少女「あなた誰?」 宇宙人「えっ宇宙人ですけど」
Part4
147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/27(月) 23:42:15.80 ID:uejvk9PhP
宇宙人「……それは、できません」
少女「……」
少女「……どうして」
宇宙人「……」
少女「どうしてよ……」
少女「どうしてよぉッッ!!!」
少女「あなた、私の友達でしょう!?」
宇宙人「……」
少女「ね? ねぇ? 友達だよね私たちッ!」
少女「お願いだから『そうだ』と言って! あなただけが友達なの! あなただけが優しくしてくれるの!」
宇宙人「……」
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/27(月) 23:50:02.73 ID:uejvk9PhP
少女「なにか言ってよ! 答えてよぉッ!!」
宇宙人「……」
少女「友達だって言って! 『あなたの友達だよ』って!!」
宇宙人「……」
少女「みんな、私をいじめるのッ! この世界には幸せなことなんて一つもないッ!!」
少女「でも、あなたは違うでしょう!? あなたはいつも私に優しくしてくれたもの! この広い宇宙の中で、あなただけがッ!!」
宇宙人「……」
少女「あなただけが私を見てくれたのッ!! だからッ……だから、お願いだからぁッ!! 『友達だ』って言ってよぉッッ!!!」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは、私の……友達です」
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/27(月) 23:57:13.52 ID:uejvk9PhP
少女「あ、ははっ、は……」
少女「……そう」
少女「だったら、私のお願いを聞いてくれるよね?」
宇宙人「……」
少女「……お願い。本当に……本当に辛いの……」
少女「身体が引き千切られそうで……魂が散り散りになりそうなの……」
宇宙人「……」
少女「……お願い。わたしを、殺して」
宇宙人「……」
宇宙人「……それは、できません」
少女「……」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:05:37.21 ID:18/y+5IbP
少女「……そう」
宇宙人「……」
少女「だったら……もう何もいらない」
少女「もう、どうでもいい」
宇宙人「……」
少女「みんな、互いに優しくなることができずに……」
少女「私も、この地獄から逃げることすらできないなら……」
少女「こんな世界……」
少女「こんな、世界……」
──────もう、なくなっちゃえばいい
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:12:04.54 ID:18/y+5IbP
宇宙人「……」
宇宙人「では、なくしてしまいましょう」
少女「……え?」
宇宙人「……」
少女「だ、だめだよ! や……やっぱり今のはなし! みんなを殺すなんて……ッ!!」
宇宙人「……いいえ」
宇宙人「違います。そんなことをする必要はないんです」
宇宙人「世界を……『あなたの世界』をなくしてしまうには、たった一言で十分ですから」
少女「……」
少女「……な……なにを、言って……?」
159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:20:04.22 ID:18/y+5IbP
宇宙人「ずっと黙っていたことをお詫びします」
少女「え?」
宇宙人「いえ、以前に一度言ったことがあるのですが、あなたの反応が劇的だったので、以後そのことは禁句としていたのです」
少女「……なんの、こと?」
少女「あなた……一体、なにを言っているのよッ!?」
宇宙人「あなたも、薄々気づいているんじゃないですか?」
宇宙人「世界は……」
少女「……や、」
宇宙人「あなたの『その世界』は……」
少女「……や、やめてッ!」
宇宙人「────すべて、あなたの妄想なんです」
160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:20:56.44 ID:Bkvnwl4R0
やめろ・・・やめろおおおおおおお!!!!
