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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



73:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:13:52 ID:ufTVIcJVgc

――しばし沈黙が流れたあと


千織はハッとして叫んだ

千織「そうだ、沖くん!沖くんを助けなきゃ!!」

車掌「・・・あぁ、あの連れの」

千織「この魚人に連れ去られた後、離れ離れになっちゃったんです!どうしよう、早く探しに行かないと――」

車掌「もう手遅れだろう」

千織「どういうことですか!?」

車掌「この世界で人間は希少であり、食料としても奴隷としても需要が高い。常識的に考えて、あの男はもう煮るなり焼くなりされている」

74:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:15:52 ID:ufTVIcJVgc

千織「っ・・・なにが常識なんですか!!」

千織「大事な友達なんです!お願いです、助けてください!お願いします!!」

車掌「これ以上私の仕事を増やさないでほしい」

千織「お願いします!車掌さんしか頼れないんです…!お願いします、お願いします」

何度も頭を下げる

車掌「…」

車掌「…では、その男を助けて、私に何のメリットがあるのか教えてほしい」

千織「え…」

車掌「私は人間を助けるボランティア活動をしているわけではない」

75:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:21:23 ID:ufTVIcJVgc

千織「っ… に、人間は希少なんですよね?その人間をもう1人、車掌さんが手に入れられると思えば」

車掌「私は人間を食べないし奴隷にする趣味もない。君を買ったのも仕方なく、だ」

千織「じゃ、じゃあ、車掌さんは何が欲しいんですか?」

車掌「…」

車掌「この列車を動かすのに必要な精力。私はそれだけあればいい」

千織「よ、要するに、この列車の人手が足りてないってことですよね!?じゃあ、私が一生懸命働きますから!車掌さんの負担を減らせるように、何でもしますから…!」

76:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:23:46 ID:ufTVIcJVgc

車掌「…何も理解してないくせに、よく言う」

千織「え?」

車掌「やれやれ」

ため息をつくと、車掌は息絶えた魚人の懐に手を入れた

千織「・・・?」

車掌「―あった」

取りだしたのは、なにやら携帯電話のようなもの

77:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:25:40 ID:ufTVIcJVgc

カチャカチャ、カチ

慣れた手つきで操作し、どこかに通話をかけはじめた

プルルルル、プルルルル―――ガチャッ

魚人母『はいもしもし』

車掌「――あぁもしもし、俺だけど」

千織「!」

なんと、車掌の声が魚人そっくりになっていた

78:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:27:57 ID:ufTVIcJVgc

魚人母『俺?』

車掌「やだなぁ俺の声忘れたの、母さん」

魚人母『あぁ、あんたかい?あんたミヤコ駅ついたんかね?』

車掌「着いたよ、ついさっきね。奴隷も無事だ」

魚人母『そいつは良かった。高値で売ってくるんだよ〜』

車掌「わかってる。ところでさ、昨日捕まえたもう1匹の人間って、どうした?」

魚人母『んん?あんたが飯にしろって言ったから、ちょうど今、塩を塗ってるところさね』

千織「・・・!!」

車掌「そう。せっかく準備してるところ申し訳ないんだけどさ・・・」

79:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:30:45 ID:ufTVIcJVgc

車掌「ちょうど今、男の人間を買いたいっていう貴族に会ったんだ。聞いてくれよ、6000万で買ってくれるっていうんだ」

魚人母『ろっ・・・6000万!?!?』

車掌「うん。だからさぁ、ちょっと食べるのは中止で。俺が取りにいくまで生かしといてくれないかな」

魚人母『わ、わかったよ。それなら仕方ないね』

車掌「じゃあ、よろしく頼む」ピッ

千織「・・・」

車掌「・・・運が良かったな」

車掌の声は、野太い怪物の声からいつもの声に戻っていた

80:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:34:11 ID:ufTVIcJVgc

千織「・・・っ」

千織は目に涙を浮かべ、頭を下げた

千織「ありがとうございますっ・・・。車掌さんがいなかったら、ほんとに、私たち・・・」

車掌「・・・・」ハァ

車掌「とりあえず、昨日君たちが連れ去られた駅――ササノコ駅に戻るのは、明日の夜になる」

千織「あ・・・明日の夜ですか?もっと早くできませんか?」

車掌「君たちのためにこの列車を動かしているわけではないからな。明日の朝ミヤコ駅の物資をのせ、他の駅を経由しつつササノコ駅へ戻る」

81:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/10(水) 23:37:12 ID:ufTVIcJVgc

