百物語2014
Part15
267 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:00:51.69 ID:jSil/F2Bi
【第八十二話】 白孔雀◆EiiyoouYFo
『よかったね』
数年前の話。いい話系なので苦手な方はパスして下さい。
先輩からバイトの話を貰った時のことです。
ちょうど前のバイトを辞めたばかりで、次のバイトを探していた私はその話に飛びつきました。
辞めた時期が悪かったのかあまり募集がなくて、いろんな方に頼んでもなかなか見つからなくて…という状況でした。
行ってみたらとても条件の良いバイトだったんです。場所は駅から近いし時給も良いし。
内容といえば前の方(Aさんとします)の仕事を引き継げば良かったんです。
そんな条件の良いバイト、なぜこんな中途半端な時期に辞めるんだろうと思いましたが
理由はすごく単純なことでした。
私を案内してくれたAさんのお腹が大きくて…つまり妊娠されて仕事を辞めることになったんだそうです。
聞いてみるとAさんもかなり次のバイトの人を探してたそうなんです。
困っているうちにお腹も大きくなっていって…そしてやっと私が見つかったそうなんです。
そのせいでしょうか。初めてAさんと会った時
ママ、よかったね
と子供の声が聞こえたんです。少年の。
でもその場には女性しかいなかったし、私にだけ聞こえていたようなんです。
私には霊感がないのに、とても不思議な体験でした。
数ヵ月後、Aさんが無事に出産したと聞きました。勿論、男の子でした。
【完】
269 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:02:36.16 ID:jSil/F2Bi
【第83話】 葛 ◆.zethFtqnU様
『落とし物』
(1/2)
祖母の話
小さい頃、祖母の話を膝の上で聞くのが好きだった
「昔々、婆ちゃんがお前と同じくらいか、まだ小さかった時の話だ。……ちょうど梅雨の時期でナァ、
3、4日ほど降り続いた雨が上がったけん、裏山に遊びに行ったんよ」
そうしたら、山のてっぺんで妙な物を見つけたのだと言う
それは、ススキの生い茂った中にあったそうだ
「最初は、ススキに「何かついとう」思うて近寄ってみたら、茅に透明な寒天のようなもんがついとってな」
祖母は最初、それをキノコの一種か何かだと思ったらしい
「珍しいけん、他にも無(ね)ぇか思うて辺りを見たら、寒天のいっぱいついた腕が落ちとった」
その腕は、雨蛙の緑をもっと透明にしたような、透き通った緑色をしていたそうだ
「形は人の手と変わらんけど、でっかい水掻きがついとうけん、『こら河童の腕や』思うて、
慌てて腕を持って山を下り始めたんよ」
何か考えがあって腕を持って下りたわけではなく
とにかく『大事(おおごと)だ。大変なことだ』と大人の意見を聞かなくてはと思った、と祖母は言う
「で、池の端まで下りた時に……昔は山ん中でも、ちょっとでも水気がありゃあ田んぼ作っとったけん
山ん中でもため池があったんよ。そこまで来た時に、声がしてな」
すみません、すみませんと泣きそうな、祖母曰く「高いのに野太い」声が聞こえて、祖母は足を止めたそうだ
「姿は見えんけど、ため池から『すみません、すみません。腕を返してください、腕を返してください』ち言われてな」
返してくれと言われても、別に取ったわけでもないのに、と祖母は釈然としなかったそうだ
「でも返さんわけにはいかんからな。河童を怒らせると大水が出るというし。
……けど、返そうとしている相手が本当に河童なのか心配になったんな」
渡して大丈夫な相手なのか。不安になった祖母は、池に向かって「姿を見せろ」と言ったらしい
すると池の中から「姿は見せられん」と返されたそうだ
270 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:03:23.44 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
なら「河童だという証拠を見せろ」と言うと
「そうすっと、池の真ん中から、切れている腕と同(おんな)し腕が出て来たけんなあ
手に持ってた腕を池ん中に投げてやったんや」
河童は「ありがとう、ありがとう」と言い、
「お礼を山ん入り口の榊の木の下に置いとうけん使ってくれと。それは、『どんな悪いものもたちどころに治してくれる』と」
その代わり、今日のことは大人に言わないでくれ、と言われて祖母は了承したそうだ
「山を下りてから、言われた通り榊の下に草で編んだ小さな箱があってな」
それは恐らく茅で編んだもので、大きさは幼かった祖母の手の平より少し大きいくらい、形は六角形だったらしい
「同じく草で出来た蓋を開けるとな、中には馬の油のような白っぽい軟膏が入っとった」
どんな悪いものでもたちどころに治す、という河童の言葉を思い出し
試しに擦り傷に塗ってみると、文字通り瞬時に傷が消えたそうだ
