乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
491: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:43:41 ID:1Hsj4T7jp6
がばっっ
千織「・・・」 ハァハァ
起き上がり、息切れをする
千織「・・・ゆ、ゆめ・・・」
やけにリアルな夢だった
本当に人間界へ戻ってきたのかと錯覚した
千織「・・・私、なにしてたんだっけ」
千織(確か、車掌さんやブリアンさんと一緒に外食して――)
千織「いつつ・・・」
軽い頭痛を感じながら、立ち上がる
492: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:44:42 ID:1Hsj4T7jp6
すると、寝台車両のドアがスッとあいた
千織「あ・・・」
車掌「おはよう」
千織「おっ・・・おはようございます!」 ペコリ
車掌「具合は大丈夫か?店で飲んだものが酒だったようだ。私の配慮が足りなかったせいで、すまなかった」
千織「え!?お酒・・・ そうだったんですね」
千織「具合は大丈夫です、心配かけてすみません。もう発車してますか?」
車掌「30分後だ。別に無理はしなくてもいいが」
千織「いえ、いけます!すぐシャワーあびて準備しますね!」
493: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:50:03 ID:1Hsj4T7jp6
――昼、フマダシ駅
十人程度の異界警察官が集まっていた
部下1「準隊長は、歪世界の列車に乗ったことがあるのですか?私は初めてなのですが」
準隊長「ないわよぉ。たいていの場所は異界警察特権のワープでいけちゃうし、近距離移動も特急車を使うしね。話には聞くから、そういう交通手段があることは知ってるけど」
部下1「ですよねぇ。知能の低い奴らがたくさん乗っているんだろうなぁ・・・」
準隊長「そうね〜。車掌が話が通じる奴だといいわねぇ」
494: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:51:29 ID:1Hsj4T7jp6
『――まもなく、フマダシ駅。フマダシ駅に到着いたします』
車内アナウンスとともに、列車が速度を緩め始める
千織(っと、次の駅で運ぶ荷物は、これと、あの段ボールだな・・・)
慣れた様子で、貨物運搬の準備をする
1分後
ぷしゅーっと音を立て、列車はフマダシ駅に停車した
495: ◆e.A1wZTEY.:2019/4/2(火) 22:53:35 ID:1Hsj4T7jp6
準隊長「乗るわよ」
部下1「はい」
ぞろぞろと列車に足を踏み入れる
ブリアン「はーい、乗車券はこちらでもらいまーす」
準隊長「ん?」
見ると、入り口手前の段差のところで、黒猫が小さな箱を持って立っている
ブリアン「乗車券を持ってない人は、ダッシュで駅の窓口に行って買ってきてねー」
準隊長「あらぁ、可愛い猫ちゃんね。ここに乗車券を入れればいいの?」
ブリアン「そうでーす。下半分をびりっと破って入れてね。上半分はお客さんの控えだよー」
部下1「なるほど」
乗車券を半分に破り、片方を箱に入れた
ブリアン「はいどうもー。いってらっしゃーい」
496: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:43:20 ID:wBkhRdDbz.
――運転席
ピタリと車掌が動きを止めた
車掌「・・・」
車掌「・・・誰か異質な者が、列車に乗ったな」
顔をしかめ、気配を辿る
車掌(歪世界の者とは違って、生きている者の気配だ。人間か・・・?)
わからない
人間の臭いはしないので、人間ともまた違う気がする
車掌「・・・」
車掌(ブリアンのやつ、ちゃんとチェックしろと言っているのに、また適当に客を通したな)
定刻になったので、列車を発車させなければならない
車掌(・・・とりあえず、出すしかない)
アナウンスを入れ、列車のアクセルを入れた
497: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:45:14 ID:wBkhRdDbz.
ゴトンゴトンと音を立て、列車が走り出す
部下1「どうします?早速車掌のところに行きますか?」
準隊長「そうね。彼に会いに来たわけだし、のんびり乗ってても仕方ないわ」
準隊長「とりあえず、運転席の方に向かえば会えるわよね」
部下1「はい。そうしましょう」
「――その必要はありません」
準隊長「・・・あら」
運転席方面の車両ドアから、車掌が現れた
498: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:47:03 ID:wBkhRdDbz.
準隊長「話が早いわね。どうして私たちのことがわかったのかしら?」
車掌「・・・この世界の者ではない気配がいたしましたので」
部下1「ほう。そんなことが察知できるのか」
準隊長「じゃあ、私たちが誰かということはわかってるの?」
車掌「わかりません。車掌として、乗客のことは把握しておかなければなりませんので、確認に来た次第です」
準隊長「・・・ふふ」
準隊長「あなた、しっかりしてるのねぇ。話が通じそうで良かったわ」
499: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:48:58 ID:wBkhRdDbz.
準隊長「私たちは、“異界警察”というの。聞いたことない?」
車掌「・・・異界、警察・・・?」
準隊長「人間界や歪世界など、異世界どうしの間で生じた問題を取り扱う警察よ。存在は公にされてないから、知らないのが普通だけど」
車掌「・・・」
部下1「今回、君に聞き取りしたい件があったので、参上したのだ」
車掌「・・・」
思考が脳内にめぐる
500: ◆e.A1wZTEY.:2019/5/11(土) 21:52:06 ID:wBkhRdDbz.
