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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



378:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:39:57 ID:36uvoWkwM.

車掌「・・・」

千織「兎男さん、兎兄貴さん。手荒なことはやめてください。私は、私は大丈夫なんです」

兎男「千織ちゃん」

千織「誤解なんです。私は自分のために車掌さんの傍にいるんです。車掌さんは何も悪くないんです」

兎兄貴「どういうことだよ」

千織「それは・・・」

自分は人間で、この世界に迷い込んでしまったから、生き延びるために車掌の力を借りている

この言葉を言うべきか否か

379:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:42:47 ID:36uvoWkwM.

千織(・・・兎男さんも、兎兄貴さんも、悪い人たちじゃない)

千織(私が人間だとわかったところで、危険なことはきっとしてこない)

そう考え、口をひらく

千織「・・・わ、私は、にん」

すっと車掌の手が千織の口を覆った

千織「!」

車掌「千織の弁解でお前たちは納得するのか?私が彼女に無理に言わせていると思うだろう」

兎男「あ・・・当たり前だろ!」

車掌「だったらつべこべ言ってないでかかってこい」

380:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:44:25 ID:36uvoWkwM.

千織「車掌さん!」

兎兄貴「上等だあ!!」

兎兄貴が大きな剣を抜く

兎兄貴「前から兎一族をこき使う、いけ好かねえ野郎だと思ってたんだ。この機会にぶっ飛ばしてやる!」

兎男「お、俺もやってやる!」

兎男も剣を抜く

千織「ま、待って・・・!」

千織の言葉を聞かずに、兎兄貴と兎男は勢いよく車掌に向かって飛び出した

381:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:47:10 ID:36uvoWkwM.

兎兄貴「どりゃあっっ!!」

ガキィッッ

兎兄貴「!!」

振り下ろした大剣が、車掌の剣によって受け止められる

体格差から兎兄貴の方が腕力があるはずなのに、車掌の剣はぴくりとも動かない

兎兄貴「兎男!!」

兎男「うん!」

車掌の左側から、今度は兎男が剣を振り下ろす

382:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:51:56 ID:36uvoWkwM.

ガキッッ

兎男「え!?」

車掌は左手に鞘をもち、それによって兎男の剣を抑えていた

兎兄貴「ふざけやがって・・・!」

兎兄貴が剣を振り直そうと、一瞬力を抜いて剣を浮かせたとき、

車掌「甘いな」

車掌は剣から瞬時に手をはなし、逆手に持ち直した

兎兄貴「!?」

そのまま勢いよく、下から上へ剣を振り上げた

383:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:54:36 ID:36uvoWkwM.

バキィッッ!!

兎兄貴「あぐっ!」

兎男「兄貴!」

剣は兎兄貴の手元ぎりぎりの柄の部分に当たった

衝撃とともに、兎兄貴の剣が弾かれて地面に落ちる

車掌「よそ見するなよ」

ドガッッ

兎男「あうっ!?」

気をとられた兎男の隙を見逃さず、今度は左足で兎男のみぞおちを蹴り飛ばした

384:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/8/28(火) 22:59:37 ID:36uvoWkwM.

兎男が尻もちをつく

兎兄貴「てめえ!!」

兎兄貴が素手で車掌に飛び掛かった

車掌「・・・」 フイ、

しかし、兎兄貴のこぶしは虚しく空を切る

兎兄貴「フンッ!フンッ!フンッ!」

幾度もパンチを繰り出すが、全て見極められたかのように避けられる

兎兄貴「こ、この野郎・・・!!」 ゼェゼェ

385:🎏 名無しさん@読者の声:2018/9/2(日) 19:08:18 ID:5FLtuh9VMs
いいね(・∀・)b
386:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:05:31 ID:7Cg5LKsjhw
>>385
ありがとうございます〜!
これから更新します
387:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:14:11 ID:7Cg5LKsjhw

