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引っ越してきた二つ年下の子

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Part3
134 :1:2009/08/25(火) 13:11:40.79 ID:9k1Z+XoP0
その夜、家の電話が鳴った。
たまたま母親が居なかったので、俺が出た。
「はい。」
『あ、こーちゃん?香子です。クッキーありがとう!!』
一気に捲くし立てる香子に、耳がちょっとキーンとした。
「あ、ああ、大したもんじゃなくて悪いんだけど。」
『そんなことない、すっごく嬉しい!ありがとう!!』
こんなに喜んでもらえるなら、もっと前からあげとけば良かった。
「今年は、いよいよ高校受験だな。」
『うん。私も、○○高目指して頑張るよw』
「香子なら平気だよ。」
母親伝いに、香子の成績が学年でもトップクラスだということは聞いていた。
「待ってるぜw」
今度は、言えた。
『頑張りますw』

137 :1:2009/08/25(火) 13:15:30.68 ID:9k1Z+XoP0
二年になっても、相変らずの日々だったが、
受験で忙しい香子とは益々会う機会が減った。
それでも、まるで妹を心配する兄のような心持ちで、
試験の要点や使うといい参考書なんかを教えてやった。
そんな、夏休み明けのある日。
俺は、隣のクラスの女子に、呼び出された。

139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 13:17:52.67 ID:2TjVc6t60
あああああああ

143 :1:2009/08/25(火) 13:19:31.74 ID:9k1Z+XoP0
その子は、合唱部のTだった。
合唱部とは同じ音楽系の部活ということで、交流もあったので、
何度か喋ったこともある。
ショートカットで、綺麗な顔立ちをした子だった。
「ねえ、幸介君て付き合ってる子、いるの?」
放課後の誰も居ない階段の踊り場で、こんなことを聞かれる。
俺の心臓は爆発寸前にまで高鳴った。
「いや、いないけど…」
「じゃあ、私と付き合ってよ。」
なんというか、気が強くてストレートな子だった。
そして、美人だった。
「うん。」
俺は、即答していた。

149 :1:2009/08/25(火) 13:22:29.87 ID:9k1Z+XoP0
香子の事は考えなかった。
いや、一瞬は頭を掠めた。
しかしその時の俺は、香子のことは大切な大切な妹のような存在で、
恋愛対象としては見ていなかった。
幼馴染はそういうもんなんだ、とそう思っていた。
それと同時に、リアルに彼女がいる生活にも憧れていたし、
なによりこんな綺麗な子が告白してくれたという事実に、浮かれていた。
そうして、俺とTの交際が始まった。


155 :1:2009/08/25(火) 13:25:19.01 ID:9k1Z+XoP0
Tは気が強く、デートの時も率先して行く先を決め、
引っ張っていくタイプだった。
俺は彼女ができたことなんて初めてで何もわからなかったし、
その方が助かった。
お互い、部活や勉強で忙しかったが、
それでも合い間を縫って買い物したり、映画に行ったりした。
それはすごく楽しい日々だったし、今でもそれに後悔はしていない。

160 :1:2009/08/25(火) 13:28:46.97 ID:9k1Z+XoP0
初めての携帯も手に入れたし、メールも毎日のようにしていた。
それと比例して、香子と会う機会は減った。
香子はまだ携帯も持っていなかったし、塾と家と学校の往復で、
俺と会ってる暇なんかなかったようだ。
しかし、まったく無かったわけではない。
Tと付き合いだして一ヶ月ほど経った頃、
部活の後に二人でマックに寄って、出てきたときだ。
ちょうど塾帰りだったのであろう、香子と出くわした。

166 :1:2009/08/25(火) 13:33:35.66 ID:9k1Z+XoP0
「あれ、こーちゃん?」
先に気付いたのは香子だった。
「おお、香子、久しぶり。塾の帰りか?」
「うん。」
答えながらも、香子がTを気にしているのが分かる。
「あ、こっちは同じ高校のTさん。」
「どうも。」
Tの挨拶にあわせ、香子も頭を下げる。
「Tは、俺の彼女なんだ。」
「え?」
香子は目をぱちくりさせて、俺とTを交互に見た。

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 13:36:39.80 ID:ySK/OHUe0
もてあそんでんじゃねえよ

168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 13:37:24.72 ID:IJJOlTYvO
こーちゃんのばかあぁぁぁぁぁあ

169 :1:2009/08/25(火) 13:38:04.43 ID:9k1Z+XoP0
「こ、こーちゃん彼女できたんだ!すごーい!」
香子は驚いたような顔をして、俺を囃し立てた。
「ま、まあな。」
俺は照れて頭を掻く。
Tは不思議そうな顔をして、俺と香子を見比べていた。
「じゃあ、私帰るね。」
「ああ、気をつけて帰れよ。」
香子は自転車に乗り込むと、猛発進して去っていった。
「……あの子、中学生だよね?」
香子の後姿を見ながら、Tが聞いてくる。
「うん、同じ団地の、まあ幼馴染だな。」
「へぇ〜」
Tは納得したように頷いた。

