乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
417: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:48:20 ID:6jBANpAtHw
千織「・・・な、なんでもないです!なんでもないんです!」
顔をぶんぶんと振る
千織「帰るかどうかは、か、考えておきますので!それでは、夜も遅いので、これで、」
手に持っていた車掌の帽子を返す
千織「おやすみなさい!」 タタタッ
千織は勢いよく車掌室を飛び出していった
車掌「・・・なんなんだ」
418: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:50:47 ID:6jBANpAtHw
――寝台車両に飛び込むと、千織は胸に手をあて、上がった息を落ち着かせた
千織「・・・あぁもう、何考えてるんだろ・・・」
ずるずるとしゃがみ込む
紅潮した頬を両手で押さえる
千織「・・・言えないよ」
千織「車掌さんと離れたくない、なんて・・・」
419: 名無しさん@読者の声:2018/10/21(日) 09:03:16 ID:rhQj2WYI1s
千織ちゃんかわいいw
420: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:32:44 ID:6jBANpAtHw
>>419
(´///`*)
421: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:33:46 ID:6jBANpAtHw
―――人間界
恭太「・・・ちおちゃん・・・」
自室の窓際で、つぶやく
千織が行方不明になって、1週間がたった
依然として千織の所在はわからない
自分が行方不明になっていた間の記憶も思い出せない
ショックと罪悪感で、恭太は部屋に引きこもり、学校に行けずにいた
422: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:35:21 ID:6jBANpAtHw
何度も警察の事情聴取を受けたが、千織に関する有力な情報は提供できなかった
覚えているのは、あの日――3月14日に、二人で帰っていたことだけ
ホワイトデーのチョコを、渡したことだけ
恭太(・・・あの日、俺・・・告白しようと思ってた)
恭太(俺は、告白・・・できたのか?)
もう、会えるかわからない
そんなことを考えると、せめてあの日、自分の想いの丈を伝えられていれば・・・と、心に浮かぶ
423: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:36:33 ID:6jBANpAtHw
恭太「・・・あぁ・・・」
恭太「最低だ、おれ・・・」
まだ千織が無事である可能性もあるのに、悪い方向へとばかり考えてしまう
頭をかかえ、うずくまる
どうすればいい
どうすれば、このやりきれない気持ちを消化できるのか
――コンコン
不意に、ドアがノックされた
424: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:38:21 ID:6jBANpAtHw
恭太母『――恭太。起きてる?』
恭太「・・・起きてるよ」
恭太母『さっき変な人がうちに来てねえ・・・恭太に会わせろって言ってきて』
恭太母『気味悪かったから、押し返したんだけど』
恭太「変な人・・・?」
恭太母『なんでも、霊媒師とかって・・・心当たりある?』
恭太「・・・ない、かな・・・」
恭太母『そうよねえ。胡散臭いし、帰ってもらって正解だったわ』
恭太「・・・」
恭太母『じゃあ、お母さんお夕飯の準備してるからね。何かあったら言いなさいね』
425: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:41:24 ID:6jBANpAtHw
――深夜
コンッ
なにかぶつかる音がした
恭太「・・・ん・・・」
目を覚ます
コンッ、コンッ
恭太「なんだ・・・?」
2階にある恭太の部屋の窓に、小石がぶつけられているようだ
426: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:42:44 ID:6jBANpAtHw
おぼろげながら、窓から外を覗くと――
恭太「――!?」
見知らぬ長髪の男が立っていた
びっくりして、思わず布団に身を隠す
コンッ、コンッ
再度、窓に石が当たる
恭太(なんなんだよ・・・!!)
