のび太(31)「いらっしゃいませ。」
Part2
32 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:19:47.36 ID:LtwPAmmAO
1週間後 東京某所の靴屋
のび太「いらっしゃ」
?「よぉ。」
のび太「!!」
?「久しぶりだな。」
のび太「す、スネ夫!!」
スネ夫「なんだよ、大袈裟だなぁ。僕の死亡説でも流れてたか?」
のび太「いや、そういうワケじゃないけど、急に来たらビックリするじゃないか!」
スネ夫「えっ? ここは靴屋だろ? いつから靴屋は完全予約制になったんだ?」
のび太「も~。そういう意味じゃないってば。その減らず口、相変わらずだね。」
スネ夫「おいおい、客に向かって“減らず口”とは何だよ? 」
33 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:20:39.24 ID:LtwPAmmAO
のび太「客? 客と言うからには何か買ってくれるんだろうね?」
スネ夫「何だとぉ? のび太のクセに」
のび太「生意気だってか?」
スネ夫「・・・。」
のび太「・・・。」
スネ夫「・・・プッ!」
のび太「プククククッ!」
スネ夫「ハハハハハハッ!」
のび太「アハハハハハッ!」
スネ夫「ア~ハハハハハッ! はぁ~、久しぶりだな、このやり取り!」
のび太「ハハハッ! ホントだねぇ。“のび太のクセに”とか、大概ひどい言葉だよね。」
スネ夫「まったくだ。子供って残酷だよな。」
34 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:21:27.84 ID:LtwPAmmAO
のび太「はははははっ。いや~、元気そうで何よりだよ。」
スネ夫「お陰さまで。のび太も元気そうだな。」
のび太「まぁね。あっ、そうだ。前にスネ夫のお母さんが来て下さったんだよ。」
スネ夫「あぁ。知ってるよ。あのダークブラウンのストレートチップの時だろ? 僕も母さんから聞いて顔を出したんだ。」
のび太「あっ、そうなんだ。」
スネ夫「母さん相手に靴の説明をバチッとキメたそうじゃないか?」
のび太「いやいやいや、そんな大した事は言ってないよ。訊かれた事に答えただけだから。」
35 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:22:51.68 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「いや、大したモンだ。うちの母さんはああ見えて実は財布のヒモが硬いんだ。自分が100%納得しなきゃ買わないタイプだからな。」
のび太「らしいね。お買い物のポリシーなんでしょ?」
スネ夫「そうだよ。その母さんを納得させるってんだから、ホントのび太のクセに」
のび太「生意気だ、ってもう良いよ!」
スネ夫「はははっ。」
のび太「今日はどうしたの? スネ夫はいま大阪に住んでるんだよね?」
スネ夫「あぁ。そうだよ。たまたま3連休がもらえたから、昨日実家に帰ってきたんだ。」
36 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:24:07.08 ID:LtwPAmmAO
のび太「そうなんだ。」
スネ夫「で、そのついでにさ、のび太のアホ面を見がてら靴の相談もしたいと思ってね。」
のび太「はいはい、このアホ面で良ければ聞きますよ。で、なに?」
スネ夫「うん、この靴なんだけどさ。」ガサゴソッ
のび太「どれどれ? わぁっ! スウェードのドレス(ビジネス)シューズ? しかも革底! スネ夫、通だね!」
スネ夫「へへっ。前々からスウェードのドレスは一足欲しいと思ってたんだけど、なかなか気に入るのが見付からなくてね。だけど、こないだ出張に行った先でこれを見付けて、一目惚れしたんだ。」
37 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:24:53.64 ID:LtwPAmmAO
のび太「分かるよ。シルエットも綺麗だし、何より手触りが全然違う。これは良い品だね。」
スネ夫「うん。だけど、一つ問題があって。」
のび太「問題? なに?」
スネ夫「歩いてるとさ、変な音が鳴るんだよな。」
のび太「変な音?」
スネ夫「うん。こう、キュッキュッて。」
のび太「子供のぴよぴよサンダルみたいな?」
スネ夫「そう! それ! まさにそんな感じ!」
のび太「あ~、シャンクかぁ。」
スネ夫「シャンク?」
のび太「うん。えっとねぇ・・・・・・こっち来て。」
スネ夫の靴をレジカウンターに乗せる。
38 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:32:53.29 ID:LtwPAmmAO
のび太「ほら、見て。ドレスシューズってさ、こんな風にヒールと前部分が地面に着いてて、土踏まずの部分は浮いてるよね?」
スネ夫「そうだな。」