170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 13:38:34.38 ID:1PPta8Fj0
切ないなぁ でもなんかわかるっつーか 切ないなぁ

176 :1:2009/08/25(火) 13:44:57.72 ID:9k1Z+XoP0
その後も、特に関係が変わることはなかった。
相変らずTとは付き合っていたし、
香子とは出会ったときに、近況を語り合うような関係だった。
香子は成績上位をキープしているようだった。○○高には間違いなくいけるだろう。
冬のある日、Tが俺んちに遊びに来たことがあった。
テスト期間で部活もなく、テスト勉強をするという名目だ。
学校が終わった後、そのまま二人で俺んちに直行した。

178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 13:50:09.94 ID:SrIr0VMc0
嫌な予感

179 :1:2009/08/25(火) 13:50:58.78 ID:9k1Z+XoP0
俺んちに着いて、ドアを開けたその時。
居間の方から笑い声がする。両方、聞き覚えがあった。
一人は母親。そして、もう一人は。
「香子、来てたのか。」
「あ、こーちゃん、お邪魔してますw」
母親と香子は、香子の持ってきたらしいお菓子を食べながら、談笑していた。
「お父さんの出張のお土産なのw こーちゃんも…」
はたと、香子の言葉が止まる。
俺の後ろにTがいることに気付いたからだろう。
「あら、Tちゃんいらっしゃいw」
「どうも、こんにちは。」
Tとウチの母親は、二度ほど面識があった。
「テスト勉強、させてもらいにきたんです。」
「あらあら。じゃあ幸介にしっかり教えてあげてねw」
ちなみにTの成績は俺より全然いい。

181 :1:2009/08/25(火) 13:55:50.09 ID:9k1Z+XoP0
「あ、私、帰ります!」
香子は椅子から立ち上がり、帰り支度を始める。
「あら、もっとゆっくりしていけばいいのに。」
「いえ、いいんです、テスト勉強の邪魔になっちゃうし…」
そう言いながら、そそくさと玄関に向う香子。
「じゃ、またね。」
「おう、おみやげ、ありがとな。」
香子は俺に手を振って、Tに一礼して、帰っていった。
俺とTは、俺の部屋に入る。
「あの子、いつかの子だよね。」
「うん。」
「よく遊びに来てるんだ?」
「いや、滅多にこないよ。小学生の時以来じゃないかな。」
「ふうん。」
Tは気の無いように言ったが、俺はウソは付いていない。
その日に限って来ていたのは、本当のことだった。

183 :1:2009/08/25(火) 13:58:05.31 ID:9k1Z+XoP0
そして冬休みを越え、新年。
俺とTは初詣にいったり初チューしたりと、
新年のスタートとしては順調だ、と思った。
だが、いいことは長続きしないものだ。
今年もまた、バレンタインがやってくる。

185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:00:24.54 ID:QIlH57XN0
なんでこう、世の中って不平等なんだろ・・・
俺もそんな高校生活送りたかったよ・・・

186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:00:31.06 ID:SrIr0VMc0
ま、まさか・・・

188 :1:2009/08/25(火) 14:03:38.48 ID:9k1Z+XoP0
バレンタイン当日。
俺はTに家で待ってるように言われたので、
大人しく待っていると、携帯が鳴った。
『ちょっと、下まで出てきて』
Tからのメールだった。
なんか似たようなこと前にもあったなーと思いつつ、
俺はドキドキしながら家を出た。
公園の街灯の下に、Tがいた。
「おっす。」
「おっす。はい、これ。」
Tが俺に押し付けて来たのは、間違いなくチョコレートだ。
「お、ありがとう。」
「部活忙しくてなかなか買いにいけなくて、やっと今日買えたw」
それで家で待ってろって言ったのか。
「わざわざ、ありがとう。嬉しいよw」


194 :1:2009/08/25(火) 14:08:27.86 ID:9k1Z+XoP0
その時、だった。
向かいの棟から、香子が出てきた。紙袋を持って。
恐らく、俺の家に届けるつもりだったのだろう。
「あ…」
「……」
香子は俺たちを見て、Tは香子を見て、固まる。
言い知れない緊張感に耐え、俺は第一声を放つ。
「おっす。」
「こ、こんばんは。」
香子は、俺に対してというより、Tに対して挨拶した。

