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引っ越してきた二つ年下の子

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Part6
1 :9k1Z+XoP0 :2009/08/25(火) 18:04:57.05 ID:XzDvhOU0
これでいいかな。

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 18:05:20.25 ID:3YNOkuAo
>>1乙

11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 18:06:23.31 ID:QHSFjMAO
続きもよろしくなww

42 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:11:20.67 ID:XzDvhOU0
一応、最後のレスから
結局、香子が病院に入院している間、
俺は一度も会うことが出来なかった。
いや、俺だけでなく、見舞いに来たほとんどの男が会えなかったようだ。
それでも、俺は病院に通った。
毎日、ナースセンターでお見舞いの品を渡すだけの日々だった。
そんな二週間目のある日。
「すみません、田中ですが…」
「ああ、田中君。」
ナースの方も、俺のことを既に憶えていた。
「入院している佐々木さんに、これを…」
「あ、聞いてないの?佐々木さん、退院したわよ。」
俺は、手にしていた花を取り落とした。

56 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:16:02.29 ID:XzDvhOU0
既に退院している?
俺はわけのわからない心持ちで、病院を出ると、
まっすぐに香子の家に行く。
大体の場所は聞いていたし、家の住所も分かっていたから、
割りとすぐに香子の家は見つかった。
インターホンを鳴らす。香子は会ってくれるだろうか?
中から、香子のお母さんが出てきた。


66 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:21:42.18 ID:XzDvhOU0
「幸介くん…」
お母さんは、ちょっと申し訳なさそうな顔をした。
「どうぞ、上がって。」
「はい、お邪魔します」
俺はお母さんに促されるまま、居間に通された。
居間で待っていると、お母さんがパタパタとお茶を持ってきてくれた。
「あ、お構いなく。」
「ごめんね、バタバタしてて。私もさっき戻ってきたところだから。」
さっき、戻ってきた?
「あの、香子、いや香子さんは…」
「療養のために、山口の田舎に行ってるの。昨日から。」
山口には、香子のお祖父さんとお祖母さんがいるはずだ。

76 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:27:39.80 ID:XzDvhOU0
「体の方は元気になったんだけど、心の方がね…」
「……。」
「私も、夫の身の回りのために一度戻ってきただけで、明後日にはまた行きます。」
「あの、大学の方は…」
「当分、休学ね。」
俺は、頭をぶっ叩かれたような気分だった。
「……男の人に、過剰に怯えてしまうの。お父さんやお祖父ちゃんは、平気になったけど…」
お母さんは、淡々と続けた。
「お祖父ちゃんの家は田舎で、周りに若い人もいないから、療養するにはちょうどいいだろうって、ウチの人が。」
「病院には、いかなくていいんですか?」
「入院は、あの子が嫌がってね……でも、通える病院は近くにあるみたいだから。」

96 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:33:06.00 ID:XzDvhOU0
俺は、言葉もなく、俯くしかなかった。
「……ウチの人が酷いことを言ったみたいだけど。」
お母さんの声に、顔を上げる。
「子供を想うあまりのことだから、気にしないでね。幸介君は、何も悪くないわ。あの人も、分かってる。」
「それは……いえ、やっぱり俺のせいです。すみません。」
「謝らないで。あの子も、あなたを責めてないわ。むしろ、自分を責めてる。」
「え?」
俺は、その時初めて聞いた。
香子は、俺の言いつけをやぶって電話をせずに駅から一人で来ようとしたのは、
バイトで疲れている俺のことを思ってだった。
しかし今は、自分が俺の言うことを聞いて電話していれば、
こんな大事にならずに済んだのに、と自分を責めているのだ。

110 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:38:53.40 ID:XzDvhOU0
「それで、幸介君が責任を感じていないかと心配してたわ…」
俺は、馬鹿だった。
また自分が落ち込むばかりで、香子の気持ちを見失っていた。
こんなにまでなっても、香子は俺の事を心配してくれている。
なら、俺は、他にもっとやるべきことがあるはずだ。
香子が病気と戦っているのに、俺が逃げてる場合じゃない。
「分かりました。」
俺は、スクっと立ちあがった。
「俺の事は心配いらないから、自分の体を第一に考えてくれ、と、お伝えください。」
「え、ええ。分かったわ。」
突然蘇ってかのような俺にお母さんは驚いていたが、
それでも最後は微笑んで送り出してくれた。

