乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
580: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:03:10 ID:VdGDHZ34nE
紫苑「その可能性もあるけど。戸野千織が消えた瞬間はどうだったんだい?」
恭太「ちおちゃんが消えた瞬間・・・」
正直、あまり思い出せないが――
恭太「・・・池に飛び込んだり、というのは・・・なかった気がする」
紫苑「そうか。じゃあ何だろうな、念じるだけで行けるというのも考えにくいが・・・」
紫苑「難しいと思うが、もう一度思い出して。君の記憶が手がかりなんだ」
恭太「・・・」
しばし考え込む
恭太「・・・ダメだ、思い出せないよ」
581: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:04:26 ID:VdGDHZ34nE
恭太「本当にすっぱり、記憶が抜け落ちてるんだ。誰かに消されたみたいに・・・」
紫苑「・・・ヒントは、視界にうつったことだけとは限らないよ」
恭太「?」
紫苑「例えば、日付とかね。戸野千織が消えた日は、3月14日―――」
紫苑「ニュースにはなっていないけど、私の情報では、戸野千織はその1カ月前にも一晩だけ行方不明になっている。2月14日だ」
恭太「!」
恭太「そうだ、その日の夜、実は行方不明だったって、俺も最近ちおちゃんのお母さんから聞いて、」
紫苑「昼間は君と一緒にいたんだよね。何か変わったことはなかった?」
582: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:06:05 ID:VdGDHZ34nE
恭太「そ、れは・・・そりゃ、真っ先に思いつくことは」
恭太「バレンタインデーとホワイトデー・・・」
紫苑「そうだね」
恭太「でも、プレゼント交換したことくらいしか・・・」
紫苑「・・・そこから考えられることは、そのプレゼントを“献上”すること・・・とかかな」
恭太「献上って・・・」
紫苑「ちなみに何をあげたの?」
恭太「チョコレート・・・だったと思う」
紫苑「ふむ」
紫苑「ものは試しだ。ここで、チョコレートを献上してみようじゃないか」
583: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:12:28 ID:setgox7HOE
恭太「献上、って・・・」
恭太「今はチョコレートなんて持ってないぞ?」
紫苑「私が持っている。大好物のチロルチョコさ」
懐から小さな四角い包みを2つ取り出す
恭太「いい年してチロルチョコ持ち歩いてるのか・・・」
紫苑「ん?何か言ったかい?」
恭太「何も」
紫苑「そうかい。じゃあ、これをささげてみよう」
チロルチョコを右手にもち、池の前で腕をのばす
584: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:14:12 ID:setgox7HOE
紫苑「さぁ、貢ぎ物のチョコだよ。これと引き換えに、僕たちをそちらの世界へ繋げてくれないかい?」
恭太「・・・」
紫苑「・・・」
シーン
池は変わらず静まりかえり、何も起こらない
恭太「・・・何も起こらないぞ」
紫苑「ふむ・・・今日がそのタイミングではないのか、それともこのチョコではダメなのか・・・」
恭太「両方なんじゃないか」
ため息をつく
チョコを捧げたら死者の世界に繋がるなんでバカな話だ
585: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:17:09 ID:setgox7HOE
紫苑「諦めてはいけないよ。考えうることで一番可能性が高いのは間違いない」
紫苑「ちなみに、君があげたチョコレートはどんなもの?」
恭太「どんなって・・・手作りのだよ。ガトーショコラみたいな」
紫苑「手作り!きみ、男の子なのにやるねえ」
恭太「まぁ・・・もともとお菓子作りは好きだけど。好きな女の子にあげるものなら頑張るっしょ」
やや赤面しながら答える
紫苑「うんうん、いいと思うよ。私もそんな青春を過ごしてみたかった・・・」
586: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:18:45 ID:setgox7HOE
紫苑「じゃあ、君の手作りチョコであることに意味があるのかも」
恭太「は・・・?そんなことあるわけ・・・」
紫苑「とりあえず試してみない?今、君の家にあったりしないかな」
恭太「・・・そんな都合よくあるわけないだろ。それに、チョコ作りは・・・ちおちゃんへの想いを思い出して、今はつらいんだ」
紫苑「そのちおちゃんへの手がかりになるかもしれない。明日、作ってみてくれないか」
恭太「・・・」
紫苑「それで、明日の夜にまた落ちあおう。明日が死者の世界に繋がるタイミングの日かはわからないから、何日か試すことになるかもしれないけど」
恭太「・・・わかったよ。今できることがそれだってんなら、俺はやってやる。明日の夜にまたここで会おう」
587: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:24:26 ID:setgox7HOE
――――――
車掌「・・・確かに、私は変わったかもしれない」
車掌「前は、人間の小娘など生きても死んでも気にも留めなかった。最初、千織がこの世界に迷い込んだ時も、帰したのはただの気まぐれだった」
ブリアン「だよねえ」
車掌「だが、そういうお前はなんなんだ?」
車掌「はじめ、千織に固執したのはブリアンだ。列車の精力になる、列車の寿命を伸ばすことができるから、と・・・。しかし今は、千織を異界警察に引き渡すことに加担した」
588: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:28:26 ID:setgox7HOE
ブリアン「加担なんてしてないって。言ったでしょ、車掌なら千織を精力の手で受け止めると信じてたし、うまく奴らを言いくるめてやり過ごせるって思ってたからの判断だよ」
車掌「結果的に今、千織は我々から引き離されそうになっているわけだが。千織を列車の精力にしたかったお前は、どんな気分なんだ?」
