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幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.

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Part24
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:08:24.22 ID:iytVn9FWo
 顔を洗うと少しだけ意識が冴えたが、頭痛と体のだるさのせいで眠りたくて仕方なかった。
 リビングに戻って時計を見ると、針はまだ五時半を差している。
 寝なおそう。
 床に敷かれた毛布の一枚に潜り込んで、俺はふたたび眠りに落ちた。
 
 再び目を覚ましたとき、なぜか屋上さんが腕の中にいた。
 混乱する。
 心臓がばくばくする。
 このままじゃまずい、と思う。
 とりあえずできる限り静かに、ゆっくりと、腕を引き抜いていく。起こさないように。
 動揺のあまり「せっかくだし観察しよう」とか思える状況じゃなかった。
 ていうかいっそ恐怖すら覚えた。
 このラブコメ的イベントの連続はなんなのか。
 絶対なんかの予兆だろ(被害妄想)。

662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:08:57.98 ID:iytVn9FWo
 なんとか体を引き抜いて、屋上さんからじりじりと離れる。
 立ち上がる。達成感。よくぞここまでがんばった。
 でも振り返るとみんなが起きていた。
 
 めちゃくちゃ見られてた。
 ユリコさんがニヤニヤ顔でこちらを見ている。やっぱこういうイベントか。
 なぜかからかったりしてくる人はいなかった。逆に怖い。
 その後、片付けやらなにやらが始まったので、なんだかんだでうやむやになる。
 相当後になってから分かったことだが、このとき屋上さんは狸寝入りをしていたらしい。

663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:09:28.73 ID:iytVn9FWo
 日が出て、それぞれが身繕いを終わらせてから、ちょっとのあいだ空白の時間ができた。
 大人たちはテーブルについて談笑している。るーとタクミはそこで一緒にお茶を飲んでいた。
 暇を持て余す。とはいえまだ帰るには早い。
 昨日の夜の記憶がほとんどない。
 そこまでひどいことにはなってないはずだが、なんとなく嫌な予感もする。
 幼馴染に昨日の夜の出来事を尋ねてみる。
「昨日の夜、俺、どんなんだった?」
「結婚を前提にお付き合いしてくださいって言われたよ」
 簡単そうに言った。
 それって親の前でか。
 恥ずかしすぎる死にたい。

664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:10:13.18 ID:iytVn9FWo
 ホントに? と屋上さんに聞いてみる。
「私も、僕と同じ墓に入ってくださいって言われたけど」
 どうでもよさそうに彼女は言った。
 冗談だろ、と思った。
 他人事のように横で見ていた後輩が、けらけら笑い出す。笑い事じゃない。
 妹を見る。
「私も、毎朝俺のために味噌汁を作ってくださいって言われた」
「それもう作ってるじゃん」
 急に冷静になった。
 でももう酒は飲まない。
「別にお兄ちゃんのために作ってるわけじゃないから」
 否定される。ツンデレ(希望的観測)。

665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:10:40.26 ID:iytVn9FWo
「この女たらし」
 幼馴染が笑いながら言う。
 ひょっとしてからかわれたんだろうか。
 昼前に解散になって、みんな家に帰った。
 
 家に戻ると、なんだか急に静かになりすぎて落ち着かない。
 二日酔い。腹の辺りに何かが埋まっているような不快感があった。そして頭痛。
 なんだか疲れているのを感じて、寝なおすことにする。
 目が覚めたのは夕方で、ちょうどすさまじい勢いの夕立が降り出したときだった。
 その日は何もする気になれず、結局ほとんど寝っぱなしだった。


666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/07(日) 15:11:08.11 ID:iytVn9FWo
つづく

667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/08/07(日) 15:11:38.29 ID:9zoQz2f6o
乙~
最低の論理は最高ですねばくはつしろ

668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) :2011/08/07(日) 15:14:51.54 ID:f7yMoKHN0

これはさすがに爆発してもいいんじゃないですか爆発しろ
あと部長かわいい

669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/08/07(日) 15:33:45.56 ID:hOYwEUEa0
乙です
おい男、なぜ後輩には求婚してない。お前がしないなら俺がすずちゃんに求婚してくる!