「こりゃあ大変なものを貰(もろ)うた。大事に使わにゃ」
使った分がまた増えるということもなかったため、それ以降、祖母は薬を大事に保管しておいたそうだ
「不思議なことに、草でできとる箱はいつまで経っても綺麗な緑色のまんまじゃったナァ」
大事に使わないと。そう思いながらも、一度だけ誘惑に負けそうになったらしい
「婆ちゃん、頭が良くなかったけんな。頭に塗ったら頭良くなるん違うかと思うたけど、ちぃとも良(よ)うならんかった」
まだ残っていればお前にあげたんだがナァ、と祖母は言う
「爺サンが屋根から落っこった時に全部使い切ってしもうたんよ」
まあ、爺さんが助かったからお前が生まれたんだけどな、と言って祖母は笑っていた
それにしても、何で腕なんて落っことしたんだろう。それを聞き忘れたことが、祖母にとって人生最大の後悔らしい
【了】
272 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:05:37.95 ID:jSil/F2Bi
【第八十四話】 白孔雀◆EiiyoouYFo様
『無題』
友人Yさんの話。
Yさんがまだ学生だった頃、あこがれの先生がいた。K先生と呼んでおこう。
K先生は奥さんと離婚して娘が一人いる。
でもそんなことはYさんにとって気にならないことだった。
ある日Yさんは思いを告白するためにバレンタインのプレゼントを用意した。
勿論K先生に渡すために。
結局その日はK先生には会えず、明日こそ渡そう…Yさんはそう思っていた。
その夜、Yさんは夢を見た。
ある人がお坊さんのような人にしきりに頭を下げている。顔は見えない。
「そこをなんとか…」
お坊さんは無言で、それはできないとばかりに首を横にふっていた。
目が覚めた後、Yさんは夢の中のお坊さんは自分のご先祖様ではないかと思ったそうだ。
そして頭を下げていた方はK先生のご先祖様だとも。
その夢を見たとたん、YさんのK先生へのあこがれは嘘のように消えてしまったとか。
Yさん曰く「だってあの後もっと素敵な人が現れたのよ」
でも、もしあの日YさんがプレゼントをK先生に渡していたら、あの夢を見ていなかったら
Yさんの人生はどうなっていたんだろう。
【完】
274 :木井 ◆nHfn.6fl9E :2014/08/24(日) 03:10:12.86 ID:HNgMpfvd0
【第八十五話】 「神様じゃない!」
(1/2)
僕が小学校4年の時のことです
当時の学校内では「怪人物」というのがの噂になっていました
怪人物とは学校の近くの道に夕暮れ時に出没する正体不明の人物で、見たという人も相当いました
噂では怪人物は夕方あそんでいる子供を襲う、さらう、血を吸う、など色々言われていましたが
僕と友人のOとYはこの噂に興味津々でした
この友人Oですが、授業中に突然服を脱いだり、窓を指して神様が見えると言いだすやつでしたが
成績は意外と良く、なんというか変人でした
Oは何の根拠もなしに怪人物を「あれはきっと神様だ、神様に違いない」と言っていました
そして、ある土曜日の夕方、僕らはついに「怪人物」に遭遇することことになったのです
3人で学校の敷地内で遊んでいたら、体育館の前で自転車に乗ってる男の人がいました
西日で顔は見えないのですが、自転車でのろのろと走るその姿に、僕らは妙なものを感じました
近づいてくるにつれ その人は首を左右にやたら激しく振りながら走っているのがわかりました
これは絶対に普通じゃない、そう思った僕らは「怪人物だ!」と恐怖に駆られて後ろにダッシュ
したはずでしたが、Oだけは逆に怪人物の方に向かって行ったのです。
275 :木井 ◆nHfn.6fl9E :2014/08/24(日) 03:12:25.61 ID:HNgMpfvd0
(2/2)
逃げ出した僕らの後ろからOが「神様やー、神様やー!」と喚くのが聞こえました。
僕らはOに構わず走って校舎の塀の裏側に来てようやく止まりました
さっきの場所からOの絶叫が聞こえました
「ちがう、神様と違う、こいつ違う、うわー!!」先ほどとは違い必死に助けを呼んでいます
僕らは焦りましたが今からあの場所に戻るのは絶対に嫌だったのです
やがて声がしなくなりました
周りも暗くなってきたので、僕とYは、Oが心配でしたが、Oが勝手に行ったんだから
あいつの責任だ、と言い合って家にそそくさと帰りました
次の日曜日に恐る恐るOの家に行ったら誰もいなくて鍵がかかっていたので戻り、次の月曜日に
Oは学校に来ませんでした。
その次の日、母からO君は富山県に引っ越した、と聞かされました。
驚きましたが、富山には彼の祖父母が住む実家があったのだそうで、こんどそっちの方に
引っ越したということでした。
しかし事前にクラスの者にも知らせず突然の引っ越しはやはり不自然で、あの日の事もあって
僕とYには腑に落ちない不安が残りました。
あれから10年、あの自転車の男は本当に怪人物だったのだろうか?Oに何かしたのだろうか?
