乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
599: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:48:45 ID:ZyA0ubr.xE
準隊長「・・・ふぅん」
準隊長「ちゃんと頭はあるみたいね。気弱な女の子だと思ってたからちょっと驚いたわぁ」
千織「・・・」
準隊長「・・・じゃあ、特別に車掌に面会することを許可してあげましょう。彼は賛同してるから、証言してくれるはずよ」
準隊長「車掌を呼んできて」
部下1「はっ」 タタッ
600: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:52:40 ID:ZyA0ubr.xE
部下1「――おい、車掌!」
ガラッ
部下1「・・・!?」
運転室のドアをあけたが、車掌の姿がない
部下1「他の車両へ行ったのか?こんなときに・・・」
運転室を出て1両目に入ろうとすると――
部下1「げっ」
乗客1「おい、いつまでここに停まってやがるんだ!?」
乗客2「5分ってきいたのに嘘じゃねーか!車掌をだせ!!」 ドンドン
待たされて気が立った乗客たちが騒ぎ始めていた
部下1「こ、これは・・・車掌はどこへ行ったんだ!?」
601: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:58:08 ID:ZyA0ubr.xE
ブリアン「――千織。千織」
千織「!」
異界警察と対峙していると、背後の草むらから小さな声が聞こえた
ブリアンだ
ブリアン「静かに、振り向かずに聞いて。今の状況は・・・とても良くないね。車掌も望んだことじゃない」
千織「・・・!」
ブリアン「あいつらは得体のしれない偽善者だ。君を人間界へ帰してくれる保証なんてどこにもない」
千織(そ、そんな・・・)
千織「車掌さんはどこに・・・」
ブリアン「あいつも見張られてるから迂闊に動けないんだ」
602: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 21:05:06 ID:ZyA0ubr.xE
ブリアン「でも、一度君が列車の中に戻ることができれば・・・あそこは車掌のテリトリーだ。君を守ることができる」
千織「・・・!」
ブリアン「うまく口実を作って、列車の中に戻るんだ。・・・難しかったら、最悪走って逃げて、一歩でも足を踏み入れればいい」
千織「・・・」
千織(・・・でも、そのあとは?)
千織(一時的にやり過ごせても、また追われて、車掌さんに迷惑をかけてしまうんじゃ・・・)
千織(・・・それに、ブリアンさんは・・・)
ブリアン「千織」
ブリアン「僕たちを信じて」
603: 名無しさん@読者の声:2020/10/22(木) 18:04:04 ID:8XMy7bQTxY
ブリアンきた!!良かったね千織ちゃん
つCCCCC
604: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/29(木) 17:33:58 ID:LQTjeH4R2o
>>603
たくさん支援感謝ですー!
今週中の更新めざします
605: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:02:03 ID:aDFiMekXc6
準隊長「ん〜〜遅いわねえ。車掌はまだ来ないの?」
準隊長「いっそこちらから出向きましょうか」
千織「!」
千織「あっあの」
思い切って声を出す
準隊長「うん?」
千織「た、たぶん、お客さんの対応に追われてるのだと思います。ここに停車して時間が経っていますから・・・」
準隊長「・・・あぁ、そういうこと」
606: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:04:15 ID:aDFiMekXc6
千織「ですから、私たちが列車に―――」
バンッッ
千織「!?」
千織の顔の横を銃弾がかすめた
千織「・・・」
驚きのあまり、足がふらつく
銃をかまえた準隊長がにっこりと笑った
準隊長「あら、おかしいわねえ。あなたの後ろに誰かいた気がしたんだけど」
千織「・・・!」
振り向くが、ブリアンの姿はない
607: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:07:02 ID:aDFiMekXc6
準隊長「列車には戻らないわ。車掌が姿を現さないのなら、それまで。あなたをこのまま連れて行くだけよ」
準隊長「車掌のことは後日逮捕でも処刑でもすればいいし。あなたを保護することが警察として最優先だからね」
千織「・・・」
ごくんと唾をのみ込む
千織(・・・もう、何を信じるべきなのかわからない。だけど・・・このまま車掌さんと何も話せないまま別れるのは嫌だ、嫌だ)
千織(私のことを保護すると言ってるから、少なくとも私の命は保証されてるはず。それなら・・・)
ブリアンに言われたように、思い切り走って、列車に逃げ込むしかない
だが、複数人の警官に囲まれている状況だ
とても可能そうには見えない
千織(でも、やるしかない!!)
608: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:09:13 ID:aDFiMekXc6
千織「―――っ!!」ダッ
「!!」
周囲の警官を振り切って走り出す
部下2「こいつ・・・!」
部下3「何を無茶なことを!」
すぐに手や肩をつかまれ、身体が戻されようとする
そのとき―――
ドゴッッ!!