のび太「でも、もちろんこの浮いてる部分にも体重はかかる。って事はさ、歩いてる内にこの部分が少しずつ下に沈んでいって、しまいには靴全体がVの字にへしゃげてしまってもおかしくないと思わない?」
スネ夫「あぁ、言われてみればそうだなぁ。考えた事もなかったよ。」
のび太「じゃあ何故へしゃげないのか。それは底材の中にシャンクという芯が入ってるからなんだよ。」
39 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:34:34.78 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「芯?」
のび太「そう。鋼の芯。まぁ、たまにプラスチックや木を使ってるシャンクもあるみたいだけど、一般に流通してる物はほとんど鋼を使ってるね。」
のび太「そのシャンクが底材の中に仕込まれてるんだ。だいたい、ヒールから土踏まずの一番先に至るぐらいの長さなんだけどね。そのシャンクが体重の負荷に耐えてくれるから土踏まずが沈む事がなく、靴もへしゃげないで済むんだ。」
スネ夫「へぇ、なるほどぉ。」
40 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:35:27.64 ID:LtwPAmmAO
のび太「だけどね、たまにそのシャンクが正しい位置に入ってなかったり、歩いてる内に本来の位置からズレちゃう事があるんだ。そうなるとシャンクが靴の中で擦れて、さっき言ったキュッキュッて音だったり、靴の中であちこちにぶつかってポコッポコッて音が鳴ったりするんだよ。」
スネ夫「それは何? 不良品だからか?」
のび太「まぁ、そうだね。5、6年履いてる靴だと染み込んだ汗や雨の湿気が接着剤を劣化させてシャンクがズレる事もあって、その場合は経年劣化だから有償修理になるんだけど・・・・・・この靴、ほとんど履いてないよね?」
41 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:36:14.15 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「まだ2回しか履いてないよ。2回目に履いた時に音が鳴り出したんだ。」
のび太「そっかぁ。じゃあ・・・うん、乱暴な言い方だけど、不良品だね。」
スネ夫「そうかぁ・・・・・・。」
のび太「とは言え、別に仕立ての悪いジャンク品って意味じゃないよ。靴は一足一足が手作りで製造されるから、どうしてもたまにミスがあるんだよ。接着剤の量が少なかったりね。靴屋の言い訳だと言われればそれまでだけど、所詮は人間のする事だから常に完璧というワケにはいかなくて。」
43 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:36:55.70 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「うん、それは分かるよ。そこまで難癖を付けようとは思ってないさ。けど、そういう事なら当然タダで修理してもらえるんだよな?」
のび太「そうだね。これは明らかにメーカーサイドのミスだから、買ったお店に持って行けばメーカーと連絡を取って無償で修理してくれるよ。」
スネ夫「買った店かぁ。さっきも言ったけど、その靴は出張先で衝動買いしたヤツなんだよ。その出張先ってのが福岡でさ。」
のび太「わぁ、遠いねぇ・・・・・・あれ?」
スネ夫「どうした?」
45 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:43:28.70 ID:LtwPAmmAO
のび太「いま中敷きのロゴを見て思い出した。このブランドを生産してるメーカー、うちと取引があるよ。」
スネ夫「えっ?」
のび太「このメーカーは紳士靴と婦人靴合わせて5つブランドを展開してるんだ。うちはその中の婦人靴ブランドの1つで取引をさせてもらってるから、営業さんに話してこの紳士靴ブランドの担当の人に繋いでもらうよ。」
スネ夫「えっ!? 良いのか?」
のび太「うん。福岡のお店と連絡取って宅急便で送ったりするの、面倒でしょ? ちょっと待ってて。メーカーに電話するから。」ピポパポ
46 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:44:49.56 ID:LtwPAmmAO
RRRRR RRRRR
のび太「お世話になります。△△シューズの野比です。山田さん、すいません実はカクカクシカジカでして。あっ、お願いできますか? 良かった、助かります。あっ、はい。では次に営業に来られた際にお渡しします。はい。はい、無理言ってすいません。ありがとうございます。失礼いたします。」ガチャッ
のび太「大丈夫だよ。無償修理してくれるって。」
スネ夫「うわぁ、ありがとう!! 助かるよ!!」
47 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:45:56.87 ID:LtwPAmmAO