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:21:16.75 ID:q3Axkuu90
のおおおおおおおおおお
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:28:33.83 ID:18/y+5IbP
少女「──────あ」
宇宙人「あなたを虐待する両親は存在していません」
宇宙人「あなたは学校にも行っていませんし、級友からいじめを受けてもいません」
宇宙人「……すべて、あなたの妄想です」
少女「…………は、」
少女「……は、はは。なに言ってるの……」
少女「そんなの嘘よ。だって、私には記憶があるもの」
少女「友達に罵倒された、ママに叩かれた、パパに身体を触られたッ……生々しい記憶があるものッ!」
宇宙人「……」
宇宙人「……ええ。確かにそれらの記憶はすべて本物です」
宇宙人「紛うことなき、あなた自身の本当の記憶ですよ」
少女「え?? さっき、……から、一体何を……? 意味がわからないんだけど」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:36:58.65 ID:18/y+5IbP
宇宙人「あなたが目を背けた……本当に目を背けたかった事実は一つだけです」
少女「……それ、は」
宇宙人「あなたは……」
宇宙人「…………────自分の、実の両親を殺したんですよね」
少女「………………ぇ」
宇宙人「あなたと出会ってすぐに、異常には気が付きました」
宇宙人「そこで、悪いとは思いましたが、あなたの睡眠中に記憶を探らせてもらったのです」
少女「………………」
宇宙人「あなたが受けていた虐待は、養父母によるものではありません」
宇宙人「あなたを本当に虐待していたのは……実の両親でした」
宇宙人「あなたの存在を疎んじ、罵倒し、暴力を振るっていたのは実の母親」
宇宙人「そして、あなたに性的虐待を行なっていたのは、実の父親です」
171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:39:15.71 ID:Bkvnwl4R0
うぁぁ・・・
保守
うぁぁ・・・
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:41:59.07 ID:vzuTuhGe0
スレタイからは予想のできない展開になってきたな
173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:44:56.29 ID:18/y+5IbP
宇宙人「お父様の死は、半ば事故でした」
宇宙人「浴室にてあなたに乱暴を働こうとした父親を、あなたは突き飛ばしてしまい……」
宇宙人「足を滑らした彼は転んで、……打ち所が悪かったのですね」
宇宙人「あっけなく、死んでしまいました」
少女「……ぅ…………ぁ」
宇宙人「父親の死が露見すれば、どのような仕打ちを母親から受けるか……」
宇宙人「場合によっては殺されるか……、そうでなくても死ぬほどの折檻を受けることは容易に想像できたのでしょう」
宇宙人「あなたは、母親を手にかけた」
少女「……ぅ、グッ……やめ……て……」ブルブル
宇宙人「刃物で一突きです。父親の場合とは違って、こちらは明確な殺意をもって行った殺害でした」
宇宙人「いえ、お父様の殺害についても過失というより……やはり多少なりとも殺意があったのではないですか」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:45:50.43 ID:8vljK5di0
ああ
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:53:29.15 ID:18/y+5IbP
宇宙人「実の両親を手にかけたあなたは、……心が半分、壊れてしまったのですね。夢と現をさまよいました」
宇宙人「一面では非常に理性的であり、他方では全く逃避的でした」
宇宙人「両親の遺体を風呂場に突っ込んで隠したかと思えば、隠蔽工作もせずに放置しておいた」
宇宙人「実の両親の死を受け入れているように見えて、養父母の存在を盲信しつつ自傷行為によって過去の虐待を自ら再現した」
宇宙人「また、学校に行くように見せかけておいて、周りの目も気にせず日がな一日公園でぼんやりして過ごしていました」
少女「……やめ、て……もう…………やめて……」ブルブル
宇宙人「いいえ……やめません。あなたはもう限界です」
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:59:08.70 ID:18/y+5IbP
宇宙人「あなたは現実に脚をつけているようで、妄想の世界に耽溺していた」
宇宙人「死んだ両親の代わりとなる優しい養父母の存在を夢想し、学校の級友たちとの暖かな交流を空想しようとした」
宇宙人「妄想の世界で偽りの温もりに包まれていられるならば、その先に果てるとしてもきっと幸せだったことでしょう」
少女「……ウップ………はぁ……はぁ……」ブルブル
宇宙人「しかし、生まれてこの方『幸せな自分』を一度も経験したことがなく、不幸な体験しか知らなかったあなたは……」
宇宙人「妄想の中でさえ、幸せな自分を思い描くことができなかったんです」
少女「……あぁ……ああ"あ"ぁ"…………」ブルブル
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:06:51.14 ID:18/y+5IbP
宇宙人「妄想の中の級友のいじめは、かつてあなたの級友が、実際にあなたに体験させたいじめそのものです」
宇宙人「妄想の中の養父母の虐待は、かつてあなたの実の両親が、実際にあなたに体験させた虐待そのままに他ならない」
