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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



412: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/9(火) 21:29:40 ID:6jBANpAtHw
>>411
支援ありがとうございます〜(^○^)!
明日か明後日に更新します、もうしばしお待ちください
413: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:42:42 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・」

車掌「・・・自分でも、わからない。なぜお前を生かすことに尽力しているのか」

車掌「・・・たぶん、死なせたくないと思う気持ちがあるからだと思うが」

千織「車掌さん・・・」

車掌「なぜ死なせたくないと思うのかはわからない」

千織「・・・嬉しいです。私も、同じですよ」

車掌「同じ?」

千織「車掌さんにはずっと、無事で・・・というか、元気でいてほしいです」

千織「何で・・・って言われると、ちょっと困っちゃいますけど」

414: 名無しさん@読者の声:2018/10/10(水) 23:44:18 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・そうか」

椅子の背に身体を預けていた車掌が、上体を起こす

車掌「帰りたいか?」

千織「え?」

車掌「聞くまでもないことだと思うが」

千織「そ、それはもちろん・・・」

車掌「ブリアンはお前の精力がどうのこうのと口煩いが、私からしたら千織がこの世界で危険な目に遭うほうが心身的負担が大きいらしい。ならばいっそ、細かいことは考えず人間界に帰したほうがいいと思う」

千織「・・・」

415: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:45:40 ID:6jBANpAtHw

車掌「お前の連れだった男・・・沖恭太といったか。あれは、期待しないほうがいい。まずは自分の身を優先するべきだ」

車掌「仮に見つけたら、私が人間界に送り届けてやる」

千織「・・・」

車掌が言ってることは正論だし、条件なしで人間界に帰らせてもらえることは千織にとっては喜ばしい提案だ

だが、なぜかすっきりしない

気持ちが晴れない

車掌「・・・なぜ、」

車掌「そんなに哀しい顔をしている」

416: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:46:25 ID:6jBANpAtHw

千織「!」

気づかぬうちに、沈んだ表情になっていたらしい

車掌「あの男の安否がわからないまま帰れないから、困っているのか」

千織「そ、それは」

千織「それも、・・・ありますけど」

車掌「・・・他にあるのか?」

千織「・・・」

車掌「・・・」

417: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:48:20 ID:6jBANpAtHw

千織「・・・な、なんでもないです!なんでもないんです!」

顔をぶんぶんと振る

千織「帰るかどうかは、か、考えておきますので!それでは、夜も遅いので、これで、」

手に持っていた車掌の帽子を返す

千織「おやすみなさい!」 タタタッ

千織は勢いよく車掌室を飛び出していった

車掌「・・・なんなんだ」


418: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:50:47 ID:6jBANpAtHw

――寝台車両に飛び込むと、千織は胸に手をあて、上がった息を落ち着かせた

千織「・・・あぁもう、何考えてるんだろ・・・」

ずるずるとしゃがみ込む

紅潮した頬を両手で押さえる

千織「・・・言えないよ」

千織「車掌さんと離れたくない、なんて・・・」


419: 名無しさん@読者の声:2018/10/21(日) 09:03:16 ID:rhQj2WYI1s
千織ちゃんかわいいw
420: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:32:44 ID:6jBANpAtHw
>>419
(´///`*)
421: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:33:46 ID:6jBANpAtHw

―――人間界

恭太「・・・ちおちゃん・・・」

自室の窓際で、つぶやく

千織が行方不明になって、1週間がたった

依然として千織の所在はわからない

自分が行方不明になっていた間の記憶も思い出せない

ショックと罪悪感で、恭太は部屋に引きこもり、学校に行けずにいた

422: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:35:21 ID:6jBANpAtHw

何度も警察の事情聴取を受けたが、千織に関する有力な情報は提供できなかった

覚えているのは、あの日――3月14日に、二人で帰っていたことだけ

ホワイトデーのチョコを、渡したことだけ

恭太(・・・あの日、俺・・・告白しようと思ってた)

恭太(俺は、告白・・・できたのか?)