のび太「どういたしまして。それでね、シャンク不良の修理は底材ごと交換する形になるから、少し日にちがかかるんだ。スネ夫、1週間も2週間もこっちにはいないよね?」
スネ夫「そうだな。僕は明日の昼には帰るから。」
のび太「だよね。じゃあ、大阪のマンションに送るようメーカーさんに頼んどくから、この伝票に住所を書いてもらえるかな?」サッ
スネ夫「オッケー。」サラサラ
のび太「うん。じゃあ、この靴は僕が預かってメーカーさんに渡しとくね。」
48 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:47:48.85 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「悪いなぁ、のび太。まさか相談したその日に解決するなんて思ってもみなかった。ホントに助かるよ。」
のび太「いや、僕は別に何もしてないよ。たまたま取引のあるメーカーでラッキーだったってだけさ。」
スネ夫「そんな事ないよ。のび太に相談しなきゃシャンクの事とかも分からなかったし。ホントに大助かりだ。」
のび太「ちょ、やめてよ。スネ夫からそんな風に言われたらなんか・・・・・・気持ち悪い。」
スネ夫「なっ!? 失礼な! のび太のクセに生意気だ!」
のび太「そう、それそれ。スネ夫はやっぱり憎まれ口が似合うよ。」
ハハハハハハハッ
51 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:56:56.93 ID:LtwPAmmAO
のび太「そう言えばお母さんから聞いたけど、すっごい怖い上司に鍛えられてるんだって?」
スネ夫「あぁ、大阪支社長だろ? もうそりゃあ厳しいよ。毎日怒られっぱなしさ。同期と『よし、今日は一回しか怒られてない! 今日は僕たち優秀だ!』とか、そんな会話をしてるレベルさ。」
のび太「大変だねぇ。何て言うか、スネ夫ってそういうスパルタ教育とは無縁な人生だったから、大丈夫かなって心配になるよ。」
スネ夫「はははっ。言ってくれるな。まぁ、確かに甘やかされて育った自覚はあるけどね。」
のび太「うん。だから・・・」
53 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:01:42.02 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「ありがとう。でも、大丈夫だよ。あの人は絶対に間違った怒り方はしないからさ。」
のび太「間違った怒り方?」
スネ夫「うん。例えば僕が何かミスをするだろ? その時、ミスをした僕の事がムカつくからシメてやろうみたいな気持ちで怒る人ってさ、確かに正しい事も言うかも知れないけど、それよりも相手を嫌な気分にさせたり怖がらせる事が一番の目的だから全然心に響かないんだよな。わざと汚い言葉やいやらしい言い回しをするから。」
のび太「あぁ、そうだねぇ。それに、そういう人って大体ナルシストでしょ? 『スパルタな俺、素敵』みたいなさ。」
54 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:02:29.82 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「うん、そうだな。それも確かにある。」
スネ夫「その点、うちの支社長は『会社と本人の為に指導する』っていうスタンスで怒るんだ。僕のミスで誰に迷惑がかかって、どんな損害を被り得るのか。そうならない為には何をするべきなのか。そういった事を一つずつ順序立てて方程式を解くみたいに怒るんだ。もちろん『バカ』だ『ボケ』だなんて汚い言葉は使わずにだよ。」
のび太「うん。」
スネ夫「そうするとさ、やっぱり心に響くんだよな。『あぁ、しまったなぁ』って自ずと反省しちゃうんだよ。」
55 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:03:16.91 ID:yyKHaLZAO
のび太「あぁ、分かるなぁ。うちの先代店長もそんな人だったよ。」
スネ夫「のび太も良い上司に巡り会えたんだな。僕もあの人になら一生ついていけるよ。」
のび太「そっか。なら安心だね。」
スネ夫「心配してくれてありがとな。けどのび太、他人の心配してるヒマはあるのか?」
のび太「えっ?」
スネ夫「しずかちゃんだよ、しずかちゃん。どうなんだよ?」
のび太「ど、どうって・・・何が?」
スネ夫「白々しい事言うなよ。分かってるだろ?」
のび太「それは・・・その・・・・・・」
59 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:23:52.20 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「何の進展もないのか?」
のび太「い、いや。そんな事はないよ。」
スネ夫「おっ、何だ? 何かニュースがあるのか?」