宇宙人「現実で不幸だったあなたは、思い通りになるはずの妄想の中ですら……不幸だったのです」
少女「……はぁー……はぁー……」ポロポロ…
宇宙人「この地域の官憲組織の整備が不充分であったことは不幸中の幸いでしたね」
宇宙人「もし充分な機構が整っていれば、数日と経たずに捕まっていたことでしょう」
宇宙人「あなたの身体には……屍臭が染み付いていますから」
宇宙人「……以上が、あなたの『本当の世界』です」
少女「……………ッ……」ポロポロ…
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:14:00.01 ID:18/y+5IbP
少女「……ど……」
少女「……どう、して……」
宇宙人「……」
少女「どうして……話したの?」
宇宙人「……あなたは、妄想に憑き殺されそうになっていた」
宇宙人「黙っておくのはこれが限界だと感じました」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……そ、う」
宇宙人「……はい」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:20:32.62 ID:18/y+5IbP
少女「……それじゃあ……最後に、もう一つだけ聞かせて」
宇宙人「……何でしょうか」
少女「あなたも……」
少女「あなたも……私の妄想の産物なの?」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……はい、そうです」
少女「………………そっか」
少女「……やっぱり……そうよね。当たり前だよね。だって、この世に宇宙人なんているはずないもん、ね……」
少女「あなたと私の関係……あのSF小説の内容にそっくり、だったもの……」
少女「妄想相手に『お友達』なんて……みじめを通り越して、滑稽ッ……で……」グスッ
少女「皆……みんな……みーーーんなッ! 私の……一人遊び、だったんだぁッッ……あははっ」ポロ…
少女「あはは……あはははっ…………」ポロポロ…
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:26:05.70 ID:18/y+5IbP
少女「あはははははっ…………」ポロポロ…
少女「どうして……私は、パパを……殺しちゃったんだろう……」
少女「どう、じでっ……ママを"……こ、殺しちゃっだん、だろうッ……」グスッ
少女「あ、あはははははっ……あははは………」ポロポロ…
少女「あは……あぁぁ……あ”あ”あ”あぁぁぁ…………」ポロポロポロ…
少女「……ぅう"う"、ぁ"あ"……う"わあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁんッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「ごめん、なさい……ごめん"な"ざい……ごめん"な"さいごめんなざいごめんなさいッッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「パパぁ……ママぁ……」ポロポロポロ…
少女「パパぁッ! ママぁッ! ごめんな"ざい"! ごめんなざい"ぃッ! う"あ"あ"あぁぁぁ……」ポロポロポロポロ…
宇宙人「……」
191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:26:43.37 ID:Bkvnwl4R0
救いはないのか・・・
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:33:07.52 ID:18/y+5IbP
***
宇宙人「……」
宇宙人「……落ち着きましたか」
少女「……」
少女「……」
少女「…………うん、少しだけ」グスッ
宇宙人「……」
少女「……もう、私のそばにいなくてもいいんだよ」
少女「これ以上妄想にしがみついて逃避を続けてたら、死んじゃったパパとママに申し訳ないもの」
宇宙人「……そうですか」
宇宙人「確かに。もう既に十分な量の感情採取が行えましたから。これ以上ここに留まる理由もありませんね」
少女「そう、なんだ」
宇宙人「あなたの茶番につき合う必要ももうない。わたしは、あなたの世界から退散しましょう」
少女「うん……それが、いいよ」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:39:07.56 ID:18/y+5IbP
宇宙人「しかし、あなたはこれからどうするのですか?」
少女「……」
少女「前に私が言ったこと……覚えてる?」
宇宙人「……」
少女「『どんな悪い事をしたって、その行為の結果を受け止める覚悟がないなら、それは自分自身に責任を引き受けてないってこと』だ」
少女「『誰かの悪口を言ったって、誰かを殺したって……、その事実から目を背けているなら、そこには覚悟が……責任がない』んだって」
少女「……偉そうなこと言って、自分の責任から逃げていたのは私だったね」
宇宙人「……」
少女「今度ばかりは『あなたは悪くない』だなんて言わないでね」
少女「私は、殺したの」
少女「自分の意志で、……殺したのよ」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:45:47.61 ID:18/y+5IbP
少女「私、もう逃げないわ」
宇宙人「責任は覚悟の形……でしたね」
少女「ふふ。なんだ……ちゃんと覚えてるじゃない」
少女「……なんて、私が覚えてることだもの。私の妄想のあなたが、覚えてないはずないものね」
宇宙人「……」
少女「わたしは自分の行為の責任を、自分自身で引き受けなきゃいけない」
少女「だからね、死のうと思うの……わたし」
