乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
565: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:17:49 ID:blwQXIi.BE
車掌「・・・私からも1つ、お尋ねしてもよいですか」
準隊長「内容によるかしら」
車掌「・・・」
車掌「迷い込んだ人間は、もう1人いたと思います」
車掌「彼の現在を正しく説明してくださるのであれば、あなた方のことをおおむね信用します」
準隊長「・・・はてさて、あなたに信用される必要があるのかしらね?」
車掌「・・・」
566: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:21:04 ID:blwQXIi.BE
準隊長「まぁいいわ。あなたがもう1人のことを知っているのは、”彼女”が“彼”の知り合いだからよね」
準隊長「それとも、もしかして彼を最初に捕まえたのはあなただったの?」
車掌「前者が正しいです。彼は今どうなっていますか」
準隊長「魚人に捕らえられているところを我々異界警察が保護して、人間界に帰還させたわ。ここでの記憶を消してね」
車掌「・・・」
準隊長「彼の名前は、沖恭太。記憶を消す前、何度も『ちおちゃん、ちおちゃん』と呟いていたわ。・・・可愛いわよね、恋人だったのかしら?」
567: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:28:33 ID:blwQXIi.BE
車掌「・・・あなた方は、本当に警察なのですね。そんなものがこの世界に介入していたとは、知りませんでした」
準隊長「それが普通よ、非公開の組織だもの。逆に知っていたら、怪しさ満点よ」
車掌「・・・」
車掌「私が言わなくとも、だと思いますが。彼女を保護したら、安全に人間界へ帰還させてください」
車掌「彼女はこれまで、この世界に沖恭太が残っていると思って、頑なに帰ろうとしなかったんです。だが、彼の消息がわかった今、この世界にとどまる理由はありません」
準隊長「え?なに、あなた、人間界に帰そうと思えば帰せたって言うの?」
車掌「・・・多量の精力を消費すれば」
準隊長「へえぇ。面白いわ。あなたのこと、一度調べてみたいわね」
準隊長「ちなみに、最初こちらのニオイ探査機に反応が出なかったのはどうして?」
車掌「・・・この列車は、私の精力で形成されています。1人の人間の存在を覆い隠すことは難しくない」
準隊長「なるほどね」
568: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:33:42 ID:XCexI6W0e.
ガタンゴトン ガタンゴトン
車掌(・・・そろそろ、千織が落ちた地点だ)
部下1「・・・あ!」
部下1「じゅ、準隊長!あそこの木の陰に・・・!」
準隊長「・・・!」
車掌「・・・列車を停めます」
プシューッ
車掌『お客様へご連絡いたします。当列車は5分ほどこの場で停車いたしますが、すぐミズカキ駅方面へ再出発いたしますので、そのままお待ちください』
569: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:35:00 ID:XCexI6W0e.
千織「・・・!!」
千織「列車だ!!!」
立ち上がり、思い切り手を振る
千織「車掌さん、車掌さーん!!」 ブンブン
千織(戻ってきてくれた・・・!車掌さんを信じて良かった・・・!!)
間近に列車が停まり、運転室に近いドアが開く
千織「・・・え?」
ぞろぞろと出てきたのは、警察官のような風貌をした者たち
千織「っ・・・!」
千織(ブリアンさんの言っていた、異界警察・・・!?)
570: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:36:29 ID:XCexI6W0e.
準隊長「――こんにちは」
準隊長「やっと会えたわね。無事でなにより」
千織「あ、あの・・・」
準隊長「私たちは異界警察。あなたを保護し、人間界へ送り届けます」
千織「え・・・!」
複数人の警官たちに取り囲まれる
千織「ま、待ってください。車掌さんは・・・」
準隊長「・・・車掌とは会わせないわ」
571: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:37:43 ID:XCexI6W0e.
千織「え?」
準隊長「どんな理由であろうと、彼は人間の拉致・監禁の罪を犯したことになる」
千織「そ、それは!私を助けるために・・・!!」
準隊長「安心して。あなたを人間界へ帰すことには賛同してるから」
準隊長「あと、沖恭太。あなたの恋人?友達?も、保護して人間界へ帰還ずみ。他に何か困ることあるかしら?」
千織「・・・!!!」
572: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:39:40 ID:XCexI6W0e.
