のび太(31)「いらっしゃいませ。」
Part5
107 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:42:28.06 ID:yyKHaLZAO
2日後の休日 のび太のアパート
のび太(昨日もしずかちゃん、休みだったなぁ。)
今日は非番である。
あの雨の夜から2日が経過した。
のび太は昨日の夜も仕事終わりにしずかの店を訪れてみた。
しかし相変わらず店内に灯りはなく、昨夜同様ドアノブにぶら下げられたCLOSEの文字に淡い期待を打ち砕かれる結果となる。
ただ、どうやら一昨日の夜から昨日の夜までの間に、しずかは一度店に立ち寄ったらしい。
一昨日の夜にはなかった張り紙がドアに掲示されていた。
108 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:47:04.00 ID:yyKHaLZAO
『誠に勝手ながら、しばらく休業させていただきます。申し訳ございません。 店主』
張り紙にはそう記されていた。
A4のプリンター用紙に黒のサインペンで手書きしただけの簡素な物だった。
幼少の頃から変わらない女の子らしい丸文字。
だが、そのかわいらしい文字を見たからといって心が和む事はない。
のび太は知っていた。
しずかはいつも張り紙をする時は色鉛筆を使う。
109 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:48:11.41 ID:yyKHaLZAO
ターコイズ調のフレームや様々なイラストを全て色鉛筆で手書きし、その中央にお知らせを書き込むといった、見た目にも美しいカラフルな張り紙を作成するのである。
昨日のような殺風景な張り紙は見た事がない。
加えて、休業の理由や営業再開の予定も記されていない、見た目同様のシンプルな文面。
突発的かつ重大なアクシデントに見舞われ、趣向を凝らした張り紙を作成するヒマがなかったのではないか?
のび太にはそう思えてならなかった。
不安に思い、帰りの電車の中でメールを送った。
110 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:48:46.56 ID:yyKHaLZAO
To 源静香
sub 張り紙見ました
何かあったの? 大丈夫?
“僕で良ければ力になる”とは書かなかった。
心配する事と、安全圏からトラブルに関わりたがる野次馬根性の違いぐらい分かっているつもりだ。
だが一夜明け、午後4時を回った現在も返信はない。
気が気でなかった。
一体何があったのか。
のび太の脳裏からしずかの結婚という疑念が完全に消失したワケではない。
だが3日前に比べると、脳裏におけるその占有面積は大幅に縮小していた。
111 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:49:51.80 ID:yyKHaLZAO
それよりも、何か本当に良くない事が起こったのではないかという心配の方が遥かに大きい。
明らかにしずかの筆跡と分かる張り紙があった事から、犯罪に巻き込まれるなどの危険が及んでいるという心配はとりあえずなさそうだ。
となると、何か心が大きく傷付くような出来事でもあったのだろうか。
電話をしてみようかとも考えた。
だがそれではメールの返信を強要するかのようなニュアンスを含み兼ねないと思い、やめた。
112 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:51:45.63 ID:yyKHaLZAO
もししずかが本当に何かに傷付いて、メールを返す気力もないほどに塞ぎ込んでいたとしたら、電話は単なる追い討ちにしかならない。
結局のところ、僕は何の役にも立てないんだ。
ドラえもんのおかげで変わる事ができたと付け上がっていたが、それは単に本来の未来を回避しただけじゃないのか?
理想の未来へと向かっていたワケではないんじゃないのか?
しずかちゃんと僕は、結ばれる事はないんじゃないのか?
西日に溶かされてゆく休日を見詰めながら、のび太はそんな事を思っていた。
113 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:54:39.66 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・ドラえもん。」ポツリ
のび太「・・・・・・何か道具出してよ。」
114 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:56:18.04 ID:yyKHaLZAO
(のび太くん。君はすぐそうやって道具に頼ろうとするんだから。)
のび太「・・・・・・良いじゃないか、減るもんじゃ無し。ケチ。」
(け、ケチとは何だ!)
115 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:58:24.88 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・ケチだからケチって言ったんだ。」
(分からず屋!)
のび太「・・・・・・タヌキ。」
116 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:01:09.51 ID:yyKHaLZAO
(言ったな、このぉ!)
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・。」
117 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:02:19.36 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・頼むよ。ドラえもん。」
(・・・・・・もう。今回が最後だからね。)
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
118 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:03:37.48 ID:yyKHaLZAO
のび太「!!!!」ビクッ
着信音が静寂を突き破った。
弾かれたようにケータイに手を伸ばすのび太。
今の音はメール着信だ。
恐る恐る受信ボックスを開き、送り主の名を確認する。
源静香
しずかからの返信だった。
当然、今すぐメールの中身を見たいと思ったが、それと同時に見たくないと望む自分もいた。
見るのが怖い、と。
破裂しそうな程に高鳴る鼓動を感じながら、のび太は深呼吸をした。
そして、メールを開封した。
From 源静香
To Re:張り紙見ました
心配かけてごめんなさい。私は大丈夫です。明日、のび太さんのお店にお邪魔しても良いかしら?