本当にOは富山県に行ったのだろうか?
ーおわりー
277 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:23:12.14 ID:jSil/F2Bi
【第八十六話】まんじゅう ◆9Pz/WjWQOI様
『千葉県S駅(其の二)』
現在は改装が済み、明るくお洒落な雰囲気の駅ですが、以前は怪しげな話をよく聞きました。
S駅には地下1階から地上2階まで上がれるエレベーターがあります。どの駅にもあるような至って普通のエレベーターです。
ある日、Fさんが1階から2階に上がろうとそのエレベーターに乗ると、地下から乗った母娘と乗り合わせました。
娘は中学生くらいで、Fさんの娘さんと同年代くらい。母親の方はFさんより少し年上でしょうか。
2人を背に操作盤の前に立ったFさんに、後ろの会話が所々聞こえてきました。
「このS駅って幽霊が出るんだって」娘のそんな言葉に母親が「えぇ本当?」などと答えており、Fさんも、
そういえばこの駅何だか雰囲気暗いのよね。と思いながらエレベーターが着くのを待ちました。
2階に着いたエレベーターの開ボタンを押し、母娘が降りのを待ったFさんですが、2人が降りる気配はありません。
自分に気を遣っているのだろう、と思い、先に降りる様促そうとしたFさんは後ろを振り返りました。
しかしエレベーターの中はFさん1人だけ。背後にいた母娘の姿はありませんでした
280 :会計 ◆QAI42rkje6 :2014/08/24(日) 03:26:56.86 ID:y69JNzJP0
【八十七話】会計 ◆QAI42rkje6
『引っ越し』
(1/2)
これは従姉から聞いた話です。
従姉が就職で引越しをしたんですけど、その部屋が『出る』部屋だったんです。
引越しが終わった夜、彼女がくたびれ果てて寝てたらいきなりドンって人が伸し掛かってきてびっくりして目を覚ましたそうです
彼女は最初、上に飛び乗ってきた感じがあまりにもリアルだったので痴漢か泥棒かと思ったらしいんです。
しかし、部屋が真っ暗だったので、何者かが馬乗りになっているのはわかっても、姿までは見えなかった。
声を出したり、暴れたりすればかえって危険なことになるんじゃないか・・・彼女がそう躊躇っていると、
フフッと、女の含み笑う声がしたんです。
えっ、と思ったのと同時に人の乗ってた感触が消えて、彼女は飛び起きて灯りを点けたんですけど、
部屋には誰もいないし、戸締りだってしていました。しかも以来、それが毎晩続くんだそうです。
それで、彼女の知り合いにたまたま霊能者というかそういうことに強い人がいたんでその人に相談したんです。
そしたらその人がお札をくれて、「これを布団の四隅の下に敷いて寝なさい」って言ってくれました。
彼女は言われたとおりにして休みました。その頃は彼女はすっかり不眠症になっていて、
お札を敷いたもののやっぱり眠れなかった。
281 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:34:33.52 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
そしたら夜中、足元かの方から足音が聞こえてきたんです。そっちは壁しかなかったのに。
まるで隣の部屋から壁を通り抜けてきたみたいに人の足音がして、それが布団の足元で止まるんです。
彼女は身構えたんですけど、この日はその人、飛び乗ってこなかったんです。
暫く足元に立って、まるで困ってるみたいにじーっと彼女の方を見てるんです。
それから布団の周りを歩き出したそうです。まるで様子をうかがってるみたいにして、何度も何度も。
でも暫くして、ぱったり足音がしなくなったんです。彼女はほーっといきをして・・・
そしたらすぐ枕元から、はっ!、ってバカにしたような声がして・・・
「こんなの効かへんわ!」って。
従姉はその後すぐに引っ越したそうです。
【了】
283 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:37:49.17 ID:jSil/F2Bi
【第88話】 ら年 ◆9w6FQlB7l1rE 様
『『掴む手』あるいは『正体』あるいは『空気を読む』あるいは 、よくある話。』
(1/2)
『掴む手』あるいは『正体』あるいは『空気を読む』あるいは 、よくある話。
ある夏のこと、数人で集まって雑談中に、肝試しやお化け屋敷の話題になった。
すると一人が、こんな恐怖体験を語りだした。
「子供の時友達と遊園地に行って、お化け屋敷に入ったのね。
私怖いから、友達につかまって、目をつぶって何も見ないようにしてたの。
でもなんか、グニュって腕をつかまれる感じがして、
えっ?てそっちの方を見ちゃったら、なんか陰の所から手が伸びて来てて、