車掌「・・・」
千織と準隊長のやりとりを、運転室の窓から見つめる
車掌(・・・これでいい。千織をこれ以上この世界に縛る理由はない)
ブリアン「本当にいいわけ?」
車掌「・・・ブリアン」
いつの間にか、ブリアンが横に立っていた
ブリアン「このままじゃ、車掌もあいつらにどうされるかわかんないし、いいことなさそう」
車掌「・・・お前」
車掌「なぜ、千織を車外に落とした」
ブリアン「・・・」
車掌「精力の手がうまく受け止められなかったら千織は死んでいた。返答次第ではお前を許さない」
ブリアン「・・・フフ」
ブリアン「いいね。許さない・・・か。なかなか、エモいセリフを吐くようになったね」
573: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:43:13 ID:XCexI6W0e.
ブリアン「屋根の上だっていつかは見つかるでしょ。だったらいっそ、車外に落として一時的にでもやり過ごすべきだと思ったんだ」
ブリアン「もちろん、車掌が精力の手で落下時の衝撃を守ってくれるだろうって信頼したうえでね」
車掌「だが結局、列車を引き返させたことで隠すどころではなくなった」
ブリアン「そこが僕の見込み違いだった。車掌ならもう少しうまくごまかすと思ったんだけどなあ、まさか速攻で吐くなんて」
車掌「ごまかす?どうやって?千織をあの場所に放置しておくなんて」
ブリアン「前の君ならできたよね。実際千織に人間の臭いは残ってないし、あの場所はひと気もないし、少なくとも1日くらいは安全だったと思うよ」
車掌「・・・前の私だと」
ブリアン「気づいてないとか言わないよね。自分のことだよ?」
574: 名無しさん@読者の声:2020/7/4(土) 22:04:50 ID:yEz/WR3Wj.
コロナで大変だけど頑張って更新しエレストてくれぇぇぇえ!応援してるぞ!!面白いからな!!!
575: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/6(月) 19:53:47 ID:VdGDHZ34nE
>>574
うおおお嬉しいお言葉ありがとうございます・・・!!
最近リアルがバタついておりまして、申し訳ないです
でもそのコメントのおかげで元気いっぱいになりました!
数日以内に更新しますね(*^▽^*)
576: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 22:57:18 ID:VdGDHZ34nE
―――人間界
恭太が紫苑と接触してから4日後
恭太のもとへ紫苑から電話がかかってきた
紫苑『やぁ、待たせてすまなかったね。戸野千織が消息を絶った千賀池周辺を調査していたんだが・・・』
紫苑『色々わかったことがあるから、君ともう一度会いたいんだ』
恭太『わかった。いつ行けばいい?』
紫苑『今日の深夜1時、千賀池で会おう』
577: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 22:58:31 ID:VdGDHZ34nE
――深夜、千賀池
紫苑「やぁ、こんばんは」
恭太「あぁ」
恭太「それで、何がわかったんだ?」
紫苑「まぁ落ち着いて。順を追って話すから」
恭太「・・・」
紫苑「この池に、黒猫の霊がいると言っただろう?僕の知り合いの霊たちの力を借りて、なんとかコミュニケーションを試みたんだ」
紫苑「私たちに警戒していて、ちょっと苦労したけど、粘っていたら少し心を開いてくれた」
恭太「それで、猫はなんて」
紫苑「どうやら、ここで“ご主人様”を待っているらしい」
578: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:00:10 ID:VdGDHZ34nE
恭太「ご主人様・・・?飼い主のことか」
紫苑「多分ね。よくあるのは、なんらかの事情でこの池で飼い主が死に、念が残ってしまい、棲みついてしまうケースなんだが」
紫苑「どうやらそうではないらしい」
恭太「・・・?」
紫苑「ご主人様はここから時々、死者の世界とこの世界を行き来しているから、それを見守っている、と・・・。正確じゃないかもしれないが、そんなニュアンスのことを言っていた。やはりこの池は死者の世界と人間界を繋ぐ時空間的ポイントだった」