671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2011/08/07(日) 15:56:14.73 ID:6SHRalPX0

屋上さん、ヤバスwwwwww

694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:34:26.35 ID:rsGGGYgCo
 ある日、祖父母の家に遊びにいくことにした。
 暇は持て余していたし、親戚たちが帰ってくる盆までは日がある。
 うちにいるよりも山に近い祖父母の家の方が涼めるのではないか、という考え。
 裏の山を通ると、舗装された道路が丘沿いに進み、その左右には向日葵畑が開けている。
 田舎、夏、という風景。
 ちなみに舗装されていない山道を通って山頂に向かうともれなく虫に刺されたり筋肉痛になったりする。
 ついてすぐ、犬を散歩に連れて行くように言われる。
 
 暑いのに。
 わざわざなぜ外に。
 文句は黙殺され、結局、妹とふたりで‘はな’を連れて散歩をすることにした。
「暑い」
「暑いな」
 適当に歩く。なだらかな傾斜に沿って丘を登る。車がぎりぎりすれ違えるような狭い道路、はみ出た木々。
 太陽は疲れ知らずで、夏を延々と燃やし続けている。
 台風でも来ればいいのに。
 それはそれで蒸し暑いのだが。

695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:35:01.87 ID:rsGGGYgCo
 丘を登り、向日葵畑の間を歩く。
 子供の頃も、こうやって散歩をしたような。
 向日葵はまだ咲いていなかった。満開ともなれば声を失うほど綺麗なのだが、あいにく今年は開花が遅い。
 ぼんやり歩く。
 リードを持った手がぐいぐいと引っ張られた。急ぐこともないので、力をこめて抑え、ゆっくりと進む。
 丘を登りきってから引き返す。ふと横を歩く妹の顔を覗き見た。
 別に何も考えてなさそうな表情。散歩なんてするのも久しぶりだ。
 最近じゃコンビニかファミレスくらいまでしか歩かない。たまにはこういう時間も必要だろう。
 祖父母の家に戻る。
 昼寝がしたくなって座敷に寝転がる。祖母がタオルケットを出してくれた。子供の頃使った奴。懐かしい。
 せっかくなので妹も誘ってみる。
「一緒に寝る?」
「なんで? 暑いのに」
「いいから」
 強引に隣に寝かせる。タオルケットを共有する。天井。縁側から流れ込む風。風鈴の音。
「超落ち着く」
「私は落ち着かないけど」
 感覚の違いがあるようだった。

696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:35:33.64 ID:rsGGGYgCo
「このタオルに一緒にくるまって、怖い話したこともあったな」
「あったっけ?」
「あったんだよ。そしたらおまえがすごく怯えて、夜中にトイレにいけなくなって」
「それはない」
「まぁそれはなかったけど、怖がってたのは本当」
「そうだったっけ」
「そうだった」
 怪談とはいえ子供がするものなのだから、そこまで怖い話なわけがない。
 それなのに、そもそも妹は聞こうとすらしなかったのだ。
 懐かしい気分。

697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:36:00.53 ID:rsGGGYgCo
「おまえがお祭りでもらってきた風船を俺が割っちゃって、わんわん泣かれたこともあったな」
「それは覚えてる。私が買ってもらったお菓子を半分以上食べられたりとか」
「嫌なことだけ覚えてるんだな」
 そう考えると、あまり嫌な思いをさせるわけにもいかないと思う。 
 昔の話をしてみると、忘れていたことを結構思い出したりもした。
 自分では覚えているつもりだった記憶も、妹の記憶と比べてみると齟齬があったりする。
 
 なんとなく物思いに耽る。
 
 夏と田舎は人をノスタルジックな気分にさせるのです。
 しばらく黙っていると、いつのまにか妹は眠ってしまったようだった。
 俺だけ起きててもしかたないので、瞼を閉じて眠ろうとする。
 気付くと、起きているのか寝ているのか自分でも分からないような状態になっていた。
 しばらくまどろみの中で溺れる。眠っている、という感覚。

