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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



407: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:04:13 ID:7Cg5LKsjhw

千織(・・・)

千織(・・・帽子があると寝にくそうだな)

歩み寄り、そっと車掌の帽子をはずす

月明かりに照らされて、漆黒の髪と、整った青年の顔があらわになる

千織(・・・)

千織(綺麗だな・・・)

思えば、車掌の顔をちゃんと見たことはほとんどなかった

千織(・・・車掌さんのこと)

千織(・・・もっと、知りたい)

無意識のうちに、髪に触れていた

408: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:07:55 ID:7Cg5LKsjhw

柔らかな髪をそっと撫でる

千織「・・・」

千織「・・・」 ハッ

我に返り、顔を紅潮させる

千織(わ、私何して・・・!)

顔を押さえ、下を向く

千織(お、落ち着け落ち着け・・・大丈夫、ばれてない)

車掌「・・・何をしている」

千織「・・・へ・・・」

409: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:09:48 ID:7Cg5LKsjhw

眠気まなこの車掌がこちらを見ている

千織「ご、ごめんなさいごめんなさい!起こすつもりはなかったんです!」 アワアワ

千織「た、ただ、帽子があると寝にくそうだな、と、思って・・・」

手に持った車掌帽で顔をかくす

千織「な、何もしてません!本当です本当です・・・」

車掌「・・・なぜ赤くなっている」

千織「そ、それは・・・」


410: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:12:35 ID:7Cg5LKsjhw

車掌「・・・」

千織「・・・」

車掌「おかしな奴だな。何か用があったからここに来たんじゃないのか」

千織「あ、は、はい!そうなんです」

千織「キサラギ町でのお礼、ちゃんと言ってなかったと思って・・・」

車掌「お礼?」

千織「私なんて、見殺すことだってできたはずなのに・・・助けて下さって、本当にありがとうございました!」 ペコリ


411: 名無しさん@読者の声:2018/9/29(土) 10:21:38 ID:Brl2G9AObY
支援〜(*´∀`*)
412: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/9(火) 21:29:40 ID:6jBANpAtHw
>>411
支援ありがとうございます〜(^○^)!
明日か明後日に更新します、もうしばしお待ちください
413: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:42:42 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・」

車掌「・・・自分でも、わからない。なぜお前を生かすことに尽力しているのか」

車掌「・・・たぶん、死なせたくないと思う気持ちがあるからだと思うが」

千織「車掌さん・・・」

車掌「なぜ死なせたくないと思うのかはわからない」

千織「・・・嬉しいです。私も、同じですよ」

車掌「同じ?」

千織「車掌さんにはずっと、無事で・・・というか、元気でいてほしいです」

千織「何で・・・って言われると、ちょっと困っちゃいますけど」

414: 名無しさん@読者の声:2018/10/10(水) 23:44:18 ID:6jBANpAtHw

車掌「・・・そうか」

椅子の背に身体を預けていた車掌が、上体を起こす

車掌「帰りたいか?」

千織「え?」

車掌「聞くまでもないことだと思うが」

千織「そ、それはもちろん・・・」

車掌「ブリアンはお前の精力がどうのこうのと口煩いが、私からしたら千織がこの世界で危険な目に遭うほうが心身的負担が大きいらしい。ならばいっそ、細かいことは考えず人間界に帰したほうがいいと思う」