宇宙人「……」
少女「ひょっとすると他に、もっときちんとした責任の取り方があるのかもしれない」
少女「でも、これが……私の、私なりの責任の取り方よ」
少女「私が自分自身に引き受けた……『覚悟の形』なの」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:49:00.62 ID:Bkvnwl4R0
よしなさい・・・
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:52:38.61 ID:18/y+5IbP
宇宙人「そう……ですか」
少女「……うん」
宇宙人「わたしには、あなたの覚悟を否定する権利はありません」
少女「……うん」
宇宙人「ですから、ここであなたのもとを去ろうと思います」
少女「……」
少女「そっか」
宇宙人「はい。通信を回復させられる程度には動力源も回復しましたし、母船と通信が可能になれば向こう側でこちらを引っ張ってくれます」
少女「それじゃ、これでお別れ……だね」
宇宙人「……はい」
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:57:24.27 ID:18/y+5IbP
少女「短い間だったけど……」
少女「私の妄想に過ぎないとしても……、あなたと過ごした時間は楽しかったわ」
宇宙人「……はい」
少女「ありがとう。本当に感謝してるの」
宇宙人「いえ……こちらこそ、私の生体維持および宇宙船の動力源供給の協力、感謝します」
少女「ふふ。最後の最後まで……そのキャラは崩さないんだ。私の妄想もなかなかのものね」
宇宙人「……もう会うことはないでしょう。これでお別れです」
少女「うん。ばいばい……妄想世界の宇宙人さん……」
宇宙人「さようなら。……薄幸の少女さん」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:01:01.98 ID:shaBpGgv0
哀しい
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:04:28.83 ID:18/y+5IbP
少女「……」
少女「……」
少女「……ほんとうに、一瞬にして消えてしまうのね」
少女「跡形もなく……まるで蜃気楼のように」
少女「……」
少女「……さよなら」
少女「結局わたしは、最初から最後まで、一人ぼっちだったんだね……」
少女「……」
少女「パパ、ママ……」
少女「パパとママは……私のこと、愛してなかったのかなぁ……」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:10:09.39 ID:18/y+5IbP
少女「ママは、……私のこと嫌ってた」
少女「パパの愛情は、ふつうの父親の愛情とは違ってたもんね……」
少女「でも、私は……」
少女「……」
少女「私は、二人のことが大好きだよ」
少女「……今でも、二人のこと、だ、大好き、だよ」グスッ
少女「だから、ね」ポロ…
少女「もし天国にいけたら、三人で仲良くできるかなぁ……」ポロポロ…
少女「また三人で、一から、やり直せるかな……」ポロポロ…
少女「……」
少女「……無理、か。私はきっと、地獄行きだよね……」ポロポロ…
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:12:09.12 ID:c76TWD8TO
頼むぞ
214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:13:30.01 ID:18/y+5IbP
────ああ、世界は優しくない
…………こんなにも、こんなにも、辛いことばかりで
…………せめて
…………せめてこの眠りだけでも
…………安らかなものでありますように
…………さようなら
…………ばいばい、宇宙人さん
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:20:32.12 ID:18/y+5IbP
──────…………
────…………
───………
──さい
少女「……」
──して下さい
少女「……ぅ……」
──目を覚まして下さい!
少女「…………ぇ?」
宇宙人「目を覚まして下さい! お願いしますから!」
少女「…………」
少女「…………どう、して?」
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:21:57.11 ID:c76TWD8TO
よし!いいぞ!
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:25:27.71 ID:18/y+5IbP
少女「……どうして、戻ってきたの?」
宇宙人「……ッ」
少女「わたし、……覚悟したつもり、だったのになぁ……まだ、妄想を見続けてるなんて……覚悟、足りなかったのかな……」
宇宙人「しゃべらないでください!」
宇宙人「腹部を刃物で刺したのですね……」
少女「……ぅ……ゴフッ…………」
宇宙人「わたしは……あなたに謝らねばならないことがあります」
宇宙人「自分の任務を優先しようとする余り、……あなたに嘘をついたんです」
少女「……」
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:31:31.80 ID:18/y+5IbP
宇宙人「……私は、あなたの妄想ではありません」
少女「……ぇ?」
宇宙人「偽りの家族も、偽りの級友も、確かにすべてあなたの妄想でした」
宇宙人「それは、……否定しようもない事実です」
宇宙人「しかし私は実在します」
少女「……」
宇宙人「あなたの世界はあべこべだったんです」