恐怖を感じながら、薄目で再び窓の方を見ると――
427: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:43:43 ID:6jBANpAtHw
『戸野千織のいる世界を知っている』
そう大きく書かれた紙を、男が広げていた
恭太「っ・・・!?」
『恐れるな。私は君の味方だ』
男が紙をめくる
『一度話をしよう』
恭太「・・・」
428: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:45:31 ID:6jBANpAtHw
頭が混乱している
どうすればいいのかわからない
長髪の男は、下に降りてこいとジェスチャーをしている
恭太「・・・」
とても信用できる状況ではない
――が、『千織のいる世界』という言葉に、何か刺さるような感覚を覚えた
おそるおそる、恭太は1階へと下りた
429: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:57:10 ID:dW73PZiuFo
長髪の男「――こんばんは」 ニッコリ
長髪の男「下りてきてくれてありがとう、沖恭太くん」
恭太「・・・あんた、誰だよ」
長髪の男「私のことは紫苑(シオン)と呼んでくれ。霊媒師をしている」
恭太「あんたが、うちに昼間来たっていうやつか」
紫苑「そうさ。君から、強い霊気を感じてね」
恭太「霊気?」
紫苑「私の感覚で呼んでいる言葉なんだがね。詳しく言うと、『死者の魂』って感じかな?」
430: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:58:14 ID:dW73PZiuFo
恭太「は?どういうことだよ。俺は霊感なんてないぞ」
紫苑「君の身体にまとわりついているのさ。すごく臭う、ぷんぷんとね」
紫苑「あ、勘違いしないで。憑りつかれてるとか、そういった類じゃないから。”死者の臭いが身体についてる”っていう表現のほうが正しいかな」
恭太「わ、訳が分からないんだけど。仮にあんたの言うことが正しいなら、何で俺にそんなものがついてるんだ?」
紫苑「君が死者の世界に行っていたからだよ」
恭太「・・・!?」
431: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:59:14 ID:dW73PZiuFo
紫苑「君は行方不明になっていた間、死者の世界にいっていたんだよ。その名残で、その世界の臭いが身体についてる。私はそれを辿って君のところにきた」
恭太「ま、待ってくれ。俺が死者の世界に行っていた?そんなこと信じられるわけ・・・」
紫苑「信じる信じないは自由だけど。君は何も覚えていないし、戸野千織に関する有力な情報もない。こんな状況下じゃ、藁にでもすがりたい気持ちじゃないのかい?」
恭太「・・・」
紫苑「君が何も覚えていないのは、その不思議な世界で記憶を消されたからだ。それなら合点がいくだろう?」
432: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:00:26 ID:dW73PZiuFo
恭太「・・・な、何でそんな世界にいく必要があるんだ」
紫苑「必要かどうかというより、迷い込んでしまった、という表現が正しいのかな」
紫苑「人間が自分から行くことはできないはずだからね」
恭太「じゃあ、ちおちゃんは・・・」
紫苑「おそらく、まだ死者の世界にいるだろう」
恭太「!!」
433: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:01:29 ID:dW73PZiuFo
こんな現実離れした話、信じられるはずがない
信じられるはずがないのだが――
警察が話していたどの可能性よりも、真実に近いように感じた
恭太「・・・確かに、俺は今、藁にでもすがりたい気持ちだ。ちおちゃんを助けるためなら、あらゆる手を尽くしたい」
恭太「あんたを信じれば、ちおちゃんを助けられるのか?」
紫苑「・・・そうだな」
434: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:03:10 ID:dW73PZiuFo
紫苑「はっきり言って、助けられる保証はない。が・・・助けられる可能性はある」
紫苑「私はもともと、神隠しと呼ばれる現象の正体を追っていてね」
恭太「神隠し?」
紫苑「人が行方不明になったり、なんの前触れも無く失踪することを、神の仕業としてとらえた言葉だよ」
紫苑「だが私は、神隠しとは人が死者の世界に迷い込んでしまったために起こることだろうと考えている」
恭太「ちおちゃんは神隠しにあったっていうのか」
紫苑「そうさ」
435: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 21:04:29 ID:dW73PZiuFo
紫苑「矛盾の多い、不可解な行方不明・・・。当初行方不明だった君が記憶をなくしたことも含めると、極めてその可能性が高いと感じたんだ」
恭太「どうやって神隠しから助けるんだ」
紫苑「迷い込む際には必ず2つの世界のあいだに時空的な繋がりができているはずだ。私はその繋がるポイントを探している」
恭太「ポイント・・・」
紫苑「戸野千織が行方不明になった場所だ。警察には何度も説明しているだろうが、改めて私をそこに案内してほしい。記憶が残っている場所まででいい」
436: 名無しさん@読者の声:2018/11/6(火) 23:35:44 ID:vXKJk.211Q
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