部下2「うごっ!?!?」
部下3「ぎゃっ!!!」
飛び蹴りがとんできて、部下たちの顔面をなぎはらった
609: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:11:02 ID:aDFiMekXc6
千織「・・・!?」
部下4「大丈夫か」
千織「え・・・!?」
帽子を目深にかぶった部下4が、千織をかばうように立っている
部下5「なんだ貴様!!」バッ
バキッ!
部下5「がはっ」
部下4の拳を腹に受け、倒れ込む
610: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:13:49 ID:aDFiMekXc6
千織「車掌さん・・・!!」
風貌は警官だが、声は紛れもなく車掌だ
準隊長「はっ、部下に化けるなんて芸達者じゃないの!」
準隊長が銃をかまえ、発砲した
バンッ
千織「!」
車掌「っ・・・」
部下4の帽子が舞い、車掌の顔があらわになった
準隊長「・・・あは、まさか避けたの?今のを?」
611: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:15:59 ID:aDFiMekXc6
車掌「・・・」
車掌「・・・悪いが、今は千織を渡せない。退いてくれないか」
準隊長「は・・・?あなた、さっきは納得していたわよね」
準隊長「まさか今更になって人間の女の子を手元におきたくなっちゃった?」
車掌「・・・」
やや眉をしかめるが、問いには答えない
そのまま千織の身体を寄せ、腰を抱いた
千織「ひゃっ」
地を蹴り、ふわりと宙を舞う
612: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:21:19 ID:aDFiMekXc6
準隊長「!」
部下6「ぎゃひっ」
部下7「んげっ!!」
部下たちの顔を足台にしながら、列車に向かって飛んでいく
準隊長「ちっ」
バンッ バンッ バンッ
1発が車掌の腕をかすめたが、速度は落ちない
準隊長「くっ・・・」
顔をしかめたときには、車掌と千織は列車に到達していた
613: ◆e.A1wZTEY.:2020/11/1(日) 21:25:38 ID:aDFiMekXc6
車掌「発車だ」
ブリアン「まだ社内に警官が残ってるみたいだよー?」
横からブリアンの声がきこえた
車掌「かまわない。精力の手で追い出しておく」
準隊長「待ちなさい!!」
準隊長「こ、このまま逃げられると思っているの?列車なんてすぐに追跡できる、時間と労力の無駄よ!!」
車掌「・・・」
ブリアン「うるさいオバサンだなあ。さよなら!」
ぷしゅーっと音を立て、列車が走り出した
614: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/23(水) 01:26:05 ID:GnFfdiuz6c
SS板が無くなってる…だと…
びっくりしましたがスレが残っていて良かったです
近日更新します
615: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:51:41 ID:v/MKOnGQpQ
千織「・・・」
へなへなと座り込み、震える瞳で車掌を見つめる
千織「車掌さん、あの人たちは・・・」
車掌「異界警察というらしい。千織を探していたようだ」
千織「っ・・・ほ、ほんとうに、警察なんですか?」
車掌「・・・わからない。私も初めて聞いた組織だ」
車掌「だが、沖恭太のことは知っていた。彼は無事だと言っていた」
千織「・・・はい・・・」
616: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:52:56 ID:v/MKOnGQpQ
車掌「・・・すまない。お前をあのまま異界警察に託したほうがよいのではないかと、私も考えた。だが・・・」
車掌「100%信用できたわけではないし、なにより・・・」
千織「・・・なにより?」
車掌「いや・・・」
車掌「・・・私にも、わからないんだ。今回の決断が正しかったのか・・・」
ブリアン「正しかったよ」
ブリアン「僕は車掌や千織と離れ離れになりたくないよ。2人だってそうだろう?」
ブリアン「車掌は、千織をあのまま手放したくないと思ったんだよ。その気持ちを尊重しようじゃないか」
617: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:55:12 ID:v/MKOnGQpQ
千織「車掌さんが・・・」
車掌「・・・」
車掌「・・・すまない。少し、休ませてくれ」
頭を押さえながら、小さく呟く
車掌「ブリアン。運転はするから、乗客の説得と誘導は頼む」
ブリアン「うん」
車掌「千織も無理に働かなくていい。奴らもすぐには追ってこれないだろうから」
618: ◆e.A1wZTEY.:2020/12/27(日) 22:58:19 ID:v/MKOnGQpQ
千織「あ、あの、車掌さん!」
千織「私は、助けてくれて嬉しかったです・・・!あのままお別れになるなんて、嫌でしたから」
千織「結果として、また迷惑かけてしまうことになると思いますけど・・・」
車掌「・・・」
車掌「千織のことは危険にさらさない。それだけは・・・約束する」
千織「・・・!」
車掌「私のことは気にするな。既に重罪のようだし、いつ捕まっても同じことだ」
千織「でも・・・!」
車掌「また、後で話そう」
帽子を被りなおすと、背を向け、運転室へ向かっていった
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