のび太「ニュースって・・・・・・しずかちゃんが一人でお店をしてるのは知ってる?」
スネ夫「あぁ。ダイニングバーだろ? まだ行った事はないけど。」
のび太「僕はそこの常連なんだ。」
スネ夫「おぉ!」キラーンッ
のび太「・・・。」
スネ夫「それで?」ワクワク
のび太「えっ? いや、それでじゃなくて、常連・・・なんだ。」
スネ夫「・・・。」ポカーン
60 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:25:20.44 ID:yyKHaLZAO
のび太「ちょっと? スネ夫?」
スネ夫「はぁ~~~~~~~~~~。」ゲンナリ
のび太「な、何だよ!?」
スネ夫「のび太ぁ。歳いくつ?」
のび太「さんじゅうい」
スネ夫「知ってるよ! 同い年だから! そうじゃなくて、良い歳して何を奥手な大学生みたいな事やってんだって意味だよ!」
のび太「うっ!」グサッ
スネ夫「常連だから何なんだよ!? 経営者の知り合いが常連になるなんてどこにでもある話じゃないか!」
のび太「ぐはっ!」ドスッ
スネ夫「まったくもう。」
のび太「・・・・・。」チーン
61 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:26:10.26 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「しずかちゃんが経営してるからには、きっとオシャレでかわいい店なんだろ?」
のび太「うん、そうだね。」
スネ夫「って事は客の年齢層も若いんじゃないのか?」
のび太「あ、そうみたい。最近若いお客さんが増えたって。」
スネ夫「じゃあより一層チンタラしてられないな。そんな店にナンパ師が飲みに来たりしてみろ? 独身の美人バーテンダーなんて恰好の標的じゃないか。」
のび太「そ、そんな奴にしずかちゃんは引っ掛ったり・・・」
スネ夫「あぁ、あぁ、そうだな! 例えが悪ぅございました!」イライラ
62 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:27:49.06 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「じゃあ、相手がしずかちゃんに本気で惚れてる普通の男だったらどうだ? 体目当ての口説き文句じゃなく、真っ当な交際を目的としたアプローチを受けたとしたら?」
のび太「それは・・・」タジッ
スネ夫「ただでさえしずかちゃんはカウンターの中から逃げられないんだ。口説き文句でも真面目なアプローチでも、四方八方から受け放題じゃないか。そんな中にたまたま一人、しずかちゃんの心を射止める奴がいたって不思議はないだろ?」
のび太「う~・・・・・・」タジタジ
63 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:28:54.25 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「はぁ~。分かった? のび太、今けっこう崖っぷちなんだぜ?」
のび太「・・・・・・ど、どうしよう。」オロオロ
スネ夫「どうしようって・・・・・・映画とか誘えば?」
のび太「やっぱりそういうベタなやり方が良いのかな?」
スネ夫「いや、“良い”と言うより、のび太にはそういうベタなやり方しかできないだろ? それとも何だ? サプライズでヘリでもチャーターして東京の夜景をプレゼントしてみるか? 父さんのコネを使えばヘリぐらい用意できるぞ?」
のび太「そ、それは・・・・・・。」
64 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:29:51.97 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「冗談だよ。そんなやり方がのび太の性に合わないのは知ってる。けどとにかくさ、動け。スロースターターって言葉はあるけど、のび太はまずスタートさえしてないんだからスローも何もない。まずは動く。話はそれからだ。」
のび太「・・・はい。」シュン
スネ夫「よしっ! じゃあこの話は終わり! っと、それでいま時間は・・・」チラッ
スネ夫「6時か。良い時間だな。」
のび太「どこか行くの?」
スネ夫「あぁ。今日は両親と外食だよ。6時半に店を取ってるんだ。今から行けば5分前に店に到着だな。」
65 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:31:21.59 ID:yyKHaLZAO
のび太「そっか。楽しんできてね。」
スネ夫「あぁ。シャンクの件は本当にありがとう。今度またこっちに帰ってきた時には一杯おごるよ。」
のび太「良いよ、そんなの。スネ夫こそ、厳しくも温かいアドバイスありがとう。」
スネ夫「ふふふっ・・・・・・のび太。」
のび太「なに?」
スネ夫「僕はいずれ会社を継ぐために東京に帰ってくる。その時までに良い報告が聞ける事を祈ってるよ。」