その手が私の腕をつかんでたの…
もうびっくりして、声も出なくって…
後で友達に話したんだけど、『そんな仕掛けないはずだよ?』って言うの、
『人間のお化け役はいなくて、全部機械だよ?』って。
じゃあ私の腕つかんだのって何!?あんなとこに人間いるわけないじゃん…
お化け屋敷って、本物の幽霊出るって言うよね…
ほんとだよ、気が付いたら離されてたけど、私ほんとに腕つかまれたの!」
語り手の口調は真に迫り、むろん皆、その『腕を掴む手の幽霊』の話を信じた。
284 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:38:17.85 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
つかまれたのは本当に違いない、私もそう思いながら、ふと別の話を思い出した。
以前他で聞いた、ある人の体験談だ。
「子供の頃お化け屋敷で、途中でカートから降りたら係員にバレてさ…
怒られたね!…うん、途中で降りて中を探検するんだよ、面白かったな。
物陰に隠れたりとかしてさ…ほら!子供の頃やった事あるだろう?」
私はやった事はない。
だがなるほど、『掴む手』の正体がどんなものだか、わかったような気がするよ。
…雑談中の皆はまだ、『腕を掴む手の幽霊』を怖がっている。
むろん私は黙っていた。だって本当のことはわからないじゃないか。
【了】
286 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:46:04.75 ID:jSil/F2Bi
【第89話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU様
『真夜中のドライブ[四国編]』
(1/2)
僕は8年前、都会(関西)での生活を終え、生まれ故郷の四国へ帰省した。
何もかもが懐かしく、都会生活の慌ただしさから解放されて気分爽快だ。
仕事人間で完璧主義を貫いてきた自分にとって、心安まる日々を満喫した。
まずは半年間は仕事をせず、これまで休む間もなく働いてきた身体と心をリフレッシュした。
その間、大好きなドライブを楽しんだ。
とある喫茶店のカウンター席で、若い女性と隣り合わせになった。
話しをしていくと、同じ神戸で住んでいて、僕と同様に帰省したとの事だった。
その上、僕が勤めていた兵庫県の某ドーナツショップの常連客だった事も聞いて驚いた。
本当に奇遇というか世間は狭いと感じた。もちろん、すぐに意気投合し、お互い連絡先を教え合った。
ある日、ドライブに行く事となり、夕食を共にして山間部へと向かった。
色々と共通の話題で楽しみながら車を走らせた。
最初は夜の森林浴という、訳の分からない名目で行った。
街中を通り過ぎ山道へと入り、「自然はいいね。」等と話しながら車を進めた。
女性を乗せているので、運転には気をつけていたが、突然彼女が言った。
「ちょっと飛ばしすぎ!!」そんな感覚はないとスピードメーターを見ると、100km近く出していて驚き、
スピードを落とした。普段なら有り得ない事だ。
288 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:48:49.34 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
どんどん奥へ行くと道が細くなっていった。彼女は今度は悲壮な声で叫んだ。
「早く引き返して!!」
僕が「何で?真っ直ぐ行った方が近道やで。」と答えたら、彼女はこう言った。
「危ない!気配がある!取り憑かれる!恐い……。」
僕は「誰ちゃおらんちや。(誰もいないよ。)」となだめたが、彼女は首を横に振り涙目になっていた。
僕は、あのスピードの事を思い出し、すぐ引き返すことを決めた。
今度は安全運転を心掛けたのだが、彼女は「急いで!」とさっきと逆の事を言う。
しかし、緩やかな下り坂でアクセルが効かなくなり、ブレーキを踏んでいるかのようにスピードが落ちていく。
危ないと思い車を道の左に寄せながら、アクセルを踏み続けたが空ぶかしになり、とうとう止まってしまった。
何度アクセルを踏み込んでも動かない車、半べその彼女。
一度エンジンを切り外へ出た。誰もいないし何の気配もない。
僕は彼女に言った。「俺は(亡き)お袋に守られちゅうき、何ちゃ起きんで!(…守られてるから、何もおきないよ)」
とにかく安心させてから、再度エンジンをかけゆっくりアクセルを踏んだ。すると、正常に走り出した。
それから無事に街中へ戻り、彼女は落ち着きを取り戻した。
時計を見ると午前2時を回っていた。彼女を家まで送り、僕も自宅へ帰った。
あれは、何だったのだろう……。僕の身には何も起きていないし、何も感じなかった。