ブリアン「最悪だよ。危機的状況だと思ってる」
そう吐き捨てながらも、どこか笑っているようにも見える
ブリアン「このままじゃこの列車は大損だ。だから・・・僕は、千織を取り返す努力をしたい」
車掌「は・・・?」
ブリアン「車掌にも協力してほしいんだ」
589: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:37:55 ID:bh825eqJEo
車掌「協力だと・・・?何を考えているか知らないが、断る」
ブリアン「そんな早く決めないでよ」
車掌「千織が安全に人間界へ戻る。沖恭太も無事だった。それでいいだろう、万事解決だ」
ブリアン「でも、車掌はきっと捕まるよ?人間監禁の罪とかなんとかで」
ブリアン「そしたらこの列車はどうなるんだろうね」
車掌「・・・それは・・・」
顔をしかめ、唇を噛む
590: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:39:10 ID:bh825eqJEo
車掌「・・・私のしたことが罪になるのなら、仕方のないことだ」
車掌「あいつらは歪世界の事情を詳しく知っているようだし、逃げるのも難しいだろう」
ブリアン「だよねえ」
ブリアン「捕まらず、なおかつ千織を取り戻すためには・・・あいつらを殺すしかないよね」
車掌「は・・・」
耳を疑った
車掌「・・・頭がおかしくなったのか?」
591: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:40:38 ID:bh825eqJEo
ブリアン「なってないよ。車掌が本気出せば、ここに来てる異界警察10数人全員を殺ることは可能でしょ?」
車掌「奴らの戦闘力は測れていない」
車掌「仮に殺ったとしても、すぐに増援を呼ばれる」
ブリアン「そいつらも全部殺すんだよ」
車掌「・・・お前、私を殺し屋かなんかと勘違いしてないか?」
ブリアン「列車に乗っている限り、ここは車掌のテリトリーだ。できないことはないでしょ?」
車掌「多量の精力を消費することになる。お前の嫌がることだろう」
592: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:43:00 ID:bh825eqJEo
ブリアン「気づいてない?あいつら、臭いも気配も違うけど中身は人間に近いみたいだよ。量はわからないけど、精力を持ってる」
ブリアン「つまり、倒して片っ端から燃料にしちゃえば、マイナスになることはないでしょ」
車掌「・・・お前は」
車掌「本当に、恐ろしいことを考えるな」
ブリアン「列車と・・・車掌のためだよ」
593: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:47:37 ID:bh825eqJEo
車掌「百歩譲って、お前の作戦が可能だとしても・・・我々の利益など、そんなに必死になってまで優先するべきことか?」
ブリアン「・・・13年」
車掌「・・・」
ブリアン「今のペースで列車稼働に精力を消費したら、13年後に精力は尽きる。間違ってないよね?」
車掌「・・・ああ」
ブリアン「これは予定より20年くらい早い。大きな原因は、乗車券に蓄えられる精力の量が大幅に削減されたことだけど」
車掌「仕方のないことだ。昔は人間界から頻繁に精力が流通していたが、今は制限が厳しくなり、この世界全体に精力が減った」
594: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/13(日) 22:52:07 ID:bh825eqJEo
ブリアン「・・・」
車掌「13年でかまわない。私は、与えられた仕事を全うするだけだ」
ブリアン「・・・与えられた仕事、ね」
ブリアン「その大事な仕事を1年でも長くできるよう工夫することも、大事だと思うけどね?」
ブリアン「計算したんだ。若くて健康な人間ひとりをまるまる列車に投資したら、寿命は・・・20年延びる。本来の寿命と一緒だ。素晴らしいじゃないか」
車掌「・・・」
ブリアン「イコール、これは君の命の長さだ。僕は、仕事仲間であり親友である君に・・・生きてほしいんだ」
595: 名無しさん@読者の声:2020/9/20(日) 02:03:39 ID:QxVPOrBXk2
ブリアン(`;ω;´)
生意気なやつめーとか思ってごめんね…
車掌長生きしてほしい
596: 名無しさん@読者の声:2020/9/20(日) 04:14:00 ID:QxVPOrBXk2
今気づきましたがTOPのその他から厳選入りおめでとうございます!!
597: ◆e.A1wZTEY.:2020/9/26(土) 17:08:15 ID:oWRIfZORLo
>>595 >>596
ありがとうございますー!
その他に掲載していただいてるの、私も最近知ったので
びっくり&超感激でした…!本当にありがたいです。
これからも何卒よろしくお願いしますm(__)m
近日中に更新します!
598: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:47:35 ID:ZyA0ubr.xE
千織「ま・・・待ってください」
警戒しながら、異界警察と距離をとる
千織「まずは、車掌さんと会わせてください。でないと信じられません」
準隊長「強情ねえ。彼は罪人だって言ってるでしょ?」
千織「あなた方のことを信用できないと言ってるんです。沖くんが無事だと言っていましたけど、適当なことを言って私を信じさせようとしているだけではないですか」
千織「沖くんが本当に無事だという証拠をみせてください。もしくは・・・車掌さんがあなた方を信じると仰るなら・・・考えます」
599: ◆e.A1wZTEY.:2020/10/10(土) 20:48:45 ID:ZyA0ubr.xE
準隊長「・・・ふぅん」
準隊長「ちゃんと頭はあるみたいね。気弱な女の子だと思ってたからちょっと驚いたわぁ」
千織「・・・」
準隊長「・・・じゃあ、特別に車掌に面会することを許可してあげましょう。彼は賛同してるから、証言してくれるはずよ」
準隊長「車掌を呼んできて」
部下1「はっ」 タタッ
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