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百物語2014

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Part12
214 :かーん ◆UiIW3kGSB. :2014/08/24(日) 01:41:05.41 ID:NhStOnDC0
【第六十七話】
『作り物の怪』
(1/2)
私が小学生の頃学年内で結構長い怪談・心霊ブームがきた。
放課後PC室に忍び込んで色々やらかしたのもこの頃の話である。
びっくり系のフラッシュや読んでも読んでもなくならない怖い話。
インターネットのおかげで私たちは実にたくさんの怪談やオカルトな知識を得ることが出来た。
いつの間にか読むだけ、見るだけで物足らなくなっていた私たちは自分達で実践する方向にシフトしていっていた。
こっくりさんやトイレの花子さんの呼び出し…みんなが持ち寄った情報を片っ端から実践していた。
しかし大抵は空振り。こっくりさんで少し不思議な体験をした程度だった。
いつの間にか実践からまた怖い話を集めることに熱を出した私たちはとんでもないことをしてしまう。
始めは学校のすぐそばにある児童館に併設された三角公園で遊んでいた男の子が事故死して彷徨っている…
という実際にそんな事があれば怪談として伝わる前に学校から注意喚起が広がるようないかにも創作といった話でした。
それではつまらないと私たちは「アレンジ」を加えてしまったのです。
この話を聞いた人は一週間以内に7人にこの話をしないと男の子が足を奪いにくる
この一文を言うだけでみんなの反応は180度変わってくる。このニセ怪談は瞬く間に学校中に広がっていた。
私たちはその結果に大いに満足していたのだが次第におかしな展開に広がっていった。
「この話をきいたAちゃん、信じてなくて7人に言わなかったから骨折したんだって」
「B君は3人からその話を聞いたから21人にその話しなくちゃいけなくなって怖くて学校休んじゃったよ」
7人に言わなくたって男の子は来ない。だって私たちが付け足したものだから。
それなのにだんだんと足に不調を抱えた子が増え始めたのだ。
校庭で鬼ごっこをしていて転んでしまったのも怪談で足を挫いたのもすべてその男の子の仕業となっていた。
こうなってしまっては嘘が嘘でなくなってしまう。
そこで素直に全てを白状すれば良かったもののまた余計な事になってしまったのだ。

215 :かーん ◆UiIW3kGSB. :2014/08/24(日) 01:43:10.13 ID:NhStOnDC0
(2/2)
一週間以内に言えなくても三角公園を三周すれば呪いは解ける
それを人伝に聞いた時には流石に信じる人はいないだろうと笑ってしまったのだが
暫くの間それほど広くない三角公園は小学生でいっぱいになっていた。
そして三角公園を三周しない私を一緒に「アレンジ」をした友人までもが心配をし始める。
そうなるとなんだか私も右足が痛い気がしてくるのだ。
それまでそんなデタラメと切り捨てていた子まで足を掴まれたなんて言い出して
まだノロイをといていない子がみんなから責められるおかしなことになっていた。
しかし偽物のノロイに屈するのは負けた気がして意地でも三角公園には行かないと決めていた。
結果を言うと、私はノロイに勝てず、
運動会の組体操中、ピラミッドのいちばん上に上がる最中に逆側から崩れ私は足をひどく捻挫した。
それでも行かない私の代わりにみんなが三角公園を三周し無事ノロイは解けたようだが改めて怪談の力を思い知ったのだった。
小学生のトンデモ理論と怪談は抜群に相性が良いようだ。
【了】

