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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



551: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:03:22 ID:7pU5WGbVn6

千織「・・・」

千織「・・・わかりました。確かに、ブリアンさんの言うことは間違ってないと思います」

ブリアン「うん」

千織「列車から飛び降りればいいんですよね。着地は精力の手が守ってくれるし、降りた後も私の身体に付いた列車の精力が目印になる」

ブリアン「そう」

千織「・・・そういうことなら、やってやりますよ」

立ち上がり、急速に流れていく地面を見つめる

千織「・・・」

ゴクンと唾をのみ込む

大丈夫だとわかっていても、やはり飛び降りるのは勇気がいる

552: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:05:44 ID:7pU5WGbVn6

ブリアン「・・・」

千織「・・・い、いきます」

目をつむり、意を決して屋根から足を外した




車掌「!!」

その一瞬に、車掌の神経に警報が響いた

車掌「なにやってる!!!!」

部下1「おわっ!なんだ!?」

553: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:08:12 ID:7pU5WGbVn6

宙を舞った千織の身体を、一瞬遅れて精力の手が追う

千織の身体が地面にぶつかる瞬間――

ズササササッッッッ

ぎりぎりのところで精力の手が千織の下に滑り込み、クッションになった

千織「きゃっ・・・」

地面を削るような衝撃が伝わる

数秒、精力の手とともに地面を引きずられた後、動きが止まった

千織「・・・」

千織「・・・しゃ、車掌さん・・・」

自分の下敷きとなり、ボロボロになった精力の手を抱きしめる

554: ◆e.A1wZTEY.:2020/2/16(日) 12:11:16 ID:7pU5WGbVn6

千織「・・・ごめんなさい・・・」

千織「助けてくれて、ありがとう・・・」

電車の姿は既に、遠く彼方へ小さくなっていた




ブリアン「・・・うーわ」

驚いたように目を丸くする

ブリアン「まじで助けたんだ」

正直、精力の手が間に合う可能性は低いと思っていた

あそこまで動かすためには、間違いなく車掌の意思が必要だ

あの一瞬で、千織の危機を察知し、精力の手を動かした

ブリアン(・・・やっぱり恐ろしいやつだね、君は)

555: 名無しさん@読者の声:2020/3/10(火) 04:42:02 ID:q/tbxYcTSE
千織ちゃんが無事でよかった!
つCCCC
556: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 12:55:35 ID:/tDptHe//U
>>555
いっぱい支援感謝です!(*- -)(*_ _)ペコリ
557: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:01:05 ID:/tDptHe//U

車掌「・・・」ハァ、ハァ

部下1「お、おい。いきなり叫んでどうした?大丈夫か」

車掌「・・・いえ・・・」

車掌「なんでも・・・」 ハァ、ハァ

見ると、右腕を痛そうに押さえている

部下1「? 腕がどうかしたのか?」

車掌「・・・」

大きな精力を1つ損失した形だ

回復には少々時間がかかりそうだった

558: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:03:10 ID:/tDptHe//U

部下1「おい、聞いてるのか?」

車掌「・・・列車を」

部下1「ん?」

車掌「列車を、引き返します」

部下1「・・・は?」

部下1「そ、そりゃまたどういうことだ?お前、本当にどうしたんだ」

車掌「・・・」

車内アナウンスを入れる

559: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:05:56 ID:/tDptHe//U

車掌『――お客様へ、お知らせいたします』

車掌『諸事情により、次のミズカキ駅に到着後、1つ前の駅であるヒナコ駅に戻らせて頂きます』

乗客「なんだ、なんだ?」

乗客「列車を戻すだって?」

ざわざわ

車掌『10分ほど時間を要しますが、その後はふたたびミズカキ駅方面へ走り、当初の予定通り終点まで走ります』

車掌『ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます』

560: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:13:18 ID:/tDptHe//U

準隊長「――ひと駅戻るなんて相当なイレギュラーね」

部下1「準隊長!」

運転室に、列車調査を行っていた準隊長たちが入ってきた

準隊長「何があったのかしら?」

車掌「・・・」

車掌(千織が落ちた地点に戻るまでおそらく10分・・・。千織を助けるところは確実に目撃される)

車掌(・・・いや。こいつらはどう見ても私を疑っている。時間の問題か)

準隊長「何を考えているの?」

車掌「人間を連れ戻します」

561: ◆e.A1wZTEY.:2020/3/15(日) 13:16:12 ID:/tDptHe//U

「―――!?」

その場の空気が凍った

準隊長「・・・へぇ。どういうこと?」

車掌「予期せず人間が列車外に落ちたので助けにいきます」

準隊長「・・・あははっ」

準隊長「問い詰める前に自分から吐いてくれるのね」

車掌「その顔をみると、そちらも何か手がかりを掴んだのでしょう?」

準隊長「えぇ。あなたが“精力”というものを操るということをね」

準隊長「人間は精力の塊・・・関連を考えずにはいられないわ」

車掌「・・・」

準隊長「まだ証拠は掴んでないけど、あなたを徹底的に調べさせてもらおうと思っていたところ」

562: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:11:55 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・私は人間を保護していました」

車掌「あなた方は警察だと仰いました。しかし、素性がわからず、人間・・・彼女をあなた方に引き渡しても、彼女の安全が保証されるのか疑問だったので、隠させて頂きました」