再び訪れ確かめる勇気はなかった。それにしても山という場所は不思議だ。
いったい何が潜んでいるのだろうか……。
【完】
【第八十二話】 白孔雀◆EiiyoouYFo
『よかったね』
数年前の話。いい話系なので苦手な方はパスして下さい。
先輩からバイトの話を貰った時のことです。
ちょうど前のバイトを辞めたばかりで、次のバイトを探していた私はその話に飛びつきました。
辞めた時期が悪かったのかあまり募集がなくて、いろんな方に頼んでもなかなか見つからなくて…という状況でした。
行ってみたらとても条件の良いバイトだったんです。場所は駅から近いし時給も良いし。
内容といえば前の方(Aさんとします)の仕事を引き継げば良かったんです。
そんな条件の良いバイト、なぜこんな中途半端な時期に辞めるんだろうと思いましたが
理由はすごく単純なことでした。
私を案内してくれたAさんのお腹が大きくて…つまり妊娠されて仕事を辞めることになったんだそうです。
聞いてみるとAさんもかなり次のバイトの人を探してたそうなんです。
困っているうちにお腹も大きくなっていって…そしてやっと私が見つかったそうなんです。
そのせいでしょうか。初めてAさんと会った時
ママ、よかったね
と子供の声が聞こえたんです。少年の。
でもその場には女性しかいなかったし、私にだけ聞こえていたようなんです。
私には霊感がないのに、とても不思議な体験でした。
数ヵ月後、Aさんが無事に出産したと聞きました。勿論、男の子でした。
【完】
269 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:02:36.16 ID:jSil/F2Bi
【第83話】 葛 ◆.zethFtqnU様
『落とし物』
(1/2)
祖母の話
小さい頃、祖母の話を膝の上で聞くのが好きだった
「昔々、婆ちゃんがお前と同じくらいか、まだ小さかった時の話だ。……ちょうど梅雨の時期でナァ、
3、4日ほど降り続いた雨が上がったけん、裏山に遊びに行ったんよ」
そうしたら、山のてっぺんで妙な物を見つけたのだと言う
それは、ススキの生い茂った中にあったそうだ
「最初は、ススキに「何かついとう」思うて近寄ってみたら、茅に透明な寒天のようなもんがついとってな」
祖母は最初、それをキノコの一種か何かだと思ったらしい
「珍しいけん、他にも無(ね)ぇか思うて辺りを見たら、寒天のいっぱいついた腕が落ちとった」
その腕は、雨蛙の緑をもっと透明にしたような、透き通った緑色をしていたそうだ
「形は人の手と変わらんけど、でっかい水掻きがついとうけん、『こら河童の腕や』思うて、
慌てて腕を持って山を下り始めたんよ」
何か考えがあって腕を持って下りたわけではなく
とにかく『大事(おおごと)だ。大変なことだ』と大人の意見を聞かなくてはと思った、と祖母は言う
「で、池の端まで下りた時に……昔は山ん中でも、ちょっとでも水気がありゃあ田んぼ作っとったけん
山ん中でもため池があったんよ。そこまで来た時に、声がしてな」
すみません、すみませんと泣きそうな、祖母曰く「高いのに野太い」声が聞こえて、祖母は足を止めたそうだ
「姿は見えんけど、ため池から『すみません、すみません。腕を返してください、腕を返してください』ち言われてな」
返してくれと言われても、別に取ったわけでもないのに、と祖母は釈然としなかったそうだ
「でも返さんわけにはいかんからな。河童を怒らせると大水が出るというし。
……けど、返そうとしている相手が本当に河童なのか心配になったんな」
渡して大丈夫な相手なのか。不安になった祖母は、池に向かって「姿を見せろ」と言ったらしい
すると池の中から「姿は見せられん」と返されたそうだ
270 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:03:23.44 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
なら「河童だという証拠を見せろ」と言うと
「そうすっと、池の真ん中から、切れている腕と同(おんな)し腕が出て来たけんなあ
手に持ってた腕を池ん中に投げてやったんや」
河童は「ありがとう、ありがとう」と言い、
「お礼を山ん入り口の榊の木の下に置いとうけん使ってくれと。それは、『どんな悪いものもたちどころに治してくれる』と」
その代わり、今日のことは大人に言わないでくれ、と言われて祖母は了承したそうだ
「山を下りてから、言われた通り榊の下に草で編んだ小さな箱があってな」
それは恐らく茅で編んだもので、大きさは幼かった祖母の手の平より少し大きいくらい、形は六角形だったらしい
「同じく草で出来た蓋を開けるとな、中には馬の油のような白っぽい軟膏が入っとった」
どんな悪いものでもたちどころに治す、という河童の言葉を思い出し
試しに擦り傷に塗ってみると、文字通り瞬時に傷が消えたそうだ