のび太「ぼ、僕の店に?」
2日後の休日 のび太のアパート
のび太(昨日もしずかちゃん、休みだったなぁ。)
今日は非番である。
あの雨の夜から2日が経過した。
のび太は昨日の夜も仕事終わりにしずかの店を訪れてみた。
しかし相変わらず店内に灯りはなく、昨夜同様ドアノブにぶら下げられたCLOSEの文字に淡い期待を打ち砕かれる結果となる。
ただ、どうやら一昨日の夜から昨日の夜までの間に、しずかは一度店に立ち寄ったらしい。
一昨日の夜にはなかった張り紙がドアに掲示されていた。
108 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:47:04.00 ID:yyKHaLZAO
『誠に勝手ながら、しばらく休業させていただきます。申し訳ございません。 店主』
張り紙にはそう記されていた。
A4のプリンター用紙に黒のサインペンで手書きしただけの簡素な物だった。
幼少の頃から変わらない女の子らしい丸文字。
だが、そのかわいらしい文字を見たからといって心が和む事はない。
のび太は知っていた。
しずかはいつも張り紙をする時は色鉛筆を使う。
109 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:48:11.41 ID:yyKHaLZAO
ターコイズ調のフレームや様々なイラストを全て色鉛筆で手書きし、その中央にお知らせを書き込むといった、見た目にも美しいカラフルな張り紙を作成するのである。
昨日のような殺風景な張り紙は見た事がない。
加えて、休業の理由や営業再開の予定も記されていない、見た目同様のシンプルな文面。
突発的かつ重大なアクシデントに見舞われ、趣向を凝らした張り紙を作成するヒマがなかったのではないか?
のび太にはそう思えてならなかった。
不安に思い、帰りの電車の中でメールを送った。
110 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:48:46.56 ID:yyKHaLZAO
To 源静香
sub 張り紙見ました
何かあったの? 大丈夫?
“僕で良ければ力になる”とは書かなかった。
心配する事と、安全圏からトラブルに関わりたがる野次馬根性の違いぐらい分かっているつもりだ。
だが一夜明け、午後4時を回った現在も返信はない。
気が気でなかった。
一体何があったのか。
のび太の脳裏からしずかの結婚という疑念が完全に消失したワケではない。
だが3日前に比べると、脳裏におけるその占有面積は大幅に縮小していた。
111 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:49:51.80 ID:yyKHaLZAO
それよりも、何か本当に良くない事が起こったのではないかという心配の方が遥かに大きい。
明らかにしずかの筆跡と分かる張り紙があった事から、犯罪に巻き込まれるなどの危険が及んでいるという心配はとりあえずなさそうだ。
となると、何か心が大きく傷付くような出来事でもあったのだろうか。
電話をしてみようかとも考えた。
だがそれではメールの返信を強要するかのようなニュアンスを含み兼ねないと思い、やめた。
もししずかが本当に何かに傷付いて、メールを返す気力もないほどに塞ぎ込んでいたとしたら、電話は単なる追い討ちにしかならない。
結局のところ、僕は何の役にも立てないんだ。
ドラえもんのおかげで変わる事ができたと付け上がっていたが、それは単に本来の未来を回避しただけじゃないのか?
理想の未来へと向かっていたワケではないんじゃないのか?
しずかちゃんと僕は、結ばれる事はないんじゃないのか?
西日に溶かされてゆく休日を見詰めながら、のび太はそんな事を思っていた。
113 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:54:39.66 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・ドラえもん。」ポツリ
のび太「・・・・・・何か道具出してよ。」
114 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:56:18.04 ID:yyKHaLZAO
(のび太くん。君はすぐそうやって道具に頼ろうとするんだから。)
のび太「・・・・・・良いじゃないか、減るもんじゃ無し。ケチ。」
(け、ケチとは何だ!)
115 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 14:58:24.88 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・ケチだからケチって言ったんだ。」
(分からず屋!)
のび太「・・・・・・タヌキ。」
116 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:01:09.51 ID:yyKHaLZAO
(言ったな、このぉ!)
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・。」
のび太「・・・・・・。」
117 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:02:19.36 ID:yyKHaLZAO
のび太「・・・・・・頼むよ。ドラえもん。」
(・・・・・・もう。今回が最後だからね。)
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
118 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 15:03:37.48 ID:yyKHaLZAO
のび太「!!!!」ビクッ
着信音が静寂を突き破った。
弾かれたようにケータイに手を伸ばすのび太。
今の音はメール着信だ。
恐る恐る受信ボックスを開き、送り主の名を確認する。
源静香
しずかからの返信だった。
当然、今すぐメールの中身を見たいと思ったが、それと同時に見たくないと望む自分もいた。
見るのが怖い、と。
破裂しそうな程に高鳴る鼓動を感じながら、のび太は深呼吸をした。
そして、メールを開封した。
From 源静香
To Re:張り紙見ました
心配かけてごめんなさい。私は大丈夫です。明日、のび太さんのお店にお邪魔しても良いかしら?
のび太「ぼ、僕の店に?」
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