千織「でも、でも早く行かないと沖くんが」

車掌「君は」

冷めた瞳で睨まれた

車掌「君は、私に買われたことを忘れたのか?言い方を変えれば、君は私の奴隷であり、私は君の主人だ」

千織「…!」

車掌「願いをきいてやったからといって調子に乗るな。今後は私の指示に従え」

千織「は、はい・・・」

82:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:08:36 ID:spmolqlGjY

「にゃ〜」

千織「あ・・・!」

みると、さきほどの黒猫が歩み寄って来ていた

車掌「・・・」

千織「あ、あの、さっきこの猫ちゃんが私に・・・」

車掌「知っている。どうせこいつが余計なことを言ったんだろう」

黒猫「余計な事とは心外だなぁ。貴重な人間が下衆な輩に奪われるのはもったいないと思わない?」

車掌「別に」

黒猫「またそんなこと言って。精力があるに越したことはないじゃないか」

千織「・・・」 ポカーン

83:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:12:54 ID:spmolqlGjY

黒猫「あ、自己紹介遅れたけど。僕の名前はブリアン。君の名前は?」

千織「と、戸野千織です」

ブリアン「千織ちゃんね。僕はこの列車の車掌補佐をやってるんだ〜」

千織「補佐…。ね、猫なのに?」

ブリアン「魚が手足生やして歩いてるこの世界で、驚くことじゃないでしょ〜」

車掌「ブリアン、しばらく彼女の面倒をみてやってくれ」

ブリアン「え〜?」

車掌「私はまだ仕事が残っている。何かあったら私のところへ連れてこい」

ブリアン「わかったよ〜」

車掌は貨物車両から出ていき、千織はブリアンと2人きりになった

84:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:18:04 ID:spmolqlGjY

千織「…あの、ブリアンさん」

ブリアン「なあに」

千織「この世界はなんなんですか?人間じゃない人たちが、いっぱいいて・・・」

ブリアン「・・・・」

ブリアン「・・・そうだねぇ」

少し考えてから、話し始める

ブリアン「人間の言葉でいうと、ここは異世界であり、死後の世界でもある」

千織「死後って・・・」

ブリアン「この世界は欲望に満ちている。そして、死後というのは“人間ならざるもの”に限られる」

千織「???」

ブリアン「例えば、君を襲った魚人がいたでしょ?あれは、人間界で生きていた魚が死後、この世界で生まれ変わったものだよ」

85:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:20:45 ID:spmolqlGjY

ブリアン「人間に恨みをもっていたのか、単純に人間になりたかったのかは知らないけど、“欲望”をもっていたその魚は、この世界で手足を得た」

千織「そ、そんな・・・。じゃあ、この世界にいるものたちは全て、すでに死んでいるってことですか?車掌さんやブリアンさんも?」

ブリアン「僕はそうだよ。人間になりたいって欲はなかったから、魚人みたいな醜い姿にならずに済んだけど」

千織「じゃあ一体、なんの欲望が体現されたんですか・・・?」

ブリアン「さぁ、それは内緒だなぁ」 クスクス

千織「あ、もしかして、喋ること?」

ブリアン「違うね。この世界にきた者たちは全て、無条件で言葉を話すことができる」

86:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:26:08 ID:spmolqlGjY

・この世界は、「人間以外の生物の死後世界」

・生前に強い欲望をもっていた場合にのみ、この世界に存在することが許され、且つその欲望が体現される


87:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:28:27 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんは、見た目が完璧な人間ですよね…。生前はなんだったんでしょう」

ブリアン「あいつは死者じゃないよ」

千織「え!?」

ブリアン「ただこの世界で、この列車を動かすためだけに生まれてきた存在。それだけさ」

千織「…」

千織「…よく、わからないです」

ブリアン「気になるなら、直接あいつから聞いたら?詳しいことは僕も知らないし」

88:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/11(木) 23:31:59 ID:spmolqlGjY

ブリアンは千織を小部屋へ案内した

ブリアン「ここ、シャワー室ね」

ブリアン「さっき車掌から言われたと思うけど、まずはお風呂入ってもらわないと、人間臭くてたまんないから」

千織「は、はい」

ブリアン「そしたら、その駅員服に着替えて。男物だから、サイズ合わないと思うけど、勘弁ね」

千織「はい」

89:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:49:54 ID:spmolqlGjY

―――――――


恭太「う、うぅ・・・」

異臭と頭痛で目が覚めた

徐々に意識を覚醒させる

恭太(…俺、なにしてたんだっけ)

恭太(なんだこの臭い…くっさ…) ケホッケホッ

恭太(確か、よくわかんない列車でちおちゃんを探して―…)

恭太「――っ!」 ハッ

フッと記憶が蘇り、身体を起こす

90:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:51:39 ID:spmolqlGjY

しかし

グイッ

恭太「え、」

身体が柱に縛りつけられ、全く身動きが取れない

身ぐるみを剥がされている上に、身体にはベタベタしたものが塗りたくられている

恭太「うそ、だろ…」

恐ろしい魚の化け物に捕らえられた記憶

恭太「あれ、夢じゃねーのかよ…」

恭太「もしかして俺、食われるのか…?あの化け物に…」

91:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/12(金) 20:54:25 ID:spmolqlGjY

「――安心しな、食いはしないさ」

恭太「!」

視界に化け物が現れた

魚人母「あんたは高値で売られるのさ。良かったねぇ、命が助かって」 ニヤニヤ

魚人母「まぁ、買い先で食われない可能性はないけど」

恭太「た、頼む、命だけは…」

魚人母「あらあら。私の話全然聞いてないわね」

魚人母「とりあえず、体に塗っちまった塩を落とさないとねぇ」

バシャーン!

恭太「ぅえっつめて!」

バケツから水をかけられる

魚人母「うふふ、楽しみだわぁ」

92:🎏 名無しさん@読者の声:2017/5/12(金) 21:40:53 ID:JJovD3w/IY
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