千織「・・・」 ポカーン

ブリアン「千織、口あいてるよ」

千織「え、あ・・・あの」

千織「しゃ、車掌さんは・・・な、何者なんですか?」

ブリアン「車掌は車掌だよ」

千織「そうではなくて!せ、精力を使ってないのにあんなに強いなんて」


388:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:15:25 ID:7Cg5LKsjhw

ブリアン「あれは多分、車掌にとっては護身術の域なんだよ。この世界は知能の低い奴らが多くて、絡まれることが多いからね」

ブリアン「ゲテモノを乗せた列車を毎日正常運行させるためには、あのくらい必要でしょ」

千織「でも、2対1なのに・・・」

ブリアン「兎一族はもともと戦闘能力があまり高くないのもあるかもね」

千織「な、なるほど・・・」


389:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:17:56 ID:7Cg5LKsjhw

兎男「えい!とりゃ!ふん!」

必死に剣を振るが、全て読まれているのか車掌には全く当たらない

兎男「・・・」 ハァッハァッ

兎男「くそ、どうすれば・・・」

車掌「・・・」

冷めた瞳で汗だくの兎男を眺める

車掌「・・・お前、千織を守りたいと言ったな」

兎男「!」

車掌「この世界は人間にとって危険で溢れているのに、その程度でよく守るなどと言えたものだ」

390:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:20:25 ID:7Cg5LKsjhw

兎男「そ、それは・・・!」

車掌「気持ちだけではどうにもならない。お前はそれを理解するべきだ」

千織「・・・!」

不意に、以前兎男と話した内容を思い出す

“兎男『実は俺、ミュージシャンになりたいなって、ちょっと考え始めてるんだ。音楽が好きだから』”

“兎男『でも、仲間には無理だって言われてる。見た目も冴えないし、気が弱いから』”

“兎男『俺…みんなから変わってるって言われるんだ。だから自信なくしちゃって』”

あのとき、千織は「変じゃない」「私は応援する」と兎男を鼓舞した

しかし、車掌は「考え方が若くて甘い」と評していた

391:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:22:54 ID:7Cg5LKsjhw

千織(・・・私は)

千織(・・・車掌さんの言うことは正論だと思う・・・けど、)

千織(兎男さんの言ってることは、変じゃない)

車掌「だからお前は、他の兎男たちよりも浮いてしまうんだ」

兎男「!」

兎兄貴「てめえ!!」

千織「ま・・・」

千織「待って!!!」

392:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:25:21 ID:7Cg5LKsjhw

「!?」

人一倍大きな声を出した千織に、皆がぎょっとする

ブリアン「千織・・・?」

千織「あ・・・あの」

千織「それ以上、兎男さんを悪く言わないでください。車掌さんは・・・わ、わかってないです」

兎男「! 千織ちゃん!」

車掌「・・・わかってない?」


393:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/8(土) 19:28:41 ID:7Cg5LKsjhw

千織「車掌さんの言ってることは正しいです!でも、でも・・・人の心って、単純じゃないんです」

千織「理論的に考えてやめておいた方がいいことも、本心ではやりたいって思っていたら、やらなきゃいけないことがあるんです」

車掌「・・・お前が私を振り回すときは、いつもそれだな。理論で拒否しても、強引に感情で押してくる」

車掌「それは大いに結構だが、自分のキャパシティを考えてやれと言っている」

千織「キャパシティとか、そういうのを無視してでもやりたいと思うことがあるんです!」

千織「そ、それが・・・人間の心の1つ、だと思うんですけど」

兎男「千織ちゃん・・・」

394:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:10:43 ID:7Cg5LKsjhw

兎兄貴「・・・兎男・・・お前、人間だったのか?」

千織「つ、つまり!兎男さんは変わってるとか、浮いてるとかじゃなくて・・・他の人より、人間の心を豊かにもってるんだと思うんです」

千織「だから、そこを否定してあげてほしくないんです・・・」

車掌「・・・」

目を細めて息をつく

車掌「・・・この世界には、人間はいない。だから、人間の心などというものは意味をなさない」

車掌「だから、私にはその心を理解することはできないし、理解する必要もない」

千織「そ、そんなの決めつけです!」

395:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:33:51 ID:7Cg5LKsjhw

千織「意味があるかとか、理解する必要があるかとか、そんなのは車掌さん個人の考え方であって、兎男さんに強制していいことではないと思います」

兎男「・・・!」 ジーン

千織「車掌さんは私の恩人です。でも兎男さんの気持ちもよくわかるんです。私はどっちかが間違っているとは言えません」

千織「だから・・・これ以上皆さんが闘っているところを見たくありません。お願いします・・・」 ペコリ

車掌「・・・」

目を細め、静かに息をつく

車掌「・・・わかった」

千織「車掌さん!」

車掌「実力差は示したし、お前たちも私に勝てないことはわかっただろう。千織に免じて見逃してやるから、さっさと消えろ」

396:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:35:44 ID:7Cg5LKsjhw

兎兄貴「な、なんだと」

兎男「あ、兄貴・・・」

兎兄貴の腕をつかむ

兎男「引こう。千織ちゃんが、俺たちを助けようとしてくれてるんだよ」

兎男「千織ちゃん、ありがとう。俺、また励まされちゃったよ・・・」

兎男「無理やり車掌の傍に拘束されてるわけじゃないんだよね?それだけ確認させて」

千織「は、はい。私は、事情があって車掌さんのお世話になってるんですけど、決して悪いことはされていないです」

兎男「良かった。・・・いろいろ、ごめんね。迷惑かけて。ありがとう」

397:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2018/9/9(日) 10:38:46 ID:7Cg5LKsjhw
訂正
>>389最終行の車掌のセリフ
「人間にとって」の部分を削除してください
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