乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
403: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:55:02 ID:7Cg5LKsjhw
千織(車掌さんが・・・拗ねてる?)
千織「車掌さんにも、人間みたいなところあるんですね!」
車掌「ない」
千織「良いと思います!」
車掌「ないと言っている」
ブリアン「もー強情なんだからー」
404: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 20:56:14 ID:7Cg5LKsjhw
3人は列車に戻ってきた
列車の前には、発車を待つ乗客たちが何人もうろついていた
車掌「お待たせして申し訳ありません。早急に発車準備をいたします」
車掌の口調が、いつもの丁寧な敬語に戻る
車掌「ブリアン、乗客に乗車券の確認を」
ブリアン「はーい」
車掌「千織は、貨物を車両に運んで」
千織「は、はい!」
慌ただしく準備にとりかかる
およそ10分後、列車は発車しキサラギ駅を後にした
405: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:00:02 ID:7Cg5LKsjhw
千織「――おわった、あぁ〜・・・」
ぐぐっと伸びをして、寝台に寝転がる
あの後、休む間もなく列車業務にうつり、作業が終了したのは夜の23時だった
千織「・・・」
千織「・・・そうだ」
ふと、思い出す
キサラギ町で助けてもらったことについて、しっかりと礼を言わなければと思っていた
起き上がると、車掌室へ向かった
406: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:01:51 ID:7Cg5LKsjhw
千織「・・・車掌さん」
車掌室をのぞく
部屋は暗く、明かりはほとんど灯っていなかった
千織「・・・あ」
車掌は、腕と足を組み、椅子に座った状態でうつらうつらとしていた
いつもピンと伸びた背筋が、珍しく横に傾いている
千織(・・・車掌さんが寝てるところ、初めて見た)
千織(でも・・・そうだよね、きっと寝る間もなく助けに来てくれたんだよね。疲れてて当然だ)
407: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:04:13 ID:7Cg5LKsjhw
千織(・・・)
千織(・・・帽子があると寝にくそうだな)
歩み寄り、そっと車掌の帽子をはずす
月明かりに照らされて、漆黒の髪と、整った青年の顔があらわになる
千織(・・・)
千織(綺麗だな・・・)
思えば、車掌の顔をちゃんと見たことはほとんどなかった
千織(・・・車掌さんのこと)
千織(・・・もっと、知りたい)
無意識のうちに、髪に触れていた
408: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:07:55 ID:7Cg5LKsjhw
柔らかな髪をそっと撫でる
千織「・・・」
千織「・・・」 ハッ
我に返り、顔を紅潮させる
千織(わ、私何して・・・!)
顔を押さえ、下を向く
千織(お、落ち着け落ち着け・・・大丈夫、ばれてない)
車掌「・・・何をしている」
千織「・・・へ・・・」
409: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:09:48 ID:7Cg5LKsjhw
眠気まなこの車掌がこちらを見ている
千織「ご、ごめんなさいごめんなさい!起こすつもりはなかったんです!」 アワアワ
千織「た、ただ、帽子があると寝にくそうだな、と、思って・・・」
手に持った車掌帽で顔をかくす
千織「な、何もしてません!本当です本当です・・・」
車掌「・・・なぜ赤くなっている」
千織「そ、それは・・・」
410: ◆e.A1wZTEY.:2018/9/26(水) 21:12:35 ID:7Cg5LKsjhw
車掌「・・・」
千織「・・・」
車掌「おかしな奴だな。何か用があったからここに来たんじゃないのか」
千織「あ、は、はい!そうなんです」
千織「キサラギ町でのお礼、ちゃんと言ってなかったと思って・・・」
車掌「お礼?」
千織「私なんて、見殺すことだってできたはずなのに・・・助けて下さって、本当にありがとうございました!」 ペコリ
411: 名無しさん@読者の声:2018/9/29(土) 10:21:38 ID:Brl2G9AObY
支援〜(*´∀`*)
412: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/9(火) 21:29:40 ID:6jBANpAtHw
>>411
支援ありがとうございます〜(^○^)!