217 :50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. :2014/08/24(日) 01:45:48.72 ID:JeOcyvlKi
【第68話】 りほ ◆aZ4fR7hJwM 様
『群生轢死』
(1/3)
不思議系の話を一つ。
確か小学生になったばかり位の頃。
当時の記憶なんてほとんど薄れてしまっているが、一つ強烈に焼き付いているものがある。
夏の時期だった。
今は亡き祖父と共に山へ行き、祖父は畑仕事、俺はその間辺りを探検という名の散歩をしていた。
アスファルトで舗装された細い道路を川へと向かう。
多種多様な生き物が数多く住まう山の中、道路上には色々な生き物の轢死体がポツポツと散らばり蟻の餌となっていた。
毛虫の死体を見つけては気持ち悪がり、クワガタ、カブトなら勿体無いと悔しがり、蛇を見ればスゲえ!と声をあげつつ
進む中、ふと先を見ると今まで灰色だった道路がとある区間だけまるで枯葉を散りばめた様な色となっていた。
範囲としては30〜50mてとこだろうか…
あそこだけどうして?と気になり走って向かったところ、近づくにつれそれの正体が分かった。
バッタだ。
トノサマ、ショウリョウ、イナゴ、オンブ、キリギリスにウマオイetc
大小種類様々なバッタの轢死体が一面隙間なく広がり、更にその上をもぞもぞと生きてるバッタ達が蠢いていた。
童心にも異様と感じれる光景に呆気にとられてる最中、1台の車が通過していったのだが、バッタ達はジャンプして逃げ
る事もなくただプチプチと潰され、道路に新たな模様を刻み続けていた。
道の脇は草むらなのになんでそっちに逃げないんだろう?
草むらに行きたくないのかな…そうだ!きっとこの草むらにはカマキリが沢山いてそれでバッタが怖がって行きたがら
ないんだ!
何故かその光景を見た時にバッタ達が草むらを恐れ、道路に逃げ出しているという確信があった為、バッタが怖がる=天敵
がいる=カマキリというアホな方程式が組み上がり、嬉々として藪の様な草むらに飛び込み、夢中で探し回ったのだが、
そんな思惑も虚しく結局見つける事はできなかった。
なんでいないんだ!と悔しがると同時にふと、違和感に気付いた。

218 :50@投稿代理 ◆4gJVpc7IX. :2014/08/24(日) 01:46:46.61 ID:JeOcyvlKi
(2/3)
カマキリどころではない、草むらに生物の気配が全く無いのである。
本来夏山の草むらに飛び込もうものなら、小さな羽虫達が一斉に飛び立ち、逃げ惑うはずなのだが、それが一切無い
のである。
自分の知ってるものと違う生気の無い草むら、道路一面に広がるバッタの死骸と蠢く姿を思い出すと気持ち悪くなり
帰ろうと思ったのだが、気付けば大分深くまで来てしまったようだ。
一度道路まで出て戻ろうとしたが、そこはもうバッタ絨毯のど真ん中。
通るものなら死骸や生きてる奴らをブチブチ潰しながら歩かなくてはならない。
生物大好き少年と言えど、さすがにそれは気持ちが悪過ぎる…
諦めて草むら伝いに戻る事にしたのだが…おかしい。
草むらが長過ぎるのだ。夢中になっていたということを考慮しても本当にこんな歩いたのか?と疑問に感じる程で
あった。
周りを見渡したところで子供の背丈では鬱蒼と生い茂った草しか見えない。
おそらく自分が進んで来た軌跡であろう、かすかに沈んだ草の跡だけを頼りにひたすら進むのだが、永遠と続く様な
草むらにもしかして迷って帰れないんじゃないかと不安になる。
動揺と恐怖で泣き出しそうになっていると、突如目の前を小さなものが横切った。
思わず目をやりじっと見ると、どうやらそれは米粒程の小さなバッタのようだ。
自分以外に動く物を見つけた嬉しさに先の奇怪な光景や恐怖も忘れてバッタの方へと向う。
草むらの中で近づいては逃げられるという追いかけっこを繰り返えしていくうちに、突然周りからそのバッタ以外の
虫達が飛び上がった。
飛び交う虫達を見た途端、出られた!と直感し、そのまま道路まで出ると一目散に祖父のもとへ逃げ帰った。
祖父はなんの収穫もなしに走って帰って来たのを見て怪訝そうな顔をしていたが、先の話を伝えるとしばらく考えた後に
「きっと誰か薬でも撒いたんだな。それで虫どもは嫌がって道路に出てたんだろう。
それに帰りは登り道だし、怖い時や嫌な時ってのは時間が長く感じられるもんだ。
まぁ、体に薬がついたかもしれんから風呂に入るぞ」
と、言うと小屋に向かい、そのまま冷水で丸洗いされ、衣服は同上の理由により畑で燃やしていたのを覚えている。