恭太「!!」
579: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:02:11 ID:VdGDHZ34nE
恭太「つまり、そのご主人様ってやつが、ちおちゃんを死者の世界へ攫った犯人ってことなのか」
紫苑「おそらくその可能性が高いね。目的はよくわからないけど」
紫苑「どうやって行き来しているのか、その方法も尋ねた。よくわからないみたいだったけど、やはり異世界同士の波長が合う日が不定期的にやってくるようだ。そのタイミングでここで“何か”をすれば、おそらく死者の世界へ行ける」
恭太「“何か”って・・・ずいぶん曖昧だな。波長の合う日もわからないのか」
紫苑「さすがに、聞き出す相手が猫だったからね。限界があるよ」
恭太「・・・この池でできることと言ったら、池に飛び込むとかか」
580: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:03:10 ID:VdGDHZ34nE
紫苑「その可能性もあるけど。戸野千織が消えた瞬間はどうだったんだい?」
恭太「ちおちゃんが消えた瞬間・・・」
正直、あまり思い出せないが――
恭太「・・・池に飛び込んだり、というのは・・・なかった気がする」
紫苑「そうか。じゃあ何だろうな、念じるだけで行けるというのも考えにくいが・・・」
紫苑「難しいと思うが、もう一度思い出して。君の記憶が手がかりなんだ」
恭太「・・・」
しばし考え込む
恭太「・・・ダメだ、思い出せないよ」
581: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:04:26 ID:VdGDHZ34nE
恭太「本当にすっぱり、記憶が抜け落ちてるんだ。誰かに消されたみたいに・・・」
紫苑「・・・ヒントは、視界にうつったことだけとは限らないよ」
恭太「?」
紫苑「例えば、日付とかね。戸野千織が消えた日は、3月14日―――」
紫苑「ニュースにはなっていないけど、私の情報では、戸野千織はその1カ月前にも一晩だけ行方不明になっている。2月14日だ」
恭太「!」
恭太「そうだ、その日の夜、実は行方不明だったって、俺も最近ちおちゃんのお母さんから聞いて、」
紫苑「昼間は君と一緒にいたんだよね。何か変わったことはなかった?」
582: ◆e.A1wZTEY.:2020/7/10(金) 23:06:05 ID:VdGDHZ34nE
恭太「そ、れは・・・そりゃ、真っ先に思いつくことは」
恭太「バレンタインデーとホワイトデー・・・」
紫苑「そうだね」
恭太「でも、プレゼント交換したことくらいしか・・・」
紫苑「・・・そこから考えられることは、そのプレゼントを“献上”すること・・・とかかな」
恭太「献上って・・・」
紫苑「ちなみに何をあげたの?」
恭太「チョコレート・・・だったと思う」
紫苑「ふむ」
紫苑「ものは試しだ。ここで、チョコレートを献上してみようじゃないか」
583: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:12:28 ID:setgox7HOE
恭太「献上、って・・・」
恭太「今はチョコレートなんて持ってないぞ?」
紫苑「私が持っている。大好物のチロルチョコさ」
懐から小さな四角い包みを2つ取り出す
恭太「いい年してチロルチョコ持ち歩いてるのか・・・」
紫苑「ん?何か言ったかい?」
恭太「何も」
紫苑「そうかい。じゃあ、これをささげてみよう」
チロルチョコを右手にもち、池の前で腕をのばす
584: ◆e.A1wZTEY.:2020/8/22(土) 03:14:12 ID:setgox7HOE
紫苑「さぁ、貢ぎ物のチョコだよ。これと引き換えに、僕たちをそちらの世界へ繋げてくれないかい?」
恭太「・・・」
紫苑「・・・」
シーン
池は変わらず静まりかえり、何も起こらない
恭太「・・・何も起こらないぞ」
紫苑「ふむ・・・今日がそのタイミングではないのか、それともこのチョコではダメなのか・・・」
恭太「両方なんじゃないか」
ため息をつく
チョコを捧げたら死者の世界に繋がるなんでバカな話だ
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