「こりゃあ大変なものを貰(もろ)うた。大事に使わにゃ」
使った分がまた増えるということもなかったため、それ以降、祖母は薬を大事に保管しておいたそうだ
「不思議なことに、草でできとる箱はいつまで経っても綺麗な緑色のまんまじゃったナァ」
大事に使わないと。そう思いながらも、一度だけ誘惑に負けそうになったらしい
「婆ちゃん、頭が良くなかったけんな。頭に塗ったら頭良くなるん違うかと思うたけど、ちぃとも良(よ)うならんかった」
まだ残っていればお前にあげたんだがナァ、と祖母は言う
「爺サンが屋根から落っこった時に全部使い切ってしもうたんよ」
まあ、爺さんが助かったからお前が生まれたんだけどな、と言って祖母は笑っていた
それにしても、何で腕なんて落っことしたんだろう。それを聞き忘れたことが、祖母にとって人生最大の後悔らしい
【了】
272 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:05:37.95 ID:jSil/F2Bi
【第八十四話】 白孔雀◆EiiyoouYFo様
『無題』
友人Yさんの話。
Yさんがまだ学生だった頃、あこがれの先生がいた。K先生と呼んでおこう。
K先生は奥さんと離婚して娘が一人いる。
でもそんなことはYさんにとって気にならないことだった。
ある日Yさんは思いを告白するためにバレンタインのプレゼントを用意した。
勿論K先生に渡すために。
結局その日はK先生には会えず、明日こそ渡そう…Yさんはそう思っていた。
その夜、Yさんは夢を見た。
ある人がお坊さんのような人にしきりに頭を下げている。顔は見えない。
「そこをなんとか…」
お坊さんは無言で、それはできないとばかりに首を横にふっていた。
目が覚めた後、Yさんは夢の中のお坊さんは自分のご先祖様ではないかと思ったそうだ。
そして頭を下げていた方はK先生のご先祖様だとも。
その夢を見たとたん、YさんのK先生へのあこがれは嘘のように消えてしまったとか。
Yさん曰く「だってあの後もっと素敵な人が現れたのよ」
でも、もしあの日YさんがプレゼントをK先生に渡していたら、あの夢を見ていなかったら
Yさんの人生はどうなっていたんだろう。
【完】
274 :木井 ◆nHfn.6fl9E :2014/08/24(日) 03:10:12.86 ID:HNgMpfvd0
【第八十五話】 「神様じゃない!」
(1/2)
僕が小学校4年の時のことです
当時の学校内では「怪人物」というのがの噂になっていました
怪人物とは学校の近くの道に夕暮れ時に出没する正体不明の人物で、見たという人も相当いました
噂では怪人物は夕方あそんでいる子供を襲う、さらう、血を吸う、など色々言われていましたが
僕と友人のOとYはこの噂に興味津々でした
この友人Oですが、授業中に突然服を脱いだり、窓を指して神様が見えると言いだすやつでしたが
成績は意外と良く、なんというか変人でした
Oは何の根拠もなしに怪人物を「あれはきっと神様だ、神様に違いない」と言っていました
そして、ある土曜日の夕方、僕らはついに「怪人物」に遭遇することことになったのです
3人で学校の敷地内で遊んでいたら、体育館の前で自転車に乗ってる男の人がいました
西日で顔は見えないのですが、自転車でのろのろと走るその姿に、僕らは妙なものを感じました
近づいてくるにつれ その人は首を左右にやたら激しく振りながら走っているのがわかりました
これは絶対に普通じゃない、そう思った僕らは「怪人物だ!」と恐怖に駆られて後ろにダッシュ
したはずでしたが、Oだけは逆に怪人物の方に向かって行ったのです。
(2/2)
逃げ出した僕らの後ろからOが「神様やー、神様やー!」と喚くのが聞こえました。
僕らはOに構わず走って校舎の塀の裏側に来てようやく止まりました
さっきの場所からOの絶叫が聞こえました
「ちがう、神様と違う、こいつ違う、うわー!!」先ほどとは違い必死に助けを呼んでいます
僕らは焦りましたが今からあの場所に戻るのは絶対に嫌だったのです
やがて声がしなくなりました
周りも暗くなってきたので、僕とYは、Oが心配でしたが、Oが勝手に行ったんだから
あいつの責任だ、と言い合って家にそそくさと帰りました
次の日曜日に恐る恐るOの家に行ったら誰もいなくて鍵がかかっていたので戻り、次の月曜日に
Oは学校に来ませんでした。
その次の日、母からO君は富山県に引っ越した、と聞かされました。
驚きましたが、富山には彼の祖父母が住む実家があったのだそうで、こんどそっちの方に
引っ越したということでした。
しかし事前にクラスの者にも知らせず突然の引っ越しはやはり不自然で、あの日の事もあって
僕とYには腑に落ちない不安が残りました。
あれから10年、あの自転車の男は本当に怪人物だったのだろうか?Oに何かしたのだろうか?