698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:36:26.90 ID:rsGGGYgCo
 目が覚めたとき、だいぶ時間が経っていたような気がしたが、実際には三十分と経っていなかった。
 それなのに、少し疲れが取れたような気がする。
 こういうときは少しうれしい。
 ふと見ると、妹は隣ですやすやと寝息を立てていた。
 落ち着く。
 普通の兄妹って、こういうことしたりするのかな、と思う。
 するかもしれないし、しないかもしれない。よく分からない。
 考えてみれば、俺と妹はふたりきりでいる時間が長すぎたのだ。
 祖父母と一緒に暮らしていた頃は、料理も出たし面倒も見てもらえた。
 それでも両親がいないのは寂しかった。
 家に戻って暮らすようになると、今度は自分たちのことは自分たちでやらなければならない。
 本来なら、母の仕事が落ち着いてきて、子供の様子を見れるから、という理由で家に戻ったはずだった。
 一年を過ぎた頃に、ふたたび母の仕事が忙しくなった。
 たぶん、人生でいちばん、毎日楽しくて仕方なかった時期だった。
 それ以前も以降も、寂しかったり忙しかったり落ち着かなかったりで大変だったし、今だってやることが増えて大変だ。
 多少、余裕は出てきたけれど。

699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:37:04.15 ID:rsGGGYgCo
 年上だからという理由で、祖母は俺に家事を仕込んだ。自然な考えだと思う。
 そこから少しずつ、俺が妹に教える。祖母に協力してもらいながら。
 一通りの家事を祖母の手伝いなしでこなせるようになる頃には、兄妹で協力しあうという考えはごく自然に身についていた。
 協力することを自然に思っているからか、あるいは両親がいない時間が多いからか。
 そのどちらのせいかは分からないけれど、どうやら他の人間からみると、俺と妹の距離は普通より近いらしい。
 実際、今になって思えばたしかに普通ではない、と思うようなことは多々ある。
 妹が小学校高学年になる前くらいまで、一緒に風呂に入ったりしていたし。一緒に寝てたし(1、2年前まで)。
 一緒に風呂に入っていたのは、祖母が俺たちをまとめて風呂に入れたから。
 一緒に寝ることが多かったのは、祖父母の家では全員が同じ場所で寝ていたからだ。 
 
 でも、いつのまにかそういうことはなくなった。たぶんそういうものだからだろう。距離はとれるようになっていく。
 それなのに、なんとなく、未だに、どこかで距離を測りかねている。
 油断すると、距離が詰まりそうになる。
 
 それが普通ではない、と、いつのまにか知ったから距離をとるようになっただけで。
 距離を測りかねている。
 たまに、困る。

700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:37:31.16 ID:rsGGGYgCo
 そういうときに助かったのか幼馴染の存在だった。
 子供の頃からユリコさんと一緒にうちに来て、俺たちと遊んだ。
 
 彼女は「ふつう」の基準を教えてくれる。どこがおかしくて、どこが間違っているかをはっきりとさせてくれる。
 とはいえ、幼馴染にも男兄弟はいないから、そのあたりは適当だったりしたのだが。
 自分たち兄妹以外の誰かがそばにいるというのは、上手な距離のとり方を把握していくのに一役買った。
 結果的に余計混迷とした気がするけど。
 なぜか幼馴染まで一緒に風呂に入りたがったり、一緒に寝たがったり。
 小学に入って少しした頃には、多少の分別がついて、幼馴染と入るときは水着を着てたりもした。そういうこともある。
 それが妹との関係に適応されたかどうかを考えると、微妙なところだ。
 いろいろがんばってはみたけれど。
 いまさら、「普通の兄妹の距離感」を手に入れるには、ふたりきりでいる時間があまりに長すぎた。
 もやもやする。
 困る。
 妹なのに。
 でもまぁ、考えても仕方のないことではある。

701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:37:58.26 ID:rsGGGYgCo
 起き上がって祖父母が休んでいる居間へと戻る。昼時らしかった。
「出前取ろうと思うんだけど、何がいい?」
 