宇宙人「事実と思えることが実は妄想で、……逆に妄想としか考えられない私の存在は事実でした」
宇宙人「……そのことを伝えなかった私を、どうか許してください」
少女「……」
宇宙人「一見すると荒唐無稽に思える私の存在こそが、あなたにとっては────ただ一つの真実だったのです」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:38:12.40 ID:18/y+5IbP
少女「……」
少女「……ほんと、に? ほんとにあなた、は……存在するの?」
宇宙人「はい」
少女「……妄想じゃ、なくて?」
宇宙人「妄想ではありません。ここに、きちんと実在しています」
少女「でも……コフッ……なん、で?」
少女「どうして……戻って、きたの?」
宇宙人「……」
宇宙人「私がここに来たのは、自分の『責任』を果たすためです」
少女「……せき、にん?」
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:44:44.42 ID:18/y+5IbP
宇宙人「責任というのは、自らの意志で引き受けようとする覚悟の形なんでしょう?」
宇宙人「私にはあなたの覚悟を否定することはできません」
少女「……」
宇宙人「あなたが見せた高潔なその意思を否定することなど、私にはできない」
宇宙人「……ですから」
宇宙人「ですから、私は私なりに、私の覚悟をあなたに示すことにしました」
少女「……」
宇宙人「私は、己の全身全霊をささげて……あなたを救ってみせる」
宇宙人「あなたを苦しめる全ての障害から、あなたを守ってみせます」
宇宙人「それが……私の『覚悟の形』です」
少女「……」
少女「…………わたし、を?」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:45:59.72 ID:sTMa9kMi0
宇宙人すごいやばい
宇宙人「……それは、できません」
少女「……」
少女「……どうして」
宇宙人「……」
少女「どうしてよ……」
少女「どうしてよぉッッ!!!」
少女「あなた、私の友達でしょう!?」
宇宙人「……」
少女「ね? ねぇ? 友達だよね私たちッ!」
少女「お願いだから『そうだ』と言って! あなただけが友達なの! あなただけが優しくしてくれるの!」
宇宙人「……」
149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/27(月) 23:50:02.73 ID:uejvk9PhP
少女「なにか言ってよ! 答えてよぉッ!!」
宇宙人「……」
少女「友達だって言って! 『あなたの友達だよ』って!!」
宇宙人「……」
少女「みんな、私をいじめるのッ! この世界には幸せなことなんて一つもないッ!!」
少女「でも、あなたは違うでしょう!? あなたはいつも私に優しくしてくれたもの! この広い宇宙の中で、あなただけがッ!!」
宇宙人「……」
少女「あなただけが私を見てくれたのッ!! だからッ……だから、お願いだからぁッ!! 『友達だ』って言ってよぉッッ!!!」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは、私の……友達です」
152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/27(月) 23:57:13.52 ID:uejvk9PhP
少女「あ、ははっ、は……」
少女「……そう」
少女「だったら、私のお願いを聞いてくれるよね?」
宇宙人「……」
少女「……お願い。本当に……本当に辛いの……」
少女「身体が引き千切られそうで……魂が散り散りになりそうなの……」
宇宙人「……」
少女「……お願い。わたしを、殺して」
宇宙人「……」
宇宙人「……それは、できません」
少女「……」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:05:37.21 ID:18/y+5IbP
少女「……そう」
宇宙人「……」
少女「だったら……もう何もいらない」
少女「もう、どうでもいい」
宇宙人「……」
少女「みんな、互いに優しくなることができずに……」
少女「私も、この地獄から逃げることすらできないなら……」
少女「こんな世界……」
少女「こんな、世界……」
──────もう、なくなっちゃえばいい
155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:12:04.54 ID:18/y+5IbP
宇宙人「……」
宇宙人「では、なくしてしまいましょう」
少女「……え?」
宇宙人「……」
少女「だ、だめだよ! や……やっぱり今のはなし! みんなを殺すなんて……ッ!!」
宇宙人「……いいえ」
宇宙人「違います。そんなことをする必要はないんです」
宇宙人「世界を……『あなたの世界』をなくしてしまうには、たった一言で十分ですから」
少女「……」
少女「……な……なにを、言って……?」
宇宙人「ずっと黙っていたことをお詫びします」
少女「え?」
宇宙人「いえ、以前に一度言ったことがあるのですが、あなたの反応が劇的だったので、以後そのことは禁句としていたのです」
少女「……なんの、こと?」
少女「あなた……一体、なにを言っているのよッ!?」
宇宙人「あなたも、薄々気づいているんじゃないですか?」
宇宙人「世界は……」
少女「……や、」
宇宙人「あなたの『その世界』は……」
少女「……や、やめてッ!」
宇宙人「────すべて、あなたの妄想なんです」
160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:20:56.44 ID:Bkvnwl4R0
やめろ・・・やめろおおおおおおお!!!!