本当にOは富山県に行ったのだろうか?
ーおわりー
277 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:23:12.14 ID:jSil/F2Bi
【第八十六話】まんじゅう ◆9Pz/WjWQOI様
『千葉県S駅(其の二)』
現在は改装が済み、明るくお洒落な雰囲気の駅ですが、以前は怪しげな話をよく聞きました。
S駅には地下1階から地上2階まで上がれるエレベーターがあります。どの駅にもあるような至って普通のエレベーターです。
ある日、Fさんが1階から2階に上がろうとそのエレベーターに乗ると、地下から乗った母娘と乗り合わせました。
娘は中学生くらいで、Fさんの娘さんと同年代くらい。母親の方はFさんより少し年上でしょうか。
2人を背に操作盤の前に立ったFさんに、後ろの会話が所々聞こえてきました。
「このS駅って幽霊が出るんだって」娘のそんな言葉に母親が「えぇ本当?」などと答えており、Fさんも、
そういえばこの駅何だか雰囲気暗いのよね。と思いながらエレベーターが着くのを待ちました。
2階に着いたエレベーターの開ボタンを押し、母娘が降りのを待ったFさんですが、2人が降りる気配はありません。
自分に気を遣っているのだろう、と思い、先に降りる様促そうとしたFさんは後ろを振り返りました。
しかしエレベーターの中はFさん1人だけ。背後にいた母娘の姿はありませんでした
280 :会計 ◆QAI42rkje6 :2014/08/24(日) 03:26:56.86 ID:y69JNzJP0
【八十七話】会計 ◆QAI42rkje6
『引っ越し』
(1/2)
これは従姉から聞いた話です。
従姉が就職で引越しをしたんですけど、その部屋が『出る』部屋だったんです。
引越しが終わった夜、彼女がくたびれ果てて寝てたらいきなりドンって人が伸し掛かってきてびっくりして目を覚ましたそうです
彼女は最初、上に飛び乗ってきた感じがあまりにもリアルだったので痴漢か泥棒かと思ったらしいんです。
しかし、部屋が真っ暗だったので、何者かが馬乗りになっているのはわかっても、姿までは見えなかった。
声を出したり、暴れたりすればかえって危険なことになるんじゃないか・・・彼女がそう躊躇っていると、
フフッと、女の含み笑う声がしたんです。
えっ、と思ったのと同時に人の乗ってた感触が消えて、彼女は飛び起きて灯りを点けたんですけど、
部屋には誰もいないし、戸締りだってしていました。しかも以来、それが毎晩続くんだそうです。
それで、彼女の知り合いにたまたま霊能者というかそういうことに強い人がいたんでその人に相談したんです。
そしたらその人がお札をくれて、「これを布団の四隅の下に敷いて寝なさい」って言ってくれました。
彼女は言われたとおりにして休みました。その頃は彼女はすっかり不眠症になっていて、
お札を敷いたもののやっぱり眠れなかった。
281 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:34:33.52 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
そしたら夜中、足元かの方から足音が聞こえてきたんです。そっちは壁しかなかったのに。
まるで隣の部屋から壁を通り抜けてきたみたいに人の足音がして、それが布団の足元で止まるんです。
彼女は身構えたんですけど、この日はその人、飛び乗ってこなかったんです。
暫く足元に立って、まるで困ってるみたいにじーっと彼女の方を見てるんです。
それから布団の周りを歩き出したそうです。まるで様子をうかがってるみたいにして、何度も何度も。
でも暫くして、ぱったり足音がしなくなったんです。彼女はほーっといきをして・・・
そしたらすぐ枕元から、はっ!、ってバカにしたような声がして・・・
「こんなの効かへんわ!」って。
従姉はその後すぐに引っ越したそうです。
【了】
283 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:37:49.17 ID:jSil/F2Bi
【第88話】 ら年 ◆9w6FQlB7l1rE 様
『『掴む手』あるいは『正体』あるいは『空気を読む』あるいは 、よくある話。』
(1/2)
『掴む手』あるいは『正体』あるいは『空気を読む』あるいは 、よくある話。
ある夏のこと、数人で集まって雑談中に、肝試しやお化け屋敷の話題になった。
すると一人が、こんな恐怖体験を語りだした。
「子供の時友達と遊園地に行って、お化け屋敷に入ったのね。
私怖いから、友達につかまって、目をつぶって何も見ないようにしてたの。
でもなんか、グニュって腕をつかまれる感じがして、
えっ?てそっちの方を見ちゃったら、なんか陰の所から手が伸びて来てて、
その手が私の腕をつかんでたの…
もうびっくりして、声も出なくって…