123 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:44:24.11 ID:XzDvhOU0
俺がするべきことは何か。
香子が戻ってきた時、支えられる男になる。それしかないじゃないか。
例え、香子が大学に戻れなかったとしても、
一生支え続けるだけの男になってやる。
三度、俺の中のスイッチが入った。
思えば、その時期は就職活動真っ只中。
俺は、暫く中断していた就職活動に身を投じ、
これまたガムシャラに頑張った。
今までは、そこまで働く場所や土地を考えていなかったが、
なるべく今住んでいる所の近くを探すようにした。
会社説明会にも先輩の訪問にも足繁く通ったし、
周りに負けないくらいのことはやった自負がある。

133 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:47:08.41 ID:XzDvhOU0
そして、4年生。
第一志望の、内定が、貰えた。
それは結構大手のメーカーで、大学と同じ県にあるのが良かった。
俺は一安心の後、今度は卒論に気合いを入れた。
しかし、香子はまだ帰ってきていなかった。

139 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:50:53.59 ID:XzDvhOU0
夏休みも、もう終わりそうな9月。
まだ、香子が帰ってきたという連絡は無い。
このまま、退学してしまうんじゃないだろうか。
俺の中を、不安が過ぎった。
一度、そう思いだすといてもたってもいられなくなるのが俺の悪い癖だ。
俺は、暫くぶりに、香子の家に行ってみた。
やはり、香子はいなかった。
だが、お母さんは戻ってきていた。

148 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:54:53.17 ID:XzDvhOU0
「あら、久しぶりね、幸介君。」
お母さんは、昔の明るさを取り戻していた。
そして、また居間に上げてくれた。
「大学の方はどう、順調?」
「ええ、おかげさまで。なんとか、就職も決まりまして。」
「あらあら、良かったわねw」
機嫌も良さそうだし、もしかしたら、香子は帰ってくるんじゃないだろうか?
そんな期待を胸に、思い切って聞いてみた。
「あの、香子さんは、お元気ですか?」

160 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 18:59:11.40 ID:XzDvhOU0
「元気よ、もうすっかり。なんだけどね…」
少し、お母さんの顔が曇った。
「家を訪れる男の人と会うのはもう平気なんだけど、街に出るのが、まだ少し不安みたい。」
「そう、なんですか。」
「あと一歩が、踏み出せないみたいで。それさえ出来れば、精神も安定してるし、もう大丈夫ってお医者様も言ってるんだけど…」
俺は、考えた。
考えて、考えて、考えた。
そして。
「……俺、香子さんに会いに行ってはだめですか?」

162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 18:59:56.61 ID:MnU/.E2o
大した奴だ・・・

165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:00:35.10 ID:sKaNC.AO
いけぇええー頑張れぇえ

166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:00:42.00 ID:DmBzAkDO
頑張れこーちゃん。 
頑張れ!

176 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:04:36.12 ID:XzDvhOU0
この半年以上もの間、俺は、香子の連絡を待っていた。
ひょっとしたら、携帯が鳴るんじゃないか。
迎えにきてって言ってくれるんじゃないか。
そんなことを考えながら、しかし、連絡は無かった。
ひょっとしたら香子にとって、もう俺は忘れたい存在なのかもしれない。
責任を感じるなって言ったのも、もう忘れてってことなのかもしれない。
だけど、それでも。
俺は面と向って言われるまで、諦めることが出来なかった。
「いいわよw」
お母さんはすごくあっさりと、了承してくれた。
「この週末に私も山口に戻るから、一緒に行きましょう。」
「は、はい、お願いします!」
俺は、やっと香子に会えると思うと、
天にも昇るような気持ちだった。

194 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:09:59.95 ID:XzDvhOU0
週末、土曜日。
俺は、お母さんと一緒に新幹線に乗り込んで、山口に向っていた。
新幹線を降りて電車に乗り換え、長旅だ。
そんな長時間、お母さんと一緒にいるのは結構気まずかったが、
お母さんは雑誌を読んだり音楽を聴いたり、長旅も慣れた様子で、
あまり気を使わなくていいので、助かった。
そして、最後のバスを降りると、お祖父さんが車で迎えに来てくれていた。もう夕方だ。
「よう来たねぇ」
香子のお祖父さんは、とても人の良さそうな印象で、
実際、ものすごく良い人だった。
俺はやたら歓迎されたんだが、何か勘違いしていたのかもしれない。

206 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:14:02.93 ID:XzDvhOU0
家の前には、お祖母ちゃんもいた。
まず、お母さんが近づいていく。
「お義母さん、お世話になります。香子はどこでしょう?」
「裏庭におるよ。」
お祖母さんはニコニコとしながら言い、俺に向っても軽く頭を下げた。
俺も、慌てて挨拶する。
「あ、あの、私、田中と申します。この度は〜」
「いいから、香子と会ってきなさいw」
お母さんに苦笑されながら背中を押され、
俺は大きな古い家をぐるりと回って、裏庭に出た。