もう、会えるかわからない

そんなことを考えると、せめてあの日、自分の想いの丈を伝えられていれば・・・と、心に浮かぶ

423: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:36:33 ID:6jBANpAtHw

恭太「・・・あぁ・・・」

恭太「最低だ、おれ・・・」

まだ千織が無事である可能性もあるのに、悪い方向へとばかり考えてしまう

頭をかかえ、うずくまる

どうすればいい

どうすれば、このやりきれない気持ちを消化できるのか

――コンコン

不意に、ドアがノックされた

424: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:38:21 ID:6jBANpAtHw

恭太母『――恭太。起きてる?』

恭太「・・・起きてるよ」

恭太母『さっき変な人がうちに来てねえ・・・恭太に会わせろって言ってきて』

恭太母『気味悪かったから、押し返したんだけど』

恭太「変な人・・・?」

恭太母『なんでも、霊媒師とかって・・・心当たりある?』

恭太「・・・ない、かな・・・」

恭太母『そうよねえ。胡散臭いし、帰ってもらって正解だったわ』

恭太「・・・」

恭太母『じゃあ、お母さんお夕飯の準備してるからね。何かあったら言いなさいね』

425: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:41:24 ID:6jBANpAtHw

――深夜

コンッ

なにかぶつかる音がした

恭太「・・・ん・・・」

目を覚ます

コンッ、コンッ

恭太「なんだ・・・?」

2階にある恭太の部屋の窓に、小石がぶつけられているようだ


426: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:42:44 ID:6jBANpAtHw

おぼろげながら、窓から外を覗くと――

恭太「――!?」

見知らぬ長髪の男が立っていた

びっくりして、思わず布団に身を隠す

コンッ、コンッ

再度、窓に石が当たる

恭太(なんなんだよ・・・!!)

恐怖を感じながら、薄目で再び窓の方を見ると――

427: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:43:43 ID:6jBANpAtHw

『戸野千織のいる世界を知っている』

そう大きく書かれた紙を、男が広げていた

恭太「っ・・・!?」

『恐れるな。私は君の味方だ』

男が紙をめくる

『一度話をしよう』

恭太「・・・」


428: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:45:31 ID:6jBANpAtHw

頭が混乱している

どうすればいいのかわからない

長髪の男は、下に降りてこいとジェスチャーをしている

恭太「・・・」

とても信用できる状況ではない

――が、『千織のいる世界』という言葉に、何か刺さるような感覚を覚えた

おそるおそる、恭太は1階へと下りた


429: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:57:10 ID:dW73PZiuFo

長髪の男「――こんばんは」 ニッコリ

長髪の男「下りてきてくれてありがとう、沖恭太くん」

恭太「・・・あんた、誰だよ」

長髪の男「私のことは紫苑(シオン)と呼んでくれ。霊媒師をしている」

恭太「あんたが、うちに昼間来たっていうやつか」

紫苑「そうさ。君から、強い霊気を感じてね」

恭太「霊気?」

紫苑「私の感覚で呼んでいる言葉なんだがね。詳しく言うと、『死者の魂』って感じかな?」

430: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:58:14 ID:dW73PZiuFo

恭太「は?どういうことだよ。俺は霊感なんてないぞ」

紫苑「君の身体にまとわりついているのさ。すごく臭う、ぷんぷんとね」

紫苑「あ、勘違いしないで。憑りつかれてるとか、そういった類じゃないから。”死者の臭いが身体についてる”っていう表現のほうが正しいかな」

恭太「わ、訳が分からないんだけど。仮にあんたの言うことが正しいなら、何で俺にそんなものがついてるんだ?」

紫苑「君が死者の世界に行っていたからだよ」

恭太「・・・!?」

431: ◆e.A1wZTEY.:2018/11/6(火) 20:59:14 ID:dW73PZiuFo

紫苑「君は行方不明になっていた間、死者の世界にいっていたんだよ。その名残で、その世界の臭いが身体についてる。私はそれを辿って君のところにきた」

恭太「ま、待ってくれ。俺が死者の世界に行っていた?そんなこと信じられるわけ・・・」

紫苑「信じる信じないは自由だけど。君は何も覚えていないし、戸野千織に関する有力な情報もない。こんな状況下じゃ、藁にでもすがりたい気持ちじゃないのかい?」

恭太「・・・」

紫苑「君が何も覚えていないのは、その不思議な世界で記憶を消されたからだ。それなら合点がいくだろう?」

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