201 :1:2009/08/25(火) 14:13:06.12 ID:9k1Z+XoP0
「こんばんは。こんな遅くにどうしたの?」
Tは、努めて優しい口調で言ってるような気がした。
「え、あの…こーちゃんに……」
素直な香子の言葉。
「それ、チョコレート?幸介にあげるつもりで?」
「は、はい…」
それを聞いて、Tが香子へと詰め寄る。
「彼女のいる人にチョコ持って行くなんて、どういうつもり?」
「ちょっと、やめろよ」
俺は慌ててTの肩を掴んだが、Tは止まらない。
「ハッキリ言って、迷惑なのよこういうの。やめてくれない!?」

204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:13:46.72 ID:Jdid4dcm0
修羅場キタワー

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:13:54.68 ID:QIlH57XN0
うわあああああ
女ってこええええええええええええええええええ

211 :1:2009/08/25(火) 14:17:41.90 ID:9k1Z+XoP0
怯えたように身を竦ませる香子。
「おい待てって!そういうんじゃないんだよ、俺達は!」
さすがに俺も声を荒げた。
「それは、幸介が思ってるだけでしょ?彼女からしたら違うかもしれないじゃない!」
「そんなことねーよ。」
俺は香子を見たが、香子は震えて声も出ない。
このままここに居させるのは、根が大人しい香子には耐えられないだろう。
「香子。大丈夫だから、家に帰ってな。」
「で、でも…」
「いいから。」
俺が諭すと香子は、走って家へと戻った。

212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:18:03.66 ID:Fv0mpELI0
Tやめろぉぉぉぉぉぉ

220 :1:2009/08/25(火) 14:22:53.05 ID:9k1Z+XoP0
「優しいのね。」
厭味な言い方だった。
「そりゃ、妹のようなもんだからな。」
「こないだだって家に居たし。」
「それは、たまたまだって。」
「そんなに大切なら、私よりあの子と付き合えばいいじゃない!」
俺は、怒った。
「なに言ってんだ、あんまりわけわかんないことばかり言うなよ!」
すると、普段は気の強いTの目から涙が溢れ、
「……帰る」
そう言い残し、俺が止めるのも聞かず、自転車で帰っていった。

229 :1:2009/08/25(火) 14:26:04.49 ID:9k1Z+XoP0
俺は家に帰ると、謝罪のメールを送った。
『言い過ぎた、悪かった。俺はTが好きだから、信じて欲しい。』
しばらく後、メールが返ってきた。
『私こそ、ごめん。ヘンに気が立ってた。許してほしい。』
その後もメールのやりとりで謝りあい、
これで、Tとの喧嘩は一件落着した。そう思っていた。

234 :1:2009/08/25(火) 14:28:41.71 ID:9k1Z+XoP0
次の日、俺は香子にも謝らなくてはと思い、電話したが、
家の人も香子も留守だった。
結局、その年の香子からのチョコレートは受け取ってやれなかった。

240 :1:2009/08/25(火) 14:32:34.58 ID:9k1Z+XoP0
3月に入り、俺はホワイトデーの準備をしていた。
今年はチョコレートを買った。
Tだけでなく、受け取れなかった香子の分まで。
そんな3月のある日、サッカー部のSから妙な話を聞いた。
「おい、幸介。お前、Tと付き合ってるよな?」
「うん。」
「あいつ、こないだの日曜、合唱部の男と街歩いてたぞ。手、繋いで。」
は?

241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:33:19.78 ID:Jdid4dcm0
Twwwww

243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:34:23.27 ID:ldgHXfKPO
やっぱTはびっちだな。
こーちゃんにはヤラせないくせに。

247 :1:2009/08/25(火) 14:35:01.96 ID:9k1Z+XoP0
その日曜日は、部活だと聞いていた。
「いや、俺ら試合で他校行ってたんだけど、その帰り。3時くらいか?」
「あれは間違いなくTだったぜ。」
「っていうか、他のヤツが言うには、前にも見たって。」
Sは、俺のためを思って言ってくれてるのは間違いないが、
その一言一言が、まるで刃のようだった。

250 :1:2009/08/25(火) 14:39:40.57 ID:9k1Z+XoP0
俺は、その日のウチにTを呼び出した。
「どういうことだよ。」
「………。」
「日曜は部活じゃなかったのか?」
「………。」
「なんとか言えよ!」
ずっと黙っていたTだったが。
「なによ、あんたに言われる筋合いないでしょ!」
「なんだって?」
「だってそうじゃない、あんただって隠れてあの中学生とイチャイチャしてるくせに!」
「なにいってんだ、してるわけあるか!」
「うるさいわね、もうどうだっていーじゃない!!」
Tはそのまま、どっかに行ってしまった。
残された俺は呆然と立ち尽くしながら、
どうやら自分が振られたらしいということに気付いた。

251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 14:40:05.74 ID:t+omtvp00
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