のび太「・・・・・・う、うん。」
スネ夫「がんばれ。」
のび太「・・・うん。」
スネ夫「ドラえもんをガッカリさせない為にもな。」
のび太「分かってる。ありがとう。」
スネ夫「じゃあな。」
のび太「またね。」
踵を返し、店の出口へと歩いてゆくスネ夫。
その左手の薬指には、美しく光る指輪が通されていた。
1週間後 東京某所の靴屋
のび太「いらっしゃ」
?「よぉ。」
のび太「!!」
?「久しぶりだな。」
のび太「す、スネ夫!!」
スネ夫「なんだよ、大袈裟だなぁ。僕の死亡説でも流れてたか?」
のび太「いや、そういうワケじゃないけど、急に来たらビックリするじゃないか!」
スネ夫「えっ? ここは靴屋だろ? いつから靴屋は完全予約制になったんだ?」
のび太「も~。そういう意味じゃないってば。その減らず口、相変わらずだね。」
スネ夫「おいおい、客に向かって“減らず口”とは何だよ? 」
33 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:20:39.24 ID:LtwPAmmAO
のび太「客? 客と言うからには何か買ってくれるんだろうね?」
スネ夫「何だとぉ? のび太のクセに」
のび太「生意気だってか?」
スネ夫「・・・。」
のび太「・・・。」
スネ夫「・・・プッ!」
のび太「プククククッ!」
スネ夫「ハハハハハハッ!」
のび太「アハハハハハッ!」
スネ夫「ア~ハハハハハッ! はぁ~、久しぶりだな、このやり取り!」
のび太「ハハハッ! ホントだねぇ。“のび太のクセに”とか、大概ひどい言葉だよね。」
スネ夫「まったくだ。子供って残酷だよな。」
34 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:21:27.84 ID:LtwPAmmAO
のび太「はははははっ。いや~、元気そうで何よりだよ。」
スネ夫「お陰さまで。のび太も元気そうだな。」
のび太「まぁね。あっ、そうだ。前にスネ夫のお母さんが来て下さったんだよ。」
スネ夫「あぁ。知ってるよ。あのダークブラウンのストレートチップの時だろ? 僕も母さんから聞いて顔を出したんだ。」
のび太「あっ、そうなんだ。」
スネ夫「母さん相手に靴の説明をバチッとキメたそうじゃないか?」
のび太「いやいやいや、そんな大した事は言ってないよ。訊かれた事に答えただけだから。」
35 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:22:51.68 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「いや、大したモンだ。うちの母さんはああ見えて実は財布のヒモが硬いんだ。自分が100%納得しなきゃ買わないタイプだからな。」
のび太「らしいね。お買い物のポリシーなんでしょ?」
スネ夫「そうだよ。その母さんを納得させるってんだから、ホントのび太のクセに」
のび太「生意気だ、ってもう良いよ!」
スネ夫「はははっ。」
のび太「今日はどうしたの? スネ夫はいま大阪に住んでるんだよね?」
スネ夫「あぁ。そうだよ。たまたま3連休がもらえたから、昨日実家に帰ってきたんだ。」
36 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:24:07.08 ID:LtwPAmmAO
のび太「そうなんだ。」
スネ夫「で、そのついでにさ、のび太のアホ面を見がてら靴の相談もしたいと思ってね。」
のび太「はいはい、このアホ面で良ければ聞きますよ。で、なに?」
スネ夫「うん、この靴なんだけどさ。」ガサゴソッ
のび太「どれどれ? わぁっ! スウェードのドレス(ビジネス)シューズ? しかも革底! スネ夫、通だね!」
スネ夫「へへっ。前々からスウェードのドレスは一足欲しいと思ってたんだけど、なかなか気に入るのが見付からなくてね。だけど、こないだ出張に行った先でこれを見付けて、一目惚れしたんだ。」
のび太「分かるよ。シルエットも綺麗だし、何より手触りが全然違う。これは良い品だね。」
スネ夫「うん。だけど、一つ問題があって。」
のび太「問題? なに?」
スネ夫「歩いてるとさ、変な音が鳴るんだよな。」
のび太「変な音?」
スネ夫「うん。こう、キュッキュッて。」
のび太「子供のぴよぴよサンダルみたいな?」
スネ夫「そう! それ! まさにそんな感じ!」
のび太「あ~、シャンクかぁ。」
スネ夫「シャンク?」
のび太「うん。えっとねぇ・・・・・・こっち来て。」
スネ夫の靴をレジカウンターに乗せる。
38 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:32:53.29 ID:LtwPAmmAO
のび太「ほら、見て。ドレスシューズってさ、こんな風にヒールと前部分が地面に着いてて、土踏まずの部分は浮いてるよね?」
スネ夫「そうだな。」
のび太「でも、もちろんこの浮いてる部分にも体重はかかる。って事はさ、歩いてる内にこの部分が少しずつ下に沈んでいって、しまいには靴全体がVの字にへしゃげてしまってもおかしくないと思わない?」