219 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 01:49:24.85 ID:jSil/F2Bi
(3/3)
当時は祖父の説明で納得したものだが、周りの環境も理解できるようになり、改めて思い出すと様々な疑問が生じる。
あの道路周辺には所々に畑や田んぼがあり、周りに広がる恐れがある為、基本薬品類は撒かずに除草するにしても刈払い
機を使うのが常識となっている。
例外的に外来種の毛虫等、木々の被害が酷過ぎる時には使用することもあるが、その場合付近に薬品散布の目印を立てる
上、薬品が滴る様な散布直後の状態でもない限りは虫が全くいないという状況はない。
仮にとんでもない劇薬を撒いたのだとしたら植物にも影響はでるはずだ。
そもそもあんな放置された草むらにわざわざ手を入れる必要性もなければ、逆に手を入れるべき畑や田んぼは普段と変わ
らず生き物が湧いていた。
道路に蠢くバッタ達にしろ、あの区間のみに集約してただけで、その年に大量発生したということでもない。
そしてそれらの疑念は他でもない、祖父自身が一番に分かっていたはずだ。
子供の戯言と相手にしなかったのか、それとも他に何か理由があったのかは今となっては知る由もない。
その後も毎年夏に何度となく近辺を通る事があったが、同じような情景にあう事は無く、草むらも現在は整地され畑と
なってしまった。
だが、道路一面に広がりただ潰されていくだけのバッタ達、青々としているが生気を感じることのない草むら、そして
笑いながらも有無を言わせない強い力で小屋まで一直線に俺を引っ張っていく祖父の姿…
あの夏の思い出だけは20年近く経つ今でも鮮明に焼き付いている。
【了】


221 :葛 ◆.zethFtqnU :2014/08/24(日) 01:52:03.78 ID:4Bnkoi68O
トラック-1/2
ちょっとした小旅行も兼ねて、一泊の予定で片道5時間かけて友達のところに遊びに行った
……というのに、急遽予定が変わったせいで結局、深夜だというのに運転して帰る羽目になった
主要国道を繋ぐバイパスになっているせいで昼間は交通量の多い県道も、午前2時ともなるとすれ違う車もなく、しんとした空気が降りていた
しばらく走っていると、バックミラーにライトがちらつき始めた。どうやらトラックのようだ
……と思っていると、ライトはあっという間に背後に迫っていた。どうも、かなり急いでいるようだ
パッシングされたわけでもないし、まだ少し距離はあったのだが、ちょうど避けやすいスペースがあったのでそこに避ける
トラックは減速することもなく、横を通り過ぎて行った
激しい風圧で車が揺れる
みるみる小さくなるトラックを見送って、車線に戻る
……また数分走ったところで、バックミラーにライトがちらつき始めた。どうやら次もトラックのようだ
(深夜は飛ばすトラックが多いなあ……)
ちょうどバス停があったので、少し早いがそこに避ける
するとトラックは、減速することもなく横を通り過ぎて……
「……ん?」
今のトラックは、さっき追い越して行ったトラックに似ていたような……?
特に意識していなかったので、ハッキリ「似ている」とは言えないけれど……
(……同じ会社なのかな?)
見る間に小さくなるトラックの、背後に書かれた『○○運送』の文字を見ながら車線に戻る
ものの数秒足らずで、トラックはライトさえ見えなくなった
またしばらく走ったところで、背後にライトの明かりが見え始めた
早い段階で路肩に避けて停車し、近付いてくるトラックを見る
……うん、やっぱり似てる
追い越していくトラックの背後に書かれた『○○運送』の文字
今度はナンバーもしっかり記憶した
既に小さくなったトラックを見送って、発進する

222 :葛 ◆.zethFtqnU :2014/08/24(日) 01:54:32.31 ID:4Bnkoi68O
2/3
……数分後。案の定、見覚えのあるトラックが近付いてくる
今度は早めに避けず、近付くのを待つ
バックミラー越しに読み取ったナンバーは、記憶していたものに一致した
それを確認してから、ぶつかるほどに幅寄せしてくるトラックを、減速して路肩に寄せながら追い抜かさせる
続けざまに、追い掛けるように発進したが、すぐにトラックとの距離は開いていく
トラックがあっという間にカーブの先に消える
慌てて自分もカーブを曲がる……が、カーブの先にトラックの姿は、影も形も無かった
いくらトラックが飛ばしていたといっても、今回はすぐに追い掛けたのだから、そんな、見えなくなるほど距離は引き離されていないはずだ
半ば呆然と前を見つめて運転していると、後ろからトラックが近付いてくる……
追いつかれては追い抜かせ、追いつかれては追い抜かせ。もう何度目かわからないやり取りを繰り返していると、あるT字路に差し掛かった
右に曲がれば、高速のインターがある。そのT字路のちょっと手前で避けた自分を、トラックが追い越し、
トラックが交差点に入った瞬間、ふっ……とトラックの姿が、まるで幻であったかのように掻き消えた
「!?」
驚いて周囲を見るが、トラックの姿はどこにも見えなかった