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:21:16.75 ID:q3Axkuu90
のおおおおおおおおおお
167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:28:33.83 ID:18/y+5IbP
少女「──────あ」
宇宙人「あなたを虐待する両親は存在していません」
宇宙人「あなたは学校にも行っていませんし、級友からいじめを受けてもいません」
宇宙人「……すべて、あなたの妄想です」
少女「…………は、」
少女「……は、はは。なに言ってるの……」
少女「そんなの嘘よ。だって、私には記憶があるもの」
少女「友達に罵倒された、ママに叩かれた、パパに身体を触られたッ……生々しい記憶があるものッ!」
宇宙人「……」
宇宙人「……ええ。確かにそれらの記憶はすべて本物です」
宇宙人「紛うことなき、あなた自身の本当の記憶ですよ」
少女「え?? さっき、……から、一体何を……? 意味がわからないんだけど」
170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:36:58.65 ID:18/y+5IbP
宇宙人「あなたが目を背けた……本当に目を背けたかった事実は一つだけです」
少女「……それ、は」
宇宙人「あなたは……」
宇宙人「…………────自分の、実の両親を殺したんですよね」
少女「………………ぇ」
宇宙人「あなたと出会ってすぐに、異常には気が付きました」
宇宙人「そこで、悪いとは思いましたが、あなたの睡眠中に記憶を探らせてもらったのです」
少女「………………」
宇宙人「あなたが受けていた虐待は、養父母によるものではありません」
宇宙人「あなたを本当に虐待していたのは……実の両親でした」
宇宙人「あなたの存在を疎んじ、罵倒し、暴力を振るっていたのは実の母親」
宇宙人「そして、あなたに性的虐待を行なっていたのは、実の父親です」
171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:39:15.71 ID:Bkvnwl4R0
うぁぁ・・・
保守
うぁぁ・・・
172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:41:59.07 ID:vzuTuhGe0
スレタイからは予想のできない展開になってきたな
173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:44:56.29 ID:18/y+5IbP
宇宙人「お父様の死は、半ば事故でした」
宇宙人「浴室にてあなたに乱暴を働こうとした父親を、あなたは突き飛ばしてしまい……」
宇宙人「足を滑らした彼は転んで、……打ち所が悪かったのですね」
宇宙人「あっけなく、死んでしまいました」
少女「……ぅ…………ぁ」
宇宙人「父親の死が露見すれば、どのような仕打ちを母親から受けるか……」
宇宙人「場合によっては殺されるか……、そうでなくても死ぬほどの折檻を受けることは容易に想像できたのでしょう」
宇宙人「あなたは、母親を手にかけた」
少女「……ぅ、グッ……やめ……て……」ブルブル
宇宙人「刃物で一突きです。父親の場合とは違って、こちらは明確な殺意をもって行った殺害でした」
宇宙人「いえ、お父様の殺害についても過失というより……やはり多少なりとも殺意があったのではないですか」
174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:45:50.43 ID:8vljK5di0
ああ
177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:53:29.15 ID:18/y+5IbP
宇宙人「実の両親を手にかけたあなたは、……心が半分、壊れてしまったのですね。夢と現をさまよいました」
宇宙人「一面では非常に理性的であり、他方では全く逃避的でした」
宇宙人「両親の遺体を風呂場に突っ込んで隠したかと思えば、隠蔽工作もせずに放置しておいた」
宇宙人「実の両親の死を受け入れているように見えて、養父母の存在を盲信しつつ自傷行為によって過去の虐待を自ら再現した」
宇宙人「また、学校に行くように見せかけておいて、周りの目も気にせず日がな一日公園でぼんやりして過ごしていました」
少女「……やめ、て……もう…………やめて……」ブルブル
宇宙人「いいえ……やめません。あなたはもう限界です」
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 00:59:08.70 ID:18/y+5IbP
宇宙人「あなたは現実に脚をつけているようで、妄想の世界に耽溺していた」
宇宙人「死んだ両親の代わりとなる優しい養父母の存在を夢想し、学校の級友たちとの暖かな交流を空想しようとした」
宇宙人「妄想の世界で偽りの温もりに包まれていられるならば、その先に果てるとしてもきっと幸せだったことでしょう」
少女「……ウップ………はぁ……はぁ……」ブルブル
宇宙人「しかし、生まれてこの方『幸せな自分』を一度も経験したことがなく、不幸な体験しか知らなかったあなたは……」
宇宙人「妄想の中でさえ、幸せな自分を思い描くことができなかったんです」
少女「……あぁ……ああ"あ"ぁ"…………」ブルブル
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:06:51.14 ID:18/y+5IbP
宇宙人「妄想の中の級友のいじめは、かつてあなたの級友が、実際にあなたに体験させたいじめそのものです」
宇宙人「妄想の中の養父母の虐待は、かつてあなたの実の両親が、実際にあなたに体験させた虐待そのままに他ならない」
宇宙人「現実で不幸だったあなたは、思い通りになるはずの妄想の中ですら……不幸だったのです」
少女「……はぁー……はぁー……」ポロポロ…
宇宙人「この地域の官憲組織の整備が不充分であったことは不幸中の幸いでしたね」
宇宙人「もし充分な機構が整っていれば、数日と経たずに捕まっていたことでしょう」
宇宙人「あなたの身体には……屍臭が染み付いていますから」
宇宙人「……以上が、あなたの『本当の世界』です」
少女「……………ッ……」ポロポロ…