スネ夫「あぁ、言われてみればそうだなぁ。考えた事もなかったよ。」
のび太「じゃあ何故へしゃげないのか。それは底材の中にシャンクという芯が入ってるからなんだよ。」
39 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:34:34.78 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「芯?」
のび太「そう。鋼の芯。まぁ、たまにプラスチックや木を使ってるシャンクもあるみたいだけど、一般に流通してる物はほとんど鋼を使ってるね。」
のび太「そのシャンクが底材の中に仕込まれてるんだ。だいたい、ヒールから土踏まずの一番先に至るぐらいの長さなんだけどね。そのシャンクが体重の負荷に耐えてくれるから土踏まずが沈む事がなく、靴もへしゃげないで済むんだ。」
スネ夫「へぇ、なるほどぉ。」
40 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:35:27.64 ID:LtwPAmmAO
のび太「だけどね、たまにそのシャンクが正しい位置に入ってなかったり、歩いてる内に本来の位置からズレちゃう事があるんだ。そうなるとシャンクが靴の中で擦れて、さっき言ったキュッキュッて音だったり、靴の中であちこちにぶつかってポコッポコッて音が鳴ったりするんだよ。」
スネ夫「それは何? 不良品だからか?」
のび太「まぁ、そうだね。5、6年履いてる靴だと染み込んだ汗や雨の湿気が接着剤を劣化させてシャンクがズレる事もあって、その場合は経年劣化だから有償修理になるんだけど・・・・・・この靴、ほとんど履いてないよね?」
41 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:36:14.15 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「まだ2回しか履いてないよ。2回目に履いた時に音が鳴り出したんだ。」
のび太「そっかぁ。じゃあ・・・うん、乱暴な言い方だけど、不良品だね。」
スネ夫「そうかぁ・・・・・・。」
のび太「とは言え、別に仕立ての悪いジャンク品って意味じゃないよ。靴は一足一足が手作りで製造されるから、どうしてもたまにミスがあるんだよ。接着剤の量が少なかったりね。靴屋の言い訳だと言われればそれまでだけど、所詮は人間のする事だから常に完璧というワケにはいかなくて。」
43 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:36:55.70 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「うん、それは分かるよ。そこまで難癖を付けようとは思ってないさ。けど、そういう事なら当然タダで修理してもらえるんだよな?」
のび太「そうだね。これは明らかにメーカーサイドのミスだから、買ったお店に持って行けばメーカーと連絡を取って無償で修理してくれるよ。」
スネ夫「買った店かぁ。さっきも言ったけど、その靴は出張先で衝動買いしたヤツなんだよ。その出張先ってのが福岡でさ。」
のび太「わぁ、遠いねぇ・・・・・・あれ?」
スネ夫「どうした?」
45 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:43:28.70 ID:LtwPAmmAO
のび太「いま中敷きのロゴを見て思い出した。このブランドを生産してるメーカー、うちと取引があるよ。」
スネ夫「えっ?」
のび太「このメーカーは紳士靴と婦人靴合わせて5つブランドを展開してるんだ。うちはその中の婦人靴ブランドの1つで取引をさせてもらってるから、営業さんに話してこの紳士靴ブランドの担当の人に繋いでもらうよ。」
スネ夫「えっ!? 良いのか?」
のび太「うん。福岡のお店と連絡取って宅急便で送ったりするの、面倒でしょ? ちょっと待ってて。メーカーに電話するから。」ピポパポ
46 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:44:49.56 ID:LtwPAmmAO
RRRRR RRRRR
のび太「お世話になります。△△シューズの野比です。山田さん、すいません実はカクカクシカジカでして。あっ、お願いできますか? 良かった、助かります。あっ、はい。では次に営業に来られた際にお渡しします。はい。はい、無理言ってすいません。ありがとうございます。失礼いたします。」ガチャッ
のび太「大丈夫だよ。無償修理してくれるって。」
スネ夫「うわぁ、ありがとう!! 助かるよ!!」
47 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:45:56.87 ID:LtwPAmmAO
のび太「どういたしまして。それでね、シャンク不良の修理は底材ごと交換する形になるから、少し日にちがかかるんだ。スネ夫、1週間も2週間もこっちにはいないよね?」
