おにいちゃんが起こしてくれる』
『森の動物さんたちと、楽しく遊ぶ』
『夜になると、おにいちゃんにご飯を作ってあげる』

――なんだ、これは

389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:30:27.78 ID: Kav2TyQH0

『今日も“美味しい”って言ってくれた。すごく嬉しい』
『一緒に川まで魚釣りに出かけた。たくさん釣れた』

自分の身に覚えの無い、妹にとっての兄の姿…

『動物さんが怪我をした。おにいちゃんが手当てしてあげる』
『一緒にお風呂に入った。たのしかった』
『今日も一緒に寝る。おやすみって――

兄「……っ」

耐えられなくなり、ノートを閉じてしまう。

――この子は、いつも何を見ているんだ?

幻覚? 妄想? それとも…


399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:33:47.10 ID: Kav2TyQH0

もし、だ。

もし仮に、妹が幻のようなものをみていて、妄想の世界の兄と仲良く暮らしているとして…

この僕は、何だというんだろう。

この子の実の兄という自分は、なんの為に存在しているのか。


兄「……」

そんなことを考えると、とたんに悔しくなって、その場で涙を流した。





409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:38:00.40 ID: Kav2TyQH0

この子はずっと一人で過ごしてきた。
暗い部屋の中で、仮想という心の世界を作って…自分の理想の兄の姿を作り上げて。

なのに、自分は妹を責めていた。冷たく接していた。

妹「…ん」

兄「妹……」


妹が、目を覚ました。

僕は、この子にどういう顔をしてやればいい?

423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:47:16.97 ID: Kav2TyQH0

妹「…っ、おにい…ちゃん?」

妹は突然、少し驚いたような声をあげた。
僕の行動の意味を計りかねている、訝しんでいる、そんな反応だった。

兄「…ごめんな」

僕は思わず、妹のことを抱きしめていた。
頭の後ろを優しく撫で下ろし、妹の体――本当に小さい体を包み込む。

妹「……」

妹は、僕の言葉と行動に息を呑んでいた。
――そして、

妹「…うん」

僕の肩に顔をうずめ、静かに泣き声を漏らした。

429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:51:25.48 ID: Kav2TyQH0

兄「……」

妹「……」

部屋の片隅で、妹を抱きしめ続けていた。
背中に手を回し、ゆっくりと撫でる。

妹は既に泣き止んだが、僕に抱きついたままま。


(……)

この家族の中で、妹を守ることができるのは自分だけなのに
そばにいてやれるのは、兄である自分だけなのに。

なのに、自分は無意識的に妹のことを追い詰めていた。

そんな自分が憎くて憎くて仕方が無かった。
親から非難され続けて、親戚から非難され続けて、世間から非難され続けて…

こんな長い間、暗い部屋の中で妹はどんな明日をみつめて過ごしてきたのだろうか。

438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/03/09(火) 03:55:17.19 ID: Kav2TyQH0

ただ後悔し続けて、妹を抱きしめたまま――数時間という時が流れていった。

(これからは…僕が守らないと)

これからは妹のためならなんでもすると。自分が守ると。


妹はただ一点をみつめながら、黙ったまま。

でも少し体を離し、妹の顔をみつめると

妹「…ふふ」

少し嬉しそうに、幸せそうに微笑んだ。

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