 チャーハンとラーメンくらいしか選択肢がない。ラーメンは多彩。チャーハンは大盛りが有効。
「チャーハンとラーメン一個ずつ」
「妹は?」
「寝てる。どっちか分からないから、一個ずつ」
「はいはい」
 出前が届いてから、妹を起こした。四人で一緒に食事を取る。
 妹がラーメンを選んだので、俺はチャーハンを食べた。
「ちょっとちょうだい」
 要求される。食べさせた。
「俺にもくれ」
 分けてもらう。
 よくあること。

702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:38:38.28 ID:rsGGGYgCo
 夕方頃に、祖父に送られて家に帰る。泊まっていけとも言われたけれど、やめておいた。
 家に帰ってから、なんとなく手持ち無沙汰になってぶらぶらと散歩をすることにした。
 
 妹もついてきた。一緒になって歩く。ちょっと遠くまで。
 
 しばらく歩くと堤防があって、一級河川と書かれた看板が立っている。
 でかい川。前、幼馴染と一緒にここにきて、浅いところで遊んだ。
「台風、近付いてるらしいよ」
 不意に妹が言った。
「また?」
 この間もそんなことを言っていた。結局逸れていったけれど、今度はどうだろう。
 家に帰ってから、簡単なもので夕食を作った。
 料理は妹に任せる。その間風呂掃除を済ませて、お湯を張っておく。
 余った時間で課題を進める。もうほとんど終わっていた。
 部活動の日程を確認する。あと三回ほどしか活動はなかった。
 夕食の後、映画を見ようとして、祖父にDVDを返し忘れたことに気付く。今度また、いかなくてはならない。

703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:39:08.45 ID:rsGGGYgCo
 翌日、暴風警報だか強風警報だか大雨警報だかが出た。
 にもかかわらず、幼馴染とタクミの二人も、三姉妹も、なぜか俺の家にやってきた。
「風、強いなぁ、とは思ってたんですけど」
 後輩がぼそりと呟いた。
「台風とは知らなかったなぁ」
「テレビくらい見ろよ」
「夏休みのテレビなんてアニメの再放送スペシャルくらいしか見ないっす」
 それもそうかもしれない。
 強い雨が窓を叩いていた。風が木々をしならせている。
 とてもじゃないが外に出れる天気じゃない。
「帰りどうすんの?」
「まぁ、たぶんなんとかなりますよ」
 そういいながら三姉妹も幼馴染たちも、勢いが弱まったタイミングを無視し、完全に帰るタイミングを逸した。
 タクミとるーのテンションがやたらと高い。分かる。台風とか超ワクワクする。


704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/08/08(月) 11:39:35.31 ID:rsGGGYgCo
「いざとなったら、泊まっていいですか?」
「おまえそれ最初から狙ってたろ」
 言動とか、どう考えても面白おかしく騒ぎたくてやってきたようにしか思えない。
 けれど実際、夕方を過ぎても、台風も勢いを弱めなかった。すごい雨。
 テレビをつけると、川が増水して洪水の恐れがあると言っていた。恐ろしい。
 車で迎えでも頼まないと帰るのは難しそうだ。
 後輩は夕方頃に家に電話して、外泊の許可を取ったらしい。恐ろしい行動力。 
 タクミと幼馴染は無理をすれば帰れなくはないが、便乗してうちに泊まりたいらしい。
 もうどっかに集まってお泊りしたいだけにしか見えません。
 仕方ない。
 とりあえず普段使っていない和室をあけて、押入れにしまってあった敷布団を敷く。
 人数分はなかったので雑魚寝してもらうことにした。この間と同じだし問題ないだろう。
 俺は自分の部屋に寝るからいいとして、妹も和室で寝たがった。
 狭くはなるが無理ではない。女に囲まれて寝ることのできるタクミが羨ましくてたまらない。
 夜になると妹、幼馴染、後輩がキッチンに立った。やっぱりもともと計画していたんじゃないだろうか。
 というか、やけに多い荷物とか、よくよく考えるとおかしな点がいくつかある。
 そういえば冷蔵庫の中に、普段より圧倒的に多い量の食材が用意されていた。
 共犯か。妹を見る。目をそらされる。こいつだ。

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