223 :葛 ◆.zethFtqnU :2014/08/24(日) 01:56:35.23 ID:4Bnkoi68O
3/3
まるで悪い夢でも見ていたような気分で、その先のコンビニに立ち寄った
よほど青い顔をしていたのだろうか。店員さんがちょっと探るような笑みを向けてくる
「どうしました、お客さん。幽霊でも見ましたか」
そう言われて反射的にビクっとなる自分に、店員さんは理解を示すような表情を浮かべる
「それってもしかして、トラックの幽霊じゃないですか」
「……知ってるんですか?」
ホットのコーヒーを買いながら問いかけると、店員さんが頷く
「昔、そこのT字路で事故があったんすよ。会社が結構無茶な運送やらせてたらしくて。赤信号に突っ込んでそのまま……だったらしいっす」
それ以降、深夜に走るそのトラックが現れるようになったのだという
他にお客も居ないので、店員さんは親切に教えてくれた
「幽霊だと気付かないで煽ったりしてたヤツらが、結構そこの交差点で事故ったりするんすよ」
……お客さんは無事で良かったですね
そう言った店員さんに礼を言って店を出ると、T字路に差し掛かったトラックが、ふっ……と姿を消したところだった
運転手は今でも運転を続けては事故を繰り返しているのだろう
いつまでも、いつまでも


225 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/24(日) 02:05:34.69 ID:iVpQyD8K0
【 第70話 】サンズリバー ◆X0uk49LcEU 様
『真夜中のドライブ』
(1/2)
いつの日だったか、運転免許取得記念ドライブを僕と友人3人の計4人で決行。
18歳だったと思う。場所は滋賀県の比叡山ドライブウェイ。初めての真夜中のドライブで、みんな大興奮だった。
比叡山から奥比叡へ行く予定を立てた。まだカーナビなど無い時代だから、地図を片手に…。
まずは友人Aが運転し、みんなで交代しながら各々の好きなミュージックをかけるという決まり。
僕はMadonnaと松田聖子のカセットテープを用意していた。
他にはサザンオールスターズや自作のマイベスト等、人それぞれでワクワクしていた。
道のりは順調そのもので、スナック菓子を食べながら、とても盛り上がって楽しんでいた。
比叡山ドライブウェイも難なくスイスイ走り抜けていた。
途中で道が分かれていたが、地図の事などすっかり忘れ、感覚で突き進んで行った。
友人Aが僕に言った。「なぁ、そろそろ疲れたから、運転代わってーなー。」
僕は「おう、ええで!」と即答し、どこかキリのいい所で代わる事にした。
しばらく走ると自動販売機が見えたので、そこで缶ジュースでも買って休憩し、運転を代わる事にした。
車を一旦止め、みんなで缶ジュースを買い、再び車に乗り込んだ。
次の運転は僕なので、もちろん運転席に座った。
ドンドン!  皆「ヘッ!?」  ドンドンドン…  「ハッ!?」
ピカーッ!! ……対向車はない。
みんな口々に「しょうもない事すんなや?」 「誰やねん?」

226 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/24(日) 02:06:08.11 ID:iVpQyD8K0
(2/2)
僕が「はよ行かなヤバいんちゃうか?」と言った矢先に金縛りに遭った。人生初の金縛りである。
友人達は「オイ!オイ!!」「どないしてん!?」と口にするが、僕は応えられない。
あっという間に車内は静まり返った。勇気を出して目を開けると、みんなが硬直状態である。
しかし、あの光もなく自動販売機以外は暗闇の中だ。人影も何も見えない。
どのくらいの時間が経ったのだろうか、僕達の身体は元に戻った。しかし放心状態である。
不思議な事に、記憶はここで途絶えている。後日、何度かこの出来事について話しをしたが、
みんな同じように途中からの出来事を思い出せず、また、どうやって無事帰ったのか覚えていない。
僕達は、この話しは自然と封印してしまった。
それ以来、比叡山へは行っていない。あれは何だったのか今でも謎である。
【完】