準隊長「なるほどね。で、どうして隠し通そうと思わなかったの?」

準隊長「“保護”とかいう生ぬるい言葉使えば自分の罪が許してもらえると思った?」 ニッコリ

車掌「・・・バレるのは時間の問題だと思いましたので」

車掌「列車を引き返して、人間を連れ戻すところを隠すことは無理でしょう」

準隊長「そうね。間違いないわ」

563: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:12:58 ID:blwQXIi.BE

列車はミズカキ駅に停車後、もと来た線路を引き返し始めた

準隊長「さっき列車外に落ちたって言っていたけど・・・」

準隊長「もしかして屋根の上に隠していたの?だったら見つからないわけだわ」

準隊長「でも、下に落としちゃうなんて“保護者”として詰めが甘いんじゃない?そもそも人間は生きているのかしら?」

車掌「生きています。ただ、時間が経てばこの世界の者に襲われるかもしれない」

準隊長「・・・ふぅん、いいわ。それじゃ、あなたが人間を助けるところ、この目で確認させてもらいましょう」


564: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:14:25 ID:blwQXIi.BE

千織「・・・車掌さん、大丈夫かな・・・」

見知らぬ土地で、精力の手の残骸を抱きしめながらうずくまる

線路から離れすぎない場所で、かつ人目につかない木の下に移動していた

千織(ブリアンさんの指示で下におりちゃったけど・・・迷惑かけてるよね、きっと)

千織(異界警察・・・とかいうのにも、対応しなきゃだろうし)

千織(私のせいで車掌さんが逮捕、とかないよね?)

千織(嫌な予感がする・・・)

565: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:17:49 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・私からも1つ、お尋ねしてもよいですか」

準隊長「内容によるかしら」

車掌「・・・」

車掌「迷い込んだ人間は、もう1人いたと思います」

車掌「彼の現在を正しく説明してくださるのであれば、あなた方のことをおおむね信用します」

準隊長「・・・はてさて、あなたに信用される必要があるのかしらね?」

車掌「・・・」

566: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:21:04 ID:blwQXIi.BE

準隊長「まぁいいわ。あなたがもう1人のことを知っているのは、”彼女”が“彼”の知り合いだからよね」

準隊長「それとも、もしかして彼を最初に捕まえたのはあなただったの?」

車掌「前者が正しいです。彼は今どうなっていますか」

準隊長「魚人に捕らえられているところを我々異界警察が保護して、人間界に帰還させたわ。ここでの記憶を消してね」

車掌「・・・」

準隊長「彼の名前は、沖恭太。記憶を消す前、何度も『ちおちゃん、ちおちゃん』と呟いていたわ。・・・可愛いわよね、恋人だったのかしら?」

567: ◆e.A1wZTEY.:2020/4/22(水) 16:28:33 ID:blwQXIi.BE

車掌「・・・あなた方は、本当に警察なのですね。そんなものがこの世界に介入していたとは、知りませんでした」

準隊長「それが普通よ、非公開の組織だもの。逆に知っていたら、怪しさ満点よ」

車掌「・・・」

車掌「私が言わなくとも、だと思いますが。彼女を保護したら、安全に人間界へ帰還させてください」

車掌「彼女はこれまで、この世界に沖恭太が残っていると思って、頑なに帰ろうとしなかったんです。だが、彼の消息がわかった今、この世界にとどまる理由はありません」

準隊長「え?なに、あなた、人間界に帰そうと思えば帰せたって言うの?」

車掌「・・・多量の精力を消費すれば」

準隊長「へえぇ。面白いわ。あなたのこと、一度調べてみたいわね」

準隊長「ちなみに、最初こちらのニオイ探査機に反応が出なかったのはどうして?」

車掌「・・・この列車は、私の精力で形成されています。1人の人間の存在を覆い隠すことは難しくない」

準隊長「なるほどね」

568: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:33:42 ID:XCexI6W0e.

ガタンゴトン ガタンゴトン

車掌(・・・そろそろ、千織が落ちた地点だ)

部下1「・・・あ!」

部下1「じゅ、準隊長!あそこの木の陰に・・・!」

準隊長「・・・!」

車掌「・・・列車を停めます」

プシューッ

車掌『お客様へご連絡いたします。当列車は5分ほどこの場で停車いたしますが、すぐミズカキ駅方面へ再出発いたしますので、そのままお待ちください』

569: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:35:00 ID:XCexI6W0e.

千織「・・・!!」

千織「列車だ!!!」

立ち上がり、思い切り手を振る

千織「車掌さん、車掌さーん!!」 ブンブン

千織(戻ってきてくれた・・・!車掌さんを信じて良かった・・・!!)

間近に列車が停まり、運転室に近いドアが開く

千織「・・・え?」

ぞろぞろと出てきたのは、警察官のような風貌をした者たち

千織「っ・・・!」

千織(ブリアンさんの言っていた、異界警察・・・!?)

570: ◆e.A1wZTEY.:2020/5/21(木) 02:36:29 ID:XCexI6W0e.

準隊長「――こんにちは」

準隊長「やっと会えたわね。無事でなにより」

千織「あ、あの・・・」

準隊長「私たちは異界警察。あなたを保護し、人間界へ送り届けます」

千織「え・・・!」

複数人の警官たちに取り囲まれる

千織「ま、待ってください。車掌さんは・・・」

準隊長「・・・車掌とは会わせないわ」

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