225 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:18:59.34 ID:XzDvhOU0
裏庭の後ろは、広大な森が見え、その向こうには海まで見えた。
その海に沈む夕日を見つめながら、香子は居た。
「……香子。」
俺の呼びかけに、振り向く香子。
若干痩せて、色も白くなったようだが、ほとんど変わりない。
だけど俺は、
その姿があまりにも懐かしすぎて、
そして、またどこかに消えてしまいそうで怖くて、
今にも涙が零れそうだった。
香子は、男に怯えているはずだ。
不用意に近づいていっていいものかどうか。
わからないので、もう一度、名前を呼んだ。
「香子。…俺、来たよ。」

229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:19:43.92 ID:Ahp3GO60
きたきたきた!!

234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:20:36.02 ID:sKaNC.AO
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ドキドキ

245 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:24:24.53 ID:XzDvhOU0
途端、香子は頬を思いっきり膨らませて、こっちに向ってズンズンと近づいてきた。
さっきまでの儚げな印象とはまるで違う。
「おーそーいーーーーー!!」
俺の眼前まで来ると、香子は思いっきり叫んだ。
「う、うい?」
「今までどうして放っておいたのよう!あんなにご飯だって作ってあげたのに!可愛い幼馴染が心配じゃなかったの!!?」
一気に捲くし立てる香子の勢いに押され、俺はニ三歩たじろいた。
「い、いや、メールとか電話とかもなかったし…」
「だって私、あの時携帯壊れちゃったんだもん!すぐ買いなおしたけど、連絡全然くれないし…」
あいたたた。またやってしまったのか俺ってヤツは。

248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:25:10.86 ID:DmBzAkDO
頑張れこーちゃん! 
頑張れ!

264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:27:25.50 ID:Pp4zccAO
なんかジワーって・・・あれ?

270 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:29:28.58 ID:XzDvhOU0
いや、それにしても。
「お、とこ、を避けてるって聞いたから、あんまり、その…」
上手く言えない。
が、香子には伝わったようだ。
「何言ってんの、こーちゃんを怖がるわけないじゃないw」
「え、だって男全員って…」
「例え他の男の人が皆、私を虐めても、こーちゃんは助けてくれるでしょ。…初めてあった時みたいに」
香子は、手を差し出した。
俺は、あの時のように、その手を掴む。
「……帰ろう。」
「うんw」
俺は、香子の手を引いて、歩き出す。

291 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:32:42.55 ID:XzDvhOU0
「ホントはね、夏休み中が勝負だったんだよね。」
「へ?」
「夏休み中に迎えに来てくれなかったら、こっちから行って殴ってやるところだったw」
なんだってー!?
「じゃ、じゃあ街に出れないとかは…」
「全然平気。夏休み前には、一人で買い物行ってたよ。キリがいいから、後期から復学しようと思って。」
なんというか、お母さんの策士ッ!!

307 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:36:02.46 ID:XzDvhOU0
そして、その日から二日間も俺はお祖父さんの家にお世話になり(寝所は一人だよ!)、
香子と、お母さんとともに、大学のある、俺たちの街に戻ってきた。
しかし、これでハッピーエンド、というわけではなかった。
俺には、重大な仕事がもう一つ残っていた。
それは、お父さんの攻略だ。

323 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:38:54.82 ID:XzDvhOU0
後期が始まって、すぐの日曜日。
俺は、香子の実家の前に来ていた。
香子に頼んで、お父さんと話すための機会を作ってもらったのだ。
「そんなの気にしなくていいのに。」
香子はそう言うが、
「いや、これはケジメなんだよ、俺なりの。」
俺は、スーツまで着て、気合い十分だった。

344 :9k1Z+XoP0:2009/08/25(火) 19:45:06.32 ID:XzDvhOU0
そして、家の中に入ると、またまたお母さんに案内されたが、
今度は居間ではなく、和室だった。
そこで体格のいいお父さんが正座で待っている姿は大迫力だったが、
ここで怯んでいるわけにはいかない。
「失礼します。」
俺は就活で培った扉の開け閉めスキルで、見事に音も立てずに入室した。
「うむ。」
頷いたお父さんの前に、正座する俺。
「ご無沙汰しております、田中幸介です。」
「うむ。」
「実は、本日は折り入ってお願いにまいりました。」
御託はいらない、単刀直入!

359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:49:00.03 ID:FTj3mQMo
お父さんいかついなww
でも印象よさそうだな

362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2009/08/25(火) 19:49:18.14 ID:DmBzAkDO
威圧感でそう聞こえるんだろうなww

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