228 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/24(日) 02:07:42.53 ID:iVpQyD8K0
【第71話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様
『温泉街の按摩士』
(1/3)
元同僚の話。
仕事の元請先に誘われて、温泉旅行に出かけたのだという。
温泉と料理を一頻り堪能して「さぁ寝るか」という頃、仲居さんに声を掛けられた。
「お休みになる前にマッサージはいかがですか?
 ここにはとびきり腕の良い按摩士がいますよ」
彼は肩凝りが酷く、それが原因での偏頭痛にも悩まされていた。
それを仕事仲間に零しているのを、どうやら仲居さんに聞かれたらしい。
「腕が良いっていうのならお願いしようかな」
という訳でマッサージを頼むことにした。
やって来た按摩士は、壮年の男性だった。
佇まいに何というか雰囲気があって、
「あぁこれは確かに腕が良さそうだ」と感じられたのだそうだ。
マッサージを受ける前に色々なことを聞かれたが、なぜかそれだけでかなり凝りが
取れたように感じられた。
「肉をリラックスさせて柔らかくするのも技術の一つですよ」と按摩士は笑う。
「おぉ、確かにこれは随分と硬いですね。一回だけじゃほぐれないかもなぁ」
施療に入った按摩士は、彼の身体に手を触れるとそう口にした。
しかし技倆は確かなようで、揉みほぐされる部位からどんどんと強ばりが取れていく。
ほぅと息を吐きながら身を任せていると、その内おかしな事に気がついた。

229 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/24(日) 02:10:14.38 ID:iVpQyD8K0
(2/3)
按摩士の動きが変だ。
揉んだり押したりするのはわかる。
しかし時々、指を肉の中に突っ込んで、何かを抜き取るような動作をしているのだ。
俯せになっているので何をしているのか見えないが、どうにも気になる。
やがて仰向けに体位を変え足を揉む段になり、初めて按摩士の行動を確認できた。
施療しながら、按摩士は彼の身体から何か黒い物を引っ張り出していた。
非常に小さくてジタバタと暴れている何かを。
黒くぼやけていてはっきりと見ることが出来ない。
それが抜かれると、ふーっと身体が楽になった。
じっと見ている彼を気にも止めず、按摩士はそれをサッサと手元の袋に押し込んで、
平然とマッサージを続けている。
我慢が出来ず、問うてみた。
「今さっき、一体何を抜き取ったんですか? まさか生き物じゃないですよね?」
按摩士曰く、
「あぁ、アレが見えますか。
 あれは疲労と悪い念とが混じって、凝り固まったものですよ。
 勤め人の抱える業とでも言いますか。
 肉だけじゃなく頭まで柔らかくなると、動いて見えることもあるのです。
 一種の錯覚というか、脳が視覚情報としてそう捉えるのでしょうな。
 見えない人にはまったく見えないらしいのですが。
 勿論、生き物なんかじゃありませんよ」

230 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/24(日) 02:11:15.74 ID:iVpQyD8K0
(3/3)
何となく、上手いこと誤魔化されたような気がする。
「霊が見える人」などと同様に、肩凝りの元も「見える人」と「見えない人」とが
いるとでもいうのだろうか。
腑に落ちないまま、なおも尋ねてみる。
「その抜き取ったヤツ、ええと業ですか。それ、一体どうするんです?」
按摩士は返答した。
「食べるんですよ。人間の業っていうヤツは、堪らないほど美味なんです」
マジマジと見つめたところ、按摩士は、
「あれ、真に受けられましたか?
 嫌だなぁ、冗談ですよ、冗談。
 単なる田舎按摩士のつまらない手妻だと思って下さい」
と笑いながら手を振って話を終わらせた。
その後は特に変わった話題も出なくてなり、やがてマッサージは終わった。
腕は確かに素晴らしくて、長年悩んでいた凝りが嘘のように取れたという。
しかし今でも、あのもぞもぞと動く何かが気になって仕方がないそうだ。
【了】

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