千織「・・・」

415: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:45:40 ID:6jBANpAtHw

車掌「お前の連れだった男・・・沖恭太といったか。あれは、期待しないほうがいい。まずは自分の身を優先するべきだ」

車掌「仮に見つけたら、私が人間界に送り届けてやる」

千織「・・・」

車掌が言ってることは正論だし、条件なしで人間界に帰らせてもらえることは千織にとっては喜ばしい提案だ

だが、なぜかすっきりしない

気持ちが晴れない

車掌「・・・なぜ、」

車掌「そんなに哀しい顔をしている」

416: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:46:25 ID:6jBANpAtHw

千織「!」

気づかぬうちに、沈んだ表情になっていたらしい

車掌「あの男の安否がわからないまま帰れないから、困っているのか」

千織「そ、それは」

千織「それも、・・・ありますけど」

車掌「・・・他にあるのか?」

千織「・・・」

車掌「・・・」

417: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:48:20 ID:6jBANpAtHw

千織「・・・な、なんでもないです!なんでもないんです!」

顔をぶんぶんと振る

千織「帰るかどうかは、か、考えておきますので!それでは、夜も遅いので、これで、」

手に持っていた車掌の帽子を返す

千織「おやすみなさい!」 タタタッ

千織は勢いよく車掌室を飛び出していった

車掌「・・・なんなんだ」


418: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:50:47 ID:6jBANpAtHw

――寝台車両に飛び込むと、千織は胸に手をあて、上がった息を落ち着かせた

千織「・・・あぁもう、何考えてるんだろ・・・」

ずるずるとしゃがみ込む

紅潮した頬を両手で押さえる

千織「・・・言えないよ」

千織「車掌さんと離れたくない、なんて・・・」


419: 名無しさん@読者の声:2018/10/21(日) 09:03:16 ID:rhQj2WYI1s
千織ちゃんかわいいw
420: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:32:44 ID:6jBANpAtHw
>>419
(´///`*)
421: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:33:46 ID:6jBANpAtHw

―――人間界

恭太「・・・ちおちゃん・・・」

自室の窓際で、つぶやく

千織が行方不明になって、1週間がたった

依然として千織の所在はわからない

自分が行方不明になっていた間の記憶も思い出せない

ショックと罪悪感で、恭太は部屋に引きこもり、学校に行けずにいた

422: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:35:21 ID:6jBANpAtHw

何度も警察の事情聴取を受けたが、千織に関する有力な情報は提供できなかった

覚えているのは、あの日――3月14日に、二人で帰っていたことだけ

ホワイトデーのチョコを、渡したことだけ

恭太(・・・あの日、俺・・・告白しようと思ってた)

恭太(俺は、告白・・・できたのか?)

もう、会えるかわからない

そんなことを考えると、せめてあの日、自分の想いの丈を伝えられていれば・・・と、心に浮かぶ

423: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:36:33 ID:6jBANpAtHw

恭太「・・・あぁ・・・」

恭太「最低だ、おれ・・・」

まだ千織が無事である可能性もあるのに、悪い方向へとばかり考えてしまう

頭をかかえ、うずくまる

どうすればいい

どうすれば、このやりきれない気持ちを消化できるのか

――コンコン

不意に、ドアがノックされた

424: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:38:21 ID:6jBANpAtHw

恭太母『――恭太。起きてる?』

恭太「・・・起きてるよ」

恭太母『さっき変な人がうちに来てねえ・・・恭太に会わせろって言ってきて』

恭太母『気味悪かったから、押し返したんだけど』

恭太「変な人・・・?」

恭太母『なんでも、霊媒師とかって・・・心当たりある?』

恭太「・・・ない、かな・・・」

恭太母『そうよねえ。胡散臭いし、帰ってもらって正解だったわ』

恭太「・・・」

恭太母『じゃあ、お母さんお夕飯の準備してるからね。何かあったら言いなさいね』

425: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:41:24 ID:6jBANpAtHw

――深夜

コンッ

なにかぶつかる音がした

恭太「・・・ん・・・」

目を覚ます

コンッ、コンッ

恭太「なんだ・・・?」

2階にある恭太の部屋の窓に、小石がぶつけられているようだ


426: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:42:44 ID:6jBANpAtHw

おぼろげながら、窓から外を覗くと――

恭太「――!?」

見知らぬ長髪の男が立っていた

びっくりして、思わず布団に身を隠す

コンッ、コンッ

再度、窓に石が当たる

恭太(なんなんだよ・・・!!)

恐怖を感じながら、薄目で再び窓の方を見ると――

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