明日か明後日に更新します、もうしばしお待ちください
413: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:42:42 ID:6jBANpAtHw
車掌「・・・」
車掌「・・・自分でも、わからない。なぜお前を生かすことに尽力しているのか」
車掌「・・・たぶん、死なせたくないと思う気持ちがあるからだと思うが」
千織「車掌さん・・・」
車掌「なぜ死なせたくないと思うのかはわからない」
千織「・・・嬉しいです。私も、同じですよ」
車掌「同じ?」
千織「車掌さんにはずっと、無事で・・・というか、元気でいてほしいです」
千織「何で・・・って言われると、ちょっと困っちゃいますけど」
414: 名無しさん@読者の声:2018/10/10(水) 23:44:18 ID:6jBANpAtHw
車掌「・・・そうか」
椅子の背に身体を預けていた車掌が、上体を起こす
車掌「帰りたいか?」
千織「え?」
車掌「聞くまでもないことだと思うが」
千織「そ、それはもちろん・・・」
車掌「ブリアンはお前の精力がどうのこうのと口煩いが、私からしたら千織がこの世界で危険な目に遭うほうが心身的負担が大きいらしい。ならばいっそ、細かいことは考えず人間界に帰したほうがいいと思う」
千織「・・・」
415: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:45:40 ID:6jBANpAtHw
車掌「お前の連れだった男・・・沖恭太といったか。あれは、期待しないほうがいい。まずは自分の身を優先するべきだ」
車掌「仮に見つけたら、私が人間界に送り届けてやる」
千織「・・・」
車掌が言ってることは正論だし、条件なしで人間界に帰らせてもらえることは千織にとっては喜ばしい提案だ
だが、なぜかすっきりしない
気持ちが晴れない
車掌「・・・なぜ、」
車掌「そんなに哀しい顔をしている」
416: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:46:25 ID:6jBANpAtHw
千織「!」
気づかぬうちに、沈んだ表情になっていたらしい
車掌「あの男の安否がわからないまま帰れないから、困っているのか」
千織「そ、それは」
千織「それも、・・・ありますけど」
車掌「・・・他にあるのか?」
千織「・・・」
車掌「・・・」
417: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:48:20 ID:6jBANpAtHw
千織「・・・な、なんでもないです!なんでもないんです!」
顔をぶんぶんと振る
千織「帰るかどうかは、か、考えておきますので!それでは、夜も遅いので、これで、」
手に持っていた車掌の帽子を返す
千織「おやすみなさい!」 タタタッ
千織は勢いよく車掌室を飛び出していった
車掌「・・・なんなんだ」
418: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/10(水) 23:50:47 ID:6jBANpAtHw
――寝台車両に飛び込むと、千織は胸に手をあて、上がった息を落ち着かせた
千織「・・・あぁもう、何考えてるんだろ・・・」
ずるずるとしゃがみ込む
紅潮した頬を両手で押さえる
千織「・・・言えないよ」
千織「車掌さんと離れたくない、なんて・・・」
419: 名無しさん@読者の声:2018/10/21(日) 09:03:16 ID:rhQj2WYI1s
千織ちゃんかわいいw
420: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:32:44 ID:6jBANpAtHw
>>419
(´///`*)
421: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:33:46 ID:6jBANpAtHw
―――人間界
恭太「・・・ちおちゃん・・・」
自室の窓際で、つぶやく
千織が行方不明になって、1週間がたった
依然として千織の所在はわからない
自分が行方不明になっていた間の記憶も思い出せない
ショックと罪悪感で、恭太は部屋に引きこもり、学校に行けずにいた
422: ◆e.A1wZTEY.:2018/10/22(月) 21:35:21 ID:6jBANpAtHw
何度も警察の事情聴取を受けたが、千織に関する有力な情報は提供できなかった
覚えているのは、あの日――3月14日に、二人で帰っていたことだけ
ホワイトデーのチョコを、渡したことだけ
恭太(・・・あの日、俺・・・告白しようと思ってた)
恭太(俺は、告白・・・できたのか?)
もう、会えるかわからない
そんなことを考えると、せめてあの日、自分の想いの丈を伝えられていれば・・・と、心に浮かぶ
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