車掌「・・・なるほど」
車掌「私にわかることでしたら、ご協力しましょう」
準隊長「あらぁほんと?助かるわ」
車掌「断る理由はありませんので」
車掌「しかし、今は業務中で手がはなせません。業務終了までお待ちいただきたく存じます」
部下1「話しながらできないのか?主な業務は運転だろう」
車掌「聞き取りがすぐに終わるのでしたら、対応しましょう」
準隊長「いいわ。そうしましょ」
501: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/6(木) 23:43:49 ID:KD8ySevVr2
明日か明後日に更新します
502: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:36:45 ID:KD8ySevVr2
準隊長と部下数人を運転室に通し、会話をする
準隊長「――早速本題に入るけど。10日ほど前、この世界に人間が迷い込んだの」
車掌「・・・人間、ですか」
準隊長「ずっと探しているけど、見つかっていない。普段は、迷い込んだ人間は臭い探知ですぐ見つけられるのに」
準隊長「きっとこの世界の者が人間を捕らえているんだと思うわ。そいつを探しているのよ」
車掌「それで…私に聞きたいことは、人間もしくは人間を捕らえた犯人がこの列車に乗車していないか・・・ということでしょうか」
準隊長「理解が早いわね。そうよ、それが知りたいの」
503: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:39:09 ID:KD8ySevVr2
車掌「・・・」
複数の選択肢が頭に浮かぶ
どう答えることが正解なのか
この者たちが千織を無事に人間界に送り届けてくれるなら、正直に伝えるべきかもしれない
――が、まだ素性がわからない
安易な回答は避けたほうが良いと感じた
車掌「・・・さぁ。申し訳ありませんが、心当たりがございません」
部下1「本当か?」
車掌「はい」
準隊長「・・・ふーん」
504: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:41:07 ID:KD8ySevVr2
準隊長「あなた、人間の臭いをかぎ分けることはできるわよね?」
準隊長「この世界の者は全員、できると聞いたわ」
車掌「・・・そうですね。確かに近距離であればわかります」
準隊長「だから、仮に貨物に紛れ込んだりしていても、人間が列車内に存在していたらわかるってことよね」
車掌「・・・はい」
準隊長「それでも心当たりはなかったと」
車掌「はい。ありませんでした」
迷いの態度は疑いを生む
車掌は毅然とした口調で答えた
505: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:43:19 ID:KD8ySevVr2
部下1「嘘は言っていまいな?」
部下2「虚偽の証言は許さんぞ」
車掌「はい」
準隊長「・・・おかしいわねえ」
準隊長「こちらの調査では既に、犯人がササノコ駅、キサラギ駅、アカダコ駅を経由していることはわかってるんだけど」
車掌「・・・!」
準隊長「この世界において、短期間でこれらの駅を経由するためには、ほぼ確実にこの列車に乗る必要があると思うのよね」
506: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:50:24 ID:KD8ySevVr2
車掌「・・・何の証拠をもって、それらの駅の経由がわかるのですか?」
準隊長「普段の1000倍超高度な人間探査機を使ったの。そしたら、これらの駅に判定がでたわ。微かな臭いが残っていたのね」
車掌「・・・もしこの列車に人間が乗車したことがあるのならば、この車両にも判定は出るのでは?」
準隊長「それが出なかったらしいのよねえ。なぜかしら」
車掌「・・・乗車した事実はないということなのではないですか」
準隊長「乗車しないと町間の移動ができないわ」
準隊長「この謎を解くために、列車内を調べさせてもらいたいの」
車掌「・・・」
507: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:55:43 ID:KD8ySevVr2
列車内に人間の判定が出なかった理由は明白だ
千織を歪世界の者から守るために、列車を車掌の精力で覆い、存在を探知できないようにしていた
車掌(・・・異界警察などという組織が探知を試みていたとは知らなかったが)
また、彼らの話が本当ならば、おそらく沖恭太の安否もわかっているはず
車掌(・・・だが、今は不用意な質問はできない)
車掌「・・・わかりました」
車掌「そういうことであれば、列車内を調査することを許可しましょう」
部下「!」
準隊長「・・・へぇ。いいの?」
車掌「何か手がかりが得られれば、それは異界警察様のお役に立てたということですので」
508: ◆e.A1wZTEY.:2019/6/8(土) 23:58:59 ID:KD8ySevVr2
準隊長「・・・ふふ」
準隊長「では、お言葉に甘えてそうさせて頂こうかしら。全車両を調べさせてもらうわ」
車掌「ただ、お客様がお困りになるようなことはやめてください」
準隊長「もちろんよ。それは配慮するわ。でもね――」
ガッッ
車掌「!」
部下が素早く、車掌の両手を鎖で拘束した
準隊長「念のため、あなたには何も動かずにいてほしいの。念のためね」
車掌「困ります。これでは運転ができません」
準隊長「大丈夫、運転できるだけの自由はあげるわ」
やや緩められた鎖が、運転室のドア横にある柱に巻き付けられる
準隊長「部下をここに置いていくから、絶対ここから出ないでね」 ニッコリ
509: 名無しさん@読者の声:2019/8/14(水) 18:31:30 ID:ofTUkzJ/j2
いいぞぉ
510: ◆e.A1wZTEY.:2019/9/12(木) 08:58:58 ID:RSUiwP9n.s
>>509
お待たせしてすみません!
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