スネ夫「そうだな。僕は明日の昼には帰るから。」
のび太「だよね。じゃあ、大阪のマンションに送るようメーカーさんに頼んどくから、この伝票に住所を書いてもらえるかな?」サッ
スネ夫「オッケー。」サラサラ
のび太「うん。じゃあ、この靴は僕が預かってメーカーさんに渡しとくね。」
48 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:47:48.85 ID:LtwPAmmAO
スネ夫「悪いなぁ、のび太。まさか相談したその日に解決するなんて思ってもみなかった。ホントに助かるよ。」
のび太「いや、僕は別に何もしてないよ。たまたま取引のあるメーカーでラッキーだったってだけさ。」
スネ夫「そんな事ないよ。のび太に相談しなきゃシャンクの事とかも分からなかったし。ホントに大助かりだ。」
のび太「ちょ、やめてよ。スネ夫からそんな風に言われたらなんか・・・・・・気持ち悪い。」
スネ夫「なっ!? 失礼な! のび太のクセに生意気だ!」
のび太「そう、それそれ。スネ夫はやっぱり憎まれ口が似合うよ。」
ハハハハハハハッ
51 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/17(日) 23:56:56.93 ID:LtwPAmmAO
のび太「そう言えばお母さんから聞いたけど、すっごい怖い上司に鍛えられてるんだって?」
スネ夫「あぁ、大阪支社長だろ? もうそりゃあ厳しいよ。毎日怒られっぱなしさ。同期と『よし、今日は一回しか怒られてない! 今日は僕たち優秀だ!』とか、そんな会話をしてるレベルさ。」
のび太「大変だねぇ。何て言うか、スネ夫ってそういうスパルタ教育とは無縁な人生だったから、大丈夫かなって心配になるよ。」
スネ夫「はははっ。言ってくれるな。まぁ、確かに甘やかされて育った自覚はあるけどね。」
のび太「うん。だから・・・」
53 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:01:42.02 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「ありがとう。でも、大丈夫だよ。あの人は絶対に間違った怒り方はしないからさ。」
のび太「間違った怒り方?」
スネ夫「うん。例えば僕が何かミスをするだろ? その時、ミスをした僕の事がムカつくからシメてやろうみたいな気持ちで怒る人ってさ、確かに正しい事も言うかも知れないけど、それよりも相手を嫌な気分にさせたり怖がらせる事が一番の目的だから全然心に響かないんだよな。わざと汚い言葉やいやらしい言い回しをするから。」
のび太「あぁ、そうだねぇ。それに、そういう人って大体ナルシストでしょ? 『スパルタな俺、素敵』みたいなさ。」
54 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:02:29.82 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「うん、そうだな。それも確かにある。」
スネ夫「その点、うちの支社長は『会社と本人の為に指導する』っていうスタンスで怒るんだ。僕のミスで誰に迷惑がかかって、どんな損害を被り得るのか。そうならない為には何をするべきなのか。そういった事を一つずつ順序立てて方程式を解くみたいに怒るんだ。もちろん『バカ』だ『ボケ』だなんて汚い言葉は使わずにだよ。」
のび太「うん。」
スネ夫「そうするとさ、やっぱり心に響くんだよな。『あぁ、しまったなぁ』って自ずと反省しちゃうんだよ。」
55 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:03:16.91 ID:yyKHaLZAO
のび太「あぁ、分かるなぁ。うちの先代店長もそんな人だったよ。」
スネ夫「のび太も良い上司に巡り会えたんだな。僕もあの人になら一生ついていけるよ。」
のび太「そっか。なら安心だね。」
スネ夫「心配してくれてありがとな。けどのび太、他人の心配してるヒマはあるのか?」
のび太「えっ?」
スネ夫「しずかちゃんだよ、しずかちゃん。どうなんだよ?」
のび太「ど、どうって・・・何が?」
スネ夫「白々しい事言うなよ。分かってるだろ?」
のび太「それは・・・その・・・・・・」
59 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:23:52.20 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「何の進展もないのか?」
のび太「い、いや。そんな事はないよ。」
スネ夫「おっ、何だ? 何かニュースがあるのか?」
のび太「ニュースって・・・・・・しずかちゃんが一人でお店をしてるのは知ってる?」
スネ夫「あぁ。ダイニングバーだろ? まだ行った事はないけど。」
のび太「僕はそこの常連なんだ。」