185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:14:00.01 ID:18/y+5IbP
少女「……ど……」
少女「……どう、して……」
宇宙人「……」
少女「どうして……話したの?」
宇宙人「……あなたは、妄想に憑き殺されそうになっていた」
宇宙人「黙っておくのはこれが限界だと感じました」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……そ、う」
宇宙人「……はい」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:20:32.62 ID:18/y+5IbP
少女「……それじゃあ……最後に、もう一つだけ聞かせて」
宇宙人「……何でしょうか」
少女「あなたも……」
少女「あなたも……私の妄想の産物なの?」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……はい、そうです」
少女「………………そっか」
少女「……やっぱり……そうよね。当たり前だよね。だって、この世に宇宙人なんているはずないもん、ね……」
少女「あなたと私の関係……あのSF小説の内容にそっくり、だったもの……」
少女「妄想相手に『お友達』なんて……みじめを通り越して、滑稽ッ……で……」グスッ
少女「皆……みんな……みーーーんなッ! 私の……一人遊び、だったんだぁッッ……あははっ」ポロ…
少女「あはは……あはははっ…………」ポロポロ…
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:26:05.70 ID:18/y+5IbP
少女「あはははははっ…………」ポロポロ…
少女「どうして……私は、パパを……殺しちゃったんだろう……」
少女「どう、じでっ……ママを"……こ、殺しちゃっだん、だろうッ……」グスッ
少女「あ、あはははははっ……あははは………」ポロポロ…
少女「あは……あぁぁ……あ”あ”あ”あぁぁぁ…………」ポロポロポロ…
少女「……ぅう"う"、ぁ"あ"……う"わあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁんッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「ごめん、なさい……ごめん"な"ざい……ごめん"な"さいごめんなざいごめんなさいッッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「パパぁ……ママぁ……」ポロポロポロ…
少女「パパぁッ! ママぁッ! ごめんな"ざい"! ごめんなざい"ぃッ! う"あ"あ"あぁぁぁ……」ポロポロポロポロ…
宇宙人「……」
救いはないのか・・・
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:33:07.52 ID:18/y+5IbP
***
宇宙人「……」
宇宙人「……落ち着きましたか」
少女「……」
少女「……」
少女「…………うん、少しだけ」グスッ
宇宙人「……」
少女「……もう、私のそばにいなくてもいいんだよ」
少女「これ以上妄想にしがみついて逃避を続けてたら、死んじゃったパパとママに申し訳ないもの」
宇宙人「……そうですか」
宇宙人「確かに。もう既に十分な量の感情採取が行えましたから。これ以上ここに留まる理由もありませんね」
少女「そう、なんだ」
宇宙人「あなたの茶番につき合う必要ももうない。わたしは、あなたの世界から退散しましょう」
少女「うん……それが、いいよ」
195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:39:07.56 ID:18/y+5IbP
宇宙人「しかし、あなたはこれからどうするのですか?」
少女「……」
少女「前に私が言ったこと……覚えてる?」
宇宙人「……」
少女「『どんな悪い事をしたって、その行為の結果を受け止める覚悟がないなら、それは自分自身に責任を引き受けてないってこと』だ」
少女「『誰かの悪口を言ったって、誰かを殺したって……、その事実から目を背けているなら、そこには覚悟が……責任がない』んだって」
少女「……偉そうなこと言って、自分の責任から逃げていたのは私だったね」
宇宙人「……」
少女「今度ばかりは『あなたは悪くない』だなんて言わないでね」
少女「私は、殺したの」
少女「自分の意志で、……殺したのよ」
200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:45:47.61 ID:18/y+5IbP
少女「私、もう逃げないわ」
宇宙人「責任は覚悟の形……でしたね」
少女「ふふ。なんだ……ちゃんと覚えてるじゃない」
少女「……なんて、私が覚えてることだもの。私の妄想のあなたが、覚えてないはずないものね」
宇宙人「……」
少女「わたしは自分の行為の責任を、自分自身で引き受けなきゃいけない」
少女「だからね、死のうと思うの……わたし」
宇宙人「……」
少女「ひょっとすると他に、もっときちんとした責任の取り方があるのかもしれない」
少女「でも、これが……私の、私なりの責任の取り方よ」
少女「私が自分自身に引き受けた……『覚悟の形』なの」
201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:49:00.62 ID:Bkvnwl4R0
よしなさい・・・
203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:52:38.61 ID:18/y+5IbP
宇宙人「そう……ですか」
少女「……うん」
宇宙人「わたしには、あなたの覚悟を否定する権利はありません」
少女「……うん」
宇宙人「ですから、ここであなたのもとを去ろうと思います」
少女「……」
少女「そっか」
宇宙人「はい。通信を回復させられる程度には動力源も回復しましたし、母船と通信が可能になれば向こう側でこちらを引っ張ってくれます」
少女「それじゃ、これでお別れ……だね」
宇宙人「……はい」
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 01:57:24.27 ID:18/y+5IbP
少女「短い間だったけど……」
少女「私の妄想に過ぎないとしても……、あなたと過ごした時間は楽しかったわ」
宇宙人「……はい」