後で友達に話したんだけど、『そんな仕掛けないはずだよ?』って言うの、
『人間のお化け役はいなくて、全部機械だよ?』って。
じゃあ私の腕つかんだのって何!?あんなとこに人間いるわけないじゃん…
お化け屋敷って、本物の幽霊出るって言うよね…
ほんとだよ、気が付いたら離されてたけど、私ほんとに腕つかまれたの!」
語り手の口調は真に迫り、むろん皆、その『腕を掴む手の幽霊』の話を信じた。
284 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:38:17.85 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
つかまれたのは本当に違いない、私もそう思いながら、ふと別の話を思い出した。
以前他で聞いた、ある人の体験談だ。
「子供の頃お化け屋敷で、途中でカートから降りたら係員にバレてさ…
怒られたね!…うん、途中で降りて中を探検するんだよ、面白かったな。
物陰に隠れたりとかしてさ…ほら!子供の頃やった事あるだろう?」
私はやった事はない。
だがなるほど、『掴む手』の正体がどんなものだか、わかったような気がするよ。
…雑談中の皆はまだ、『腕を掴む手の幽霊』を怖がっている。
むろん私は黙っていた。だって本当のことはわからないじゃないか。
【了】
286 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:46:04.75 ID:jSil/F2Bi
【第89話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU様
『真夜中のドライブ[四国編]』
(1/2)
僕は8年前、都会(関西)での生活を終え、生まれ故郷の四国へ帰省した。
何もかもが懐かしく、都会生活の慌ただしさから解放されて気分爽快だ。
仕事人間で完璧主義を貫いてきた自分にとって、心安まる日々を満喫した。
まずは半年間は仕事をせず、これまで休む間もなく働いてきた身体と心をリフレッシュした。
その間、大好きなドライブを楽しんだ。
とある喫茶店のカウンター席で、若い女性と隣り合わせになった。
話しをしていくと、同じ神戸で住んでいて、僕と同様に帰省したとの事だった。
その上、僕が勤めていた兵庫県の某ドーナツショップの常連客だった事も聞いて驚いた。
本当に奇遇というか世間は狭いと感じた。もちろん、すぐに意気投合し、お互い連絡先を教え合った。
ある日、ドライブに行く事となり、夕食を共にして山間部へと向かった。
色々と共通の話題で楽しみながら車を走らせた。
最初は夜の森林浴という、訳の分からない名目で行った。
街中を通り過ぎ山道へと入り、「自然はいいね。」等と話しながら車を進めた。
女性を乗せているので、運転には気をつけていたが、突然彼女が言った。
「ちょっと飛ばしすぎ!!」そんな感覚はないとスピードメーターを見ると、100km近く出していて驚き、
スピードを落とした。普段なら有り得ない事だ。
288 :50@投稿代理 ◆YJf7AjT32aOX :2014/08/24(日) 03:48:49.34 ID:jSil/F2Bi
(2/2)
どんどん奥へ行くと道が細くなっていった。彼女は今度は悲壮な声で叫んだ。
「早く引き返して!!」
僕が「何で?真っ直ぐ行った方が近道やで。」と答えたら、彼女はこう言った。
「危ない!気配がある!取り憑かれる!恐い……。」
僕は「誰ちゃおらんちや。(誰もいないよ。)」となだめたが、彼女は首を横に振り涙目になっていた。
僕は、あのスピードの事を思い出し、すぐ引き返すことを決めた。
今度は安全運転を心掛けたのだが、彼女は「急いで!」とさっきと逆の事を言う。
しかし、緩やかな下り坂でアクセルが効かなくなり、ブレーキを踏んでいるかのようにスピードが落ちていく。
危ないと思い車を道の左に寄せながら、アクセルを踏み続けたが空ぶかしになり、とうとう止まってしまった。
何度アクセルを踏み込んでも動かない車、半べその彼女。
一度エンジンを切り外へ出た。誰もいないし何の気配もない。
僕は彼女に言った。「俺は(亡き)お袋に守られちゅうき、何ちゃ起きんで!(…守られてるから、何もおきないよ)」
とにかく安心させてから、再度エンジンをかけゆっくりアクセルを踏んだ。すると、正常に走り出した。
それから無事に街中へ戻り、彼女は落ち着きを取り戻した。
時計を見ると午前2時を回っていた。彼女を家まで送り、僕も自宅へ帰った。
あれは、何だったのだろう……。僕の身には何も起きていないし、何も感じなかった。
再び訪れ確かめる勇気はなかった。それにしても山という場所は不思議だ。
いったい何が潜んでいるのだろうか……。
【完】
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む