スネ夫「おぉ!」キラーンッ
のび太「・・・。」
スネ夫「それで?」ワクワク
のび太「えっ? いや、それでじゃなくて、常連・・・なんだ。」
スネ夫「・・・。」ポカーン
のび太「ちょっと? スネ夫?」
スネ夫「はぁ~~~~~~~~~~。」ゲンナリ
のび太「な、何だよ!?」
スネ夫「のび太ぁ。歳いくつ?」
のび太「さんじゅうい」
スネ夫「知ってるよ! 同い年だから! そうじゃなくて、良い歳して何を奥手な大学生みたいな事やってんだって意味だよ!」
のび太「うっ!」グサッ
スネ夫「常連だから何なんだよ!? 経営者の知り合いが常連になるなんてどこにでもある話じゃないか!」
のび太「ぐはっ!」ドスッ
スネ夫「まったくもう。」
のび太「・・・・・。」チーン
61 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:26:10.26 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「しずかちゃんが経営してるからには、きっとオシャレでかわいい店なんだろ?」
のび太「うん、そうだね。」
スネ夫「って事は客の年齢層も若いんじゃないのか?」
のび太「あ、そうみたい。最近若いお客さんが増えたって。」
スネ夫「じゃあより一層チンタラしてられないな。そんな店にナンパ師が飲みに来たりしてみろ? 独身の美人バーテンダーなんて恰好の標的じゃないか。」
のび太「そ、そんな奴にしずかちゃんは引っ掛ったり・・・」
スネ夫「あぁ、あぁ、そうだな! 例えが悪ぅございました!」イライラ
62 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:27:49.06 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「じゃあ、相手がしずかちゃんに本気で惚れてる普通の男だったらどうだ? 体目当ての口説き文句じゃなく、真っ当な交際を目的としたアプローチを受けたとしたら?」
のび太「それは・・・」タジッ
スネ夫「ただでさえしずかちゃんはカウンターの中から逃げられないんだ。口説き文句でも真面目なアプローチでも、四方八方から受け放題じゃないか。そんな中にたまたま一人、しずかちゃんの心を射止める奴がいたって不思議はないだろ?」
のび太「う~・・・・・・」タジタジ
63 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:28:54.25 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「はぁ~。分かった? のび太、今けっこう崖っぷちなんだぜ?」
のび太「・・・・・・ど、どうしよう。」オロオロ
スネ夫「どうしようって・・・・・・映画とか誘えば?」
のび太「やっぱりそういうベタなやり方が良いのかな?」
スネ夫「いや、“良い”と言うより、のび太にはそういうベタなやり方しかできないだろ? それとも何だ? サプライズでヘリでもチャーターして東京の夜景をプレゼントしてみるか? 父さんのコネを使えばヘリぐらい用意できるぞ?」
のび太「そ、それは・・・・・・。」
64 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:29:51.97 ID:yyKHaLZAO
スネ夫「冗談だよ。そんなやり方がのび太の性に合わないのは知ってる。けどとにかくさ、動け。スロースターターって言葉はあるけど、のび太はまずスタートさえしてないんだからスローも何もない。まずは動く。話はそれからだ。」
のび太「・・・はい。」シュン
スネ夫「よしっ! じゃあこの話は終わり! っと、それでいま時間は・・・」チラッ
スネ夫「6時か。良い時間だな。」
のび太「どこか行くの?」
スネ夫「あぁ。今日は両親と外食だよ。6時半に店を取ってるんだ。今から行けば5分前に店に到着だな。」
65 : ◆51UnYd7yHM [saga]:2013/03/18(月) 00:31:21.59 ID:yyKHaLZAO
のび太「そっか。楽しんできてね。」
スネ夫「あぁ。シャンクの件は本当にありがとう。今度またこっちに帰ってきた時には一杯おごるよ。」
のび太「良いよ、そんなの。スネ夫こそ、厳しくも温かいアドバイスありがとう。」
スネ夫「ふふふっ・・・・・・のび太。」
のび太「なに?」
スネ夫「僕はいずれ会社を継ぐために東京に帰ってくる。その時までに良い報告が聞ける事を祈ってるよ。」
のび太「・・・・・・う、うん。」
スネ夫「がんばれ。」
のび太「・・・うん。」
スネ夫「ドラえもんをガッカリさせない為にもな。」
のび太「分かってる。ありがとう。」
スネ夫「じゃあな。」
のび太「またね。」
踵を返し、店の出口へと歩いてゆくスネ夫。
その左手の薬指には、美しく光る指輪が通されていた。
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