少女「ありがとう。本当に感謝してるの」
宇宙人「いえ……こちらこそ、私の生体維持および宇宙船の動力源供給の協力、感謝します」
少女「ふふ。最後の最後まで……そのキャラは崩さないんだ。私の妄想もなかなかのものね」
宇宙人「……もう会うことはないでしょう。これでお別れです」
少女「うん。ばいばい……妄想世界の宇宙人さん……」
宇宙人「さようなら。……薄幸の少女さん」
209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:01:01.98 ID:shaBpGgv0
哀しい
211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:04:28.83 ID:18/y+5IbP
少女「……」
少女「……」
少女「……ほんとうに、一瞬にして消えてしまうのね」
少女「跡形もなく……まるで蜃気楼のように」
少女「……」
少女「……さよなら」
少女「結局わたしは、最初から最後まで、一人ぼっちだったんだね……」
少女「……」
少女「パパ、ママ……」
少女「パパとママは……私のこと、愛してなかったのかなぁ……」
212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:10:09.39 ID:18/y+5IbP
少女「ママは、……私のこと嫌ってた」
少女「パパの愛情は、ふつうの父親の愛情とは違ってたもんね……」
少女「でも、私は……」
少女「……」
少女「私は、二人のことが大好きだよ」
少女「……今でも、二人のこと、だ、大好き、だよ」グスッ
少女「だから、ね」ポロ…
少女「もし天国にいけたら、三人で仲良くできるかなぁ……」ポロポロ…
少女「また三人で、一から、やり直せるかな……」ポロポロ…
少女「……」
少女「……無理、か。私はきっと、地獄行きだよね……」ポロポロ…
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:12:09.12 ID:c76TWD8TO
頼むぞ
214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:13:30.01 ID:18/y+5IbP
────ああ、世界は優しくない
…………こんなにも、こんなにも、辛いことばかりで
…………せめて
…………せめてこの眠りだけでも
…………安らかなものでありますように
…………さようなら
…………ばいばい、宇宙人さん
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:20:32.12 ID:18/y+5IbP
──────…………
────…………
───………
──さい
少女「……」
──して下さい
少女「……ぅ……」
──目を覚まして下さい!
少女「…………ぇ?」
宇宙人「目を覚まして下さい! お願いしますから!」
少女「…………」
少女「…………どう、して?」
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:21:57.11 ID:c76TWD8TO
よし!いいぞ!
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:25:27.71 ID:18/y+5IbP
少女「……どうして、戻ってきたの?」
宇宙人「……ッ」
少女「わたし、……覚悟したつもり、だったのになぁ……まだ、妄想を見続けてるなんて……覚悟、足りなかったのかな……」
宇宙人「しゃべらないでください!」
宇宙人「腹部を刃物で刺したのですね……」
少女「……ぅ……ゴフッ…………」
宇宙人「わたしは……あなたに謝らねばならないことがあります」
宇宙人「自分の任務を優先しようとする余り、……あなたに嘘をついたんです」
少女「……」
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:31:31.80 ID:18/y+5IbP
宇宙人「……私は、あなたの妄想ではありません」
少女「……ぇ?」
宇宙人「偽りの家族も、偽りの級友も、確かにすべてあなたの妄想でした」
宇宙人「それは、……否定しようもない事実です」
宇宙人「しかし私は実在します」
少女「……」
宇宙人「あなたの世界はあべこべだったんです」
宇宙人「事実と思えることが実は妄想で、……逆に妄想としか考えられない私の存在は事実でした」
宇宙人「……そのことを伝えなかった私を、どうか許してください」
少女「……」
宇宙人「一見すると荒唐無稽に思える私の存在こそが、あなたにとっては────ただ一つの真実だったのです」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:38:12.40 ID:18/y+5IbP
少女「……」
少女「……ほんと、に? ほんとにあなた、は……存在するの?」
宇宙人「はい」
少女「……妄想じゃ、なくて?」
宇宙人「妄想ではありません。ここに、きちんと実在しています」
少女「でも……コフッ……なん、で?」
少女「どうして……戻って、きたの?」
宇宙人「……」
宇宙人「私がここに来たのは、自分の『責任』を果たすためです」
少女「……せき、にん?」
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:44:44.42 ID:18/y+5IbP
宇宙人「責任というのは、自らの意志で引き受けようとする覚悟の形なんでしょう?」
宇宙人「私にはあなたの覚悟を否定することはできません」
少女「……」
宇宙人「あなたが見せた高潔なその意思を否定することなど、私にはできない」
宇宙人「……ですから」
宇宙人「ですから、私は私なりに、私の覚悟をあなたに示すことにしました」
少女「……」
宇宙人「私は、己の全身全霊をささげて……あなたを救ってみせる」
宇宙人「あなたを苦しめる全ての障害から、あなたを守ってみせます」
宇宙人「それが……私の『覚悟の形』です」
少女「……」
少女「…………わたし、を?」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/28(火) 02:45:59.72 ID:sTMa9kMi0
宇宙人すごいやばい
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